Creator's Blog,record of the Designer's thinking

フィールドワークの映像、ドローイングとマーケティング手法を用いた小説、エッセイで、撮り、描き、書いてます。

Fieldwork737. 伊東豊雄氏の建築 岐阜市立図書館・みんなの森

2022年11月29日 | field work
 
 岐阜市役所の後ろに、建築家伊東豊雄氏の設計による「みんなの森・岐阜市立図書館」がある。
 この建築の素晴らしいところは、それまでの建築の常識、或いは自明な考え方、ステレオタイプ化した発想、そうした常識をすべてひっくり返し、柔らかい頭脳と冴えた感性で再構築してきたところにある。常識をすべてひっくり返す、その面白さが新しい魅力を想像する。
 だから壁を排除することで、パブリックな空間もワーカー達のバックヤードも、すべて一つの空間なかでオープンにされている心地よさがある。天井は柔らかい曲面の連続であり、グローブと呼ばれる装置が人間の行動を柔らかく仕分けている巧みな考え方だ。そして真っ直ぐ置くべきだとする書架は、曲面に沿って配置される巧みな設え方だ。
 これまでの常識、あるいは自明な考え方を、すべてひっりかえし捨て去ることで成立する魅力的な新しい空間は、私達の人生においても示唆的だ。
 日本は高齢化社会といわれて久しく、マニュアルなどという言葉を思い出せば明らかだが、今は規範的考え方が支配的だ。そして多くの人々が常識に寄り添って価値観を成立させている。
 結果として社会全体が退屈さの塊となり、街は、退屈で感性を刺激しないステレオタイプ化したデザインとアートとイベントであふれてしまった。そんな理解が私達の生活に蔓延し、それを自明のこととして受け止めている。そんなつまらない空気で現代社会は満ちあふれている。
 これまでの自明な事、規範主義、常識などをすべてひっくり返し、柔らかい頭と冴えた感性で再構築してゆくことの魅力を、伊東豊雄氏の建築は語っている。

伊東豊雄氏の建築 岐阜市立図書館・みんなの森
SONYα6600、E10-18mm/F4.0
コメント (1)
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