その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

ムーティ フィルハーモニア管 ベートーヴェン交響曲第3番ほか

2010-03-31 09:37:54 | コンサート (in 欧州)
 今日は先週末のミュンヘンの模様でも書こうと思っていたのですが、素晴らしいコンサートに出会えたので、感動の冷めないうちに、書いてしまいます。

 今夜はフィルハーモニア・オーケストラの65周年記念ガラコンサートということで、同楽団の音楽監督も務めたリカッルド・ムーティを招いてのコンサートでした。

 一曲目はベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲。ヴァイオリン独奏はジョシュア・ベル。演奏が始まって少しびっくり。モーツァルトの協奏曲かと思わせるような、柔らかく優雅なベートーヴェンだったからです。帰って調べたら、ベルは1967年生まれとのことでしたが、その若々しい演奏姿に魅かれました。会場の注目を一気に集める花と、それを楽しみ、自分のエネルギーに変える力を感じました。見ていて、ワクワクする演奏家です。フィルハーモニア管と独奏者の相性も素晴らしく、生み出されるハーモニーは、しみじみと幸せな気分にしてくれる演奏でした。




 休憩をはさんでの2曲目はベートーヴェン交響曲第3番「英雄」。いつか忘れましたが、1990年前後、フィラデルフィア管と来日した際にサントリーホールで聞いた記憶があります。冒頭、指揮台に上ったムーティーから一言挨拶。「ここまでフィルハーモニア管を成長させて来た先輩たちへの感謝の念を示したい。中でも、この演奏は、先日亡くなった1964年から1990年まで首席ダブルベース奏者を務めたドラッカー氏に捧げる」と述べられました。

 第一楽章、早めのペースで堂々と進んでいきます。これぞエロイカ。澱みがない、迷いがない、なぜこんなに堂々とできるのか。まさにど真ん中の直球をどんどん投げ込む上手投げ本格派ピッチャーのようです。その堂々たる音楽にただ聞き惚れてしまいます。
 第二楽章では、一転してスローペースに。一つ一つの音符を確かめるように進んでいきます。まさにドラッカー氏に捧げている演奏であることがムーティーの背中、そして奏者の姿勢でわかります。クライマックスでは自然と涙が流れ落ちてきました。こんな第2楽章の演奏に出会えたのは本当に久しぶりでした。
 そして第三、第四楽章では、通常のペースで、再び王道を進みます。管楽器のソロ、全体のオーケストラともに素晴らしいです。ムーティーの指揮の姿そのものが演奏の中に溶け込んでおり、ムーティにとってこの音楽が一つのドラマであることを示しているようでした。舞台のないオペラを見ているような感覚に陥りました。渾身の演奏だったと思います

 普段、何故かフィルハーモニー管のコンサートには足が遠い自分。このオーケストラの音ってこんなに優しく柔らかいとは今まで気がつきませんでした。素晴らしい音楽会でした。


 ※ 何故か、カメラが突然、不調に陥り、エロイカ後のカーテンコールの写真はありません。残念・・・


Royal Festival Hall

Philharmonia Orchestra 65th Birthday Gala Concert
Resident at Southbank Centre

Tuesday 30 March 2010

Ludwig van Beethoven: Violin Concerto
Interval
Ludwig van Beethoven: Symphony No.3 (Eroica)

Riccardo Muti conductor
Joshua Bell violin
コメント (4)
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