自転車ひとり旅★

自転車大好きなTVディレクター日記。

調べもの。

2024年02月03日 19時56分40秒 | おしごと日記



ここ最近ずっと 調べものをしている



何のためかというと
旅のルートを考えるためだ



例えば ある道をコースに入れるかどうかを考えるとき
まずその道沿いで どんな産業(農業)が行われているのかを調べる
育てている作物によって ベストな時期が決まってくるのだ
例えば茶畑なら5月ごろが色も鮮やかで茶摘みの賑わいもある



出演者を楽しませたければ
意外と2月の山道という手もある




ツルツルゾーンの連続で
キャーキャー言いながら楽しんでいただける(笑)
もちろんテクニックのある出演者に限られるが…





今日のメインの調べものは「〇〇氏館跡」だった


聞いたことのない地方豪族の館跡
場所は急峻な山上
ということは 戦国時代以前に建てられた可能性がある
そしてここには その時代から人が暮らしてきたことになる





自治体のネット資料アーカイブで調べてみると
まさに鎌倉時代に中央から流れてきた家柄で
つい最近まで末裔が暮らしていたようだ
仕事は時代により変遷し
木地師であったり 人々の往来が激しかった頃は
宿屋のようなこともしていたらしい



これが旅の何に役に立つのか?



その土地の歴史を知っておくと
人々がどんな気持ちで暮らしてきたか
どんな苦労を味わってきたか
今どんな気分で暮らしているのか
を想像することができる
旅で出会った人に対して ある納得感を持って接することができる


さらには 番組でその土地についてのナレーションを書くときに
絶大な効果を発揮する

例えば土地の老人が
「ここはええところだよ」とつぶやくとする
何も情報が無ければ 見ている人も
「なるほど良いところですよね」
という感想で終わる

しかし 例えば
「この地域は 鎌倉時代には開かれており
 ◯◯さんの先祖は かつては木地師だった
 暮らしは厳しく 食べるものにも苦労した」
という情報を入れることができれば
「ここはええところだよ」
という老人の言葉にずっしり重みが増してくる




旅番組の準備は 半年以上前から始まり
たくさんの調べものの上で成り立っている
それがその土地の人への敬意だと思うし
出演者が得をするか 損をするかも
そのスタッフの積み上げにかかっていると思う








応援について。

2024年01月10日 21時03分17秒 | おしごと日記



昔 オリンピック代表候補だった選手に
「人生でいちばん辛かったことは何か」
と聞いた


その選手はこう答えた


「オリンピックに出てください!頑張ってください!
 と言われることが一番辛かった」









応援というのは難しい
その選手が優しい人であればあるほど
応援に応えたい気持ちに潰されてしまう
結果が出なかった時の恐怖にやられてしまう


そのオリンピック代表候補だった選手は
応援のプレッシャーで心を病み 引退した
さらに時を経た今でも「オリンピック出られなくて残念ね」と声をかけられ
ブルーな気分がたんこぶのようについて回っていると
笑いながら話してくれた







私は その話を聞いて以来
応援するなら 黙って寄付をすることにしている
もちろん匿名で
記名で寄付をすれば それはプレッシャーになりかねないし
SNSに「微力ながら寄付しました」的な書き込みも絶対にしない





その応援が 果たして相手のことを思ってのものか
それとも自己満足を得るためのものか
しっかり考えてから行動したいものだ








応援とは 他人の人生を蹂躙する可能性があるのだと
15年前のもっちゃんの結婚披露パーティーの引出物の酒を
開けて飲みながら考えている



2024年へ。

2023年12月31日 20時01分51秒 | おしごと日記



来シーズンはどうしようかと悩んでいる





まず 長距離への挑戦はもう少し続けてみたい
もっと楽に遠くへ行く方法がある気がするし
全国のブルベに出て 知らない道を走ってみたいから





青森650kmでフィリップさんにオススメされた
エアロバーを買った
ZIPP VUKA CLIP CARBON
これで長距離を走るとどうなるのか?
楽しみだ






さらに 長距離に良さそうなロングビブも見つけた


X-BIONICというメーカーで
素材が全てニットでできているのだが
穿いてすぐに これはRaphaが限定発売したパワーウィーブではないかと思った
ていうかX-BIONICにOEMしているに違いない
履き心地はバツグン
股関節のストレスはゼロ
暖かく 汗にも強そう
雨に弱そうなことを除けば 最強のパンツだと思う




値段は海外からの直接購入で35,000円(関税込み)ほど
日本国内での販売はないようだが
もし代理店が輸入したら6万円前後の値段になるやつだ
高いけど これで超ロングを走るのが楽しみになった







一番の悩みのタネは ロードレースだ
男子部は今年の沖縄が最終戦で
来年以降の活動は白紙だし
おっさん的にも いいかげんにマスターズで走った方が
身の丈にあってると思うのだ



そこで考えたのは JBCFで「ロードレース男子部」としてふたたび登録して
マスターズクラスで走ることだが
なんと2名以上じゃないと登録できないってばよ
男子部のメンバーは 普段は別チーム登録で
リアルに男子部にしか入ってないのは私だけなのだ(笑)


男子部の名前を残したかったけど
どのかのチームにお願いして登録するしかないのか…





とりあえず 今年もお疲れ様でした
まだまだ自分には 知らない世界が待っていると信じて
来年も走ろうと思います
今から 恒例となった大晦日ナイトライドに行ってきます★

グラベル男子部。

2023年12月16日 22時27分45秒 | おしごと日記
五郎さんが珍しく「写真撮りましょう」と誘ってくれた







こんな穏やかな顔をした自分を見るのは久しぶりだ
自分の写真を見て 珍しく「いいなあ」と思ったので
五郎さんに写真を送ってもらった





五郎さんとご一緒して8年
ずっと私は「上司」扱いされるのが苦手だった

同じ人間で
頑張っても強くなれない
年下のアホな自転車好き

ぐらいの扱いをして欲しかったのだが



男子部の最後のレースを終えて
「これからはダイスケさんと呼べそうです」
と言っていたが たぶん「脱上司」はできないだろう
だって「ダイスケって呼べそうです」ではなかったから(笑)







次の日は 考え事をする日の予定だったが
伊織が一緒に走りたいと言うので クルマで一緒に出かけた


湯谷温泉の定宿に泊まり 朝からグラベルに突入






伊織の服のセンス なんとかならんもんかいな






グラベルで ある実験をしながら
今後のアイデアを練る






今回は新しく届いたロケ用ホイールの初乗り

ZIPP303 FIRECREST

リム内幅25mmに一度乗ってしまうと
あの安定感から離れられない
フックレス&内幅25mmの中で一番安いモデルがこれだった



ちなみに海外だと国内定価(38万)の半額で(以下省略)



・・・・・・



伊織と走りながら
「マイナースポーツの素晴らしさを伝えるのって難しい」という話をした





例えば ロードレースの世界選手権で20位というと
知ってる人は目ん玉とび出るほどすごい成績だが
知らない人からすれば
「20位ってすごいの?」と思うだろう


それは「カバディというスポーツで世界20位になった」
と言われて「それってすごいの?」となるのと似ている



人々は4位以下には興味を持たない
だからロードレースの番組を作るのって
ものすごく難しい









14km走って 行き止まった








そして今回もパンクした(笑)



伊織が大好きなパナレーサーは
濡れた悪路を走る今日は絶対パンクするだろうと笑っていたら
私の履いてた 新品のGP5000Sが見事なサイドカットで先にやられてしまった


伊織が履いていたのは アジリストの「DURO」(デューロ)というモデルで
耐パンク性能が高いらしい
実際 太さ25Cであのグラベルを走って無事だったのはすごい

調べたら 28Cで重さ250g
ロケ用タイヤにしていたグラベルキングだと走りが重すぎたので
今度これを使ってみようかしら






シーラントまみれになりながらパンク修理
チューブを入れた








わずか30kmに4時間(笑)
贅沢なライドだった


走りながら 面白いアイデアを思いついた
撮影をイメージしていたら 1人でゲラゲラ笑ってしまった
これは番組になるかもしれない



帰路
出演者と打合せして帰宅
とたんに車が故障した
初めてレッカー移動を経験して感激ではあったが
車は今年中には直らないらしい(涙)





編集と現実逃避。

2023年12月09日 01時56分51秒 | おしごと日記



編集室にこもって かれこれ2ヶ月が経った



10月はずっと 1月放送に向けた海外ロケの回を
11月は3月放送に向けた回を
延々と編集している



私は 他のディレクターより担当回が多いので
完成して燃え尽きたと思ったら
もう次の日から別な回の編集が始まる


燃え尽きたら しばらく灰のままで居させて欲しいのだが…




こうなってくると
脳が勝手に 現実逃避を始める(笑)






私の現実逃避法の筆頭は
旅の計画である


とくに次の番組企画の旅を考えるのは
最高の現実逃避だ






廃屋
山道

ごろた石


日本の山奥ならどこにでもあるような
なんの変哲もない場所をネタにできたら
面白くならないかしら?


例えば
廃屋を見てテンション上がる廃屋マニアではなく
別な方法で廃屋を楽しめないものか?





私にとって 自転車は小さな冒険だ


見ていてワクワクするような
冒険の旅を作れないか?



チャリダーという番組のディレクターは
こんなことばかりを考えているのだ






もう一つの現実逃避は
買い物である


高校生にフレームと一緒にホイール(↑)もプレゼントしてしまったので
ただいま予備ホイール無し
ZIPP353が壊れたら自転車に乗れなくなってしまう
…というより ホイール痛めそうなロケで353を使いたくない(笑)


壊れても良いような予備ホイールを探していると
どうしても高性能のホイールに目移りして
ENVE(前後で50万)のサイトばかり見てしまう…


ああいかんいかん
そう言って 編集に戻り
またしばらくして 今度はCORIMAのサイトを見てしまう
人間とは業の深い生き物である(笑)







壊れて静か。

2023年12月02日 12時46分08秒 | おしごと日記




気合を入れて臨んだ番組が完成した



番組になるかわからなかったので
プライベートで取材を続け
過酷なヨーロッパロケのおかげで盛大に体調を崩し
今シーズンを棒に振った



完全に燃え尽きて 灰になった







そもそも今年は 沖縄の時点で灰だった


私は 取材相手の心をコピーしてしまう癖がある
震災で家族を失った人を取材していると 自分も家族を失った気持ちになって
毎晩 悪夢を見ることになる

今年 心を病んだ人を取材していたら
自分も鬱のようになってしまった
自分に何の価値があるのか さっぱり分からない状態で生きていた








やらなければならない事はやるが
心が動かないのに 無理やりブーストかけたので
今 完全にスカスカだ



心がぶっ壊れて
ずっと静かな音のない世界にいるようだ…







沖縄に出発する前日に
シューズのヒモが切れてしまい
買ったばかりのシューズで沖縄を走った
クリートの位置が適当で 2センチぐらい前になってしまっていたが
脚はなんともなかった
意外と適当で良いのかもしれない(笑)





五郎さんが BOAは修理パーツを送ってくれると教えてくれたので
申請したら 1週間ほどで届いた





文字のない説明書と交換パーツ





付属の極細トルクスで簡単に外れる





中のボビンケースに紐を通し直す





直った





靴が直ったけど
何にも気力がないので
走りに行こうとか 何かをしたいという気持ちにならない




どうしたもんかいな(笑)





滋賀→岐阜→富山→新潟→長野。

2023年11月27日 15時12分48秒 | おしごと日記



車で移動しては
そのエリアを走る
そしてまた移動


走る時には 仮のテーマを設定してスタート
その視線で見た時に そこで何が撮れるか?





私は観光地が苦手だ
そこには「暮らし」や「本音」が無いから
でも旅番組って本来は
楽しい観光地を巡るものなんだよなあ(笑)




女の子2人のバス旅行なら話が作れる行き先も
男ひとりの自転車旅だと 話にならなかったり
旅人が鶴瓶師匠なら 走る距離はひとつの村内で十分だが
他人やその土地に興味が薄く 話を引き出せない旅人だと
行き先を選ぶために 200km以上の距離が必要になってくる





シューズを新しくした
シマノのグラベルシューズ
RX8 海外限定モデル

前のモデルは4年ぐらい履いた
ロケで歩き回るために
靴底がツルツルになってしまった


円安で高くついたけど また仕事で数年使うと思うと
少しでもテンションが上がるものが良い





滋賀から岐阜を経て 富山にたどり着いたとき
そういえば木の芽峠の前川さんちが近いはずだと調べたら
今年の3月に永眠されたと書かれていた





福井の歴史旅で出会った前川さん
もっちゃんが「ビョウビョウビョウ!」と
狂言の犬の鳴き声を叫んでいたら
「誰だ変な声出してるのは」と怒られた人だ(笑)





平清盛の直径の子孫だと言い伝わる前川家
調べると 江戸時代の記録にすでにその旨が書かれていた
本当に平氏の子孫なのか大掛かりな調査が入った記録もあった
その報告によれば 家屋は江戸時代初期ごろのもので
前川姓になったいきさつなどを含めて 平家直系である可能性は「あり得る」ということだった

よく疑われるのだろう
前川さんは私に 平氏であることを証明しようと
ここには書けないようなものも見せてくれた
でも私にとって 清盛の末裔かどうかということよりも
ガンコだけど優しい前川さんが魅力的だった





私は3回 前川さんちを訪ねている
毎回 裏山で汲んできた清水でお茶を淹れてくれる
そして必ずお茶請けは おせんべいだ
3回中2回が「雪の宿」で
それ以来 私は「雪の宿」が忘れられない味になった





会いに行くたびに「心臓が悪くて体が動かん」とボヤいていた

「でもな 龍神さんのお告げによれば 99までは生かしてやるということでな」

そう言って胸の辺りをさするので 私は

「あと15年しかないじゃないですか。龍神さんにもうちょっと長くしてもらえるよう頼んどきますね」

とジョークを言うと「えへへへ」と
顔をくしゃくしゃにして笑ってくれた



だが 99に届く前に亡くなってしまった




もう一度会いたかったなあと思う
でも私は会いに行かなかった
ようやく今日がチャンスだったのに
もう会えない人になっていた


今からお供え物を持って 線香をあげに行ったところで
何もならない
生きているうちに 前川さんが素敵であることを
もっと伝えておきたかった







私は 人のことを少しでも多く褒めることにしている
少しでも優れていたら それを伝える
自分がいつ死ぬか分からないし
相手もいつ居なくなるか分からないから







誰も来ない畦道の交差点で
立山連峰からの風に吹かれながら
ずっと考え事をしていた


出演者のやりたいこと
視聴者の見たいこと
出会った人が見せたいもの
私が撮りたいこと
それが交わらないと 良い番組はできない




はあ…難しい(笑)
ディレクターは 悩める生き物である







食事をしながらも 黙々と考え事をしているので
店主が心配して声をかけてくれた(笑)








道中で入った温泉

露天風呂が丸見えすぎて
かえって気分がすがすがしい(笑)






自動車の走行距離 1300km
自転車の走行距離 420km



今回立ち寄った多くの店が
今週で冬休みに入ると言っていた
次に来られるのは 春以降
それまで元気で生きていこう













ビワイチと狂言鑑賞。

2023年11月25日 23時11分07秒 | おしごと日記
この日だけは死守せねばならなかった
それは 悪友・茂山宗彦氏(以下もっちゃん)の
ここ一番という大舞台の日だ


場所は滋賀・大津の伝統芸能会館
開演は14時
せっかく行くなら 走ったことのない道を見て
いろいろと考える時間にしたいと
ビワイチ200kmの途中で狂言を観ようと決めた


深夜に東京を出発
420kmのドライブで醒井宿に到着
さあ出発と思ったら





どこから嗅ぎつけたのか
伊織くんが待っていた(笑)


伊織機関車の先導で 初のビワイチへ出発★




ビワイチのコースは ほとんどが幹線道路
だが 対策はしっかり考えられていた





車道の真ん中に青線が引かれていて
自転車の存在を大きくサポートしてくれる

走る自動車も分かっていて
対向車がいるときは 後ろでしっかり待ってくれるし
追い抜くときは大幅に避けてくれる


ここは自転車が認められた道だと感じる






湖北の景色は素晴らしかった
数百年前の人たちも同じ景色を見ていたと感じられて
テンションアゲアゲだ



走りながら伊織に 普段私が見ているものを解説した
集落がその場所にできた年代と理由
育てている作物と土地の特徴
京都が近いことの文化的な影響

だが伊織は歴史がからっきしで(笑)
浅井長政を知らなかった
マニアックな話をしてゴメン(笑)



無補給で120km
大津に到着





バイクは会館裏の茂みに隠した






今日の公演のチケット
もっちゃん トランペットはね
ほっぺたを膨らませたら音が出ないよ(笑)



タイトルは「リサイタル」と軽めだが
演目は超重い「花子」という大曲だ

これを演じたら狂言師として一人前と言われるもので
もっちゃんは2009年に演じている
当時 駆け出しディレクターの私は
1年半前から 家族旅行についていくほど茂山家に入り浸って
「花子」を演じるまでのもっちゃんのドキュメンタリーを作り
NHKのハイビジョン特集で放送された


あれから14年
どんな「花子」を演じるかとドキドキしながら観たが
もっちゃんの「花子」は 素晴らしく進化していた


当時のもっちゃんは必死のパッチで
人間国宝で祖父の千作さんから
「ゆっくり面白うやれ」と言われていたが
まさにその「ゆっくり面白う」演じていた


それも もっちゃんにしかできない 独特の「間」で


ひとつの芸を45年続けるとは
こういうことかと ドキドキした





自転車に乗ってる時の あのへっぽこなもっちゃんは何処へやら(笑)


すごい人を悪友に持ったもんだ









喫茶店で食事をしていた伊織と合流し 湖東を北上する



大津を出ると すぐに日が暮れて
そして暗闇の道の段差で 伊織がパンクした





「伊織 チューブ持ってるか?」
「当たり前ですよ!」

と勢いよく取り出したが
バルブが短くて使えないチューブではないか(笑)



仕方なく私のチューボリートとCO2ボンベを差し出した





ビワイチ 199km
TSS 258


ありがとう伊織
楽しかったよ









次の日は 関ヶ原周辺の山道を走りながら
頭の体操をする日


私は番組を作るとき
半年以上前から考え始める

誰と?
どんなテーマで?
どんな場所を?

来年も番組が継続されるかは分からないけれど
今から考えておかないと間に合わない
だから今回の遠征で 実際に走りながら
いろいろと考えておきたかった





実際に走ると 関ヶ原という場所が
いかにすごい場所かが分かる
東西南北に延びる街道沿いに 大きな宿場がいくつも残っていて
かつては大勢の人がここを行き来した気配がする
今は小さな古戦場の町だが
かつては新宿駅のような ハブとなる場所だったのではないかと思えてくる
(写真は関ヶ原近くの山間の集落)





食事しながら 地元の話を聞く
その土地で醸成されてきた空気が だんだんと分かってくる





誰もいない山道で パンクした
小さな尖った石が刺さって
スローパンクしていた


「ハッ」とした



しまった…
昨日チューブをあげてしまったんだった…






チューブレスタイヤでも
パンク時はチューブを入れてしまうのが早いのたが…





慣れないので30分かかったが
チューブレスキューでなんとか直した


CO2ボンベも1本になっていたので
失敗したらヤバかった




旅は続くが
もうパンクできないぞ(笑)











河内賞。

2023年11月18日 00時37分58秒 | おしごと日記
大先輩からメールが届いた



20年ほど前 私が入社したころ
会社のトップに君臨するディレクターが2人いた
1人は視聴率70%を超えていた頃の紅白歌合戦のディレクターで
ビートたけしさんのことを「武ちゃん」と呼べるような人
もうひとりはドキュメンタリー系のあらゆる賞を受賞した人で
名前を河内さんと言った
10年ほど前 70歳を過ぎたころに引退され
それ以来消息を知らなかったが
その河内さんから 初めてメールをもらったのだ



内容は 五郎さんの高知の旅を見た感想だった


ーーーーーーーーーーーー
番組づくりから離れ、ひとりの視聴者として過ごしておりましたが、久々に出会えた素敵な番組でした。
ドキュメンタリーなのにファンタジックで、それいでいて作り物ではない。作り手の感性を押しつけず、それでいて、登場人物たちへの細やかな配慮が、番組からは自然に伝わって来ました。
シーンをを無理に作り込んだりしない意志、相手の状況に合わせた自然さ。ことばではなく、映像そのものに語らせたカット。恐らく、林さんが持っておられる「他者への尊敬と思いやり」が、素直に心に響いてきたように思われます。
(一部抜粋)
ーーーーーーーーーーーー


驚いた
うれしくて涙が出た



めったに褒められない私が
あらゆる番組を見てきた河内さんから褒められる日が来ようとは
思いもよらなかった




だが
嬉しさと同時に 私には分からないことがあった


「そんなに褒められるほどの作品だったのだろうか?」


・・・・・・・・・・・


学生のころ 私は世の中に「絶対」というものがあると信じていた
絶対的に美しいもの
絶対的に素敵な人
誰もが否定できないものが 世の中にはあると信じていた


だが 年を経て
そう信じる情熱とエネルギーは擦り減って
世の中に「絶対」なんて無いと思うようになった


自分の作る番組が「絶対良い」と思ったことは1度も無く
「自分は好きだが 他の人にとっては不要かもしれない」
ぐらいに思っていた


だから 河内さんが褒めてくれたことが
不思議で仕方なかった





ひとつだけ思うのは
私は番組を作るとき せいいっぱいの愛情を込めている
旅してくれた五郎さんへの愛
取材させてくれた鍛冶屋さんへの愛
もしそれが番組から感じてもらえたのなら
良い番組だったのかもしれない




私は 自分が何かの賞をもらうことはないと思っている
偉い人から褒められることも 最初で最後だろう
だからこのメールを「河内賞」と名づけることにした(笑)


自分で自分に言う寂しさはあるが
河内賞の受賞 おめでとう!
そう口に出すと 少しだけ自分に自信が持てる気がした

帰国トリプルパンチ。

2023年09月04日 23時44分50秒 | おしごと日記
2年半ぶりの海外は
ミッションありつつのプライベート旅でした






ロシア上空を通れないので
ヨーロッパへの行きはアラスカ上空から





旅はスタートから面白いこと続きで



レンタカーを借りると
「ウォッシャー液レベルがロー」のランプが付いている


おいおい レンタカー屋は何やってるんだよと思いながら
ウォッシャー液が出ないのも気持ち悪いので
スーパーでボトル1本購入
ドボドボと注いでみると





ぜんぶ漏れてきた(笑)






通りがかったおっちゃんが
「おい! 漏れてるぞ! 俺クルマ修理できるから見てやるよ」
と腕を突っ込んだ瞬間 大きな穴が空いてたらしく
大爆笑して納得していた




ついでに言うと このレンタカー
オイル交換表示も出ていたので オイルも購入
ただし交換どころか 1本(2リットル)まるまる足して
ようやく規定量に達したという状態
オイルってそんなに少なくても走れるもんなのか(笑)



なんか いろいろダメでも
生きていけるんだな世の中は
そう思えた旅のスタート(笑)






予約した安ホテルに着いたら なにやら真っ暗


電話したら「遅いから帰っちゃったよ」と(笑)




でもおっちゃんは親切な人で「入り口に電話番号貼っといたから そこに電話してくれ」という





番号が見えん(笑)








今でこそ笑い話だが
その場その場では「マジかよ…」の連続で
帰国したら 案の定ダウン
4日間ずっと寝ていた


9月中旬には 今年最大のチャレンジが待っているので
早く走れる体に戻したい気持ちが焦って
眠りながらずっと嫌な夢(ロケがうまくいかない的な)を見続けた



ようやく歩けるようになったら
泣きっ面にハチのお知らせが





7月に届くはずだった新車が
8月に延期…9月に延期…
ついに10月になるという



最初から「10月になる」と言ってくれれば買わなかったのに…
もうこのメーカーの納期は信用しないぞ
絶対11月…12月…と延期されていき
納車されるのは来年の春以降になるに違いない




あ〜
良いことがひとつもないという状況も
ままあることである
こんな時はどうするか?
人間国宝の息子・茂山宗彦(もっちゃん)が
たいへん良い言葉を教えてくれた

「歯磨いて屁こいて寝よ」


さあ 歯磨いて屁こいて寝ます(笑)

旅。

2023年08月02日 14時22分18秒 | おしごと日記



五郎さんと 旅に出ていた



現地入りして最初に食べた夕食で
見事に食中毒になり脱水症状まっしぐら





まったく走れず 半日フイにしてしまった



初日に厄払いできたと言いたいところだが
苦難はこれだけではなかった





ステキな宿にたどり着き
五郎さんが食堂に出かけて行ったら
さっきまで寝ていた布団から ハチがブ〜ンと出てきた


まじか…


スズメバチだ






部屋の中を楽しそうに飛び回るスズメバチ
こりゃあどうすりゃいいんだ?
手をこまねいて考え込む(笑)


宿の女将に声かければ 殺虫剤を持って駆けつけるだろうが
これから寝る部屋に殺虫剤をばら撒かれたくない


ハエタタキ?
ない

冷凍スプレー?
当然ない


布団を振り回して戦っても
外れたらハチを怒らせて大変なことになる



なんとなく武器になりそうなものは
これだけ





手指の消毒スプレー(笑)




殺気を消して ゆっくりとハチににじり寄り
恐る恐る「シュッ」と吹きかけると
心なしか飛行スピードが落ちた気がする



やがてハチが壁にとまった瞬間


一気に距離を詰め
高橋名人の16連射ばりに手指の消毒液を吹きかけた


様子見のため手を止めてはいけない
やり切るまで連打し続けることが大事だ



50プッシュぐらいぶっかけて
動きが明らかに緩慢になったところを
ティッシュの箱で気絶させた





やりきった感が半端じゃない(笑)









旅に出ると 自分と素直に向き合えるのはなぜだろうか






たぶん 自分を守る必要がなくなるからだと思う




職場にいたら キャリア相応の働きを見せたいと思うし
家庭にいたら 父としての尊厳を守ろうとする
恋人といたら 男らしくありたいと思う

多かれ少なかれ 普段の自分は「理想の自分」を演じている




旅に出たら
そんな自分をかなぐり捨てることができる






みんな 自分の尊厳を守ることに精いっぱいで
「俺はすごい」「私はえらい」
そんなことばかり言いたがる


自分も他人も そんなこと言わなくて済む場所に駆け出すことが
旅なのだと思った




7月の走行距離 1414kmでした










大ふべん者。

2023年07月05日 23時12分54秒 | おしごと日記
ロケハンに行っていた






今回のスタッフは私 ドライバー ADさんの3人


ADさんは 私が雨の中も
ひたすら自転車で走っていることに驚いていた

「車の中から見ているのと 自転車で走っているのでは
 情報量が違うんだよ」

と教えると 納得していた


空気の流れ

水しぶきの温度
わずかな勾配変化

車に乗っていたら感じられないものが
自転車の上には押し寄せてくる





地図に載っていないコースを走れないかと
1時間だけもらって 下見をしてきたが
地図に載ってる道すら走れなくなっていて
スゴスゴと戻ってきた(笑)


結局その1時間は無駄になり
最初からナビが示す道を行くのと同じ結果になった
ADさんが「この人は何をやってるのだろう」という顔をしていたので
こうしたチャレンジが 誰も撮ったことのない景色や
思いもよらない出会いや発見をもたらすのさと
力説しておいた


標高差1500mの道があって
そこを自転車で上ったら
頂上にいた車のおっちゃんに
「あんた偉いな!」と褒められた
そしてそこから会話が発展し いろんな情報を聞けた


自転車は私にとって 大いなる取材ツールでもある





にしても
25Cのロードタイヤで行くには
道が過酷すぎた(笑)






自分は 飢えた獣のようだと思う


リサーチして ロケハンもして
他のスタッフが「これで十分だ」と思っていても
もっと良くなるはずだ
もっと面白くなるはずだ
もっと
もっと
もっと…
と考え続けてしまう


そこには 合格ラインというのは存在しない
そして常に心は満たされていない


ディレクターは 不便な職業だなあと思う

リペア。

2023年05月30日 20時42分59秒 | おしごと日記
足掛け3年(たぶん)
ついに「金継ぎ」が完了した






欠けた陶器を 漆とご飯粒を練り合わせたボンドでくっつけて
金粉と漆で仕上げる
伝統のリペア方法





金粉だけだと地味だったので
ミャンマーのゴールデンロックで手に入れた金箔を貼って仕上げた





欠けた茶碗がよみがえった





気付かずガスコンロで熱してしまい
ヒビが入った茶碗も





復活



直した茶碗にご飯をついで
ここまでの長〜い道のりを思い出しつつ食べていたら
人間のリペアについて考えてしまった






よく「人間はこわれものだなあ」と思う
ちょっとしたことで傷ついて
閾値を超えると壊れてしまう
犯罪者となる人は 本人だけのせいにされがちだが
外的要因から壊れてしまった人である気がする


傷ついた人間をリペアするのは
容易ではない
傷を負った人を修復するには
自分の人生を捧げて一生を添い遂げるぐらいの覚悟がないと
治らない



自分は幼少期に負った傷のために
(それは壊れずに済んでいる程度の小さなものだが)
抗い難い苦悩を手放せずにいる
それが「頑張らないと自分に価値がない」という
今のエネルギーになってはいるが
自分はただ 明るく笑って生きていたかったなあと思う








「あなたは 頑張らなくても
 あなたであるだけで価値がある」

なんて言ってくれる人はいないものかと妄想するが(笑)
たぶんそんな優しいことを言ってもらったとしても
何もせずブラブラしている自分を 自分は受け容れられないだろう


きっと頑張ることに 目的や理由なんていらなくて
頑張ることで自分の存在価値を肌で感じていたいという
壊れかけた人間が自己修復を試みているのかもしれない







きょうも頑張るために 太平山を2本(笑)


1本目 8分15秒 309W
2本目 8分20秒 303W


激坂区間で 足をついて立ち止まっている
体の大きな女性チャリダーがいた
苦しそうな表情で 追い抜く私を見ていた
2本目に上ったら そこから数百メートル先で
同じように苦しそうに足をつき こちらを見ていた


彼女はなぜ そこまでしてこの坂を上るのだろうか?




きっと彼女にも
そこまでして頑張らねばならない理由があるのだ




10年ぶりの直太郎。

2023年04月30日 10時55分04秒 | おしごと日記
10年ぶりの友人に会ってきた







山梨県 塩山駅のすぐ近くに
Nelkというカフェがある
そこの主人 直太郎(本名は森山直樹という)は
チャリダー立ち上げのころの自転車仲間だ


あのころ 代田橋のサイクルカフェに集まって
毎晩のようにアホな話をして
無茶な冒険ライドに行った
それが番組になったのがチャリダーだった




↑一番右が直太郎。ちなみに一番左は蟹江くん…元気かな。



直太郎は速かった
自転車を始めていきなり ふじあざみラインを55分ぐらいで走ってしまった
1時間を切れずにいた私にとって
直太郎は目標だった


だが 夢だったパティシエの道を極めたいと
様々な店で修行を積むうちに
いつしか連絡が取れなくなった
直太郎のことだから 寝る以外のすべての時間を菓子作りに注ぎ込んでいたのだろう
縁があれば またいつか会える
そういうものさと言いながら そんな縁などめったに無いものだとも思っていた





あれから10年
知人の知らせで 直太郎が店を開いたと聞いた
しかも山梨で
ロケの行き帰りで寄り道しやすい場所ではないか(笑)






顔を見て 一瞬で私と分かってくれた
うれしくて 言葉が何も出てこなくて
私はただニコニコするしか出来なかった




そしてとりあえず
店にある商品をぜんぶ注文した(笑)






焼き菓子は補給食用に包んでもらい
自家製ソーセージのホットドッグを気持ち良いテラスでいただく



ソーセージなんて 久しぶりに食べた
安心して食べられるソーセージは貴重だし
思い出すだけでヨダレが出るほど美味しかった(笑)


ケチャップではなく 自家製レモンジャムが乗せられていて
その甘酸っぱさがソーセージにバッチリ合っていた
直太郎のセンスの良さがよく分かった


スコーンも焼き菓子も 口に入れた瞬間に
かなり良い素材を使っているのが分かった
素材の味をいかに引き出すかに情熱をかけている菓子だった




店にはお客がひっきりなしに来て
夫婦で忙しそうに立ち働いていた
午後には売り切れてしまうことも多いという


今日はロケハンの途中で寄ったのだと話したら
「ロングライド女子部ですか?」と聞いてきた
まったく連絡とってなかったのに 観てくれていたのだと
嬉しくて言葉がなかった



直太郎が
「番組がどんどん大きくなっていくのを見て
 すごいなあと感心してました。
 自分は置いて行かれてしまった感じがしていました」
というので こう答えた
「お金を儲けたいとか 番組を大きくしたいとは全く思っていなくて
 どうやって出演者にイタズラを仕掛けようかとばかり考えているよ」
直太郎は大笑いして
「林さん、10年前と全然変わってないなあ」


そう 自分はおそらく
一生ダメな人のままなのだと思う(笑)




直太郎 ありがとう
素敵な奥さんにも どうぞよろしく
次は娘と食べに行くよ



Nelk
Instagram
※店主が気まぐれのため 臨時休業が多めです
必ずインスタなどでチェックしてからお出かけください

鍋島。

2023年04月17日 19時35分21秒 | おしごと日記
地方ロケに行くと
いろんな宿に泊まる



私が選ぶのはもっぱら
渋い民宿やホテルばかりだ
キレイで普通のホテル(ルートインみたいな)は
当たり外れがないので面白くない


廃業ギリギリのような宿に泊まると
女将さんがとんでもなく面白かったり
安いのに温泉がとても良かったり
地元のご家庭で食べるような食事が楽しかったりする


もちろん
その逆であることも多い





今回の宿は
逆だった(笑)



壁はペラペラで音が筒抜け
しかも埃っぽくてクシャミが止まらない
仕方なく 風呂だけ入って
車で寝た


私はここに何しに来たんだっけか?
と思いながら
自転車を包む毛布にくるまって眠った



帰宅すると 大きな段ボールが届いていた





1年半前に行った 五郎さんとの佐賀の旅の時に注文した
「鍋島」だ


五郎さんの50万円のラーメンどんぶりは 半年後には届いていたが
私が頼んだのは五寸皿
ふだん作らない大きさなので 皿から特注で作るため
時間がかかりますよと言われていた
ついにタイムカプセルのような時を経て 届いたのだった





番組でも紹介したが
全てが手描きである





超精密な絵の中に フリーハンドで描いている手の動きがちら見える





現当主の光春さんが入れた「だみ」
見ていると 光春さんの作業風景が目に浮かぶ
繊細な作業を邪魔しないように
気が散ることを決してしないように
息をこらえて撮影したことを思い出す








正月やめでたい席で 家族で使って
娘が家を出るときに あげようと思う
代々受け継がれるのにふさわしい皿だと思う





ロケに行くたびに
こうして物が増えていく
自転車メーカーの取材にだけは
行かないようにしよう(笑)