ドアに郵便局の不在配達票が入っていた。亡くなったNさんの家族から、簡易書留が届いている。香典返しのカタログだなと思った。茶器セットとかタオル詰め合わせや体重計など、いろいろなギフトを選べるあのカタログだ。不要で趣味の合わぬものを贈られるより、たしかに合理的だと思うが、それだけ心尽くしの品には遠くなって、少し味気ないような気もする。もしかすると、結婚式の引き出物もカタログギフトになっているのだろうか。
郵便局員が届けてくれたのは、カタログではなく、一通の封筒だった。
開いてみると、型通りの御礼の挨拶に、図書カード5,000円が同封されていた。思わず、「あんたのカアチャンはやるねえ」とNさんに笑いかけた。Nさんは、たぶん、ウーロンハイだろう、大ぶりのグラスに口をつけて、正面からこちらを見ている。まだ呑みはじめたばかりで、眼が笑っている。家族や友人と呑んだときのスナップを拡大したものらしく、かなり粒子が粗いが、葬儀の遺影に使われ評判になったものだ。夫人が希望者を募り、後日、小さく額装(10×8cm)されて送られてきた。以来、私の机の上、時計の隣に置かれている。
「Nさん、あんたも苦笑するかもしれないが、この図書カードで、『1968』を買わしてもらうよ。ありがとう」
郵便局員が届けてくれたのは、カタログではなく、一通の封筒だった。
開いてみると、型通りの御礼の挨拶に、図書カード5,000円が同封されていた。思わず、「あんたのカアチャンはやるねえ」とNさんに笑いかけた。Nさんは、たぶん、ウーロンハイだろう、大ぶりのグラスに口をつけて、正面からこちらを見ている。まだ呑みはじめたばかりで、眼が笑っている。家族や友人と呑んだときのスナップを拡大したものらしく、かなり粒子が粗いが、葬儀の遺影に使われ評判になったものだ。夫人が希望者を募り、後日、小さく額装(10×8cm)されて送られてきた。以来、私の机の上、時計の隣に置かれている。
「Nさん、あんたも苦笑するかもしれないが、この図書カードで、『1968』を買わしてもらうよ。ありがとう」