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☆=☆☆☆☆☆
◎=☆☆☆☆
◇=☆☆☆
△=☆☆
▽=☆

正義のゆくえ

2022年10月16日 01時26分33秒 | 洋画2009年

 ◇正義のゆくえ(Crossing Over)

 

 観ていてつらかったのは、ハリソン・フォードがグランド・ホテル形式のひとりにされてしまったことだ。単独で主役は張れないのかな~とおもって観ちゃったわ。それはともかく、メキシコからの不法移民はアメリカにとって深刻な問題で、人権と国益のせめぎ合いなのはよくわかる。そうしたことをちったあ考えてくれよっていう物語だね。

 でも、ハリソン・フォードがいったんは見逃してやろうとしたアリシー・ブラガだけど、彼女を連行してしまったことに胸をいためるわけだね。そりゃそうだろう、持ち前の正義感からすれば、どうしてもそうなるし、彼女の残した子供を見つけてとりあえずメキシコの実家に連れていってやる気持ちはよくわかる。ちなみに関係ないことながら、このときハリソン・フォードの乗ってる自家用車が好い色なんだよね。黒にかぎりなく近い深緑なんだけど、ええね~。話はもどって、結局は、このアリシー・ブラガは悪徳業者に騙されて国境を越えて帰ろうとしたんだけど、その一歩手前で息をひきとる。身につまされる悲惨な結末なんだけど、こうした現実味を伝えるべきか、それとも物語として少しは希望を持たせる母子の再会に持ち込むかは難しいところだ。

 アシュレイ・ジャッドとアリス・イヴはご贔屓のふたりだけど、映画の中の立場は反対だ。巡り合うことはないけど、不法移民の娘をなんとか引き取りたいと考える慈善的なアシュレイ・ジャッドと、オーストラリアからの不法移民ながらそれをなんとか伏せてアメリカ国籍を取りたいと移民判定官に抱かれるアリス・イヴを繋いでいるのは、その判定官にしてアシュレイ・ジャッドの夫のレイ・リオッタなんだよね。でも、この部分が余計なんだな。

 すでにアメリカ国籍を取ってるクリフ・カーティスと巡り合っていくアメリカ国籍をとる寸前で強盗しちゃう韓国人ジャスティン・チョンの物語はそのままにして、ハリソン・フォードの物語を膨らませて欲しかったわ。

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フェイシズ

2022年10月15日 01時48分49秒 | 洋画2011年

 ◇フェイシズ(Faces in the Crowd)

 

 ミラ・ジョヴォヴィッチは製作総指揮も兼ねてるんだけど、そうか、めざめると病室っていうパターンが好きなのかっておもわせる展開だったけど、それはさておき、相貌失認、別名失顔症は映画の題材としてはよくわかる。側頭葉の損傷で顔が認識できないってのはなかなか興味深い。でも、顔が判別できなくても人間ってやつはよく出来てて、後ろ姿でも遠くでも声だけでも雰囲気だけでも見分けはつくけどね。それがつかないって設定はちょっと苦しい。でも、苦しいからこそネクタイの結び方だの、血の髭だのがおもいつくわけで、ま、こんなもんかな。

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ビザンチウム

2022年10月13日 23時21分16秒 | 洋画2012年

 ◎ビザンチウム(Byzantium)

 

 なんで吸血鬼の母子の巣食う売春宿がビザンチウムって名称なんだっておもっちゃうんだけど、やっぱり、なんつうか因果があるんだろうね。そうじゃなかったら、こんな紛らわしいタイトルにならないよねっていうのは、ぼくの勘繰りなのかそれともなにか見落としてるのか、まるでわからない。

 画づくりは好い感じだ。孤島の崖をつつむような瀧が血に染まるイメージも悪くないし、炭焼き窯のような吸血鬼の洗礼を受ける場も悪くないんだけど、蝙蝠がもうすこしきちんと合成してあるとよかったなあと。でも、この吸血鬼がどうして派生したのか、サム・ライリーのいう同盟ってのはなんなのか、よくわからない。最後になってもわからない。

 シアーシャ・ローナンは着実に作品をこなしててちょうど過渡期になるような作品なんだろうけど、いや、なんていうか生きていくためには仕方ないし街角のか弱い女たちを救うためにジェマ・アータートンが経営する売春宿と、彼女の清楚さの対比が好いわ。

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ぶあいそうな手紙

2022年10月12日 01時44分18秒 | 洋画2019年

 ◇ぶあいそうな手紙(Aos Olhos de Ernesto)

 

 舞台は、ブラジル南部の街ポルトアレグレ。

 ある種、期待するわけよ。78歳の失明しかけているウルグアイから移民してきた爺さんホルヘ・ボラーニが、23歳の孫のような娘ガブリエラ・ポエステルと添い遂げるんじゃないかって。ところが、あにはからんや、至極まともな結末に向かっていくんだな。これが現実なんだろうし、でもまあ、かつての三角関係の恋焦がれていた彼女とやっぱり結ばれちゃうわけだから、ちょっとの夢だったのかもしれないねって話になるんだけど、でもなあ、なんとなく物足りなさを感じちゃうのはぼくだけなんだろうか?実際、ブエノスアイレスへひきとられていく隣人ホルヘ・デリアもそうおもったにちがいない。

 手紙の代読と代書っていうのは、いいきっかけだ。これはいい。また、にわかに知り合いになった娘がやけに好い子で、その裏にはなにかあるんじゃないかって、こいつはくわせものだぜっておもいながらも、老人のゆとりを見せて小さな窃盗はやめさせ、更生させようとしていくんだけど、でもこの女優くずれは男運が悪く、これまで人を好きになったことがないとかっていうわりには男に騙され、脅され、尽くしてるわけで、それがやがて独り立ちしていくっていう筋書きなんだけど、もうすこし、ひとひねりできなかったんだろうかって気にもなる。せっかく、行くところがなくて、アパートの息子ジュリオ・アンドラーヂの部屋をあてがってやるんだから。

 やっぱりこのあたりがアナ・ルイーザ・アゼヴェードのまじめな演出なんだろうな。

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ハリガン氏の電話

2022年10月11日 23時56分27秒 | 洋画2022年

 ◇ハリガン氏の電話(Mr. Harrigan's Phone)

 

 なんか、ジェイデン・マーテルはスティーブン・キングの申し子みたいになってきたな。ま、怖い話向きな顔立ちと華奢な体つきのせいなんだろうけど、これからどうなっていくんだろう?と現時点ではちょっとおもったりする。

 それにしても、冗漫だな。始まって30分も退屈が続く。絵がちゃんとしてるだけ、物足りなさが目立ってくる。ドナルド・サザーランドは20分でスマホを手に入れ、30分で死なないとね。重厚さはもうぎりぎりで、さすがに老いが目立つようになってきたような気がするんだけど、酸素吸入したまま突然死しちゃう役だから役作りしてたのかもしれないけどね。

 でも、やっぱりスティーブン・キングはおもしろいな。ただ、世話になった好い子のために、死んでも尚スマホで繋がってて、その子を苦しめたり泣かせたりする奴は容赦なく片付けてやるっていう、なんだか甘すぎる保護者みたいな死霊の物語ってのは、どうなんだろうね。

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ラストナイト・イン・ソーホー

2022年10月10日 14時34分56秒 | 洋画2021年

 ◇ラストナイト・イン・ソーホー(Last Night In Soho)

 

 60年代に飛ぶまでが長い。30分、かかってる。つらいな。やっぱりノスタルジアもあってこういう映画は観ちゃうんだけど、芸能界に憧れて結局はちんぴらのつつもたせにいいように扱われて、そのためにつつもたせや客たちをつぎつぎに殺してしまい、おかげで死体を始末しきれず床下に隠したままそこに棲むようになった哀れな女アニャ・テイラー=ジョイの物語になってるわけだけど、でも成長した彼女ダイアナ・リグ(遺作)がひらきなおってるのはわかるもののなんかほかの展開はなかったのかなっておもったりする。

 テーマ曲はペトゥラ・クラークの「恋のダウンタウン」か。ウォーカー・ブラザーズの「ダンス天国」も印象的だ。

 なるほど、品の好い美人ちゃんトーマシン・マッケンジーは、条件があって飛ぶわけじゃないのね。なんか何処でもドアみたいな条件があった方がいいような気もするんだけど、そうじゃない方がスリリングになるのかな?

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リベンジ・リスト

2022年10月09日 15時08分00秒 | 洋画2016年

 △リベンジ・リスト(I Am Wrath)

 

 観終わって、観たかどうかすらわからなくなるほど、ありきたりな物語なんだけど、ちょっとだけほかの物語とちがうところは、偶然かつ衝動的にチンピラに殺されたかとおもっていた妻レベッカ・デモーネイが、実は水質汚染の調査で判明した事実を葬り去らせるために殺されたんだとわかったとき、州知事に対して戦いを挑むっていう背景があったことくらいなんだけど、でも、その戦いぶりがどうにも単なる殺し合いに見えちゃうところがつらい。

 ジョン・トラボルタは、なんかこういうB級活劇をやらされるんだよね。なんだかなあ。原題の『I Am Wrath』は「我は怒りなり」という旧約聖書のエレミヤ書にある一節らしいんだけど、これもまたなんだかとってつけたような感じがして、こういう一文を使うんなら、もっとトラボルタを敬虔な人間に持っていっとかないとね。娘役のアマンダ・シュルは美人だったけど、彼女が孫を連れてる。ああ、トラボルタもそんな年なのね。

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ノクターナル・アニマルズ

2022年10月08日 15時18分55秒 | 洋画2016年

 ◇ノクターナル・アニマルズ(Nocturnal Animals)

 

 なるほど、過去から送られてきた心の叫びっていうか復讐心の塊をどうやって受け留めるのかって話なのね。元夫の未発表原稿、アートデザイナーの現在の自分、元夫との別れる原因になった過去の事件とが絡まり合って展開するんだけど、それはそれでわかりやすい。でも、原稿は夫の心情、過去の思い出は妻の心情、そして現在は妻の目から見た現実ってわけで、どこに真実があるのかはわからない。まあ『羅生門』のような世界ではあるんだけど。

 そうか、冒頭の気持ち悪いデブの裸踊りは見たくないけど観てしまうものの現実の映像なわけか。

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ブレグジットEU離脱

2022年10月07日 16時06分00秒 | 洋画2019年

 ◇ブレグジットEU離脱(Brexit : The Uncivil War)

 

 ここにいうプレグジットってのは、2020年1月31日にイギリスがEU欧州連合から離脱したことをいうんだけど、これをするかどうかを決めたのが、2016年6月23日の国民投票だね。

 で、この作品は、その顛末を描いてる。で、この政策を煽り立ててついに国民投票でもがんがん推進していったドミニク・カミングスっていう我が儘放題で強烈な男を、ベネディクト・カンバーバッチが演じてる。

 頭が薄く、ほとんどヒゲオヤジのような禿になりつつある小柄で顔の長い、とてものこと好い顔とはいえない役柄を演じても、その強烈な個性と頭の良さを見せつけてくると、どれだけ強引なやり口をしても、やっぱりカンバーバッチなんだよなあって気にさせるところはさすがとしかいいようがない。

 もっともこの投票の結果は誰もが知ってるわけで、なるほど、こうやってカミングスは選挙を勝たせたかのかってことがわかるんだけど、これがイギリスにとってよかったのかどうかはまだわからないわけで、四半世紀後に続編ができるのかもしれないね。

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ギャラクシー・クエスト

2022年10月06日 16時30分42秒 | 洋画1999年

 ◇ギャラクシー・クエスト(Galaxy Quest)

 

 この作品が作られてから四半世紀が過ぎてしまって、今や新たな『スタートレック』がシリーズ化されてる。なんかまあ時代はどんどん過ぎていくわけで、この時点で『スタートレック』のメンバーがすでに20年前の出演作のおかげで食ってるようなことをいわれてるんだけど、それがもう半世紀になってる。時の流れはすごいな。しかし、シガニー・ウィーバーもアラン・リックマンもよく出演したなあ。こういうのがハリウッドなんだよなあって気がするわ。

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バカルー・バンザイの8次元ギャラクシー

2022年10月05日 16時44分46秒 | 洋画1981~1990年

 ◇バカルー・バンザイの8次元ギャラクシー(The Adventures of Buckaroo Banzai Across the 8th Dimension)

 

 ピーター・ウェラーの演じたのは日本人の父親とアメリカ人の母親をもつ脳神経外科にして物理学者なんだけど、そうか、だからバンザイってついてるのか。これ書いててようやく気がついたわ。ていうくらい、つまらなかった。ジョン・リスゴー、エレン・バーキン、ジェフ・ゴールドブラム、クリストファー・ロイド、よくもまあこれだけ集めたもんだっていうキャストだけど。

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ハンナ

2022年10月04日 17時01分18秒 | 洋画2019年

 ◇ハンナ(Hanna)

 

 結局のところ、国家の陰謀のもとに産まれた子ってことはわかるんだけど、こうなると、ハンナことシアーシャ・ローナンの立脚点が無くなってしまって、これからこの子はどうやって生きていくんだろうって感じにしかならない。だから、テレビシリーズが作られ始めたんだろうけど、なるほど、活劇としてはいうことないわね。

 エリック・バナ、ケイト・ブランシェット、オリヴィア・ウィリアムズ。ふむ、てがたいキャストだ。

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君の名前で僕を呼んで

2022年10月03日 00時29分28秒 | 洋画2017年

 △君の名前で僕を呼んで(Call Me By Your Name)

 

 タイトルがいちばん面白かった。

 まあ、役者たちがみんな綺麗で、結局のところそれだけなんじゃないかって感じがしたかな、ぼくはね。ただ、ティモシー・シャラメが異常に魅力的な容貌だってことはわかるし、その相手のアーミー・ハマーも、父親のマイケル・スタールバーグも、母親のアミラ・カサールも美しいのは認めざるをえないけど。

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アンロック 陰謀のコード

2022年10月02日 00時16分38秒 | 洋画2017年

 ◇アンロック 陰謀のコード(Unlocked)

 

 なんかよくある女性スパイ活劇で、もともと凄腕のはずが完落ち(アンロック)させられなかったといって左遷されてたのがいきなり任務を与えられたかとおもったらそれは生け贄みたいなものだったところ、そのおかげで過去の凄腕ぶりをおもいだして、彼女ノオミ・ラパスに期待をかけていた上司マイケル・ダグラスの下で、得体は知れないながらもたぶん味方なんだろうっていうやっぱり過去のありげな男オーランド・ブルームと過激に戦うっていうのは、もはや、どれをとっても似たような展開になる。

 この頃の流行りはバイオテロの阻止だね。

 あとは、ジョン・マルコヴィッチやトニ・コレットとか役者たちのどはずれた演技を愉しむよりほかにない。

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再会の夏

2022年10月01日 21時38分51秒 | 洋画2018年

 ◇再会の夏(Le collier rouge)

 

 ほとんど意味のない邦題で、原題の直訳は「赤い首輪」だ。

 だからといって、奥さんに首輪をつけておけばよかったと間男に嵌められたと勘違いした焼き餅焼きの男の物語ではない。映画のつくりがどうしても投獄されたニコラ・デュボシェルと妻のソフィー・ベルベークの物語に偏るからそう感じるんだけど、そういうことではない。

 レジオン・ド・ヌール勲章まで貰った男が、なんで祝賀の席の挨拶でこの勲章を犬の首に掛けちゃうのかってことで、それで軍法会議にまでかけられて故郷へ移送されて投獄されているのはなぜかって物語だ。だから、赤い首輪なわけで、この首輪つまり勲章を棄ててまでして抗議したかった愚かな塹壕戦とはなんだったのかってことを調べようとする軍判事フランソワ・クリュゼの物語なんだってことをいわないといけないのに、映画の宣伝はまったくとちくるったように、フランス版の忠犬ハチ公物語みたいなことをいう。信じられない。

 忠犬じゃないから。

 あるじニコラ・デュボシェルのことが好きで仕方なくて戦場にまでついてきてしまった黒犬の敵愾心を募らせてしまった人間どもがひとまずの休戦を喜んで握手しようとしたときに、いきなりこの黒犬が飛びかかって、それでまたいっぺんに人間の猛烈な憎しみが火を噴いて戦って、幸か不幸か勝ってしまったために、勲章をもらう羽目になったのがニコラ・デュボシェルなわけで、かれはそうしたなんにも調べずにいる上のあほ連中に対して、勲章をもらうんだったらいきなり不意打ちを喰らわせたこの黒犬だと皮肉な主張をして犬の首に勲章をかけたわけで、それをフランソワ・クリュゼも見抜かないといけないし、またそれを調書に取ってそこでようやく釈放しなければならないはずなのに、もう、作り手のジャン・ベッケルも上手に描き切れてないし、それに輪をかけて宣伝が好い加減で、まったく映画がかわいそうだな。

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