ひまわり先生のちいさな玉手箱

著書「ひまわり先生の幸せの貯金箱〜子どもたち生まれてきてくれてありがとう」

モラルハラスメント

2016年01月09日 | カウンセリング
《心の傷》には、感情処理が有効です。

嫌なことがあった時、すぐさま嫌だと感じれるといいのですが
意外とすぐに嫌と感じにくいもの。

カウンセリングで、「嫌」「怒り」を処理し、夫婦、嫁姑、親子、同級生、恋人、上司と部下、同僚などの人間関係が楽になったと言われます。

夫婦で、あからさまに身体的暴力がないのに
感情処理が必須なのは、言葉や態度による暴力、モラルハラスメント。

身体の傷は、時間が薬だとしても
心の傷は、目に見えないし、癒えにくいもの。

モラルハラスメントとは=
「ことばや態度で繰り返し相手を攻撃し、人格の尊厳を傷つける精神的暴力のこと」


フランスの精神科医マリー=フランス・イルゴイエンヌの
著書「モラル・ハラスメント~人を傷つけずにはいられない」が
翻訳(1999年)されてから、日本でもモラハラという言葉が知られるようになりました。

DVドメスティックバイオレンスの精神的暴力にあたります。

モラハラも力による支配です。


社会的に経済力のない女性は、悲しいことに

①なき寝入りか
②貧困になっても逃げるか
③経済的に自立するまてま我慢するか

になってしまいます。


夫婦間のモラハラは、具体的に次のようなものです。


《夫婦間のモラハラの具体例》

●妻が話しかけても無視をする
●妻の話をバカにした態度で聞く
●妻の質問に対してはっきりとした返答をしない
●突然不機嫌になり、舌打ちやため息をついたり、わざと大きな物音を立てる(ドアを乱暴に閉めるなど)
●妻の人格や存在を否定するような暴言を吐く
●妻が楽しそうにしていると、不快な顔をする
●妻の家族や友人、仕事や趣味などをけなす
●家庭のスケジュールを自分勝手に変更する
●家族で外食や旅行などをした際は、家族が大げさに喜ばないと不機嫌になる
●人前で妻をバカにする
●用意した食事に手をつけず、自分で買ってきた惣菜やインスタントラーメンなどを食べる
●「誰のおかげで生活できているんだ」「金を稼いできてるのは俺だ」などのセリフを発する
●家庭外では「良い人」で通っている

《モラハラ加害者の特徴》
●結婚前はやさしいが、結婚すると態度を一変させる
●結婚すると、家庭内のことを全て自分で決めようとする
●自分の欲求をはっきり口に出さない
●妻が自分に従わないと怒る。暴言を吐く。無視など嫌がらせをする
●妻の気持ちや考えは一切尊重しない。共感性がない
●妻の痛みや苦しみには鈍感だが、自分の痛みや苦しみは大げさに主張する
●妻が体調を崩すと不機嫌になる
●妻の自由な行動を制限する
●自分のためにはお金を沢山使うが、妻のお金の使い道は厳しく制限する
●自分の非は絶対に認めない
●世間体をとても気にする
●自慢話が大好き
●平気で嘘をつく
●家庭外では良い人と思われている

《モラハラ被害者の心理》
モラハラの被害者は、モラハラを受けても、「自分が悪いのでは」
「知らない間に夫に悪いことをしたのかも」
「私に問題があるから夫はこうなるのだ」
と考えて、自分を責めてしまいます。

被害者であるにもかかわらず、悪いのは自分だと思い込まされてしまう。
これがモラハラの怖いところです。

モラハラ被害者は、まるでマインドコントロールを受けているかのような心理状態にあるのです。



夫が結婚を機に変わってしまったとしたら、それは妻のせいではなく、夫のモラ加害者としての本性が現れたに過ぎません。

モラハラ加害者が結婚前に見せていた「やさしさ」は、とりつくろったものであり、結婚後の姿が本来の姿なのです。


《家庭内のモラル・ハラスメントの特徴》

◯最初は優しい

加害者は最初はとても優しい相手として登場することが多く見られます。


◯同情を誘う

加害者は自分がどんなに不幸な家庭で育ったか、どんなに惨めな子供時代を過ごしてきたか、涙ながらに語ったりします。

まるで土砂降りの中で子猫が憐れに鳴くように相手の同情を誘います。

被害者は 「私がこの人を幸せにしてあげよう」と思います。


◯豹変する

相手の心を掴んだと確信した瞬間、豹変します。それは見事な早変わりです。

しかし夫に言わせれば自分がそのようになったのは妻のせいだと言いいます。

自分が悪いのではなく、自分をそうさせた相手が悪いのだと屁理屈、こじつけで弁舌巧みにまくし立てます。

豹変するのは結婚時、妊娠、出産後などのきっかけで多く始まります。

結婚時に変わるのは、相手が自分のモノに なったからで、妊娠、出産時は相手が身動きがとれないので好き放題にできること。

また、子どもができたことで子どもに対する嫉妬の場合もあります。


◯密室で起こる

夫が妻に対して特有の言葉や動作で威嚇するのは家の中だけです。

一歩外に出れば温厚で 明るい絵に描いたような理想の夫や父親が、家の中ではただならぬ暴君に変身します。

外の人に話したことが夫に知られてしまうと夫から何をされるかわからないという「学習」を常日頃から されていますので、怖くて言えません。

言ったところで夫は、外面は良く、どう見ても紳士なので、わかってもらえないと思います。

※モラ夫の中には、外でも家でも同じようにふるまう表裏のない暴君ネロタイプもいます。



◯平気で嘘をつく

モラ夫は大うそつきで、「食事を作らない」「洗濯もしてもらえない」などという嘘を 周りにばらまいていることがあります。

狡猾な場合はわざと汚い服を着ていって、悲しそうにふるまったりします。

モラ夫は外ではとてもいい人なので、「ひどい奥さんね」「よく耐えているね」などと言われたりします。

人をおとしいれる嘘、自分が優越感に浸れる嘘を平気でつきます。

ばれた場合は「そんなことは言っていない」「思い違いだよ」 「冗談だったのに、本気にしたの?」などと言ってごまかします。



◯暴力は伴わない

モラハラは普通暴力は伴いません。

それは夫は外から見た自分を非常に大切にするからです。

暴力夫なんて 言われるのはとんでもないことなのです。

暴力をふるえば証拠が残ってしまいます。

賢しいモラ夫は 証拠が残るようなことはしません。

ただし激高すれば伴うこともあります。

その暴力も痕が残らない程度に首を絞めたり、 胸ぐらを掴んで揺さぶるなどといった証拠が残らない方法で行います。

それは何を意味するでしょうか。

それは激高しても理性が存在するということです。

憤怒で何も考えられなくなっているわけではありません。

モラ夫にとって相手を傷つけるのが目的ではありません。

相手に威圧感・恐怖感を与えて支配することが目的なのです。



◯自分を正当化する

夫にとって自分は常に正しいのです。正しくないはずがないのです。

間違っているのはいつも相手なのです。

だから「お前が間違っているから教えてやっているのだ」という態度で接します。

妻がどんなに説明しようとしても、 言葉を変え、昔のことや関係のないことを引き合いに出して「あの時お前は間違った。

だから今も間違えてるに違いない」と 言い始めます。

言われたことは事実ですから、何となく「そうか、私がまた私が間違ったのか」と思ってしまいます。

夫はこうやって いつも話をすりかえ、違う方向に持って行っては妻を責め立てるのです。

また、これが何度も続くと「どう言っても夫はわかっては くれず、長時間人格否定や口汚く罵られ、責め立てられる」と諦めて、最初から謝る癖がついてしまいます。



◯ハラスメントの方法

モラハラは暴力を伴いません。

ではどうやって妻を追いつめるのでしょう。

これがモラハラの一番の特徴です。

夫がとる行動は「俺はお前に対して非常な怒りを感じているんだぞ」という 態度です。

これがモラハラの一番やっかいなことです。

何しろ「態度」は証拠にならないからです。

口をきかない、無視をする(※1)、食事を一緒にとらない、家事の不出来を次々に指摘する、わざと大きな音を たててドアを閉めたり、大きなため息をついたりする。

いったん始まると、数週間から数ヶ月続けることもあります。

決まり文句は「俺を怒らせるお前が悪い」です。そういわれてしまえば、 妻は夫を怒らせてしまったという罪悪感を持つことを計算して言っているのです。

妻は家庭の平和のために何とか機嫌をとろうとしたり、話し合いを求めたりしますが 話しかけても無視をするので聞いてもらえません。

妻はそうならないように日頃から夫の顔色を 伺う癖がついてしまいます。

そうするように夫が「調教」するのです。

(※1)無視というのは相手を不安にさせる武器として使用され、
【無言】とは別のものです。

無視と無言は区別して考えましょう。

誰にでも「話したくない時」や「話したくないこと」はあるものです。



◯後出しじゃんけんする

夫は常に優位に立っていなければなりません。

だから時々妻を怒ってやらなければなりません。

それに使われるのがこの「後出しじゃんけん」です。

暑いからエアコンをつけようとしますね。

「つけていい?」と聞けば「聞かなければわからないのか!」と怒鳴ります。

黙ってつければ 「そんなに暑くないのになぜつけるのか!」と怒鳴ります。

つけなければ「こんなに暑いのになぜ エアコンをつけようとしないのか!」と怒鳴りつけます。

エアコンのスイッチひとつで妻は悶々と 悩むことになります。それが毎日続くのです。



◯責任転嫁

夫は常に正しくなければなりません。

間違いなんかあってはならないのです。

ですから選択を 迫られることがあれば常に妻に聞きます。

「お前はどう思う?」
妻は即答を求められます。

次第に夫の表情が険しくなるので 考えている時間なんかありません。

しかも日頃から夫の思考を読みとるよう訓練されていますから、夫が望む答えはわかっているのです。

もし違う答えをすれば、夫は即座に不機嫌になり、 モラハラが始まります。

ですから答えはひとつしかありません。

「こうしたい」と妻が言えば夫は「いいんだな、お前が 選んだんだからな」と念を押します。

選んだ結果がよければ問題ありませんが、不都合な場合は「お前が選んだのになんだ、これは!」と、責任を押し付けます。

悪いのは全部妻なのです。



◯人を利用する

妻の時間、お金、人脈など、利用できるものは徹底的に利用します。

すでに支配されている妻はそれを差し出せば夫の機嫌がよくなると 学習しているので、何でも言うことを聞いてしまいます。

しかし妻の頼みは聞いてもらえません。

自分は決して人から利用されたりはしないのです。



◯共感性がない

彼らは非常に共感性が乏しく、妻は人間として見られていません。

自分の都合のいいように使える道具としか思っていません。

妻も病気になったり、疲れたり、時間は同じように24時間しかなかったり、同時に2カ所に存在できない ことが、彼らには理解できません。

できなければ「俺の言うことを聞かなかった」になります。



◯子どもを利用する

妻を思うように支配できない場合は、代わりに子どもをいじめたりします。

また、子どもたちの前で 妻を怒鳴りつけたり、悪口を吹き込んだりして子どもを洗脳します。



◯大切なものを捨てたり、ペットをいじめたりする

妻が大事にしているものを適当な理由をつけて捨てたり、かわいがっているペットをいじめたりします。

自分のしたことで妻が悲しそうな顔をすると、自分がとても大きな力を持っているように感じるからです。

夫は人が辛そうにしているのを見るのが大好きなのです。



◯予定をクルクル変える

家族は自分の予定をたてることができません。

たててもその日急に「○○へ行く」と言い出したら 従わなければならないからです。

妻に予定があっても全く気にとめません。

妻が自分の言うことを優先 させるのは当たり前だからです。

妻に行かせたくないためにわざと急に言い出すこともあります。



◯マイルールがある

自分が勝手に決めたルールによって家族が動くよう強制します。

また彼だけが「それは常識」と思っているルールがあります。

例えば「太陽は西から昇るのだ」と家族には言います。

「そんなバカな」と言うと、ハラスメントが始まるので黙って聞き入れ なければなりません。

ところが外では「太陽は東から昇るに決まっているじゃないか」と言ったりします。

どうやら彼の 頭の中では、外向けと内向けの答えが用意されているようです。



◯不安にさせる

わざと全部まで言わず「ま、言ってもお前にはわからないだろうな」などと言ってぼかしたり、 別の部屋から肝心の部分だけ聞き取れないようにつぶやいたりします。

妻は「私がまた悪いことをしたのだろうか」 「また無視が始まるのだろうか」と不安になります。



◯嫉妬深い

妻が外で働くことを嫌います。

それは妻が外で何をしているかわからないので、いつも自分の 監視下においておきたいのです。

家にいても何度も電話をかけてきたり、外出先に頻繁にメールを 送ってきたりします。

その内容も「怒っている」という文面や、それを臭わすものだったりします。

妻は夫の機嫌を損ねるのが 怖くて外出することができなくなってしまいます。



◯強欲である

逆にむしろ進んで妻を働かせるヒモラ型と言われるタイプもいます。

妻を働かせますが、自分は家事は一切しません。

ただしゴミ捨てや庭掃除など外から 見えるような家事はします。

自分が稼いだ金は生活費に出さず、それどころか妻の稼ぎをあてにして、自分の遊びや道楽に使います。

高価な車を次々と 乗り換えたり、趣味のおもちゃを集めたり、家庭を顧みることがありません。

欲しい物があれば不機嫌になり当たり散らしたりさえすれば、モラハラが怖い妻は 折れて買ってくれるのをちゃんとわかっているのです。



◯外との接続を絶つ

友達の悪口を言って仲を絶つようにし向けたり、妻が実家へ行くと不機嫌そうにして、親の悪口を言ったりします。

ただし妻と実家の親の仲が悪ければ実家を味方につけようとします。

モラ夫にとって、人とは利用できるかできないか が重要なのです。



◯言葉で冒とくする

モラ夫は相手が「絶対人には言われたくないこと」を探り出す天才です。

そしてその部分を徹底的に言葉で攻撃します。

「お前のようなだらしない女はいない」
「馬鹿か」
「どんな育ち方をしたんだ」
「それでも母親か」
などと相手の弱いと思う部分を集中的に攻撃します。

言い返せばモラハラが始まるので黙って聞くしか ありません。

その攻撃は妻が「すべて私が悪かった」というまで何時間でも続きます。

自分が傷つきたくなかったら何も言わずに黙って従うことを妻はここで学習します。

「私が悪かった」と言いさえすれば、事は平和に終わるのですから。



◯自己紹介する

上にある「言葉で冒とくする」というのは、モラ夫自身のことかと思える場合が数多くあります。

「本当におまえというヤツは使えないな~」
「頭が悪いんじゃないか?」
「すぐウソをついて責任 逃れするよな」
などと言われ、
「それって全部自分のことじゃないか」と思うことがあります。

モラ夫はこうやって他人を鏡のように使って自分のイヤな部分を現します。

これを「モラ夫の自己紹介」(投影性同一視)と言います。



◯妻が不機嫌なのは嫌い

自分が不機嫌なのは妻がそうさせるからだと言いながら、妻が不機嫌なのは許しません。

妻たる者は、いつも 明るくほがらかで、家族に接しなければならないと思っているからです。

妻の横っ面をはり倒しながら「なぜ怒るんだ」 と言っているようなものです。

夫の頭の中ではこれが矛盾せずに存在しています。

妻は(心を)殴られても蹴られても、 ニコニコと笑って立ち上がらなければなりません。

モラ夫の思考回路は普通ではないのです。



◯疑問形で責める

モラ夫との会話は、いつも疑問形で責めてきます。

「お前はこんなこともわからないのか?」
「言わなければわからないのか?」
「俺が悪いというのか?」
疑問形ですから妻は一生懸命答えを出して相手に伝えようとしますが、答えは自分の非を認めるものしかありません。

「俺が悪いというのか?」という問いには「そんなことはない」という答えしかありません。

「では悪いのはお前だな」と いう会話の持っていき方をします。

もし「悪いのはあなたでしょう」と言えば、
怒号が繰り出され、
1週間の無視が2週間になり、
下手をすると身体的暴力になりますので、
「悪いのはすべて私です」としか言えない会話を強いられます。



◯いつも怒っているわけではない

こんなことが毎日続いているわけではありません。

何週間も口をきかないというのは日数にすれば それほどのことではありません。

普段は外と同じように冗談を言い、子どもと一緒にゲームに興じる普通の父親 です。

プレゼントを買ってきたり、いたわりの言葉をかけてくることも珍しくありません。

だから妻は夫が実はいい人で、自分が悪かったから怒らせてしまったのではないかと思うのです。

「なぜ離婚しないの?」 と聞かれると「悪い人ではないのよ」と言ってしまいます。

平和を保つために妻は365日顔色を伺い、好物を用意し、気にいるように掃除洗濯をし 言葉尻をとられないように話す内容をあらかじめ決めておきます。

夫は年に数回怒鳴ったり、口をきかなかったり すればいいだけです。

それはドメスティックバイオレンスに言われる、ハネムーン期→緊張期→爆発期のサイクルと とてもよく似ています。

しかしすべてのモラ家がそうだとは限りませんし、感情の波もそれとわかるほど大きく見えないこともあります。

爆発が起こった後は、嵐のあとの海のように穏やかになります。

「悪かった」などど謝ることもあります。

治ったと思うと数週間から数ヶ月後、また緊張期がやってきます。

モラハラは、いつ怒り出すかと緊張がピーンと張り詰めたような「蓄積期」のあと「爆発期」のあと、
支配の為に優しくする「ハネムーン期」となります。

モラハラの最大の特徴は、上記にあるような方法で相手を支配し、
自分の思いどおりに操ることです。

サイレントモラという、怒鳴ることも 大きな音を立てることもなく、
静かに静かに相手を取り込み、
自由自在にコントロールするタイプもいます。

妻はその 状況を素早く読みとり、相手が何を望んでいるかを察知し、
速やかに望み通りのことを実行するようになります。


***
樋口一葉(1872~1869)が明治27年12月「文藝倶楽部」に掲載した小説「十三夜」には、
モラハラ、精神的暴力が描かれています。

「十三夜のあらすじ」

おせきは望まれて官吏の嫁になったが、
子どもが生まれたとたんに冷たくなった夫の仕打ちに耐えかね、ある十三夜、離縁を決意し幼子を置いて婚家先を出てきた。

事を分けたる実家の父は、おせきをさとし、おせきもまた置いてきた子どもの行く末を案じて婚家へ帰ることを決める。

***



コメント (2)
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