◇正義のゆくえ(Crossing Over)
観ていてつらかったのは、ハリソン・フォードがグランド・ホテル形式のひとりにされてしまったことだ。単独で主役は張れないのかな~とおもって観ちゃったわ。それはともかく、メキシコからの不法移民はアメリカにとって深刻な問題で、人権と国益のせめぎ合いなのはよくわかる。そうしたことをちったあ考えてくれよっていう物語だね。
でも、ハリソン・フォードがいったんは見逃してやろうとしたアリシー・ブラガだけど、彼女を連行してしまったことに胸をいためるわけだね。そりゃそうだろう、持ち前の正義感からすれば、どうしてもそうなるし、彼女の残した子供を見つけてとりあえずメキシコの実家に連れていってやる気持ちはよくわかる。ちなみに関係ないことながら、このときハリソン・フォードの乗ってる自家用車が好い色なんだよね。黒にかぎりなく近い深緑なんだけど、ええね~。話はもどって、結局は、このアリシー・ブラガは悪徳業者に騙されて国境を越えて帰ろうとしたんだけど、その一歩手前で息をひきとる。身につまされる悲惨な結末なんだけど、こうした現実味を伝えるべきか、それとも物語として少しは希望を持たせる母子の再会に持ち込むかは難しいところだ。
アシュレイ・ジャッドとアリス・イヴはご贔屓のふたりだけど、映画の中の立場は反対だ。巡り合うことはないけど、不法移民の娘をなんとか引き取りたいと考える慈善的なアシュレイ・ジャッドと、オーストラリアからの不法移民ながらそれをなんとか伏せてアメリカ国籍を取りたいと移民判定官に抱かれるアリス・イヴを繋いでいるのは、その判定官にしてアシュレイ・ジャッドの夫のレイ・リオッタなんだよね。でも、この部分が余計なんだな。
すでにアメリカ国籍を取ってるクリフ・カーティスと巡り合っていくアメリカ国籍をとる寸前で強盗しちゃう韓国人ジャスティン・チョンの物語はそのままにして、ハリソン・フォードの物語を膨らませて欲しかったわ。