喫茶 輪

コーヒーカップの耳

『浪花女的読書案内』を読む④~⑦

2019-04-17 11:48:40 | 『浪花女的読書案内』
『浪花女的読書案内』を読む④~⑦です。



『浪花女的読書案内』を読む④
「田辺聖子が見た夢(上・下)」
田辺さんに関しては書くことが多すぎて、もうここには書きません。
と言いながら、ちょっとだけ我田引水します。
まず拙詩集『コーヒーカップの耳』の帯文が田辺さんなのです。
←クリック。

これ実は、わたしがワープロで手作りした冊子『コーヒーカップの耳』をお送りしたのへのお葉書にあった文章なのです。
しかも二通のハガキの文章をつないだのはわたしです。
だから文章としてあまり良くないのです。もちろんご本人のお許しはいただいています。「お役に立つのなら」と。
田辺さんが、無名の者の詩集に帯文を寄せるなど異例のことでしょう。
それも宮崎修二朗先生のお引き合わせがあってのこと。ありがたいことでした。
ということで、田辺さんと宮崎翁は昵懇の間柄、『触媒のうた』でも詳しく取り上げさせていただきました。

石野さんの素晴らしい個性的な紹介文は『浪花女的読書案内』をお読みいただきたく思います。ただ、最後だけここに挙げておきます。

《私たち女性が見たい夢を、たっぷりと書き残してくれた田辺聖子。その中にひそかに反逆の芽をひそませていたことを、どれだけの人が気づいているだろうか。ここにはたくらみ上手の浪花女がいる、と思ったのだった。》


『浪花女的読書案内』を読む⑤
「鴨居羊子の前衛」

鴨居羊子といえば、異才の洋画家鴨居玲の姉。
鴨居玲といえば拙著『触媒のうた』にも書いたが宮崎翁や足立巻一先生と縁のある人。
足立先生の『関西のおんな』には鴨居羊子の巻がある。
ということで、わたしにとっても鴨居は身近に感じる姉弟だ。

石野さんはこう書く。
《(略)鴨居羊子の底流にもどこか生々流転の諦観が漂う。没後に初めて鴨居羊子を知ったという作家の角田光代が書いている。「既成のもの、無意識なもの、退屈なものに彼女はつねに刃を向ける。最初からなんでもあるわけではなくて、なんにもないところから、だれかが身をもって切り拓いていかなければ何もうまれないのだ、ということを私はこの作者に教えられたのである。つまり、闘う、ということを」(『鴨居羊子の世界』所収)
 「鴨居羊子の前衛」、面目躍如というところではないだろうか。》



『浪花女的読書案内』を読む⑥
「忘れられた巨人 藤沢桓夫」

藤沢についてわたしは、その友人、秋田実のことを短歌誌「六甲」に書いたときに触れました。
そして秋田実のご息女から頂いたお葉書にはこうあります。

《藤沢桓夫さんにあこがれていた父は小説を書きたかったようです。》

ということで、藤沢もわたしには身近に感じる作家です。

例によって、石野さんの締めの文章。

《(略)それは大阪の青春物語を書き残すことでもあった。実際のところ、藤沢ほど適任者は他にいなかっただろう。(略)この恵まれた環境こそ「宇野浩二とも川端康成とも織田作之助とも違う藤沢さんだけの資質」と「大阪学」の大谷晃一はいう。》

ここに大谷さんが登場した!大谷さんは生前、足立巻一先生の「夕暮れ忌」に毎回出席しておられて、ご著書に署名していただいたこともある。

《(略)いや、時代を下っていまこそ、その味は必要だと高橋さんは強調する。「ともすればやぼったい一面が強調されがちな大阪を、さわやかで都会の気品に満ちたモダン大阪として描き出した。経済の地盤沈下や文化の低迷が語られる今日だからこそ、取り戻すべき大阪のありようがそこにあるのではないか」だからこそ、忘れられた巨人にしてはならない、と高橋さんは奮闘している。》

わたしの引用文ではよく解らないと思います。どうか本誌をお読みいただきたいと思います。


『浪花女的読書案内』を読む⑦
「含羞の帝塚山派」

これはうれしい項目です。
なんといっても杉山平一先生のお名前が出てくる。
しかも、《「含羞の帝塚山派」の名付け親は元立命館大学教授で評論家の木津川計さんだ。》とある。
木津川さんのこのテーマの講演をお聞きしたことがある。
笑いを呼びながらの真面目なお話だった。
その講演には杉山平一先生のご息女も行っておられた。「含羞」という言葉は杉山先生にはピッタリだった。

そうだ、木津川さんにはこんなのがあった。https://www.youtube.com/watch?v=4HTaQAqn73Q&t=7s
ほかに木津川さんは、『ライオンの顔』と『きよのパーティー』の二冊の口頭詩集を取り上げてくださったラジオ放送もありました。

なんで石野さんが書かれるものはわたしに縁があるものばかりなのだろう。いや、わたしが我田引水しているだけなのかな?
まあいいや。

庄野潤三さんが出てくる。またわたしに縁のある人だ。
もう昔、わたしのつたない詩を足立先生が評して下さったことがある。「庄野潤三さんのある短篇小説に趣が似ている」と。
わたしはその後、その小説が何なのかを探しているのだが、未だに見つかってはいない。

あ、そうだ。潤三さんの弟の至さんが「足立さんの古い革鞄」で「織田作之助賞」を受けられた時、その受賞パーティーに招いていただいたことがあります。主賓は藤本義一さんだった。いい思い出です。

帝塚山大学、杉山平一先生の催しで一度行きましたが、落ち着いた重厚感のある学舎でした。

このあともいっぱい書きたい人はあるのだが、このあたりにしておきます。
ぜひ『浪花女的読書案内』をお求めになって読んでみてください。文学好きの人なら楽しいこと間違いないです。

これまで書いてきた以外の作家の名前を上げておきます。
織田作之助、与謝野晶子、石上露子、今東光、阪田寛夫、川端康成、直木三十五、開高健、河野多恵子、宇野浩二、藤本義一、須賀敦子、野坂昭如、岡部伊都子、井上靖、林芙美子、梶井基次郎、富士正晴、小松左京、陳舜臣。
この中にはわたしも取り上げておきたい人が何人かあります。陳さんなんかはご一緒に写真も写してますから。
でもまあ、今回はこれぐらいで。

(おわり)







コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『浪花女的読書案内』を読む③

2019-04-16 19:46:35 | 『浪花女的読書案内』
『浪花女的読書案内』を読む③です。
「谷崎潤一郎の偏愛(上)」←二段階クリックで。

谷崎はわたしも若い時からよく読んでいる。遠い昔だが「刺青」には衝撃を受けた覚えがある。
そうですよね。谷崎の小説には、がめつい女、「大阪のおばちゃん」なんて登場しないですよね。
それは小説の中だけではなく、松子(夫人)さんにも言えることで。
石野さんは松子さんの回想録『倚松庵の夢』から引いて谷崎の恋文を紹介しておられる。
《はじめてお目にかかりました日から一生御寮人様にお仕え申すことができましたら、たとえそのために身を亡ぼしてもそれが私には無上の幸福でございます」「私には崇拝する高貴の女性がなければ思うように創作できないのでございます。しかし、誤解遊ばしては困ります。私に取りましては芸術のための御寮人様でなく、御寮人様のための芸術でございます」》
すごいですね。

(下)では「細雪」に登場する女性を中心にいろんなタイプの女性を挙げる。しかし、「おばちゃん」は登場しない。
そして石野さんはこう締める。
《(略)そんな谷崎は「大阪の女は文楽の人形の首ぐらいの古さがある」と書いた(『私の見た大阪及び大阪人』)。とすれば浪花女こそ、伝統的女性美の純粋な継承者であると見えたのだろうか。うれしいような、こそばゆいような気がする。》
この石野さんの感想、ちょっとおかしみがあるなあ。石野さんもまた魅力的な浪花の女なのかもしれない。

この際ちょっと我田引水。
拙著『触媒のうた』にも谷崎は何度も登場する。それは、谷崎と富田砕花師が親しかったということで。
(つづく)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『浪花女的読書案内』を読む②

2019-04-16 13:59:29 | 『浪花女的読書案内』
『浪花女的読書案内』を読む②です。


まず最初に登場は山崎豊子。
←二段階クリックで。
こう始まります。
《どうも大阪の女は評判がよろしくない。いわく、がさつだ、がめつい、厚かましい。いわゆる「大阪のおばちゃん」のイメージ一色。しかし、大阪にも美人はいるし、おっとりした人もいる。もっと大阪の女性を豊かに語る言葉はないか、と文学書などひもといてみると、そこには思いがけず豊潤な浪花女の姿が登場する。まずは山崎豊子の「女の勲章」を開いてみよう。》

残念ながらわたし「女の勲章」は未読です。最初に読んだ山崎豊子の小説は「白い巨塔」でした。
それに関連して、余談ですが。
「白い巨塔」の舞台、大阪大学医学部に丁度その時おられた心臓外科医を取材したことがあります。小説では仮名でしたが実名で語って下さいました。取材の後で、「そのことは絶対に書かないでくださいよ」と言われましたが。

「女の勲章」の主人公、デザイナーの上田安子ですが、モデルにされて心痛めたとのこと。しかし上田はこう書いていると。
「私にも生涯忘れられないほどいやなこともありましたが、しかし、遠い昔のことで忘却のかなたに消え去りました。そして、晴れ晴れとした現在に感謝しています」
そして石野さんはこうまとめておられる。
《この堂々たる前向き人生。(略)上田は平成8年に90歳で亡くなるまで、関西ファッション界の草分けとして長く活躍した。これはまさに、船場生まれの自負を新校舎のステンドグラスに紋章をかたどって「女の勲章」にした主人公そのままではないか。一方の山崎豊子も盗作問題などのトラブルを乗り越え、話題作を次々発表して、ブルドーザーの如く自分の道を突き進んだ。大阪生まれの二人の女性の誇り高き負けじ魂。まずはこれを言挙げしておこう。》

これは一度「女の勲章」を読まなくてはなりません。
(つづく)


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『浪花女的読書案内』を読む①

2019-04-14 08:55:06 | 『浪花女的読書案内』
『浪花女的読書案内』を読む①です。


まず「はじめに」から。

こんなことが書いてあります。
《(略)東京に転勤したときの体験。大阪の女性がいたく評判が悪いことに驚かされました。軽い調子ではあったものの、厚かましい、騒々しい、といわゆる「大阪のおばちゃん」イメージ一色。》
このことをテーマにした木津川さんの講演を聞いたことがありますが、木津川計さんも嘆いておられた。そして、石井さんも嘆いたのだ。
嘆くだけではなく、《「ちょっと古い時代の文学の中に浪花女の魅力を探る」という企画を立てたのはそんな経緯がありました。》
となったのですね。
そうだ、わたし石野さんの講演もお聞きしたことがあります。その中に木津川さんに関することも出てきたのでした。
https://blog.goo.ne.jp/coffeecup0816/e/b8147f8fe7ef287ab0f00623e70cbca0 もう4年前の夙川公民館での講演。

さて、どのように石野さんは話を展開されるのだろうか?
この後、読むのが楽しみです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『浪花女的読書案内』

2019-04-12 18:08:15 | 『浪花女的読書案内』
産経新聞大阪本社編集委員の石野伸子さんからお贈り頂きました。
拙著『触媒のうた』をお読みくださった記者さんです。
添えられたお手紙に、「宮崎氏のような本格的文学探索とはいきませんが、お読みいただけるとうれしいです。」とあります。



大きくてきれいな本です。A4版。https://www.sankei.jp/news/2019/02/126207
中もカラーで楽しげです。




これは巻頭の「はじめに」のページ。
←二段階クリック。
《「浪花女を読み直す」と題して産経新聞夕刊(大阪発行)で連載を始めたのは平成24年のことでした。》と始まります。

読むのが楽しみです。
石野記者と出会ったのはもうずいぶん昔。長男と長女の口頭詩集を出した時に取材にこられ、新聞見開きに大きな記事にしてくださったのが最初でした。まだお互いに若かった。
その後もなにかの時に「喫茶・輪」にやってきてくださった。
その後、東京へ行かれて偉くなられた。でも近々ご卒業だそうです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする