コタツ評論

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スリー・ビルボード02

2018-05-18 09:09:00 | レンタルDVD映画
>フランシス・マクドゥーマンドの出てた映画は、「ファーゴ」から「マデライン」まで4本は思い出せますが、ウディ・ハレルソン、サム・ロックウェルが出てきた映画ってのは思い出せないので、多分楽しめると思います。顔見たら思い出しちゃうかもしれないけど。

「男尊女卑」のスターシステムが定着しているハリウッドをはじめとするアメリカ映画界では、ウディ・ハレルソンは格上のフランシス・マクドゥーマンドの倍以上の出演作があるでしょう。

その理由のひとつには、米映画の一ジャンルを成している、ガイキチ男役を女優は振られないというハンディのためです。ウディ・ハレルソンは若手の頃からガイキチやヘンタイ男役で売り出し、エキセントリックな演技で生き残ってきたのですが、近作の「ある決闘 セントヘレナの掟」では、温厚なガイキチ男という完成形を見せています。

ウディ・ハレルソンのWikiを読んでみて驚きました。実父はマフィアの殺し屋で獄死したそうです。私生活もかなりトンでいるようですが、「スリービルボード」では、犯罪者や殺し屋を演じたときとは顔つきをまるで変えて、意外な役柄をそれはみごとに造形しています。

「俳優の顔ぶれで、およその筋がわかってしまい、興ざめである」というのは冗談で、アメリカのポスターでは、3人の写真が均等に配されているので、アメリカの観客なら、あのサム・ロックウェルが単純バカゲスの南部警官のまま終わるわけがないとかえって期待しながら観るのでしょう。



私見では、この映画は間違いなくトランプ支持のはずのディクソンに焦点を絞った作品に思えます。映画作品を構図を当てはめて理解するのは邪道であり、トランプ大統領の誕生と映画公開はともに2017年ですから、トランプ大統領を予見し、さらにその支持者たちへの「和解」をうながした結末とするわけにはいきません。

それでもなお、「シンクロニシティ(意味のある偶然の一致)」としたいくらい、ディクソンーサム・ロックウェルは素晴らしかったのです。南部のバカゲス差別警官がミルドレッドと和解するだけでなく、ハードボイルドに助勢しようとする変貌に、こっぴどく痛めつけられてのろのろとしか動けぬ身体と、愛するものを失った沈鬱なその表情に、観客は釘づけにされてしまいます。

アメリカの風土や空気をご存知のkaraさんなら、やはり大画面の映画館で観たほうが興趣が増すと思われます。いや、TV画面でもじゅうぶん記憶で補えるかもしれません。

追伸:もう一人、アメリカ映画界の名優が出演していたのを書き加えておきます。ピーター・ディンクレイジです。ショーン・コネリーばりに渋いです。



後先になりましたが、いつもコメントをありがとうございます。

(止め)