60年代のアメリカの世界戦略である「平和共存」政策でケネディ美化論をつくりだし「共産主義封じ込め」政策を日本に適用したケネディア大統領の娘であるキャロライン大使に期待を寄せる社説を読み、一つには、期待を寄せることで、大使に足かせ手かせをはめていこうとするマスコミの思惑と、もう一つは、日米軍事同盟の繁栄神話と抑止力神話にどっぷり使っているからこそ、ケネディ神話を克服できないまま、娘である大使に期待を寄せるマスコミの無節操さについて考えてみました。
日本は独立国家です。どの国とも対等な関係を構築することは、憲法の前文をみれば、当然のことです。ところが米国の大使着任騒動は、ケネディア氏個人のこともありますが、以下の社説を読む限りでは、米国以外の国との関係が浮き彫りになりました。そうです、従属性です。卑屈性です。これは病的と言わなければなりません。
今日のテレビでは、ケネディ大使を囲む女性国会議員の会なるものができるとか、ケネディ人気に預かり、お調子に乗っていると思いました。もしそれが事実であるならば、そんな軽率・ミーハー議員は即刻退場してほしいものです。マスコミも、芸能人的扱いはやめるべきです。もし取り上げるのであれば、オスプレイ配備や普天間基地問題、米軍基地問題や思いやり予算問題やアメリカの核の傘論など、日米軍事同盟と核抑止力論の廃棄についても論じていくべきです。
まず、日米軍事同盟深化派の産経です。「外交手腕は未知数」という大使との評価をしている産経ですが、「知名度は歴代駐日大使の中でも随一」のケネディ氏の「大きな発信力に期待は大きい」ので、「ケネディ氏にかかる責務と期待」を自覚して、「強いメッセージ」を中国にも北朝鮮にも韓国にも、慰安婦にも、靖国神社にも、「この地域における米国の存在感を、正しく大いに発揮してもらいたい」「一層の同盟強化に、新大使が寄与することを期待する」とmさに、神様、仏様、ケネディ様という産経のホンネが浮き彫りです。
ところが、その産経は、アメリカに押し付けられた憲法の平和主義を使うなどという発想は微塵もなく、ただただヒタスラに日米軍事同盟を使って「米大使が日本についての正しい認識を内外に発信する」などと、失礼なことを言ってしまうのです。この産経の非常識には大爆笑です。
産經 ケネディ米大使/同盟強化へ明確な発信を 2013/11/19 6:00
http://sankei.jp.msn.com/column/topicslist/../../politics/news/131119/plc13111903090003-n1.htm
米国のキャロライン・ケネディ新駐日大使が来日した。故ジョン・F・ケネディ元大統領の長女としての抜群の知名度を生かし、日米関係の発展に尽くしてほしい。22日は、ケネディ元大統領暗殺から50年にあたる。節目の年の着任となるケネディ氏は来日後、「日本と米国は自由、民主主義、法の支配という価値観を共有している」と語った。
軍事的に台頭する中国や核開発を進める北朝鮮など、わが国を取り巻く安全保障環境は厳しさを増している。共通の価値観を背景とする一層の同盟強化に、新大使が寄与することを期待する。ケネディ氏にはまず、日本の安全保障に関する米国の立場を明確に世界に発信してもらいたい。
人事承認に関する米上院公聴会でケネディ氏は、尖閣諸島(沖縄県石垣市)について、「日本の施政下にあり、(米国による日本防衛義務を定めた)日米安全保障条約第5条の適用対象だ」と明言した。同様の発言を日本で繰り返せば、力ずくで尖閣奪取を試みようとする中国に対する強いメッセージとなる。
米国内では慰安婦問題や靖国神社参拝などをめぐり、日本の「右傾化」を指摘するメディアも少なくない。「日本」がきちんと伝わっていないからではないか。
ケネディ氏には、日本の実情や立場を米国民や海外に正確に伝える役割も望みたい。例えば慰安婦問題がある。韓国系米国人らが米国内に慰安婦像や記念碑を造るなど、反日キャンペーンを繰り広げているが、慰安婦の強制連行を認めた河野談話がずさんな「調査」に基づいて発表されたことは、元慰安婦らの聞き取り資料で明らかだ。ケネディ氏の知名度は歴代駐日大使の中でも随一だ。外交手腕は未知数だが、大きな発信力に期待は大きい。米大使が日本についての正しい認識を内外に発信することは、日中、日韓関係にも好影響を与えることになるだろう。日本の民主党政権時代にぎくしゃくした日米関係は現在も必ずしも最良の状態とはいえない。オバマ大統領はアジア・太平洋重視を打ち出しているが、財政問題に追われて内向き志向ともされる。それだけに、ケネディ氏にかかる責務と期待は大きい。この地域における米国の存在感を、正しく大いに発揮してもらいたい。(引用ここまで)
次は日米軍事同盟に苦しむ秋縄からの発信です。「歓迎を感謝したい。オバマ大統領とケリー国務長官は日本との関係を重要視しており、駐日大使に着任することは名誉なことだ」として「日米同盟の強化に努めたいという意向を示し」(NHK)たケネディ氏に、「過重な基地負担を強いるアンフェアな現状、不平等な日米地位協定の実態を大統領に直接伝えてほしい」という期待は具体化できるでしょうか。
この記事によれば、オバマ大統領は、沖縄の「「過重な基地負担を強いるアンフェアな現状、不平等な日米地位協定の実態」を把握していないことになりますが、これは事実でしょうか。もし事実だとすれば、オバマ大統領は、外国の米軍基地の実態すら把握せず、作戦のボタンを押していることになります。本当でしょうか。この記事の言葉の信憑性に疑問です。ということは、安易な期待感を寄せようとしていることになりませんか?
日米軍事同盟の抑止力論を不問にしながら、アメリカの核兵器戦略と日本の核の傘論を改善できるでしょうか。TPPにしても、その根源には日米軍事同盟第2条を不問にすることはできません。日米軍事同盟そのものがアメリカの世界戦略の中に位置づけられているのです。そのことを抜きにアメリカに日本の自立をお願いして実現は可能でしょうか。
沖縄タイムス ケネディ駐日米大使/基地見て不当性伝えて 2013/11/19 10:06
http://www.okinawatimes.co.jp/article/2013-11-19_56919/
米国の新駐日大使としてキャロライン・ケネディ氏(55)が着任した。1963年11月に米テキサス州で暗殺されたジョン・F・ケネディ元大統領の長女である。今月22日は暗殺から50年に当たる。節目の年の就任ということもあって、人気芸能人と見まがうような取り上げ方をするテレビもある。女性大使は初めてであり、過去に例がないほど関心は高い。だが、政治・外交経験がなく、日本との関わりも特にない。大統領選でオバマ氏を支持した論功行賞との見方があるのも事実だ。過剰な思い入れは禁物だが、「素人」であることに逆に期待したい。オバマ大統領と「電話で話せる」(日米関係筋)間柄といわれているからだ。ケリー国務長官は、駐米日本大使公邸で開かれた歓迎行事でこう語っている。「(ケネディ大使は)オバマ大統領の良き耳であり、尊敬の対象だ」と。良き耳だけでなく、良き目、良き口にもなってもらいたい。一日も早く沖縄を訪れ、米軍普天間飛行場と、地元の反対を無視して移設しようとしている名護市辺野古沿岸部の美しい海を見てほしい。負担軽減につながらないことが分かるはずだ。住宅密集地にある普天間は、米国では存在自体あり得ない。閉鎖・撤去の要求を理解するはずだ。辺野古移設と同じく全市町村が反対する中、強行配備し日米合意を破るオスプレイの訓練を見てもらいたい。過重な基地負担を強いるアンフェアな現状、不平等な日米地位協定の実態を大統領に直接伝えてほしい。
ケネディ氏は1978年1月、叔父のエドワード・ケネディ上院議員(故人)に同行し、広島の爆心地に近い原爆資料館を視察したことがある。当時、20歳だったが、今年9月の米上院公聴会で「心を大きく揺さぶられた」と振り返った。今月13日に公開された日本向けビデオメッセージでも広島訪問に触れ、「より良い平和な世界の実現に貢献したいと切に願うようになった」と語っている。ルース前大使は在任中に駐日大使として初めて広島、長崎、そして沖縄の式典に参列している。米政府の姿勢にも変化の兆しが出ている。オバマ氏は2009年4月、「核なき世界」を目指し、牽引することを宣言したが、核兵器の性能を調べるための新型の核実験をするなど自らの言葉を裏切る行為をしている。オバマ氏の「核なき世界」を確固たるものにするためにも、広島、長崎訪問を促してもらいたい。
表向きの華やかさとは違い、船出は穏やかではない。課題は山積している。環太平洋連携協定(TPP)で米国は日本にコメを除く全ての関税撤廃を求めている。尖閣、竹島の領有権や歴史認識をめぐって日中、日韓関係は最悪の状態だ。歴史認識では米国内でも安倍政権の右傾化に警戒感がある。北朝鮮の核問題への対応も問われる。ケネディ氏は人権を重視するリベラル派で、女性の地位向上や青少年の交流拡大に尽力したい考えだ。この分野での活動にも注目したい。(引用ここまで)
次は日米軍事同盟容認論ですが、厳しい批判を展開している東京新聞です。基本的には沖縄タイムスと同じように、「特に訪れてほしい場所が、沖縄と、被爆地の広島、長崎だ」として「人権派として知られる大使なら、それが可能」であり、「大統領と直接電話で話せる個人的な信頼関係や米国きっての名門からの起用は両国関係にマイナスにはなるまい」として個人的な立場を強調することで、「大統領が本気で取り組むのなら、唯一の被爆国である日本国民として協力は惜しまない」と、東京の立場を表現しています。
しかし、ここに落とし穴があります。日米軍事同盟は個人的な問題で締結されたのではないこと、したがって個人的なこと解消ができるはずもないことを、意図的でしょうか、或いは無自覚的にでしょうか、良心的にでしょうか、何故か、不問に付しながら、ケネディ氏とオバマ氏個人の性格や力量に依存しているのです。であるならば、これまでの大統領や大使は個人的力量や性格は問題だったということになりませんか。
中日/東京 ケネディ大使/日米関係に新しい風を 2013/11/19 8:01
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013111902000125.html
キャロライン・ケネディ駐日米大使がきょう天皇陛下に信任状を奉呈し、正式に着任する。外交手腕は未知数だが、旧弊にとらわれない柔軟な発想で、日米関係に新しい風を吹き込んでほしい。「縁(えにし)」を感じざるを得ない。父の故ジョン・F・ケネディ大統領暗殺から五十年という節目の年の大使就任である。三十五年前には叔父の故エドワード・ケネディ上院議員とともに広島の原爆資料館を訪れた。新婚旅行でも日本を巡った、という。米国初の女性駐日大使だ。政治・外交経験はなく、オバマ大統領誕生や再選に貢献した論功行賞色が濃い。とはいえ、大統領と直接電話で話せる個人的な信頼関係や米国きっての名門からの起用は両国関係にマイナスにはなるまい。大使には、政府や外交関係者に限らず日本各地を訪問し、そこに暮らす人々と触れ合ってほしい。相互理解は友好関係の源である。特に訪れてほしい場所が、沖縄と、被爆地の広島、長崎だ。沖縄の狭い県土には在日米軍基地の74%が集中し、県民は日々、騒音や事故、米兵の犯罪など、重い基地負担に苦しんでいる。県民がなぜ、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への県内移設を拒み、国外・県外移設を求めているのか。現状を確かめず、惰性で県民が望まぬ政策を進めることがあってはならない。米兵らの特権的な法的地位を認め、主権である裁判権を米側に委ねている日米地位協定も同様に、沖縄県民を苦しめている。米兵による殺人や強姦(ごうかん)などの凶悪犯罪や、交通死亡事故が起こるたびに運用が一部見直されてきたが、改定は一度もされていない。人権軽視の現状を自らの目で確かめ、事態改善の道を開いてほしい。人権派として知られる大使なら、それが可能なはずである。硬直的な思考にとらわれず、在日米軍基地の抜本的縮小や地位協定の改定に向け、柔軟に取り組むべきだ。その努力を惜しんでは、歪(ひず)んだ日米関係の真の正常化はあり得ない。広島、長崎に大使として訪れれば、オバマ大統領が掲げる核兵器廃絶を後押しする。ルース前大使が道を開いた八月の両平和式典参列も恒例化し、大統領の被爆地訪問につなげてほしい。核兵器廃絶というレジェンド(伝説)づくりの道は険しい。しかし、大統領が本気で取り組むのなら、唯一の被爆国である日本国民として協力は惜しまない。
次は佐賀新聞です。
「私が日米の緊密な関係の強化に取り組めることは特別の名誉」「自由と民主主義、国際人道支援活動や市民社会への取り組みなどを挙げ」「日米同盟は平和で繁栄する世界にとって非常に重要」と強調したそうです。この言葉の具体的な事実が問題ですが、そこまで問いかけていません。
だからこそ、抽象的な、個人的な期待感しか述べることができないのです。日米同盟に向き合うことはしないのです。できないのです。何故でしょうか。ここにあるのは、まさに日米同盟タブー視論です。これが現代日本を席巻しています。
「日米は安全保障を軸に同盟関係にあるとはいえ、歴史的には原爆を投下した国と被爆国という関係」であるのであれば、非人道的兵器である核兵器に対しては非核三原則を日本に、そして東アジアに具体化すべきと主張しなければなりません。
「米軍基地問題を抱える沖縄では、大使の交代について冷めた見方がされている。米国の安全保障戦略が変わらない以上、大きな変化は望めないからだ」というのであれば、米国の安全保障戦略から脱却していくこと、すなわち日米軍事同盟の廃棄を主張しなければなりません。
以上のことを問いかけずして、抽象的な呼びかけは当事者を励ますことになるのでしょうか。抽象的な言葉を並べることは誰にもできることではないでしょうか。
佐賀 「ケネディ大使着任」日米関係に新風を期待 2013/11/19 8:07
http://www.saga-s.co.jp/news/ronsetu.0.2582726.article.html
キャロライン・ケネディ新駐日大使が着任した。50年前に暗殺されたケネディ元大統領の長女で、これまで弁護士や作家として活躍していた。外交の実務経験はないものの知名度は抜群。日米関係を飛躍させる役割を期待したい。歴代の駐日大使の中で着任前に、これほど関心を集めた人はいないだろう。前任のルース大使が8月に離任した後、9月中にも着任すると伝えられていたが、2カ月近く遅れた。父親のケネディ元大統領が凶弾に倒れたのは1963年11月。命日の22日を前にしての着任となった。米国の「ロイヤルファミリー」と称されるケネディ家の直系。オバマ大統領の有力支援者の1人で、2度の大統領選勝利に貢献した。駐日大使に指名された後、知日派と積極的に会って日本と日米関係を猛勉強したという。万全を期しての来日だろう。新駐日大使が、どのような言葉で日米関係を語るのか注目されていたが、着任の声明ではケネディ元米大統領が日本訪問を望んでいたことを語り、「私が日米の緊密な関係の強化に取り組めることは特別の名誉」と述べた。さらに自由と民主主義、国際人道支援活動や市民社会への取り組みなどを挙げ、「日米同盟は平和で繁栄する世界にとって非常に重要」と強調した。中国の台頭や米軍普天間飛行場移設、環太平洋連携協定(TPP)交渉など難問を抱えながらも、オバマ政権の「アジア重視」の基本に日米関係があることを、あらためて示した声明と評価したい。
これまでの駐日大使には、副大統領や下院議長、上院院内総務など要職経験者が充てられてきた。ケネディ大使は外交や行政の経験こそないものの、日本文化への関心は高く、存在感は十分だ。日米は安全保障を軸に同盟関係にあるとはいえ、歴史的には原爆を投下した国と被爆国という関係だ。ケネディ大使は35年前、叔父の故エドワード上院議員とともに広島の原爆資料館を訪れている。その体験について上院公聴会で、「心を大きく揺さぶられた」と述べた。外交専門家にない率直な発言は好感できる。核廃絶に対する被爆者の思いをくみ、オバマ大統領の広島、長崎訪問につなぐことができれば、日米の外交史上、画期的な出来事になる。米軍基地問題を抱える沖縄では、大使の交代について冷めた見方がされている。米国の安全保障戦略が変わらない以上、大きな変化は望めないからだ。だが、大使の仕事で最も優先されるのは友好の促進である。ぜひ沖縄も訪ねて懸け橋になってほしい。前任のルース大使は在任中、米国に留学する日本人学生が激減していることを憂慮していた。ルース氏にはフルブライト奨学金などで米国で学んだ日本の学生たちが、戦後の日米関係発展に寄与したという認識があった。最近の留学生の統計をみると、ピーク時の4割強に落ち込み、中国の約12分の1である。そのせいだろうか、米国で親日派が減っているという指摘もある。民間交流の幅を狭めることは外交にとっても損失だ。話題性に富むケネディ大使の就任によって、日米関係への関心は高まるだろう。民間交流も含めた幅広い分野に、新たな風が吹き込むことを期待している。(宇都宮忠)(引用ここまで)
次は、被爆地ヒロシマです。ここでも「日米両国は現在、懸案ばかりを共有している」としながら、その奥底にある日米軍事同盟による従属関係には触れていないのです。「核抑止力に頼る姿勢は変えようとせず、新型や臨界前の核実験を繰り返しているからだ。だが、核大国の為政者だからこそ直接、原爆の非人道性を肌で感じるべきだ」という論理は理解できるものの、「核抑止力に頼る姿勢」がどこからくるのか、どうすれば克服できるか、安易な期待と呼びかけで、オバマ大統領は動くだろうか。ケネディ氏の訪問で動くだろうか。ルイス氏で動かなかったのは何故か、ケネディ氏で動くのであれば、それは何故か、などなど、被爆地の論理と思想を、まずもって日本国政府と国民に浸透させることが重要ではないだろうか。
主権者は国民であり、歴史の主人公は国民です。本当のところで核兵器についての怒りと廃絶への確信、憲法の平和主義が国民のものになることをこそ、今大切なことではないでしょうか。そのことを曖昧にしてオバマ大統領やケネディ大使に期待を寄せることはどうでしょうか。
中國 ケネディ新大使/オバマ氏と広島訪問を 2013/11/18 10:00
http://www.chugoku-np.co.jp/Syasetu/Sh201311180079.html
米国の新しい駐日大使として先週、キャロライン・ケネディさんが着任した。あす皇居で天皇陛下に信任状を奉呈し、正式に始動する。外交手腕は未知数として起用には懐疑的な見方もあったようだ。とはいえオバマ大統領の信任は厚い。暗殺されたジョン・F・ケネディ元大統領の長女であり、知名度も群を抜く。彼女を指名したのは日本重視の表れだと素直に受け取りたい。被爆地にとっては、原爆を投下した国の大統領名代にほかならず、複雑な思いにもとらわれよう。ただ彼女のこれまでの行動や最近の発言を聞く限り、ことさら原爆被害から目を背ける人物ではなさそうだ。むしろ1978年に広島を訪れ、「大きく心を揺さぶられた」という。大使着任を前にした日本国民向けビデオメッセージでも「より平和な世界の実現に取り組みたいと切に願う」きっかけになったと明かした。できるだけ早く被爆地を再訪してもらいたい。できればオバマ氏と一緒に訪れ、世界平和だけでなく核兵器廃絶への思いを被爆者と共有してほしい。35年前の本紙によると、20歳の大学生だったケネディさんは「コールテンパンタロンにズックぐつ」と簡素な服装だった。原爆資料館では叔父の故エドワード・ケネディ上院議員らから1人遅れ、被爆者の遺品に見入ったという。父への思いを重ねていたに違いない。「あの時、核戦争にならなくて本当によかった」と。62年、ケネディ大統領は旧ソ連のフルシチョフ首相にキューバからのミサイル撤去を迫り、先制攻撃を求める国内の強硬派を抑え込んで、最終的には核戦争や第3次世界大戦を回避した。キューバ危機である。その父が暗殺されてから今月22日で50年となる。現職大統領として初の訪日がかなわなかった父に代わり、大使として日本で迎える命日は万感の思いでもあろう。着任に当たり「日本こそ私の奉仕先」とも述べた。デザイナーである夫との新婚旅行でも日本を巡ったという。そうした広島や日本への思いこそ、いかなる政治・外交経験よりも重要ではないか。前任のジョン・ルース氏が道を開いた8月6日の平和記念式典参列を恒例化し、ヒロシマの声を米国民に届けるよう願う。
日米両国は現在、懸案ばかりを共有している。米軍普天間基地に象徴される沖縄の負担軽減、環太平洋連携協定(TPP)交渉の行方、北朝鮮の核開発への対応、さらには軍備増強へ走る中国とどう向き合うか。「アジア重視」を掲げるオバマ氏は、一方で連邦議会対応など国内問題に追われ、内向き姿勢を強めているようだ。「極めて短時間で大統領に電話がつながる」ケネディさんへの期待が高まるゆえんでもある。もちろんオバマ氏の被爆地訪問に懐疑的な見方はあろう。ノーベル平和賞を受けながらも、核抑止力に頼る姿勢は変えようとせず、新型や臨界前の核実験を繰り返しているからだ。だが、核大国の為政者だからこそ直接、原爆の非人道性を肌で感じるべきだ。「核のない世界」へと踏み出すには、避けて通れない一里塚である。新大使に、その先導役をきっちり務めてもらいたい。(引用ここまで)
最後は信濃毎日です。
信濃毎日 ケネディ大使/大統領の被爆地訪問を 2013/11/19 10:05
http://www.shinmai.co.jp/news/20131119/KT131118ETI090007000.php
新たな駐日米大使として、ケネディ元大統領の長女キャロライン・ケネディ氏(55)が着任した。日米間には米軍普天間飛行場移設問題をはじめ多くの難問が横たわっているが、任期中にぜひ、実現してもらいたいことがある。原爆被爆地の広島、長崎へのオバマ大統領の訪問だ。大使にはその強い動機があるはずだ。オバマ氏は大統領に就任した2009年の4月、プラハでの演説で「核兵器のない世界」の実現に向けた構想を示した。「核兵器を使用したことがある唯一の国として米国には道義的な責任がある」とし、具体的措置を取ると宣言した。この構想などを理由に同年のノーベル平和賞を受賞した。唯一の被爆国、日本にとって核廃絶は悲願である。広島、長崎には大統領訪問で「被爆者の願いを吸い上げてほしい」との期待も大きい。オバマ氏は大統領就任後、2回、来日している。1回目は同年11月、最初のアジア歴訪。2回目は10年11月、横浜でのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議出席のためだった。いずれの機会も広島、長崎訪問の期待が高まったが、見送られた。理由は「十分な時間が取れない」との米政府の判断とされた。ところが、内部告発サイトのウィキリークスが公開した機密扱いの米外交公電によって、日本政府側の意向だったことが明らかになった。初来日に際し、反核グループへの影響を考慮し、広島訪問に否定的な姿勢を示したとされる。
ケネディ氏の前任のルース氏は米大使として初めて広島、長崎の平和式典に参加。10年夏に信濃毎日新聞社を訪れた際、大統領も1期目に広島を訪問する可能性を示唆したが、実現しなかった。ケネディ氏は、この状況を過去の体験を基に打開してほしい。ケネディ氏は35年前、20歳の大学生のころ、叔父の故エドワード上院議員らと広島を訪れている。原爆資料館で熱心なあまり一人遅れて展示に見入り、原爆病院では患者のケロイドに「思っていた以上のむごさ」と語った。ことし9月、大使の承認を得るための米上院公聴会で、この時の経験を「心を大きく揺さぶられた」と回想。「日本こそ私の奉仕先」と言い切った。オバマ政権は核兵器実験を度々行うなど核廃絶とは逆方向の動きも見られる。大統領の広島、長崎の訪問で、プラハでの宣言を一歩前に進めたい。(引用ここまで)