自転車ひとり旅★

自転車大好きなTVディレクター日記。

悪い癖。

2025年01月06日 22時47分10秒 | 自転車
トレーニングの途中で 火事に遭遇した



黒煙は遠くからもよく見えた
垂直に登ったあと 天井にぶつかったように水平に流れ
青い空に混ざり合っていく






燃えていたのは 小さな家だった


築70年は経っているような古い木造の二階建てが
柱だけを残した無惨な姿になって
ところどころに炎が残っていた



何かを見ると 分析をしたくなるのが
私の悪い癖である
走りながらしばらく 火事に遭った家のことを考えていた








田んぼに囲まれた小さな集落で起こった
小さく古い家の火事



野次馬たち(大勢いた)の話し声を聞きかじった情報によると
住んでいたのは母子2人らしい
母は70代 娘は50代で
娘との連絡が取れず
消防団員2人が
「もうお亡くなりになっていると思うんすよ」と話していた


たまたま耳に入ってきた情報しかないが
分析を始めるには十分である




・この農村であの広さと古さの建物で暮らしているのは
 かなり貧しかったことが予想される
・敷地内に農機具がある気配がなかったため
 2人は農家ではなかった可能性がある
・母子2人とも まだ働ける年齢であるのに貧しい暮らしをしていたとすると
 どちらかに知的障害や身体障害のあった可能性がある
・連絡が取れない娘が火事から逃げられなかったことから
 何らかの障害を抱えていたのは娘だった可能性がある
・母親の姿は 現場では(私が通りすがった範囲では)見かけなかった
 救急車で運ばれたか もしくは出かけていて戻ってきていないのか
・現場に近づく間に聞こえたのは消防車のサイレンだけで
 救急車の音は聞こえず 現場近くで待機する救急車が1台いたのみ
 母親は出かけており まだ戻ってきていない可能性もある



家の塀はトタンでできており
どこが入り口なのか分からないほど隙間なく囲っていた
まるで他人を寄せ付けたくないと言っているように



ここまで考えて 私は想像した
知的障害を抱える娘と 生活保護で生計を立てている母が
近所との付き合いもほとんどなく 2人でひっそりと暮らしている
母親が正月明けの買い物に出かけたとき
娘がストーブの火を何かに移してしまった
娘は慌てる
「お母さんに怒られる」
知的障害のある娘にとって 母親は世界そのものだったに違いない
「お母さんが戻る前に 火を消さなきゃいけない」
だが火はみるみる広がり
娘は煙を吸い込み気を失った


・・・・・・・・・・・・


すみません
完全なる想像でしかありませんが
あの火事を見て 私はそんなことを考えていました





再び遠く離れた黒い煙を眺めて
あの煙は娘さんを空に運んでいたのだなあと
胸が痛かった



母親の心痛はいかばかりか…と思ったが
ここは一番分からないところだった
母親は介護に疲れていて 娘が亡くなったことにホッとしている…
という可能性もゼロではない
他人の家族関係ほど難しいものはない






物や状況を見て人物を想像することは
私の職業病のようなものだ
例えば その人の着ている服や持ち物から
どんな暮らしをして どんな趣味を持っているのか
何を目標に生きているのか
何を褒めたら喜んでくれるのかを考えておくと
インタビューが深く切り込める


だからつい 普段からこうしてあれこれ想像してしまう
まったく悪い癖である

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。