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☆=☆☆☆☆☆
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沙羅双樹

2013年04月03日 15時31分24秒 | 邦画2003年

 ◇沙羅双樹(2003年 日本 99分)

 staff 監督・脚本/河瀬直美 撮影/山崎裕 音楽/UA

 cast 福永幸平 兵頭祐香 河瀬直美 生瀬勝久 樋口可南子

 

 ◇1997年夏、神隠し

 好きな映画のひとつに『萌の朱雀』がある。

 ずいぶん前に観たんだけど、観たとき、なんか懐かしいな~と感じた。

 同時に「これ、好きだわ~」とも感じた。

 映画っていうのは、たぶん、そんな感想が出れば充分に成功なんだろう。

 出来がいいとか、不出来だったとか、技術がどうのとか、演技がどうたらとか、

 そんなことは、もしかしたら、二の次なのかもしれない。

 で、この映画の場合、透明感のある雰囲気がとても好かった。

 ぼくはめんどくさがり屋なので、映画を観る前に情報を得ることはまずない。

 監督や俳優に取材したものも見ないし読まないし、あらすじも聞かない。

 だから、なんとなく面白そうかどうか、というだけで判断する。

 沙羅双樹、ええ題名やんかとおもえば、もう観たくなる。

 けど、どうしても内容や批評とかいった情報は入ってくるもので、

 双子の片方が神隠しに遭う話らしいと知ったとき、

 あ、だから、沙羅双樹なのね、とおもってしまったし、

 奈良町でロケしてるんだし、なんとなく線香臭い死生観が語られて、

 もしかしたら転生輪廻の話とかに持っていくのかな、とちょっぴり期待してた。

 で、

 冒頭のややハイキー気味の長回しが始まったとき、

 双子の少年の声が聞こえてきた。

 おお、はやくも双樹かとおもってから、ずっと長回しの連続に眼を凝らした。

 身代わり猿、地蔵盆、町家、土間、坪庭、百万遍(数珠回し)と、どれも好きなアイテムだ。

 ふむふむとおもいつつ、UAの音楽とアドリブ(もしかしたら、書の陰光も?)を聞き、

 同時録音で入ってくる町の音と、あとで付け足されたのか、特有の効果音を聞き、

『萌の朱雀』では風を感じたけど、こっちでは空気と時間を感じるな~とかおもい、

 健康的な性のおとずれを感じさせる自転車ふたり乗りの長回しは、

 もしも、風のいたずらによってスカートが捲れあがるのでなく、演出だったとしたら、

 すげ~何度も撮り直したんだろうな~とかおもったり、

 なにより、

 河瀬直美の異様に上手な腹ぼてで立ち上がるところとか出産シーンとかに感心し、

 ラストは、どんなふうにするんだろう、ということだけに関心を向けてた。

 主題については、たぶん、映画が始まる前から自分なりに想像してた。

 墨職人の父親は、等身大の兄弟の絵を描き続ける息子に、淡々とこう語る。

「忘れていいことと、忘れたらあかんことと、ほれから忘れなあかんこと」

 それが、たぶん、主題なんだろう。

 家族にとって、周りの人々にとって、町にとっての思い出のことだろう。

 最後の長回しは見事だった。

 出産の場からカメラを引き、冒頭の失踪現場まで移動するんだけど、

 途中、双子の会話がすうっと囁かれる。

 あとは、昇天。

 やっぱり、自主製作映画のようでいて、玄人でしか撮れない映画だよね。

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