コタツ評論

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分別と分裂の五七五

2013-07-24 10:03:00 | 詩文


つけびしてけむりよろこぶいなかもの

自作の川柳なのか。15年前に帰郷して10年くらい前からこの貼り紙が出されたという。公民館が発行する文学同人誌にはけっして載らない痛烈な佳作である。



消される前は、「かつを」と作者名が記してあったのである。もちろん、相田みつをへ配慮してNHKは消したのだろうが、みつをに感動する「田舎者」へ向けた悪意と冷笑に満ちた鮮やかなパロディになっている。

近隣から疎まれるために貼り出したとしか思えないが、自らが日々新たな思いで読むためでもあったのだろう。「人間だもの」のように。63歳が容疑者なのかまだ不明だが、たとえ関係がないとしても、この書に10年以上にわたる尋常ではない鬱をみるのは難しくはない。

事件が起きたのは、山口県周南市金峰。周南市(しゅうなんし)も知らなかったが、金峰を(みたけ)と読むのは変わっている。金峰は大字で、その下の字には、一升谷(いっしょうだに)、奥谷(おくだに)、兼田(かねだ)、小田原(こたばら)、楽々谷(ささだに)、管蔵(すげぞう)、長渡路(ながとろ)、中原(なかばら)、朴(ほおのき)、松室(まつむろ)などがある。「かつを」は「田舎者」と平板にとらえたが、古代からの山里らしい地名である。

(敬称略)

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