◇私は確信する(Une intime conviction)
姉と双子の弟という子供を残して失踪した妻を殺したとして逮捕されたもののひとまず無罪になった大学教授ジャック・ヴィギエに対して検察が控訴したこのジャック・ヴィギエ事件は、フランスではかなり話題になったらしいんだけど、結局のところ、妻の死体も見つからず、愛人が関与しててなんらかの謎を抱えてるってことしかわからないまま現在に至ってるみたいだ。でも、年間4万人いる失踪事件で1万人は居所がわからないってのが現状らしく、この事件もそうしたもののひとつなんだけど、妙に騒がれちゃったんだね。
その教授を演じてるのがローラン・リュカ、弁護士がオリヴィエ・グルメ、娘アルマンド・ブーランジェが家庭教師をしている子の母親がマリナ・フォイスなんだけど、彼女だけは創作みたいで、この設定がいまひとつよくない。最初の裁判で陪審員をしたことで、無罪を信じて弁護士を雇い、証拠集めに奔走するということになってるんだけど、シェフの仕事をなかば犠牲にしたり、恋人や親子の関係までぎくしゃくさせて、なんでそこまで情熱をかたむけるのか、そこのところがちゃんと描けてないんだよね。
アントワーヌ・ランボーの演出も点描が多くて、テンポはいいんだけど、肝心のものはなんなのかっていう焦点がうまく定まってこない。