迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

つくられた「関東大震災」。

2021-04-08 20:17:00 | 浮世見聞記
横浜開港資料館の企画展示「レンズ越しの被災地、横浜」を観る。



この資料館ではたびたび関東大震災を扱った企画展があったやうに記憶してゐるが、今回は鎌倉で開業してゐた冩真館から新たに發見された、店主本人の撮影と思はれる被災した横濱のガラス乾板が初公開された。

あたり一面の瓦礫がとても鮮明に記録されてゐるが、見當となるものが悉く破壊されてゐるため、説明の添付がなければどの辺りを撮影したものなのか、私の目では判りにくい。


そのなかで、この震災ゆゑ短命に終り、後世で“幻”の扱ひとなった二代目の横濱驛をじっくり見られたのは収穫。


またこの大震災直後、都市の被災状況を冩した繪葉書が飛ぶやうに賣れたと云ふ。

私の手許にもある數葉の現物を見ると、初めは現場をそのまま冩したモノクロ版だったが、



供給過多になると目先を変へるため彩色版となり、



さらにはそこへ炎や煙を描き加へるなど、現實とは異なる惨状を過剰に演出することが行なはれた。



私が東日本大震災のときにはっきりと感じた報道屋の演出(ウソ)は、この時すでに存在してゐたのだ。

當然それは、本物の記録媒体ではない。


いちばん上の冩真は、地震直後の横濱を記念撮影用の垂れ幕に仕立てたものだが、二次災害の火災で全焼する前、家屋が倒壊した實際の様子を傳へる貴重な一枚となってゐる。


これこそが、記録媒体としての真骨頂なのである!




我が城の家具にはすべて、底面の先に新聞紙片を小さく折り畳んで厚みをつけたものをかましてある。



地震で家具が倒れるのを防ぐためのこの知恵は、関東大震災を経験した祖母がやってゐたものを母が見て覺え、そして私が一人暮らしを始めた時に教はったものだ。


かくして、知恵や工夫が受け継がれることにより、人の魂も永遠となる。







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