コタツ評論

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盆休み

2006-08-17 06:46:16 | ノンジャンル
3日間だけの盆休み。老親に会いに帰る。申し訳ないが、イギリスのテロ事件の影響で空港検査の大混雑、首都圏大停電にひがみねたみの拍手。老親は7時には寝てしまうので、何冊か本が読めた。

『私家版・ユダヤ文化論』(内田樹)。名著である。「ユダヤがわかれば世界がわかる」ではなく、「ユダヤはわからないが、なぜユダヤがわからないかをわかろうとすることで、世界はわかる、なんとなく」ということか。わかるということは、わからないことを確認していくことだ、というよくいわれるご託を、ご託にとどめず、30年かけて実践した。凄い。「悪人正機説」はユダヤ教からきたのではないかとふと思う。

『愛のひだりがわ』(筒井康隆)。ハリポタやナルニア国物語など、最近のジュブナイルブームへの批評的な秀作。

『失われた男』(ジム・トンプソン)。大傑作。「ダイムストア(安物雑貨屋)のドフトエフスキー」と命名されていたとか、ずいぶん以前から、偉大な作家と賞賛していた人がたくさんいるのがわかって、新発見のように興奮していたのが少し恥ずかしい。

『やがて哀しき外国語』(村上春樹)。宗教話をはじめる前の五木寛之や小説を書く前の沢木耕太郎に通じる根無し草的心地よさ。ただし、アメリカで暮らし続ける骨太さは前二者とは異なる。

『いかしたバンドのいる街で』(スティーブン・キング」)。読んでからすでに読んでいたと気づく。どうしてよけいなことばかり書き連ねているのに、すっきりとした物語になるのだろう。再読に耐える名人芸。