一度は聴いてみたいと思っていたサイモン・ラトルとバーミンガム市交響楽団のコンビによるコンサートを聴きに、バーミンガムまで遠征しました。バーミンガムからロンドンから北西に電車で1時間40分程度の、英国でロンドンに次ぐ2番目の都市です。
この日の演奏曲はバッハの「マタイ受難曲」。初めて聴きました。
※この曲については、素晴らしい解説のHPを見つけましたので、ご参考にしてください。(→こちらから)
言葉に言い表せない感動の2時間30分でした。楽曲そのものと合唱・演奏の双方に打ちのめされました。マタイ受難曲は新約聖書「マタイによる福音書」の26、27章のキリストの受難を題材にした音楽で、イエスの受難の予言から、ユダの裏切り、最後の晩餐、イエスの捕縛、審問、判決、十字架、イエスの死、埋葬、哀悼という一連の物語を扱います。まさに一つの聖書のハイライトでもあると思うのですが、そんな場面をバッハが楽器、合唱、独唱をふんだんに使い仕上げた一大音楽作品です。こんな音楽ですから、クリスチャンでない私でも、感動しないわけがありません。その劇的な音楽を今まで聴いたことのなかったことを後悔するとともに、今回聴く機会を得たことを、素直に感謝したいと思いました。
そして、この日の公演は本当に素晴らしかった。サイモン・ラトルの指揮の元、オーケストラ、合唱、独唱、全てが最高のレベルで組み合わさった公演と思いました。特に、独唱陣はどの人も良かったです。その中から、あえて言うとエヴァンゲリスト(福音史家)役を務めたMark Padmoreは文句なしのMVP。深みがあり、彼のテノールはまさにこの曲のためにあるような気がしました。また、アルトのMagdalena Kozen、バリトンのThomas Quasthoffも際立ってました。
合唱のバーミンガム市響コーラスの皆さんも素晴らしかったです。100名を優に超える大合唱団ですが、まさに一糸乱れぬ合唱でした。まさに天から音が降ってくるような感覚に襲われました。また冒頭部分では少年少女コーラスも入りました。心が浄化されるような歌声でした。
そして、演奏も最高。弦や管の各パートの響き、そしてその全体のハーモニー、更には所々に散りばめられている、フルート、オーボエ、バイオリン等の独奏部も、合唱や独奏に負けず個性豊かでありながら全体としての調和を完全に保っている、そんな演奏でした。
実は、途中でハプニングも。第1部の最終近くで、3階の客席から呪われたような叫び声がホール全体に響き渡りました。丁度、イエスが苦悩している場面であった(はずな)ので、私は一瞬、この音楽を通じて何かが観客に乗り移ったのではないかと、本気で思ったほどです。何が起こったのかは分かりませんが、ラトルを初め演奏者たちは何事もないかのごとく、もしくは集中していてとてもそんな叫びは耳に入らないとでも言うように、演奏が続けられました。
終演後は私を含め、聴衆は深い感動に捕われた感じで、滑り出しの拍手はむしろ鈍いぐらいでした。ただ、だんだんと我に帰るにつれて、拍手も会場が割れんばかりの大拍手に。ラトルは、独唱者を、コーラスを、そしてプレイヤーたちを讃えていました。中身は重いが、神聖で清らかな歴史絵巻を見せてもらいました。
<サイモン・ラトル>
<独唱者たち:左からCamilla Tilling, Magdalena Kozen, Mark Padmore, Topi Lehtipuu, Thomas Quasthoff, Christian Gerhaher>
Saturday 6 March 2010 at 7.00pm
Symphony Hall, Birmingham
Sir Simon Rattle conductor
Camilla Tilling soprano
Magdalena Kozen・ mezzo-soprano
Mark Padmore tenor, EVANGELIST
Topi Lehtipuu tenor
Christian Gerhaher baritone, CHRISTUS
Thomas Quasthoff baritone
CBSO Chorus
CBSO Children's Chorus
Bach: St. Matthew Passion (sung in German with English surtitles) 131'
※どうでもいい後日談を。日曜日はお昼過ぎからロンドンで約束があったので、この日の遠征は日帰り予定。最終のバーミンガム発ロンドン行きが22:10発。ギリギリだけど、コンサートは19時開始だし、演奏時間はHPによると131分。ホールは駅近くだから、終わって拍手はそこそこに切り上げ、駅まで急げば間に合うだろうと気楽に考えたのが誤りでした。なんだかんだでコンサート終了時点で22:10を廻っていました。「甘かった!」と思いつつ、ホールから駅まで歩くすがら目にしたホテルに端から入って行ったのですが、全て「満室」。バーミンガム程の都市でそれも(ビジネス客が居ないはずの)土曜日でそんなに満室なのかと思いましたが、無いものはしょうがない。寒い夜空のバーミンガム市内をうろうろ。学生時代のバックパッカー旅行を思い出しました。
6軒目に訪れたフロントのお兄さんは結構親切で、系列のホテルをあたってくれて、結局、「市内は全部一杯だ。タクシーで10分ぐらい乗った郊外に一部屋見つけたけど、そこでも泊るか?」と聞いてくれて、商談成立。車に乗って、街から外れた高速脇のホテルに一泊することになりました。結局、チェックインしたのは23:50。こんなこともあって、更に記憶に残るバーミンガムの夜となりました
この日の演奏曲はバッハの「マタイ受難曲」。初めて聴きました。
※この曲については、素晴らしい解説のHPを見つけましたので、ご参考にしてください。(→こちらから)
言葉に言い表せない感動の2時間30分でした。楽曲そのものと合唱・演奏の双方に打ちのめされました。マタイ受難曲は新約聖書「マタイによる福音書」の26、27章のキリストの受難を題材にした音楽で、イエスの受難の予言から、ユダの裏切り、最後の晩餐、イエスの捕縛、審問、判決、十字架、イエスの死、埋葬、哀悼という一連の物語を扱います。まさに一つの聖書のハイライトでもあると思うのですが、そんな場面をバッハが楽器、合唱、独唱をふんだんに使い仕上げた一大音楽作品です。こんな音楽ですから、クリスチャンでない私でも、感動しないわけがありません。その劇的な音楽を今まで聴いたことのなかったことを後悔するとともに、今回聴く機会を得たことを、素直に感謝したいと思いました。
そして、この日の公演は本当に素晴らしかった。サイモン・ラトルの指揮の元、オーケストラ、合唱、独唱、全てが最高のレベルで組み合わさった公演と思いました。特に、独唱陣はどの人も良かったです。その中から、あえて言うとエヴァンゲリスト(福音史家)役を務めたMark Padmoreは文句なしのMVP。深みがあり、彼のテノールはまさにこの曲のためにあるような気がしました。また、アルトのMagdalena Kozen、バリトンのThomas Quasthoffも際立ってました。
合唱のバーミンガム市響コーラスの皆さんも素晴らしかったです。100名を優に超える大合唱団ですが、まさに一糸乱れぬ合唱でした。まさに天から音が降ってくるような感覚に襲われました。また冒頭部分では少年少女コーラスも入りました。心が浄化されるような歌声でした。
そして、演奏も最高。弦や管の各パートの響き、そしてその全体のハーモニー、更には所々に散りばめられている、フルート、オーボエ、バイオリン等の独奏部も、合唱や独奏に負けず個性豊かでありながら全体としての調和を完全に保っている、そんな演奏でした。
実は、途中でハプニングも。第1部の最終近くで、3階の客席から呪われたような叫び声がホール全体に響き渡りました。丁度、イエスが苦悩している場面であった(はずな)ので、私は一瞬、この音楽を通じて何かが観客に乗り移ったのではないかと、本気で思ったほどです。何が起こったのかは分かりませんが、ラトルを初め演奏者たちは何事もないかのごとく、もしくは集中していてとてもそんな叫びは耳に入らないとでも言うように、演奏が続けられました。
終演後は私を含め、聴衆は深い感動に捕われた感じで、滑り出しの拍手はむしろ鈍いぐらいでした。ただ、だんだんと我に帰るにつれて、拍手も会場が割れんばかりの大拍手に。ラトルは、独唱者を、コーラスを、そしてプレイヤーたちを讃えていました。中身は重いが、神聖で清らかな歴史絵巻を見せてもらいました。
<サイモン・ラトル>
<独唱者たち:左からCamilla Tilling, Magdalena Kozen, Mark Padmore, Topi Lehtipuu, Thomas Quasthoff, Christian Gerhaher>
Saturday 6 March 2010 at 7.00pm
Symphony Hall, Birmingham
Sir Simon Rattle conductor
Camilla Tilling soprano
Magdalena Kozen・ mezzo-soprano
Mark Padmore tenor, EVANGELIST
Topi Lehtipuu tenor
Christian Gerhaher baritone, CHRISTUS
Thomas Quasthoff baritone
CBSO Chorus
CBSO Children's Chorus
Bach: St. Matthew Passion (sung in German with English surtitles) 131'
※どうでもいい後日談を。日曜日はお昼過ぎからロンドンで約束があったので、この日の遠征は日帰り予定。最終のバーミンガム発ロンドン行きが22:10発。ギリギリだけど、コンサートは19時開始だし、演奏時間はHPによると131分。ホールは駅近くだから、終わって拍手はそこそこに切り上げ、駅まで急げば間に合うだろうと気楽に考えたのが誤りでした。なんだかんだでコンサート終了時点で22:10を廻っていました。「甘かった!」と思いつつ、ホールから駅まで歩くすがら目にしたホテルに端から入って行ったのですが、全て「満室」。バーミンガム程の都市でそれも(ビジネス客が居ないはずの)土曜日でそんなに満室なのかと思いましたが、無いものはしょうがない。寒い夜空のバーミンガム市内をうろうろ。学生時代のバックパッカー旅行を思い出しました。
6軒目に訪れたフロントのお兄さんは結構親切で、系列のホテルをあたってくれて、結局、「市内は全部一杯だ。タクシーで10分ぐらい乗った郊外に一部屋見つけたけど、そこでも泊るか?」と聞いてくれて、商談成立。車に乗って、街から外れた高速脇のホテルに一泊することになりました。結局、チェックインしたのは23:50。こんなこともあって、更に記憶に残るバーミンガムの夜となりました