◇ハーフェズ ペルシャの詩(2007年 イラン、日本 98分)
原題 Hafez
staff 監督・脚本・撮影・編集・美術・衣装デザイン/アボルファズル・ジャリリ
プロデューサー/定井勇二、アボルファズル・ジャリリ
整音/マスード・ベーナム、ホセイン・アボルセデグ
録音/メールダド・ダドガリ コーディネーター/ショーレ・ゴルパリアン
音楽/ヤンチェン・ラモ、アボルファズル・ジャリリ
cast メヒディ・モラディ 麻生久美子 メヒディ・ネガーバン ハミード・ヘダヤティ
◇時が止まってしまったようなペルシャ
アボルファズル・ジャリリという監督は各地で賞をとりながらも、
同時にいろいろと物議をかもしたりしているらしいんだけど、
もしかしたらこの作品もまた、
イスラム教の敬虔な信者たちには容れられないところがあるんだろか?
無宗教のぼくにはよくわからないので、すなおに映像だけを観ることにした。
前もって知識として、ハーフェズってなんだって話なんだけど、
コーランの暗唱者にだけ与えられる称号らしい。
で、そのハーフェズに任されたのが、偉い宗教者の娘を演じる麻生久美子で、
彼女は母親がチベット人らしく、実家から帰ってきたばかりでコーランを知らない。
で、ハーフェズが教えてあげることになったんだけど、
由来、教師と生徒は心が通い始めると、異性の場合はときとして恋に発展するもので、
結局、そういうおもいがつのりはじめるんだけど、
宗教者は自分の弟子と娘を結婚させることになっちゃったもんだから、
麻生久美子を忘れられないハーフェズは自分の称号を奪われても添い遂げたいと願い、
鏡の請願の旅に出るんだよね。
7つの村を回ってそこの処女に鏡を拭いてもらって願いを叶えてあげると、
自分の願いもまた叶うってやつで、
これがなかなか艱難辛苦の旅なわけで、
これが結局はコーランの世界に通じてるんだね、たぶん。
映画が難解な世界に入り込んでいくのはこのあたりからで、
麻生久美子の内にある水風砂火を、彼はみずから肉体で体験していき、
やがてそうしたペルシャの自然を体感して、ある種の悟りを得たかに見えたとき、
麻生久美子が鏡の上にハーフェズからもらった煉瓦を置き、
さらには彼女のチャドルがふわりと被さり、リンゴがふたつ転がってくるっていう、
まるで『小さな恋のメロディ』みたいな世界にぼくらはいざなわれるわけなんだけど、
いやまあ、これが現代とはちょっとおもえない。
世界はまだまだいろんな世界があるんだな~と。
ただ、麻生久美子の出番はちょっと少なすぎる気がしないでもないけど、
ハーフェズの瞳をとおした映像詩だから、これでいいのかもしれないね。