◇ぶあいそうな手紙(Aos Olhos de Ernesto)
舞台は、ブラジル南部の街ポルトアレグレ。
ある種、期待するわけよ。78歳の失明しかけているウルグアイから移民してきた爺さんホルヘ・ボラーニが、23歳の孫のような娘ガブリエラ・ポエステルと添い遂げるんじゃないかって。ところが、あにはからんや、至極まともな結末に向かっていくんだな。これが現実なんだろうし、でもまあ、かつての三角関係の恋焦がれていた彼女とやっぱり結ばれちゃうわけだから、ちょっとの夢だったのかもしれないねって話になるんだけど、でもなあ、なんとなく物足りなさを感じちゃうのはぼくだけなんだろうか?実際、ブエノスアイレスへひきとられていく隣人ホルヘ・デリアもそうおもったにちがいない。
手紙の代読と代書っていうのは、いいきっかけだ。これはいい。また、にわかに知り合いになった娘がやけに好い子で、その裏にはなにかあるんじゃないかって、こいつはくわせものだぜっておもいながらも、老人のゆとりを見せて小さな窃盗はやめさせ、更生させようとしていくんだけど、でもこの女優くずれは男運が悪く、これまで人を好きになったことがないとかっていうわりには男に騙され、脅され、尽くしてるわけで、それがやがて独り立ちしていくっていう筋書きなんだけど、もうすこし、ひとひねりできなかったんだろうかって気にもなる。せっかく、行くところがなくて、アパートの息子ジュリオ・アンドラーヂの部屋をあてがってやるんだから。
やっぱりこのあたりがアナ・ルイーザ・アゼヴェードのまじめな演出なんだろうな。