先日「フォト川柳」が素晴らしかった、と書きました。
その後、他のページもだいたい読ませていただきました。
前号には、
走り梅雨 初めて俺と言いし子に 林かずき
シンバルの音だけを待つ演奏会 根垣万里子
という素晴らしい川柳が載っていて大喜びしました。
さて今号は?
以下、気になったものを記します。門外漢の私見です。
「月の抄」より。
骸骨になって向日葵立っている こはらとしこ
氷カタン 君のグラスに居ない君 こはらとしこ
傘立てに紛れてずっと待っている 城水めぐみ
秋うらら縁を切りたい人ばかり 徳道かづみ
またひとつ路線バス消え風の道 石川街子
淋しいの言葉に替わる咳が出る 石川街子
何が欲しいか恥が欲しいかそらやるぞ 一橋悠実
本堂にずらり南無南無パイプ椅子 大海幸生
保護色や昼寝の母に蹴つまづく 小川敦子
石橋を叩き割る妻通せんぼ 片山浩葉
住所録つぎつぎ消してすきま風 岸本きよの
体温のこもった蔵書捨てられず 久保奈央
昭和百年わたし八十九歳に 上藤多織
石段をソロソロ降りて踏み外す 高橋兎さ子
病棟のやたら目に付く非常口 千足 千
そっと覗けば妻と私の眠る壺 中野文擴
同窓会休むと死んだことになる 吉田利秋
いにしえの男となってバス停に 小林康浩
そして集合場所には私しかいない 中川千都子
「星の抄」より。
花嫁のそれほどでもと目が笑う 金子喜代
乱歩読む背なに何かの居る気配 黒川佳津子
励ましてくれる自転車の錆びた声 難波靖子
オバケだぞ脅してくれた人消えた 渡辺かおる
太陽の影がどこにも見あたらぬ 涼閑
たそがれて窓辺の猫は詩人かな 丹原伸枝
思いよ届け切手の図柄選って貼る 太田牧子
集合の笛をやたらに吹きたがる 中原一揆
枯れた花切り落とさなきゃならぬ性 山口ちい子
この世での宿題終えた戻ろうか 平里彩
結論をあえて言わずに長話 のやまきのこ
ほっとする蟻も二割が怠け者 西村良子
詐欺予防常時留守電哀しい世 谷口ミサヲ
「新春の一句」より。
氏神の石段拝み初詣 小田寸思
黒豆をつまんで孫は箸覚え 大和ゆか
もう一句。「追悼・米澤久男」より。
職のない靴だが明日へ向けておく 米澤久男
米澤さんは、昨年10月22日に104歳で逝去とのこと。
今号も大いに楽しませていただきました。
『完本・コーヒーカップの耳』面白うてやがて哀しき喫茶店。
宮脇書店ダイエー西宮店(浜松原町)のノンフィクションのコーナーに有ります。