予告編
横道世之介がどう普通かっていうと、映画ではまず変な髪型で表現しているの。ぼわっとふくらんで、ちょっと長めでくせっ毛。なんか悪目立ちたい漫才師や奇術師がするようなヘアスタイルだな。これでイケメン路線はないって、すぐわかる。
相手に対するときもそう。猫背でぐにゃぐにゃしながら、相手を見ないまま、かといって何かを見るわけでもなく喋り、相手が自分を見ていないときにちらちら見るのね。そういう若いやつっているよね。
だからさ、普通って目立たないとか特色がないってのとは違うんだな。何か変でおかしいのが普通なんだ。髪型なんて、似合ってなけりゃおかしいし、似合っていてもそれはそれでおかしいじゃない。
君さ、自分の髪型をベストだと思ってる? でしょ、思ってないよね。いや、変じゃないよ、たとえばの話、怒るなよお。
そのなんだ、かなりキマっていると思っていたとしてもだよ、正面を鏡に映して判断しているだけだもの。身体ならなおさら。誰も自分の背中を見たことがないし、ましてや身体を動かしている自分を、他人の目になって見るなんて誰も経験したことないわけだから、無理もないがね。
ほら、君の場合、そうやって耳を引っ張ったり、あかんべえするみたいに指で伸ばすでしょう? 退屈しているってボディランゲージかな。でも、どんなに変な身動きをしているか、自分では気がついていないから、それを他人がどう思っているかなんて考えてみたこともない。
そんな世之介(高良健吾)なんだけど、じつは礼儀正しいんだ。それはファースト・コンタクトですぐにわかる。大学のオリエンテーションでね、近くの席にいた唯(朝倉あき)と口をきく。東京で、大学で、はじめて、女の子と口をきく。
でも、話題はない。とりあえず世之介はね、唯の目の化粧に気がついて、「オシャレだね」っていう。で、唯を先に知り合った倉持(池松壮亮)に紹介する。すると、倉持はいきなり聞く。「ね、ノリ付けてんの?」。さらに倉持は聞く。「ね、ね、彼女、ノリ付けてんの、キャハ」。唯は泣き出し、怒ってしまう。
世之介とは対照的なアプローチだよな。唯の顔がアップにならないからよくわからないんだが、唇とか、ほっぺたとか、テラテラ濡れ光るみたいな化粧があるじゃない? たぶん、あれじゃないかと、えっ、アイプチっていうの?。なるほどねえ、二重瞼にするのに失敗して、ノリだけが目立っちゃったんだ、唯は。
倉持はガキだから、わっ、瞼てかってる、おもしれえってだけで、ちっとも悪気はない。すでに唯を友だち扱いしているから、なぜ唯が泣き、怒っているかわからない。
世之介もじつは「なんか変にてかってる」って思ったかもしれない。けれど、そこは田舎者の自覚はあるから、東京の娘だしオシャレのひとつなのかもしれない、そういったん判断を保留する。無知な田舎者と思われないように、おずおずと、「それ、オシャレだね」と褒めておく。
つまり、お世辞だね。そういわれて唯が満足そうに微笑むと、あっ、よかったんだ、と世之介も安堵して微笑む。これが礼儀なんだ、ね。それのどこが礼儀かって? お世辞が礼儀なのかって? 礼儀でしょ。あのね、礼儀って、お辞儀するとか、丁寧な言葉遣いとか、お行儀よくってことばかりじゃない。なにより態度が大切ね。
「今日はお忙しいところ、ご足労いただきまして、まことにありがとうございます(棒読み)」。これでわかるだろ? でも、そうそう態度はとりつくろえるもんじゃない。そういう姿勢というか、心の中の構えがないとね。かんたんにいえば、怯えかな。
君だって、知らない人にはじめて会うときは、ちょっとびびるだろ? びびんないか。ま、たいていの人はびびる。若いうちならなおさらだ。なぜかというと、知らないからさ。人気のない夜中に、真っ暗な路地に入らなくちゃならないとしたら、ちょっとびびる。そこに何があるか誰がいるかわからないからだよね。道がなくて穴があるかもしれないし、怖い人が飛び出してくるかもしれない。
人の内面もね、真っ暗な路地みたいなもんさ。この人について、私は何も知らない、まるでわからないかもしれない、そういう心持ち。この人は危険かも?ってのが基本だが、相手から危険に思われたくないってことでもあるな。そう誤解されたら向かってくるだろうからね。私はあなたを傷つけませんよ、無害ですよって態度で示す。世之介の場合、そのひとつが、「オシャレだね」ってお世辞になる。
自分の知識や経験から人を判断せず、これまで会った誰とも違う人かもしれない、とやや怯えながら相手に接する。そういうことさ、礼儀正しいって。う~ん、物怖じするのとは違う。物怖じは自意識過剰で、嫌われたくないとか、嫌な目に遭いたくないって気持ちが先行して、身体は後ずさりしているもの。礼儀は怯えながらも一歩前に出て、私はあなたを傷つけませんよと先に態度で示すもの。
だから、礼儀正しくするって、受動じゃなくて能動なんだな。押されているようで押している。だから、世之介は女性にモテる。登場する女性のすべてに、世之介は憎からず思われている。憎からずって憎まれていないってことじゃなくて、好感を持たれているってことさ。惚れたとはぜんぜん違うけど、恋愛はそこからしかはじまらないもんだ。うん、そうだ、そうだ。
何やってんの君、顔のあちこち引っ張って。吊り目にしたり、垂れ目にしたり、そんなマッサージすると、小顔になるわけ? ま、つまんなかったかもしれないが、普通って、礼儀正しいことなんだ、というのは大事なポイントなんだよ。じゃなくちゃ、世之介がモテる理由が見つからないもの。
イケメンでもなく、格好よくもなく、頭がよいわけでもなく、話がうまいというのでもない、そういう世之介がモテる理由が君はわかった? なぜなの? 優しい笑顔をするから? だあからあ、その優しい笑顔は、俺がさっきいった姿勢、相手と自分の構えを解かせる笑顔なわけでしょ。
ボクシングでいうと、両手だらり、ノーガードという構えなわけ。いや、あれは挑発か、いや、フリーにやろうやっていう、ま、いいや。どっちにしろ、君はボクシング知らないもんね。
でさ、世之介って名前はないだろ? 聞いたことないよね。そんな名前のやつ、いないよね。井原西鶴って江戸時代の小説家の「好色一代男」って作品の主人公の名前なんだ、世之介は。江戸時代の名前。好色ってくらい、女が好きでモテた男の人生を書いた小説だ。ま、光源氏みたいなもんだな。俺もちゃんとは読んだことないけど、きっとモテる秘訣が書いてあるんだろうな。だから、江戸時代のベストセラー。
世之介は、3人、いや元カノを合わせると4人出てくる女、全員にモテている。男の友だちからも好かれている。み~んなから好かれている。つまり、モテ男だ。おいおい、それじゃ、普通じゃねえだろ。異性にはモテないし、友だちもいない、それが普通だよな。その矛盾を解くキーワードが、祥子のいう「世之介さんて、普通すぎておかしい フフ」って言葉なんだな。
ほかにもね、この映画、矛盾がいくつかある。横道っていう名字にかかってくるんだけど、それは普通ってことの意味にも帰ってくるんだね。ま、次回のお楽しみということで、まだ続くのかって? 続くよお。何のためにタダ飯食わしてると思ってんの? ケーキも頼んでいいから。しっかし、高いな、この店。次は別の店にしない? うん、そうね、ケチはモテない。どうしたらモテないかについては、俺はかなりくわしいよ。
上を向いて歩こう / 忌野清志郎&甲本ヒロト
ファンの間では常識かもしれないが、ブルーハーツの曲作りと甲本ヒロトのボーカルは、忌野清志郎の影響が濃いんですね。ブルーハーツのリードギターはダウンタウンブギウギバンドに影響されていましたが。
(敬称略)
水原弘の次が松たか子というでたらめさに我ながら呆れるがこういうガッコの先生みたいな女に俺は弱いんだなMさん現場復帰記念。今年米アカデミー賞のアニメ賞をとった「アナと雪の女王」の日本語版主題歌を歌ってヒットしているらしいが日本の音楽市場が前年比16.7%減と大幅に縮小したおかげで世界の音楽市場も3.9%減となった模様はこうしてYoutubeで音楽聴く人たちが描いたのだろうな。
明日、春が来たら
コイシイヒト
500マイル
幸せな結末
夢のしずく
+竹内まりや 元気を出して
夢のほとりで逢いましょう
(敬称略)
明日、春が来たら
コイシイヒト
500マイル
幸せな結末
夢のしずく
+竹内まりや 元気を出して
夢のほとりで逢いましょう
(敬称略)