極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

デジバイ融合

2012年11月09日 | 環境学・環境思想

 

 


                    死体は人の心に不安を呼びさます。最後の裁きを信じる
                      ものたちにも、そしてまた信じないものたちにも。

                                   ‐アンドレ・マルロ--



    幸薄き中に死んでいった妻を、彼は
    葬った。幸薄き中に、彼は
    日々ポーチに出て、そこで日が沈み、月が
    昇るのをじっと見ていた。
    日々は通り過ぎては、またそのまま戻ってくる
    みたいだ。この夢は前にも見たぞと思いながら
    見る夢のように。
    やってくるものは、何ひとつとして留まろうとしない。
    彼はナイフをつかって、りんごの皮を
    剥いた。りんごの中身、その白い
    果肉は、彼の目の前で、
    だんだん茶色になって、それから
    黒くなった。それが死のくたびれた顔!
    過去の光速。

 

 

 

                レイモンド・カーヴァーThe lighting speed of the past

                               
    村上春樹 訳 『過去の光速』   

  

 

【デジバイ融合】


電子通信部品をつくる職場にあれほど長くいるつもりはやかったものの、気がつけば定年までそこ
で仕事していた加減で、デジタルとバイオの融合は遠からずやって来ると朧気ながら感じていた。
しかし、電子デバイスのダウンサイジングがやがて分子レベルのナノ・スケール・ワールドに漸近
するが、三十年前ではこの来るべき世界の具体的なイメージを描けることはなかった。強いて言え
ば1966年の映画『ミクロ決死隊』が該当するかもしれないが、このところ具体的な事例がでてきて
いる。その例の1つが、東北大学 流体科学研究所らのグループによるバイオテンプレート極限加
工による高密度で配置・サイズ制御された無欠陥量子ドットの実現だ。



ところで、ナノ・スケールのデバイスではわずかな揺らぎでも大きくデバイス特性を左右するので、
解決手段として、上図ような中性粒子ビームは荷電粒子や放射光の基板への入射を抑制し、運動エ
ネルギーを持った中性粒子のみを照射することで、ダメージフリーの高精度表面反応プロセスが可
能な中性粒子ビーム照射技術を用いる。プラズマを利用したもの、熱エネルギーを利用したものな
ど数種類の中性粒子ビーム生成エッチング加工があるが、中性粒子ビームは、プラズマからの電荷
蓄積、放射光を抑制でき、50nm以下のダメージフリーの超高精度トップダウン加工が可能だ。また、
この技術は超LSIデバイス、量子効果デバイス、カーボンナノチューブ素子、有機分子素子、バイオ
デバイス、MEMSなどのナノデバイス製造に威力を発揮し、量子ドット太陽電池、量子ドットレーザ
ーなどに応用できる。



現在、その最有力な手法として、ボトムアップ技術とトップダウン加工技術の融合が注目され、ボ
トムアップ技術の中でも、バイオテクノロジーは極めて急速に進歩。奈良先端技術大学院大学の山
下一郎教授らは遺伝子操作により改質されたフェリチン変異体などを用いてナノサイズの金属を内
包したたんぱく質をつくり、それらの自己組織化によるナノ構造作製を実現。一方で、トップダウ
ン加工技術では、プラズマから放射される電荷や紫外線を抑制し、超低損傷で高精度のエッチング
の中性粒子ビーム技術を世界で初めて開発し、その効果を最先端超LSIで実証してみせた。




とはいえ、これは加工技術での領域の話なのだが、ミクロ決死隊のように生身の人間が縮小できる
わけではない。



ところで、経営再建中の半導体大手ルネサスエレクトロニクスの母体企業であるNEC、日立製作所、
三菱電機の3社は8日までに、政府系ファンドの産業革新機構がルネサスへの出資の前提として求め
ていた従業員約1000人の引き受けを拒否したとのアナウンスされている。
母体3社のうち、筆頭株
主のNECは内外で実施した1万人規模のリストラなどで要請拒否の理由になっている。
ルネサスは9
月下旬に募集した希望退職に約7500人が応募。今後、国内18工場を半減し、人員削減を進める。だ
が、革新機構はさらに3000~5000人の削減を求めており、このうち1000人を母体3社で引き受ける
よう要請していた。また、巨大な赤字を抱えるシャープが、国内の従業員を対象に1日に募集を開
始した早期退職の希望者が、定員(2千人程度)を超える見通しとなったため、募集期限を5日間
前倒しし、9日に打ち切るという。2年連続で巨額赤字となる見通しを1日に発表したため、応募
が急増したとみられるが、どこも厳しい雇用情勢にある。リストの厳しさを企業内労働組合の経験
で身をつまされる程知っている。「解雇は人の心に不安を呼びさます。」
冒頭のアンドレ・マルロ
ーの言葉をもじるわけではないが「後手の先」とは、経営(あるいは資本)が「先」で労働は「後」
は普遍なのだが、生活の保守や保身が先に立つと必ずその運動はタコ壺運動化し衰退する。そうな
らぬためどうすれば良いのか徹底的に考え抜いた若いころを思い出す。そして「しがみついては一
貫の終わり」という結論に辿り着く。そうならぬために「日常的に前向きに自己を開放し運動する」
という至極単純な結論だ。



それは「敢えて苦労する」という言葉に置き換えることもできる。「若いころは苦労は買ってでも
しろ」と息子達にいうとすかさず「鬼!」という言葉が返ってきたこともあったから、言う相手と
場面を推し量り発言しなければと反省したこともあったが、基本線そう思っている。そのときの母
親はというと、一言で「ゆるゆる」だということになるが事態を緩和するには役立っている。いま
では殆ど母親に報告、相談で、父親とは断絶状態に近い毎日が続いているが、したがって、いまは
細やかな煩瑣なことはすべて彼女に任せ、仕事づくりの構想に専念している。それが量子ドット型
太陽電池(色素増感・有機半導体も含む)製造と販売の事業化構想で、前述した加工方法の開発と
深く関わるもので大学名でいうと、岐阜、東京、京都、東北、山形大学の研究グループなのだが、
要は常に前を向いて行動するということに尽きる。

 

ところで、彼女と言えば、介護の経験からか健康管理がいよいよ厳密になって来ているようだ。も
ともと綺麗好きな性格によるものだがサニタリー(ユニット、ウェア、スペース)におかれている、
イソジン
うがい薬、泡ハンドソープ「きれいきれい」、「どこでも手 除菌」に、新たに、抗ウィル
ス除菌消臭剤の「クリー
ンナチュレ」がアイテムに加わった。老人子供にはノロウィルスは厄介な
ものだからそれも有りかと思う反面、多少大雑把な方が健康ではないかとレジストしたりする。こ
うして我が家では、彼女と僕がデジバイ融和しているのだと無理からまとめにかかっている次第。

 

コメント
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