バス運転士のち仕分け作業員のち病院の黒子 by松井昌司

2001年に自分でも予想外だったバス運転士になり、2019年に某物流拠点の仕分け作業員に転職、2023年に病院の黒子に…

怪人には… 青くて冷たい私

2012年03月25日 21時47分42秒 | バス運転士

あるバス停で一人の若い男が乗った。ICカードをタッチしたが、“残額不足”だったのでエラー音が鳴った。しかし… “怪人・耳栓男”は知らん顔して車内通路を後方へ歩いて行こうとしたので、私はすぐに腕を軽く掴んで振り向かせた。

一口に「耳栓男」と言っても様々で… 呼び止められてから「なんでしょう?」という感じで耳栓を外す人もいれば、バスに乗る前から耳栓を外している人もいる。どちらも“会話をする必要がある(あるかもしれない)”と思うから耳栓を外すのである。

ところが“怪人”は、呼び止められても外さない。だから“まだまだケツが青くて冷たい”私は… “耳栓を外さない=相手の話を聞くつもりがない=こちらから話しかけても意味がない”と思ってしまうので、黙って運賃箱の画面表示を指差す。

通常は、ここで支払方法(ICカードに入金してから精算するのか、ICカードを使用せずに現金だけで精算するのか、不足分だけを現金で精算するのか…)の選択をしてもらうのだが、いかんせん相手が“聞く耳を持っていない”ので、私は黙って見守るしかないのである。

すると、怪人は財布を取り出して100円を投入… しばらくして、もう100円を投入… 何か言いたい(聞きたい)ことがあったのかもしれないが、最後まで一言も喋らなかった。それどころか、私の方を見ることさえなかったのである。

せめて耳栓を外してくれれば… せめてこっちを向いてくれれば… しかし、青くて冷たい私は、最後に「ありがとうございます」と言っただけ… その言葉も、“どうせ何も聞いていない怪人に対して”ではなく、「これだけは言わなきゃ…」と思う自分の心を落ち着かせるためである。


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