同年代の友人に、結婚していない人は少ない。
そういう時代の人間だったということもあるだろうし、子どもを通して知り合った人も多いからかもしれない。
結婚して今も夫婦でいる人、夫に先立たれた人、離婚した人。
『そこにいない男たちについて』は、大嫌いな夫と同居している女と、大好きな夫に先立たれた女が出てくる。それぞれのサイドから語られ、微妙に接触するけれど、ふたりで夫について語り合う場面はほぼない。夫が大嫌いな女は、夫から離婚を切り出されるとショックをうける。夫に先立たれた女は徐々に喪失感から脱していく。
この本を私に勧めてくれたのは夫に先立たれた人で、「最近夫との会話がギクシャクすることが多い」と悩んでいる私に「生きているだけでもいい」というメッセージをくれたのかなと思う。
私は「夫が大嫌い」というのではない。むしろ夫の生き方を面白いと思うし、これまでの人生も後悔していない。悪い人ではない。
ただ夫はアスペルガーの傾向があるんだろうと思う。私は注意欠陥の傾向がある。
お互いのふるまい方がずいぶん違う。これが相手を理解することを難しくしている。
家にいる時間が長くなって、気になるのだろう。
男優位の古い価値観も影響していると思うが、それはその社会で生きてきてなかなか自覚しづらいものでもある。
夫がアスペルガーの妻をカサンドラというそうだ。
検索するとカサンドラたちの体験がいろいろ出てくる。
それを読んでいると、「よくもまあ一緒に暮らせるものだ」と思う。
離婚まではしなくても、別居できれば良さそうだとも思う。
「経済的なことを考えると」「子どものことを考えると」そう簡単には別に暮らせない。
我が家の場合は、どちらも問題ない。その気になれば、いつでも別居は可能だ。
要は、気にしない。したいことをする。自分の人生を楽しむ。
がまんせずに言う。ただし言うときはアサーティブに。
機嫌よく暮らす。
わかっちゃいるけど、なかなか…ね。
話しは逸れてしまったが、夫を亡くした女と、夫と同居している女との夫に関する会話は難しいのだろうか。
それぞれの立場から「そこにはいない男たちについて」話してみたい気もする。
作者は井上荒野。
最近思うのは、この男社会に生きていて、女性といえどもその価値観にからめとられているということ。
この作者は女性の心理をよく描いているとは思うものの、女性観・男性観に新しさが感じられない。
でも一冊では分からないので、この作者の他の本も読んでみようと思った。