先日NHK「ラジオエッセイ」で木津川さんが紹介してくださった
『完本コーヒーカップの耳』だが、
朗読してくださった中に「悪友」というのがあった。
「悪友」
マスター ちょっと聞いて。この人 ほんまひどいんや。こないだ 休みの日ィ 一緒にパチンコ行ったんですわ。この人 負けてスッカラカンになって 奥さんに電話して 軍資金持って来させはりますねん。ぼく 久しぶりに奥さんに会うたから 挨拶しましてん。ほんで 奥さんが帰らはった後ですわ。この人 うちの嫁はん歳いったやろ て言わはるから いやそんなことない て言うたんです。あんまり変わってはらへん て。そやのに いや 遠慮せんでええ ほんまのこと言うたらええ て しつこいんですわ。ぼく しまいに面倒くさくなって 誰かてちょっとぐらい歳いきまっせ て言うたんです。そしたら 帰って 奥さんに言うてはるんですわ。Nさんがお前のこと 歳いった 言うてたぞ て。ムチャクチャでっせ。
これについての解釈だが、木津川さんの解説にちょっと補足しておきたい。
この話の主人公はHさんという人なのだが、自分の奥さんに「Nさんがお前のこと齢いった言うてた」と言ったのは、
実は自分が言いたいことである。奥さんに若くいてほしいということ。
だから「気をつけて若く保ちなさい」と言いたい。
ところが自分では言えない。
ということで、Nさんに代役を務めてもらったというわけである。
そうすると気をつけてくれるかと思って。
これ、あの中で説明してしまうと面白くないんですよね。
他にもこのような作品がいくつもありますので、「何度も読みたくなって、読むたびに新しい発見があります」との評を頂けるのでしょう。