Zooey's Diary

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「長いお別れ」(映画)

2020年05月19日 | 映画

認知症が進行して行く父親と、彼と向き合う家族の7年間を描く。
昇平(山崎努)は厳格な校長先生だったが、認知症を患い、次第に記憶をなくして行く。
妻(松原智恵子)は懸命に世話をし、夫婦関係に悩むアメリカ在住の長女(竹内結子)、仕事も恋愛も上手くいかない次女(蒼井優)も協力するが…

博覧強記で難しい漢字を自在に操っていた父親が、段々と表情を失くし、しょっちゅう徘徊するようになっていくのを見るのは、つらいものです。
本を読んでいるようで、実は逆さまに本を持ってボーっとしていたり、トイレが間に合わなくなったりするのを見るのは、もっとつらい。
現実にはもっともっと酷い状況なのだろうけれど、あからさまにそれを見せつけないで想像の余地を残すというのも、表現の一種です。



登場人物がみなデキすぎているという嫌いはあります。
母親は一言も不満を漏らさないで懸命に在宅看護をするし、長女と次女も、自分には深刻な悩みを抱えているが、あくまでも相手を思いやっている。
徘徊老人を抱えてそんな綺麗ごとばかりで済まないでしょうと言いたくもなるが、それでも、ボケた父親と向き合うことで自分の問題にも向き合っていこうとする姉妹の姿には、心励まされます。



最初に登場した時には素直な小学生だった長女の息子が
成長するにつれ、親に反抗し、不登校になって行く様子も描かれます。
その息子に、アメリカの学校の校長先生が言うのです。
アメリカでは、少しずつ記憶をなくし、ゆっくりと遠ざかってしまう認知症のことを
「long goodbye」というのだよ、と。
私はこのタイトルからは、チャンドラーの小説しか思い浮かばなかったのですが。


原作は、直木賞作家・中島京子の実体験に基づいて書かれたのだそうです。
静かな優しい作品です。
2019年、中野量太監督。DVDで鑑賞。


長いお別れ」 

コメント (2)
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