喫茶 輪

コーヒーカップの耳

『川柳実の会の仲間たち』

2024-08-15 09:33:33 | 文芸

柳人、島村美津子さんからお贈りいただきました。

川柳誌『川柳実の会の仲間たち』です。

イラスト担当の中村尚人さんを含め18人が参加。

編集発行人は島村さんだが、中村さんがお手伝いしておられるのかな?

島村さんは現在たしか93歳。

すこぶるお元気な女性だ。

添えられていた手紙もしっかりとした文字文章。

あやかりたいものです。

一人一句に、中村さんによる似顔イラストが添えられている(うち一人は顔絵がないが)。

その絵が素朴で好ましい。それによってこの本全体が明るく暖かい。

島村さんのページです。

ね、イラストがいいでしょ。

美津子さん、コーヒー片手に穏やかな姿。

「散りながら泣く散りながら笑う」

これは美津子さんが辿り着いた人生観でしょうか。

 

次は久保奈央さん。

イラスト、奈央さんによく似ている。かわいいですね。

「シャボン玉はじけて空になりにゆく」

一見、明るい句ですが、そればかりではない何かを秘めていそうな。

「空」は「くう」とも読めますね。

 

他の人のもみな楽しいので紹介したいのですが、お許しいただいてもうお一人だけ。

千足千さん。

わたしこの句が好きなんです。

「遠回り子供に帰る夕間暮れ」

言い忘れましたが、それぞれの句に美津子さんが評を書いておられます。

それが的確ですね。まあ、的確でなくてもいいのでしょうが。

川柳は評自体が評者の作品のような気もします。

その点では時実新子さんは優れた評者だったんですね。

 

島村さん、ありがとうございました。

楽しませてもらいます。

またお会い出来る日を楽しみに。

 

あ、忘れるところだった。

全員の似顔イラストです。

「川柳女子」です。どれが誰かを想像するのも楽しいです。

 

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「六甲」2024年8月号

2024-08-14 09:09:05 | 文芸

「六甲」2024年8月号です。

通巻1052号。

中心的な歌人お二人のページ。

牧野秀子さんは模範的な歌風、と門外漢のわたしは感じています。

  想定外と言ふ語の流行りし時ありき一生はすべて想定外にて

 

代表の田岡弘子さん。肩の力が抜けた作風、でしょうか?

  「あっちの水は苦いぞ、こっちの水は甘いぞ」螢に解る筈はないけれど

 

ついでにわたしのページを上げておきます。

「昭和文人の手蹟・23・津高和一」です。

 

拙著『完本・コーヒーカップの耳』です。まだ絶版になってません。本屋さんあるいはネットで購入できます。

 

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「半月すおうおおしま」第10+4号

2024-08-12 16:16:26 | 文芸

山口県周防大島の瀬戸みゆうさんからお贈りいただきました。

60頁の個人誌。

筆者の瀬戸さんからは以前にも小説集『周防大島の青い海』(編集工房ノア刊)をお贈りいただき読ませて頂きましたが、優れた小説集でした。

今号は4編が載ってます。

小説の評なんてわたしにはできませんので、感想。いや、雑感ということで。

「明け方の満月」
老女のわたしが、明け方の満月を見て、昔に犯していた過ちに気づいてしまう話。

明け方に満月は出ないと信じていたのだが、それが間違いだったと今ごろ気づき、8年ほど前に通っていた創作教室でのことを思い出す。
ある若者の作品「明け方の満月」はその彼の絶望的な体験の話。
彼、芳川透は身体不自由者であり、性格的にも難しいところのある青年。
その作品の最後に明け方の満月が描かれていた。

教室で感想を述べることになったのだが、「明け方に満月はありえません」と言ってしまった。それに対して作者の彼は何も反論しなかった。
そのことを今頃になって苦く思い出し「よっちゃん……ごめんね」と謝る。

だれにもありがちのこと。その苦い気もちに共感します。

「わたしの未来の家」
48年ぶりに故郷に帰り実家で暮らす。そこでの思い出。
これも昔の自分の嘘を苦く思い出す話。
なぜか年行くと、昔の苦い思い出が蘇ることが増えますねえ。なのでこれも共感します

「閉じ籠る」
同い年で、一番の友達であると思っていた夏代からある日、「一年ほど家に閉じ籠ろうと思います…」というメールがあって後、連絡が途絶える。
一年半たって連絡を取り戻そうとして、やっと電話がつながったが、彼女は死んだことになっていた。

ところがこれは嘘。そして、
「ありがとう。……たぶん、今晩の阪神巨人戦を見るのが、この世での最後かなと思うの(略)死ぬ方法なんか、訊かないでね」
夏代は二度、亡くなることになる。《だが、……。本当にご亭主と息子さんは現実に存在していたのだろうか。すべては、夏代の企てた、書きかけのミステリー作品の一部ではないだろうか。》
というのが結末。
そんな馬鹿なと思いながらも、ありそうな話に思えてしまう。これは作者の筆力によるものでしょう。小説を書く人に必要な力。

「トンネルの向こう」
最も長い作品。
現実と幻想が混じり合っているような不思議な作品。
一人で夜道を車で運転するのが怖くなるような。
たしかに、田舎の山中を夜遅く一人で運転したことがあるが、ルームミラーには漆黒があるだけなので気味悪い思いをしたことがある。

これも、さもありなんという話。小説を読む楽しさですね。

瀬戸みゆうさん、ありがとうございました。暑い中で少し涼しさを味わいました。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

伊丹三樹彦の寸言

2024-08-08 19:19:37 | 文芸

先日「書斎・輪」にご来訪の柳人中野文擴さんにお借りした本。

俳句集『夢見沙羅』(伊丹三樹彦著・現代俳句協会・昭和56年刊)です。

この中に付録のように伊丹さんが俳誌「青玄」の前記に書かれた俳句に関わる寸言が載っています。

185章。

これが面白いです。

わたしの詩作に役立つような言葉がいっぱい。

ということでコピーを取らせてもらって冊子にしました。

初めの方のいくつかを紹介。

「俳句の三味、それはアイロニーとユーモアとペーソスと」

「重く受けとめて軽く言い現わす」

「俳句の真価は深読みに堪え得てこそ」

「一人よがりはないか、仲間よがりはないか、俳人よがりはないか、と作品検討する」

「意味の掴めぬ俳句は文学ではなく、意味の拡がらぬ俳句は詩ではない」

「単純に現わしたい。複雑に味わいたい。俳句というものは」

 

この後も沢山あります。

座右と言うほどではないがしばらく身辺に置いておこう。

あくまでも「わたしにとってのもの」です。
ほかの詩人には役立たないかもしれません。

 

『完本・コーヒーカップの耳』アイロニーとユーモアとペーソスがいっぱい。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『川柳 あしの会』

2024-07-31 15:45:49 | 文芸
知らない人から川柳誌が届きました。手紙が添えられていて、内容にビックリ。
 
 
元、詩誌「火曜日」の同人で、「喫茶輪」に由良さんと来られたことがあると。
多分、菅原洸人展をやった時なのだろう。いろんな人が来られたからか、覚えていない。
S水Y子さん。
「火曜日」は終活の一環ですべて処分したので作品も読めない。
今は川柳をやっていると。
で、『現代川柳』10号の編集後記にわたしの名前が載っていて、それを見て思い出し送ってきてくださったのだ。
その川柳、紹介したいが、「無断転載を禁じます」と書いてあるので残念。
S水Y子さんの川柳は素直な作風。詩もそうだったのかなあ?
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『現代川柳』第10号

2024-07-27 19:39:37 | 文芸

『現代川柳』、今号10号はより充実していた。

ただし門外漢の言うことです。

句は後にして、読み物が楽しかった。

うちの店に来てくださったことのある、島村美津子さんが写真入りで紹介されている。

美津子さんは1930年生まれ。

しかしすこぶる元気な人。わたしの店に来られたころは、縄跳び連続100回出来たのだが、今はどうなんだろう。

「絶対戦争をしないこと 93歳まで生きた私の願い」とある。

 

「フォト川柳」の写真提供者は中野文擴さん。

「書斎・輪」によくご来訪下さり、わたしの人生の先輩として尊敬する人です。

 

「古川柳 つまみぐい」のページはわたしが好きなページ。楽しいです。

今号は「赤子」がお題でこんなのが載ってました。 「女房へ乳だ乳だと追つつける」

 

中川千都子さんの「ビ・キ・ニ」が楽しかった。上手いもんです。

そして茉莉亜まりさんの「天の網」も好奇心を誘って読ませます。

 

さて、句ですが、素人のわたしのアンテナに響いたもの。無数にある中から。

わたしのアンテナは「ドキッ」とするもの、あるいは「クスリ」とさせられたもの、そして「ホロリ」とさせられたものに反応します。

  【 月の抄 】

  人謗る元気昔はあったのに       上藤多織

  水の音たったひとこと泣いた日の    茉莉亜まり

  花手桶ようお参りと寺の藤花      伊藤玲峰

  地蔵様罪ほろぼしのよだれかけ     宇野弘子

  母のまえ弟とする猿芝居        小川敦子

  まわれ右 前に苦手な女(ひと)がいる 岸本きよの

  門燈が夜通しついていた隣       黒川利一

  思い出を忘れ回らぬ走馬灯       中野文擴

  左手に右手の悩みわかるまい      林かずき

  シルバーシート若きに譲り笑ひとつ   門前喜康

  交番がいつも不在の神戸駅       吉田利秋

  口癖の「めっちゃ」呑み込む修道女   小林康浩

  致命的誤植があって値が上がる     小林康浩

 

  【 星の抄 】

  薬並べて見ているだけで副作用     大海幸生

  自叙伝に無かった恋を入れておく    中野文擴

  ひそひそに大きな声で返す人      久保奈央

  寝室もおやつケースも夫婦別      太田牧子

  五本足袋だれかは居場所まちがえる   悴山真理子

  お言葉をかえして波をもろ被る     富田房成

  いろいろな神様を知る 病んでから   道家えい子

  その日まで最後は早い砂時計      こはらとしこ

  仏文出洒落た恋文書けもせず      石部漂吉

  内視鏡 辛い別れの痕がある      川本勝三

 帽子にマスクそれでも席を譲られる   林操

  おばさんと言われて腹立つおばあさん  細目十万屯

  いいないいな退屈出来る暇できた    鵜川幸子

 

いや面白い。川柳いいですねえ!

沢山の中からお気に入りを見つける楽しさ!

 

あ、そうだ。最後に言っておこう。

「編集後記」に小林康浩さんがこんなことを書いておられる。

「今号では詩人、今村欣史さんをご紹介したい。同氏は『完本 コーヒーカップの耳』なるロングセラーを持つ著名な方。」

この「著名な方」というところ、消し去りたい。

昔、福知渓谷に建立された田辺聖子さんの文学碑に「文豪田辺聖子先生は…」と彫られているのを見た田辺さんは、

「もう消しゴムでは消せない。どうしようもない。わたしは消え入りたい」と頭の中が真っ白になったという。

わたしも似た思いをしている。書かれたものは残ってしまう。

 

  

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

地蔵さんと羅漢さん

2024-07-08 09:46:57 | 文芸
今朝の神戸新聞、読者文芸欄、川柳の部。
久保奈央さんの句に注目。
《嫁入りも出戻りもいる地蔵堂》
これ、うちの隣の小墓円満地蔵尊のことなんですね。
選者が背景を知っていたら特選だったか?いや、それは読者もよくは知らないからムリか。
ま、これだけでも想像力を喚起するものがあるので、入選なのでしょう。
町の地蔵さんは個々に数奇な運命を持つものが少なくないですからね。
また、隣に五百羅漢の句があったりして、お題の「並ぶ」を反映してるのかな?
因みに、地蔵も羅漢もわたしの新著『湯気の向こうから』に、モチーフにした話が載っています。
予約して下さっている人、スミマセン。もう少しお待ち下さいね。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『甘藍の芽』

2024-05-24 15:05:48 | 文芸
「書斎・輪」の昨日のお客様はフリーアナウンサーの久保さんでした。
好奇心と知識欲旺盛な彼女はわたしの話の何にでも食いついて来られます。
お陰でわたしも大いに刺激を受けることになります。
 
また昨日は一冊の川柳句集を言付かって来て下さいました。
 
 
城水めぐみさんの『甘藍の芽』(港の人発行・1600円+税)です。
 
巻頭の句。  
  詩人ではない右側がよく乾く
 
そして巻末の句。
  月へ行く たぶんあなたじゃないひとと
 
パラパラとページを繰って、そのほかの句も読ませてもらいましたが、わたしは頭が弾けそうになります。
理屈で解ろうとするとあきません。
これは抽象句とでもいうのでしょうか?
パッと開けたところの句を見て「感じる」ものなのでしょうね。
抽象画に似てるのかも。
この句集を、柳人の小林康浩さんが『現代川柳』第9号で論じておられます。
わたしはちょっとこのような真似はできません。
わたしにはじっくりと読み込む根気がないんでしょうね。
このような句はやっぱり、わたしには感じるしかないと思います。
その「感じる」を楽しませていただきます。城水さんありがとうございます。
 
『コーヒーカップの耳』 現代の井原西鶴の世界。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『どぎまぎ』

2024-05-11 10:46:16 | 文芸
先日、柳人の中野文擴さんを通して小林康浩さんから戴いた川柳句集『どぎまぎ』(2020年発行)。です。



巻末のプロフィールを見ると、1957年のお生まれ。
そして33歳の時に時実新子さんを知り川柳を始めると。
その後、2003年に 週刊朝日「川柳新子座」大賞など数々の受賞歴をお持ちだ。
新子さんに認められた実力者なのですね。
2006年に初句集『道化師』を出し、この『どぎまぎ』は第二句集とのこと。

大きさがいいですねえ。ソフトカバーの新書版。
ページ数も100ページに満たないのでポケットにも入る。
そこがねらいだったとあとがきにある。

265句が載っている。
この背後に「数多の没句が鬱然と樹海を形成している」とのこと。
ということで、数多の自句の中から厳選されたもの。

でもね、全て紹介するというわけにもいきませんので、わたしの独断でいくつか。
章分けがしてあって、「つべこべ」、「じたばた」、「どぎまぎ」、これだけで川柳ですね。


   押したドア軽過ぎて乱入となる
   
   誠実で百万人に嫌われる  

  落ちぶれた鬼なら追ってみたくなる

   セレモニーの鳩そそくさと帰りゆく

   村人が息を殺している帰郷

   野辺を行く花嫁の手に脈がない

   帰り道さてこんな道だったっけ

   たくさんの駅を飛ばして幸せか

  照れるなあ低額所得者だなんて

   花子ちゃんは花が嫌いでイジワルで

   一度だけ母を叱った日の小雨

   鳴るものはみな風鈴になりたがる

   釣り上げた魚が海を振り返る

   見ましたねポストの前の合掌を

   臆病って病気なのかと問う烏

   ともだちの生る木があったその昔

   華やいだ街へと帰る見舞客

   犬もまた遠い目をする川の風

   コンパスで描かれて月は怒り出す

  誰が知るみどりのおばさんの孤独

   忘れたいところに貼っている付箋

   訃報欄が好きだとどなたにも言えず

   極楽の絵もじゅうぶんに恐ろしい

  やわらかいナイフのような「お大事に」

   罵られた言葉を辞書で確かめる

   気付かない 切り離された一輌に

   深々とお辞儀をすれば草千里

   された事していただいた事も夢

  エンドロール 鐘が響いているばかり

いろんな角度からの視線が感じられて、多様な趣の句が楽しめます。
人生経験が豊富なんですね。人間を見る眼が深く鋭いです。
そうでないとこれだけの作品を創ることはできないでしょう。
そこを新子さんはしっかりと見ておられたということ。

小林さん、ありがとうございました。




   

   



   
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『かげひなた』

2024-05-10 17:49:42 | 文芸
ここ1ヶ月ほど慌ただしい日々が続いた。
そんな中、原稿も書いたり。
その間に届いた郵便物を整理していたら、こんなのがあった。



お贈り下さった尾崎さん、ごめんなさい。
フリー冊子『かげひなた』14.15。
今、14号を読み終えました。
6人がエッセイを書いておられます。
どれも小さな読み物ですが、心の中に清らかなものが流れる気がします。
こういうのを「一服の清涼剤」というのでしょうか。

追記
  今、15号も読み終えました。いずれも十数ページの小さな冊子。本にまつわる話が多く楽しかった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「冬のソナタ」

2024-05-10 09:17:58 | 文芸
『現代川柳』第9号ですが、川柳以外のエッセイなど、散文にも読み応えのあるのがあります。
これは中川千都子さんの「冬のソナタ」。
へえ ?と思いました。
ドラマチックですね。感動しました。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

特選二つ 2024・5・6

2024-05-06 09:20:30 | 文芸
今朝の神戸新聞文芸欄のわたしが印象に残った作品二つ。
借用お許しを。

一つは詩の部。
中嶋晃太郎君の「ザワザワする」。
もう14歳になったんですね。
この欄では人の成長を見せて頂くこともできるが、この中嶋君もその一人。
時里さんの評がまたいいですね。



もう一点は、川柳の部の特選作。「手」。


中野文擴さんです。
これも八上さんの評がいいです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『現代川柳』第9号(通巻92号)2024年春号

2024-04-26 10:32:32 | 文芸
『現代川柳』第9号をお贈りいただきました。


122ページたっぷりと楽しめる季刊誌です。
門外漢の心に留まったいくつかの句を紹介します。
素人ですので、アンテナの感度は不明です。


「月の抄」より。

  坂道の向こうに浮いた地平線       野上藪蔵
  キャベツだけ食べるキャベツの中の虫   石川街子
  口止めをしたが気になり寝付けない    岡部房子
  呼び捨てにしたい人いて春近し      小田切南
  積み上げた積木 最後に蹴っ飛ばす    小田切南
  あっという間の還暦なんて遠い過去    片山浩葉
  手足も口も動きみそ汁 掌を合わせ    岸本きよの
  地下鉄よ心の耳が聞こえない       久保奈央
  日にち薬の効いているのか効かぬのか   近藤ゆかり
  忘却の裏には老いが胡坐かく       中野文擴
  みんなって誰だ みんなは応えない    小林康浩
  お先にとひらりといってしまったよ    中山千都子


「星の抄」より。

  恥じらいが薄れた頃に分かる恥      小田寸思
  表札がない隣の人はだれなのか      鈴木厚子
  入選句知らせばうまい息子の返句     野口多可
  万歩計一老人を連れ歩く         仲あつし
  呆け防止母に小言を言わせます      山田えび助
  涙なんか捨てたんちゃうんか知らんけど  中野文擴
  人感のライトが点いた 生きている    門前喜康
  この街に慣れる解け込む喫茶店      林操
  息子から差し伸べられた武骨な手     宇田ミドリ
  考える老後どうするもう老後       小原おにぃ

あくまでも川柳には素人ですので句の良否は解りませんが。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『歩』第四歌集

2024-03-19 11:03:30 | 文芸
但馬に住む従姉からお贈りいただきました。


その従姉が指導するグループの歌集です。
一年間の結晶ともいえるもの。
50ページ余りあるこの冊子、その10人が役割分担して力を合わせ作成したとのこと。
作品を読むとほぼ尊年の様子。「尊年」とは昔の中国で使われていた高齢者を指す言葉。

ご苦労様でした。
中にたどたどしさも見えます(門外漢のわたしが言うことではないかもしれません)が、皆さん、誠実に歌に向かっておられます。
作品には純真さが漂っています。

わたしの印象に残った歌を順にあげて見ます。
素人のすることなので、作品の良否は責任持てませんが。
10人それぞれが24首ずつ載せておられます。
括弧内はわたしの寸感です。

足立幸子さん
  夕陽背にお尻振りふり歩く影その自らの影の可笑しさ        (自分を客観的に捉える視線)
  幼き日に祖母と廻した糸車 木屋の片隅が今も脳裏に
  石橋に江戸期の石工の刻みしか往時の文字の擦るるを撫づ      (この視線も貴重)

足立ゆう子さん
  朝ドラに生まれし赤子の名は「歩」その朝ドラに親しみの増す
  重症にてヘリに運ばれ行く兄を見守りおくれ朧月光         (朧月が効果的)
  天仰ぎ感謝と祈りをささやけば笑みくるる星を両手に包む
  断捨離にて札の「伊藤博文」の挟まるる本は抱きしめており     (ユーモア!)

今村明美さん
  池の面の浮き来る鯉の口髭をくすぐり揺るる桜はなびら       (情景が活き活きと)
  小春日の届くベンチに並びいて君と「四季の歌」をハミング
  ふわふわと風船かずらの揺るる道 術後の君の試歩に寄り添う    (心根がよく見えます)
  三歳が口から出まかせ読む絵本「はらぺこあおむし」お気に入りにて (ありますね、子どものこの仕草)
  ホスピスの友の部屋を訪れて肩寄せ窓に夕陽みている

うぐ森まる美さん
  芽を出せるチューリップの球根が春はまだかとひそひそ話      (童心が)
  新しい本の表紙を撫でてみるその指先は期待に満ちて        (本好きの心が)
  見上ぐれば満天の星 恐竜も同じ場所から見上げたりけむ
  
大垣ひとみさん
  自らは抗うこともままならず伐採されゆく木ぎの嘆きよ       (木は大切にしたいです。長い年月が二度と戻らない)
  赤黒く月が食われるその様は未知なる宇宙の営みならむ
  ざぁざぁと降り頻く雨音その中に調子はずれの音の紛れて       (鋭い感性)
  亡骸になりても煌めく玉虫を掲げる蟻の葬列が行く

中治やゑ子さん
  映画館に小声に囁くふたり連れ 恋をしていたころ思い出す
  見上ぐれば満天の星 君と居て今なら言える「ありがとうね」と   (心情があふれて)

中島寿美子さん
  注連飾りを綯いいる息子のその背はこの頃そっくり夫に似て来て   (温かさがあふれていて)
  「内緒ね」とささやき呉るる孫の声優しく甘く耳をくすぐる     (孫の声は息まで甘い)
  
羽淵千都子さん 
  諦めず本気でやれば叶うもの地道ながらも続けてゆかむ       (続けて下さい)
  初ひまごの男の子抱けば間をおきて次から次へ夢は広がる      (ひ孫ですか。いいなあ)

羽淵維子さん
  きらきらと水平線が光る朝自分を包みて呉るるこの陽よ
  「過ちを洗い流せ」とさざ波が波打ち際にささやきくるる
  「大丈夫、自分を信じて!」満天の星は輝き励ましくるる       (わたしも励まされます)
  黒豆が鞘から一つ転がるに「さみしくない?」孫のささやく     (子供の言葉は宝石ですね)
  盤上にパチリパチリと夫が打ち傍に碁石を並べる幼子
  折り紙を孫にせがまれ幾重にも折り跡のこし「くじら」完成
  出番待つ孫がその母見つけ出し笑顔がもどりてスタートを待つ
  待望の命の芽ばえを知らさるる「まだ内緒ね」とはずんだ声に
  間をあけず話す切り札「あれあれ」と脳は必死に「あれ」を探して  (同感)

古屋鶴江さん
  ポトポトと落ちる点滴ベッドより見上げ元気な日常おもう      (わたしにも経験があります)
  うら若きナースの清拭受けにつつ米寿のこの身は感謝あるのみ
  高齢の仲間が集まり耳元に話しているにてんでばらばら       (笑っちゃいます)
  畑にてトマト・胡瓜を捥ぎ取りて頬張る孫の夏休みかな       (孫はいいですね)

 
これで10人分ですが、この後「リレー短歌」というページがあります。
これが面白いです。

みなさん吹っ切れて書いておられます。
なんとも色っぽい。
華やぎが感じられます。
いいですね。若返って書いておられます。

楽しませてもらいました。ありがとうございます。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

廃人と死人?

2024-02-11 08:56:04 | 文芸
『現代俳句文學全集 日野草城集』にこんなことが書かれている。
「俳人といふ呼び方を僕はあまり好まない」
「俳人は廃人に通ずる…。歌人は佳人に…。」

え?その論法で行けば、詩人は死人に通じるではないか!
柳人は流人か?
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする