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ボブ・シャッドが立ち上げたマーキュリー・レコードの傍系レーベル、エマーシーはクリフォード・ブラウンをはじめヘレン・メリル、サラ・ヴォーン等、永遠の名盤と呼ばれる作品をリリースしている。そのシャッドがタイム・レーベルを興すため退社した後を引き継いだのはジャック・トレーシーだった。シャーロック・ホームズ研究家と同じ名前だが、このトレーシー氏は探偵の如く毎夜ジャズクラブに現れる。
それはシャッドがプロデュースした以上の作品を録るためのプレイヤーを探す目的だ。あるクラブで指が動くピアノを聴いたトレーシーは、食指が動いたとみえて話しかけると、ジーン・ロジャースと名乗るその男は語り出した。「オレは16歳のときにキング・オリバーのオーケストラで初録音したあと、コールマン・ホーキンスのブルーバード・レーベルの録音、そうそうボディ・アンド・ソウル、有名なあれだよ。それからベニー・カーターのバンドでも仕事をした」「華々しい経歴だけどリーダー作は?」「48歳になるけれど・・・」「では、Introducing を出そう」このような経緯で録音されたのがこのアルバムだ。
遅咲きの初リーダー作のトップを飾るのはハリー・ウォーレンの「There Will Never Be Another You」である。原曲はスローバラードだがアップテンポで演奏するのがモダン期に慣わしになったようにロジャースも速い。トレーシー自身が書いたライナーノーツはアート・テイタムに結び付けてベタ誉めしているが、テイタムというよりテディ・ウィルソンに近いタッチで、スウィング期のスタイルにモダンのスパイスを足した感じだ。録音されたモダンジャズ全盛期の58年という時代にはやや古さを感じさせるが、13鍵を押さえるというテクニックはジャズピアノの華麗なスタイルとして倣うピアニストも多い。
トレーシーが引き継いで間もなくエマーシーは消滅し、マーキュリー本体に吸収されたが、トレーシーはそこでも多くの録音に携わった。シャッドが送り出したほどの名盤はプロデュースできなかったが、ジャズクラブで毎夜熱い演奏する無名に近いプレイヤーを発掘し、世に出したことは評価されるだろう。ホームズなら、「ワトスン君、そのレコードが名盤と呼ばれる日がくるかもしれないよ。誰でもが知っている有名な人より意外な人物が犯人だったりするように」と言うかもしれない。
それはシャッドがプロデュースした以上の作品を録るためのプレイヤーを探す目的だ。あるクラブで指が動くピアノを聴いたトレーシーは、食指が動いたとみえて話しかけると、ジーン・ロジャースと名乗るその男は語り出した。「オレは16歳のときにキング・オリバーのオーケストラで初録音したあと、コールマン・ホーキンスのブルーバード・レーベルの録音、そうそうボディ・アンド・ソウル、有名なあれだよ。それからベニー・カーターのバンドでも仕事をした」「華々しい経歴だけどリーダー作は?」「48歳になるけれど・・・」「では、Introducing を出そう」このような経緯で録音されたのがこのアルバムだ。
遅咲きの初リーダー作のトップを飾るのはハリー・ウォーレンの「There Will Never Be Another You」である。原曲はスローバラードだがアップテンポで演奏するのがモダン期に慣わしになったようにロジャースも速い。トレーシー自身が書いたライナーノーツはアート・テイタムに結び付けてベタ誉めしているが、テイタムというよりテディ・ウィルソンに近いタッチで、スウィング期のスタイルにモダンのスパイスを足した感じだ。録音されたモダンジャズ全盛期の58年という時代にはやや古さを感じさせるが、13鍵を押さえるというテクニックはジャズピアノの華麗なスタイルとして倣うピアニストも多い。
トレーシーが引き継いで間もなくエマーシーは消滅し、マーキュリー本体に吸収されたが、トレーシーはそこでも多くの録音に携わった。シャッドが送り出したほどの名盤はプロデュースできなかったが、ジャズクラブで毎夜熱い演奏する無名に近いプレイヤーを発掘し、世に出したことは評価されるだろう。ホームズなら、「ワトスン君、そのレコードが名盤と呼ばれる日がくるかもしれないよ。誰でもが知っている有名な人より意外な人物が犯人だったりするように」と言うかもしれない。
ゼア・ウィル・ネヴァー・ビー・アナザー・ユーは42年に映画「アイスランド」の主題歌として書かれた曲ですが、今でもよく演奏される魅力的なメロディです。今週はピアノでお気に入りをお寄せください。管楽器とヴォーカルは別の機会に話題にします。
管理人 There Will Never Be Another You Piano Best 3
Bud Powell / A Portrait of Thelonious (Columbia)
Red Garland / At The Prelude (Prestige)
Chihiro Yamanaka / After Hours (Verve)
パウエルが何度も録音している曲ですが、他にはアート・テイタムをはじめポール・ブレイ、ミシェル・ペトルチアーニ、ジョージ・ケーブルス、バーニー・ニーロウ、フランク・アヴィタビレ等々、多くのピアニストが取り上げております。
今週も皆様のコメントをお待ちしております。
Gene Rodgers
http://www.youtube.com/watch?v=ffqr5NC5fL8
ジーン・ロジャースは何度か映画にも出演しておりますので、この映像は映画のワンシーンと思われます。
この演奏を目の当たりにするとジャック・トレーシーでなくてもレコードを作ろうと思うかもしれません。
There Will Never Be Another You、大好きな曲です。私のテーマソングだと、勝手に思っています。(笑)
ピアノの名演が多いので、楽しみながら選びたいと思っております。
この曲はテーマソングでしたか。パウエルの演奏を聴くとテーマソングにしたくなりますね。
多くの名演がありますのでじっくりお選びください。
千尋さん、ガーランドの他には、
ポール・ブレイのEmArcy盤、バーニー・ニーロウ、
あとはビル・エバンス&トニー・スコットがあるだけ。
パウエルは、クリニックに置いてたかな?
手持ちが少ないとはいえ十分ベストが揃うラインアップと思います。ポール・ブレイは迷った1枚です。このレコードは「Wing」レーベルのオリジナルを入手するのにけっこうな時間と金がかかりましたので、思い入れがあります。久しぶりに今回聴き直しましたが、まだパウエルの痕跡がありますね。このスタイルを貫いていても別の形で大成したと思うのですがどうでしょう。聴いた後また非常持ち出しケースにしまいましたのでひょとしたら一生聴かないかもしれません。(笑)
店に行ってから、色々考えたのですが、今週は2枚にしようと思います。
Strictly Powell/Bud Powell
dukeさんの挙げられたアルバムとどちらにするか迷ったのですが、こちらの方がベースとドラムの出来が良いと感じています。ベースとドラムは、パウエルのよき理解者だと思っています。
At The Prelude/Red Garland
昔から好きなアルバム。演奏もご機嫌だと思います。
3枚挙げるつもりでしたが、私にとってこの曲はこの2枚さえあれば満足なのです。
ところで、ホレス・シルバーのスプリット・キックを挙げるのは反則でしょうか?(笑)
Bud Powell / A Portrait of Thelonious (Columbia)
Red Garland / At The Prelude (Prestige)
この二枚は順当だが、アマノジャックとしては、三番はヒネクレてみたいものだ。
3位は、フランク・アビタビレ/イン・トラディションではどうだ!
それが気に入らないなら、俺の演奏でも良いのだが・・。
この曲は歌伴を始めた、27歳の頃に覚えた曲で懐かしい・・・因みに、この曲は私の弾き語り得意ヴァージョンの一つである。
従って、次点は「オレのピアノソロ」ということに相成るわけでアリンス。
パウエルは何度か演奏しておりますが、どれも気魄がこもっておりますね。私が挙げたポートレイトは晩年とはいえパウエルならではのフレーズに唸ります。Strictly とはテイラーかクラークの好みで割れるかもしれません。
ガーランドのライブ名盤も外せないですね。全てのトラックが楽しめるアルバムです。完全版を持っておりますが、出だしを間違えて弾きなおすあたり親近感を覚えます。
SHIN さんもおっしゃっておりますが、スプリット・キックとノット・ユー・アゲインは反則です。進行しません。(笑)
ワンツーは決まりですね。ともにこの曲のピアノ演奏のお手本といえる内容です。3位にそのパウエルを手本としたアビタビレがきましたか。イン・トラディションは以前話題にしましたが、デビュー作とは思えないほど完成されておりますし、果敢にパウエルに挑戦した勇気は誉めたいですね。
久しぶりに「オレのピアノソロ」を自薦されましたか。
ピアノ・ヴァージョンは少ないようですので次点決定です。(笑)
最高に乗る曲ですね。かつて斑尾ジャズフェスティヴァルの夜の部はジャムセッションが行われていて、バイタリティー溢れる演奏が繰り広げられていました。この曲をやった夜があって、ゲイリー・バートン(vib)がものすごいスイングプレイを披露していました。ルーツは皆もっているのだとびっくりした思い出があります。
でピアノですが、
①Bud Powell / A Portrait of Thelonious (Columbia)
②Red Garland / At The Prelude (Prestige)
③Hampton Hawes / Four (Contemporary)
①、②は同じで、③にホーズをいれてみました。トリオにケッセル(g)が加わっていて、ケッセルとホーズの掛け合いもエキサイティングで、忘れられない演奏です。