その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

バイエルン国立歌劇場 『ドン・ジョバンニ (Don Giovanni)』

2010-03-30 08:40:25 | オペラ、バレエ (in 欧州)
 バイエルン国立歌劇場(バイエルン州立歌劇場とも言われるようです)で『ドン・ジョバンニ』を観ました。

 同劇場は、ワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」や「ニュルンベルクのマイスタージンガー」を初演した歴史ある劇場です。サヴァリッシュ大先生が長く音楽監督を務めていたところでもあり、是非一度、訪れてみたいと思っていました。現在の音楽監督は日系四世のケント・ナガノです。

 ギリシャ神殿風のとっても立派な劇場です。


 劇場内は座席数が1773だそうですから、ロイヤルオペラハウスと比較すると、一回り小さく、座席と舞台が近く、どの座席からも舞台が間近に見える作りです。金色と薄赤色の内装もシックで、落ち着く装飾で、個人的にとっても好きです。




 天井のシャンデリアもとても美しいです。


 観客陣はどうかというと、ミラノ・スカラ座ほど華美なかんじはしないものの、皆さんしっかりドレスアップされているのが印象的でした。正直、ジーパンの姿の人は2人見かけただけで、男性はしっかり上着、ネクタイ着用、女性はシックなドレスという感じの方が多かったです。


 さて、公演の方ですが、『ドン・ジョバンニ』は初めて観るのですが、オペラそのものの面白さはもちろんのこと、非常にレベルの高い公演で、花まる公演でした。

 特に、歌手陣のレベルの高さには驚かされました。ドン・ジョバンニのアーウィン・シュロット(Erwin Schrott)、 騎士長のフィリップ・エンス(Phillip Ens)、ドンナ・アンナのエリン・ウォール(Erin Wall)、ドン・オッターヴィオのジュゼッペ・フィリアノーティ (Giuseppe Filianoti )、ドンナ・エルヴィーラのマイヤ・コヴァレヴスカ(Maija Kovalevska)、レボレッロのアレックス・エスポジト(Alex Esposito)、ツエルリーナのエレーナ・ツァラゴワ(Elena Tsallagova)、知っているのはROHで「愛の妙薬」で聴いたジュゼッペ・フィリアノーティだけでしたが、其々見せ場があるこのオペラで、存在感あふれる歌手たちが存分に個性を発揮していました。唯一、マゼット役のLevente Molnárだけがパンチ不足でしたが、マゼットは役柄も歌自体もしょぼいので、あまり気になりません。

 私的には、男性ではジョバンニのアーウィン・シュロットの演技、女性ではドンナ・エルヴィーラ役マイヤ・コヴァレヴスカのソプラノがとっても好みでした。今日の席は前から5列目。マイヤ・コヴァレヴスカはとっても綺麗な人だったので、ホント、オヤジ魂丸出しのかぶり付き鑑賞でした。役柄的には純情風で実はやはりツェルリーナに魅かれますが、エレーナ・ツァラゴワはきれいな声でしたが、声の線が細く、ちょっと自分の好みではなかったかも。(左からシュロット、コヴァレヴスカ、ツァラゴワ ※歌劇場のHPより)
  

 オーケストラの方は、ケント・ナガノの棒の元、このモーツアルトの素晴らしい音楽を時には優雅に、時には重厚に、美しく演奏してくれました。

 残念だったのは演出。現代風に読み替えての演出ですが、正直、意図するところが全く不明の演出で、私としては完全にブーでした。幕が開くと、そこには、いきなり、全裸の老人が直立(もちろん局部丸出し)。この老人はその後も随所に衣装を変えたりして出てくるのですが意味不明。また、舞台上方にはスクリーンがつってあって、時折、映像が流れるのですが、この映像も意味不明。舞台も、どっかの電車の車輛車庫のようなところの、コンテナの中で話が進みます。出演者の衣装は途中、登山服だったりして、どっかの山小屋かとも思わせたりするところもありますが、文脈不明。正直、あんなに巣晴らし演奏と歌唱だったのに、かなり演出でくじけて、ここは本当にがっかりしました。(※下の舞台写真は歌劇場のHPより)




ただ、この演出を差し置いても、音楽、声楽の素晴らしさは格別でした。バイエルン国立歌劇場、恐るべし。







Saturday, 27 March 2010
Nationaltheater

7.00 p.m. - app. 10.45 p.m.
Playing time: appr. 3 hrs, 45 min, 1 intermission
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Cast

Conductor Kent Nagano
Production Stephan Kimmig
Set Katja Haß
Costumes Anja Rabes
Video Benjamin Krieg
Lighting Reinhard Traub
Dramaturgy Miron Hakenbeck
Chorus Andrés Máspero

Don Giovanni Erwin Schrott
Der Komtur Phillip Ens
Donna Anna Erin Wall
Don Ottavio Giuseppe Filianoti
Donna Elvira Maija Kovalevska
Leporello Alex Esposito
Zerlina Elena Tsallagova
Masetto Levente Molnár

The Bavarian State Orchestra
The Chorus of the Bavarian State Opera
コメント
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