◎フローズン・リバー(2008年 アメリカ 97分)
原題/Frozen River
staff 監督・脚本/コートニー・ハント 撮影/リード・モラノ
美術/インバル・ウェインバーグ 音楽/ピーター・ゴラブ、シャザード・イズマイリー
cast メリッサ・レオ ミスティ・アップハム チャーリー・マクダーモット マイケル・オキーフ
◎1650年、イロコイ連邦、成立
無知というのは、おそろしい。
アメリカとカナダの間に国家(独立自治領)が存在してるってことを、ぼくは知らなかった。
このアメリカ独立にもかかわった連邦に、映画に登場するモホーク族が加わってる。
けど、映画で主題になってるのは、モホーク族の現状だけじゃない。
ていうより、たしかに、北米原住民の現在の暮らしぶりについても描かれてるし、
貧困層にある白人労働者たちの暮らしぶりについても描かれてるけど、
それだけじゃない。
主人公メリッサ・レオは、トレーラーハウスに住んでて、ふたりの息子を育ててる。
夫が生活費を持ち逃げしちゃったせいで、借金の支払いもままならない。
車はあるけど、お金になる仕事はない。
一方、モホーク族のミスティ・アップハムは、夫が息子を残して他界し、眼も悪い。
カナダからの密入国の手口はわかっているものの、それに使う車がない。
で、ミスティの案内で、メリッサの車に不法移民を乗せ、
凍ったセントローレンス川を保留地まで渡る闇の仕事に従事するんだけど、
赤ちゃんを隠した荷物を氷の上に捨ててしまい、結局、その命は助かるんだけど、
このことから、母同士の奇妙な友情が芽生え、
足を洗おうとした最後の仕事のときに警察に見つかり追われることになるって筋立てだ。
よく、できてる。
母親という絆でもって、佳境まで引っ張るんだけど、
凍結した川が、アメリカの辺境で実際に起きている問題を象徴している。
寒々しく、なにもかもが凍てついた静寂に包まれている世界は、
つまり、生きることが凍結されてしまいそうな現状をなんとか打開しようと足掻く世界だ。
ひるがえって、ぼくたちはこうした国境線の問題について、かなり疎い。
樺太の50度線がいまだに存在していれば話は別だけど、
もはや、そんなものはないから、実際に、日本人のぼくらでは見聞しにくいからだ。
そうした分、たしかにかっちりまとまった佳作ではあるけれど、
この映画のせつなさは、ただ想像することしかできないんだよなあ。