「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

110年前の亡父の徴兵身体検査令状

2018-06-18 05:06:24 | 2012・1・1
家に定期的に”何か古い捨てるものはないかと電話がかかってくる。そのたびに老妻が丁重に断っているが、実際には屋根裏の物置に”捨てたい”ほどガラクタが眠っているのだが、物のなかった時代に育った世代の”業”みたいなものだ。捨てられない。それでも、電話に触発されたように時々整理をするのだが、一向に作業は進まない。

そんな日々の中で、日露戦争の日本海沖海戦で東郷平八郎司令長官が掲げたZ旗の“皇国の興廃この一戦にあり”と書かれた元帥自筆の掛け軸(複製?)に混じって亡父宛の徴兵身体検査令状が出てきた。(写真)A4型半紙に印刷されており、東京市本郷区(現在の文京区)長發、日付けは明治39年2月7日となっている。

亡父は東條英機元総理(大将)や山本五十六連合艦隊司令長官と同じ明治17年生まれで、日露戦争(明治37年2月ー38年8月)中に満20歳の徴兵年齢を迎えている。それなのに父の徴兵身体検査令状は戦争が終わった後の日付である。推察だが、父は当時、大学生(早稲田)だったので、徴兵延期になっていたのかもしれない。生前、軍隊の話はめったにせず、自分は歯が悪かったため、徴兵にとられなかったと語っていた。

徴兵身体検査の令状をよく見ると、「明治三十」までは印刷さているが、次の一字は空白になっており、「九」の字は直筆である。父がなぜ、この一枚の紙を残しておいたのか。”お宝”的な価値はないが、やはり、わが家にとっては残しておかなければならない。