コタツ評論

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山中先生にコメントを

2014-03-11 18:44:00 | ノンジャンル
最先端の万能細胞研究について、IPSやESやSTAP細胞がいったい何なのか、まったくわかりません。理化学研究所の小保方晴子研究ユニットリーダーが、STAP細胞の作製に成功したと科学雑誌「ネイチャー」に発表した論文の問題点についても、よくわかりません。

しかしながら、すでにある程度わかっていることはあります。理研の対応がきわめてお粗末なことです。また、なぜお粗末なのかも、今日はっきりしました。

身内の不祥事につながり、理研の信用と威信を傷つけ、ひいては日本の学術研究への国際的信頼を著しく損なう恐れがある検証を行うには、理研の研究機関としての見識や調査能力は不足していた。そう判断されてもしかたがありません。

STAP細胞「確信なくなった
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140310/k10015868081000.html

共同研究者の若山照彦山梨大学教授が提起した、「STAP細胞の論文取り下げ」より「外部の専門家に検証を依頼したい」のほうが、もっと重大で深刻な発言です。

若山教授は、論文を取り下げたうえで、外部の専門家に検証を依頼したいとしていて、保管している細胞のサンプルや当時の詳細な実験データなどを提供する用意があるとしています。

欧米の専門家やメディアから疑問が指摘されてはや1か月になりますが、理研は「現在調査中」のまま中間報告はなく、最終報告公表の予定すら出していません。STAP細胞の有無ではなく、論文の無断引用や添付画像の使い回しなどへ疑惑が指摘されているのに、それらについて具体的な弁明すらしていません。

上記の若山教授の「外部の専門家に検証を依頼したい」とは、「調査中」の理研を見限った発言に他ならないはずです。これは小保方論文の適格問題とはべつに、由々しき問題です。ただ若山教授の判断というだけでなく、原因究明の姿勢と説明責任について、ほとんど形あるものが理研からは示されていないという事実がその前に横たわっています。

理化学研究所、STAP論文の取り下げを視野
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140311-00000662-yom-sci

しかし、今日発表された理研広報のコメントからは、そうした理研の当事者性に関わる問題意識や理研の信用と威信を毀損する事態を自身の対応が招いている、という自覚がまったくうかがえません。

論文の信頼性、研究倫理の観点から、取り下げを視野に入れて検討している
最終的な報告にはまだしばらく時間を要する予定
論文執筆者の全員が論文取り下げに賛同すれば、最終報告を待たずに取り下げする可能性もある。


最後の行は、TBSニュースの続報から知りました。理研に問われ、求められているのは、まず論文としての適格性の可否に対する調査結果なのに、「論文取り下げ」が主題に、今後の前提になっています。

「論文取り下げ」で事を収めよう、撤回すればいいだろう、という方向性がうかがえます。研究機関として、科学者集団として、事実の解明と説明責任について、その誠実な努力を放棄したとされてかまわないのでしょうか。

理研が研究機関としてではなく、企業広報の立場で対応するなら、小保方晴子さんを徹底して守らなくてはいけません。本人を記者会見には出さず、コメントは文書で出して済ますべきです。

研究倫理を一研究員に押しつけて、企業倫理を免れようでは世間には通りません。コンプライアンスとアカウンタビリティが並べば企業や組織の責務に他ならず、記者会見で理研幹部が一研究員に代わって、頭を垂れて済む問題ではありません。

いまもこれからも、理研に問われ求められている「企業倫理」とは、適切な調査の実施と調査結果の発表以外にないはずです。それを怠れば、たとえもし、どこかで何かで、小保方STAP論文が正しかったという結果が得られたとしても、理研の対応は汚点として残り、毀損された日本の科学技術への信頼の回復には長い時間が必要となるでしょう。

調査と公表に最善を尽くせば、長期的には理研や日本の科学界のダメージを上回る信頼を得られるはずです。間違ったり、過ちを犯した後の誠意ある対応によって、すぐにではなくとも、結果的に汚名を挽回した事例は少なくありません。もうね、とっくに個人の問題ではなくなっているのね。だから小保方さんを出すなといってるの。



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