「エゴイスト」というB級映画が拾いものだった。
アンディ・ガルシア扮する売れない小説家が、貧乏に耐えかねてエスコートサービス(高級男娼)になるが、そこで大作家(ジェームズ・コバーン)の妻に買われ、その伝で・・という話。このエスコートサービスの経営者にして、売れない小説家を男娼の世界に導く、辛辣とユーモアを自在に操るメフィストフェレス役がなんとミック・ジャガー。
その冷徹な彼がベテラン男娼にあるまじき夢を描いて、馴染み客アンジェリカ・ヒューストンにプロポーズするが、冗談か演出と大笑いされて、皺だらけの顔が泣き笑う。とても余技というレベルではなく、よく似た俳優がいるものだなあと途中まで感心していた。あの細身の身体に高級スーツ、あの顔の半分を占める表情豊かな唇に気障に煙草をくわえるところなど、哀愁と倦怠をまとった初老の伊達男にぴったりだった。超ハンサムなアンディ・ガルシアが完全に食われていた。Charもなあ、若い頃はミック・ジャガーばりセクシーだったのに、いまやただのむさいおっさんになった。その後の知性と教養の蓄積の差だろう。ギター小僧がただのギターおやじになるような健全な人生をミック・ジャガーは選べなかった。ジョウビズ界における男娼としての存在の大きさが比較にならないからだ。ミック・ジャガーはそれに拮抗しなければならなかった。
この映画、大川橋蔵みたいなアンディ・ガルシアのミスキャストを除けば、ミック・ジャガーが登場する箇所以外にも、わるくない場面があった。たとえば、秘密のバイトを知って怒って家を出た売れない小説家の妻が、あてつけに同僚の男娼を買ってホテルのロビーで夫と鉢合わせする。別れても互いを愛している二人、妻は軽蔑を込めてにらみ、夫は身勝手にも傷ついて眼を伏せる。すれ違った後、妻は夫の同僚である男娼に、「こんな仕事をして楽しいの?」と尋ねる。趣味と実益とばかりに、いつも軽快な様子だったその男娼(これも中年だが)は、売れない小説家の妻であることを知り、暗い表情でこういう。「女としているときは、自信を取り戻せるんだ」。
アンディ・ガルシア扮する売れない小説家が、貧乏に耐えかねてエスコートサービス(高級男娼)になるが、そこで大作家(ジェームズ・コバーン)の妻に買われ、その伝で・・という話。このエスコートサービスの経営者にして、売れない小説家を男娼の世界に導く、辛辣とユーモアを自在に操るメフィストフェレス役がなんとミック・ジャガー。
その冷徹な彼がベテラン男娼にあるまじき夢を描いて、馴染み客アンジェリカ・ヒューストンにプロポーズするが、冗談か演出と大笑いされて、皺だらけの顔が泣き笑う。とても余技というレベルではなく、よく似た俳優がいるものだなあと途中まで感心していた。あの細身の身体に高級スーツ、あの顔の半分を占める表情豊かな唇に気障に煙草をくわえるところなど、哀愁と倦怠をまとった初老の伊達男にぴったりだった。超ハンサムなアンディ・ガルシアが完全に食われていた。Charもなあ、若い頃はミック・ジャガーばりセクシーだったのに、いまやただのむさいおっさんになった。その後の知性と教養の蓄積の差だろう。ギター小僧がただのギターおやじになるような健全な人生をミック・ジャガーは選べなかった。ジョウビズ界における男娼としての存在の大きさが比較にならないからだ。ミック・ジャガーはそれに拮抗しなければならなかった。
この映画、大川橋蔵みたいなアンディ・ガルシアのミスキャストを除けば、ミック・ジャガーが登場する箇所以外にも、わるくない場面があった。たとえば、秘密のバイトを知って怒って家を出た売れない小説家の妻が、あてつけに同僚の男娼を買ってホテルのロビーで夫と鉢合わせする。別れても互いを愛している二人、妻は軽蔑を込めてにらみ、夫は身勝手にも傷ついて眼を伏せる。すれ違った後、妻は夫の同僚である男娼に、「こんな仕事をして楽しいの?」と尋ねる。趣味と実益とばかりに、いつも軽快な様子だったその男娼(これも中年だが)は、売れない小説家の妻であることを知り、暗い表情でこういう。「女としているときは、自信を取り戻せるんだ」。