極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

バイオプラスチックな007号

2012年11月29日 | 新弥生時代




 

 

【フレミングのボンド】

ジェームズ・ボンド(James Bond)は、英国作家イアン・フレミング(1908年~1964年)のスパイ小説と
映画の主人公のことで、主人公には、任務遂行中は自分の一存で容疑者を殺めても不問にされる殺人許可
証(「殺しのライセンス」という惹句(じゃっく)でしばしば表現される)が与えられており、「007」
(00セクションに所属する7番の番号を振られたエージェント)のコードネームをもつ英国情報部のエー
ス諜報員であることは周知のごとく。スパイ以前の事を語るシーンは一度もないが、小説では第二次世界
大戦帰還兵で、父アンドリューはヴィカーズ・ディフェンス・システムズ社に勤めるスコットランド人、
母モニク・ドラウはスイス人。両親はジェームズが11歳の時にフレンチ・アルプスを登山中に事故死して
しまう。その後叔母のチャーミアンに引き取られ育てられたという設定となっている。 誕生日は映画に
よってそれぞれ違い、『007 カジノロワイヤル』では1968年4月13日、ベルリン生まれという事になって
いるから、今年で44歳という若さだ!それでいて、原作では尿酸値過多、肝疾患、リウマチ、高血圧、頭
痛などを抱えており医者から「長生きできない」と忠告されているというからタフネスとはほど遠いよう
に思われる。

    Shaken, not stirred

DiamondsAreForeverFirst.jpg   Diamonds Are Forever

原作者のフレミングは様々な職業を転々とし、ジャーナリストの経験もあったが、第二次世界大戦中は英
国情報部(SOE―特別作戦部)で対敵諜報工作に携わっており、この経験を活かして007を書いたと言わ
れる。「ジェームズ・ボンド」という、英語圏ではやや凡庸な印象の強い名前は、戦前の活劇映画的な華
やかな印象の名を、フレミングが意識的に避けたものである。フレミングが愛読する鳥類研究書の著者名
をいただいたとされるが、ジェームズは古代ユダヤの大族長ヤコブの現代名であることから、ジェームス・
ボンドの「007は殺しの番号」はカインの復讐数である7を受け継いでいるからであり、7とは、ユダ
ヤ人が他民族に対してかけた呪いの数字であって、ゆえに「死ぬのは奴らだ(非ユダヤ人)」となるのだ
という解釈をし、聖書に登場するユダヤ人の先祖、レメクが誓った復讐数77と結びつけるものもある。


       わたしを傷つけるならば、わたしは人を殺し、
       わたしに打ち傷を与えるならば、若者を殺す。
       カインのための復讐が7倍ならば、
       レメクのためには77倍 


                    『旧約聖書 創世記』フランシスコ会聖書研究所訳

ここで、レメク(Lamech)は、旧約聖書の『創世記』に登場する人物。メトサエルの子とされ、アダとチ
ラという二人の妻をめとった。アダはヤバルとユバルを生み、ヤバルは遊牧民の始祖となり、ユバルは演
奏家の始祖となった。チラはトバルカインを生み、トバルカインは鍛冶屋となった。またトバルカインに
はナアマという妹がいた。レメクは妻達に、自ら受ける傷の77倍の復讐をすると豪語したことが伝えられ
ている。また、レメクは古代の征服王で彼の引き起こした戦争のために多くの若者たちが死に、全土に母
親たちの鳴き声が響いたと語り継がれている。これは、聖書の神ヤハウエが戦争を追い求める悪神でレメ
クは「武闘信仰に賢き王」(=「ヘラクレス」)と呼ばれるという。※『マグダラのマリアの部屋

   007 From Russia With Love theme Song

 さて、話を戻す。フレミングの小説「007シリーズ」は1953年の第1作『カジノ・ロワイヤル』に始まって、
フレミングが没する1964年まで書き継がれる。当初はそれなりの評価を得ながらもあまり売れなかったが
映像化の話がありシリーズは継続される。本格的に売れ始めるのは1950年代後半で、フレミングと縁があ
ったケネディ米大統領が『ロシアから愛をこめて』を愛読書のリストの中に入れたことによる。実は007を
愛読していたのはケネディ夫人のジャクリーンだったとも言われているが。ところで、その作風は、従来
の英国の主流であった重厚なリアリズム派スパイ小説とは対極にあり、華やかで享楽的な設定の中で、米
国のハードボイルド小説の影響を受けたもの。『カジノ・ロワイヤル』はその好例だが、やがて、西部劇
やスペースオペラさながらの「悪役から美女を救い出す」凡庸なパターンにはまってしまった結果、1950
年代末期以降の作品はマンネリ化し、誇大妄想的な設定が多くなる(1959年の『ゴールドフィンガー』な
ど)。超人的なプレイボーイのスパイをヒーローとし、グラマラスな美女を配した「洗練されたマッチョ
イズム」の物語は大衆の嗜好に合致し、また冷戦状況下では、東側諸国を絶対悪に擬す安易な設定が濫用
し、1950年代後半以降、膨大な量の007亜流小説が世界各国に氾濫。映画・コミックへの影響も非常に多大
である。敵の手に落ちて拷問を受ける場面もこの種のヒーローとしては非常に多く、作家の小泉喜美子は
『メインディッシュはミステリー』で「優雅なサディズム」と評した。

  Nancy Sinatra - You Only Live Twice

わたしが初めてジェームスボンドの小説を知ったのは、『007は二度死ぬ』と『007ダイヤモンドは
永遠に』。バイト先の本の卸商で手に入れた
中学生のころだと思っているが定かでない。そのときに「ウ
オッカ・マティニーはステアでなくシェイクで」という台詞が目に焼き付いている。実はこの台詞が全世
界的に流行したことを知るのはずっと後になってからである。

      Diamonds Are Forever

 

 

【バイオプラスチックの行方】

 

バイオブラスチック、中でもバイオマスプラスチックが注目を集めている。20世紀は石油化学の著しい進
歩とともに多くの有用なプラスチック素材が開発され、生活のあらゆる分野に利用されるようになった。
また、様々な生産・加工技術の発展もめざましく、工業材料としての活用の範囲は現在も日々拡大している
21世紀におけるプラスチック素材としてはこれらの有用性・利便性に加えて地球環境への配慮を基礎に置
いた素材であることが求められ、そうした要請に適う素材としてバイオマスプラスチックが注目されてい
るのだ。バイオマスプラスチックの供給は、現在もポリ乳酸が主体であるが、2010年代に入り、新規のバ
イオマスプラスチック材料の供給、従来の石油化学系プラスチックの原料のバイオマス化など、様々な動
きが拡大し、ポリ乳酸については、先発の米国Nature WorksLLCが米国での年産14万tの1号プラントに
加え、同規模の2号プラントをタイ国Petroleum uthorityof Thailand (PTT)との協同でアジア立地で稼働させ
る計画を公表した。2007年より5,000tの生産プラントで市場供給を開始した中国の浙江海正生物材村社は
3万tへの増設計画を公表している。また、Puracのタイでの10万t規模の乳酸供給も原料として注目され
ている。



ポリ乳酸に次ぐバイオマスプラスチックの工業的供給としては、米国TellesPHA「ミレル」年産5万tプ
ラントがすでに完成し、2011年からは、特定契約先向けの供給が始まった。加えて、市場開拓のアクティビ
ティーを上げてきているDupontのポリトリメチレンテレフタレート(PTT、商品名ソロナ)等、市場拡大の
方向にある。一方で、汎用の石化原料である、エチレン、エチレングリコール等をバイオマス・バイオエ
タノール経由で製造する計画も進んでおり、2011年には汎用プラスチックの代表であるポリエチレンをバ
イオエタノール原料により供給する、ブラジルBraskem S.A.の高密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチ
レンの供給が開始されている。
 


2010年代に入り、バイオマスプラスチックの取組みは新しい時代に入った。ポリ乳酸に代表される新規素
材型バイオマスプラスチックに加え、バイオポリエチレン、バイオPETに代表される既存の石油資源由来プ
ラスチックのバイオマス原料化か始まっている。いずれのタイプが今後の主流になるかは、両者ともその
経済合理性がどのような形で市場に受け入れられるかにより、普及の時期も含めて帰趨が決まると考えら
れている
。このようにバイオプラスチック分野の先駆的役割を日本が果たし、ブログテーマの1つである
『新弥生時代』を早期に実現することで、より繊細でタフ(強靱)な文化を構築することができるだろう
と。それはジェイムス・ボンドの活躍する映画のイメージでないことは確かだとわたしには思える。そう
「バイオブラスチックな007号」だと。

 

コメント
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