かって、『マルチメディアマインド』の著者で現東大新領域創成科学研究科教授の浜野保樹が
映画・出版・アニメのメデイアのコンテンツサイドからデジタル革命とは「マルチメディアの
別称」と呼んだのに対し、わたしはプラットファームとソフト(言い換えると写真製版・電気
通信技術をベースとした装置産業)サイドから「アドホックなキルケゴール」と呼び直したの
だったが、そのデジタル革命の源泉であるテクノロジーは、より小さく、より細かな領域の限
界に挑んできた。それはミクロの世界で物質が新たな表情を見せるから。電子や光は波である
と同時に、粒子である量子力学世界の深耕過程でもあった。あのアインシュタインでさえ、当
初は「神はサイコロを振らない」と主張し、確率論的に振る舞うこの現象を受け入れなかった
という。量子ドット(=量子粒)はその名の通り、量子力学的に振る舞う小さな粒であり、レ
ーザーや太陽電池から、夢の量子コンピューターまで、ミクロの世界に大きな宇宙が横たわっ
ている。ノーベル物理学賞受賞者の江崎玲於奈が1970年に提唱した「超格子」の概念を皮切り
に、彼のトンネルダイオード(=エサキダイオード)の発明で73年にノーベル賞を受賞、薄い
薄膜を周期的に積み上げた超格子構造も提案している。この超格子は電子を閉じ込める薄い膜
と、電子がトンネル現象で通り抜ける障壁膜とを交互に重ねた構造を持ち、人工的な構造を作
り、電子の量子力学的な性質を制御するアイデアは当時、材料のパラダイムシフト(思考の大
転換)と表現され、超格子構造の研究が世界中で盛んになる。
80年に富士通はこの原理を素子に応用し高電子移動度トランジスタ(HEMT)を発表したが、東
京大学教授の荒川泰彦と豊田工業大学副学長の榊裕之が、82年に新概念「量子ドットを」提唱
する。直径が十数ナノメートルの微塵な半導体粒子で、3次元空間に電子を完全に閉じ込めて
しまう。あたかも原子のように振る舞うため「人工原子」とも呼ばれた。量子ドットの物性研
究は筑波大学や京都大学など大学を中心となる一方で、いち早く応用が進んだのがバイオや医
療分野への応用展開だ。パナソニックが奈良先端科学技術大学院大学と共同で、バイオ分子で
量子ドットメモリーを作製。九州工業大学はロボット応用を目指し、量子ドットで脳型の情報
処理素子を研究する(「デジタルとバイオの融合」→デジタル革命の基本特性、第3則のボー
ダレスに該当)。また、デバイス応用では、通信用レーザーが実用化間近だ。04年に荒川と富
士通は共同で、世界で初めて量子ドットレーザー開発に成功する。これは、量子ドットを半導
体レーザーの活性層に挟むとドットに閉じ込めた多数の電子が一度に発光し、レーザー特性が
飛躍的に上がる。当時、通信用の半導体レーザーは温度依存性の欠点があったが、量子ドット
レーザーは温度に依存しないので、冷却装置不要で低消費電力、安価に作れる(基本特性、第
4則、デフレーションに該当)。現在ではレーザー特性の最高性能は、量子ドットレーザーに
ほぼ塗り替えられたという。当時は夢の構造だった量子ドットレーザーは、当初、懐疑的な見
方が強かった。荒川自身も百年以前、量子ドットのデバイス応用を信じる人は多くはなかった」
と語っている。06年には富士通と三井物産が出資してベンチャー、QDレーザを設立。量産に向
く有機金属気相成長法(MOCVD)で、1.3マイクロメートル帯のレーザーを作製。生産体制が整
い本格量産に乗り出す。社長の菅原充は、この1、2年で株式上場を予定している。まずは家庭
用光ファイバー通信回線(FTTH)向け市場に参入し、さらに長距離通信に向く1.55マイクロメ
ートル帯のレーザーを製品化する方針。従来の半導体でも実現が困難だった緑色レーザーの開
発にも成功、将来は通信用のほか、DVDなど民生用市場も狙うと話す。
量子ドットの応用は多岐にわたるが、その中でなんといっても、次世代太陽電池の有力候補と
される量子ドット太陽電池。これが実現すれば、地に塗られた世界の地下化石燃料争奪の歴史
に幕を引き、さらには、地球温暖化対策や持続可能な社会の実現のためのバーゲンパワー(切
り札)となる。これは、太陽光エネルギーの理論上の変換効率が60%超えを意味し、シリコン
系の2倍以上に相当する。このことは、デジタル革命の基本特性、第2則のダウンサイジング
に該当し、現在の馬鹿でかいソーラパネルのイメージが払拭されることになる。この分野の第
一人者の東大准教授の岡田至崇は「15年ごろ実用化したい」と話している。そればかりではな
い。将来は、1個の電子で動く単電子トランジスタや単電子メモリーが実現し、単一光子の発
生が、次世代の量子暗号通信や超高速な量子コンピューターの実現に実を結ぶ社会の到来を意
味する。量子ドットつまり、量子粒が未来のテクノロジーのコアになる。それは不可能でなく
限りなく近未来に実現する社会であることに疑いはないといえる。
【日本未来の党】
朝起きて、テレビで嘉田由紀子知事と小沢一郎の国民の生活が第一が合流するというニュース
を観て思わず「うぇ~へぇ~え~~」と声を上げてしまった。衆院選に向け、新党は「日本未
来の党」だという。嘉田知事は当日まで悩みに悩んだ末、知事職のまま政治活動を行うことを
決めたというが、小沢が解党合流を決めたというのも輪をかけた。維新と太陽の党の動きは結
果的には似ている。元民主党の小沢と嘉田の合流は、スポット嵌り込んだ感じだ。勿論、みん
なの党がシックリするという風な感想をブログ記載したこともあったが、一番は維新の会への
幻滅感にある。新しい時代にはそれにふさわしい新しい理念、理論、政策(制度設計)がいる
にもかかわらず、旧態依然と鈍重な政党政治は解体されるべきだし、千年に一度の大震災と原
発事後が起きたというのに金がないから復興できないとか、復興予算の便益分析(査定)も曖
昧な政治の未熟さに苦々しく、また、どえらい試練に、岐路に立たされ、あわてふためき、右
往左往し、ことの重大さに立ち向かうだけの胆力のなさが、やけに目につくのだが、それもこ
れも、震災と福島第一原発事故の衝撃力がもたらしたものだ。
嘉田知事は、「琵琶湖は若狭地域にある原発から30キロ圏内。知事として守りたいという思い
から」と、国政進出への経緯を説明。原発ゼロを目指す「卒原発」など6つの軸の政策「びわ
こ宣言」を発表。宣言に賛同を表明した著名人リストも公開され、音楽家・坂本龍一、俳優業
引退をほのめかした菅原文太ら5人が連名。菅原は「日本のメルケルになってください」と、
ドイツの女性首相アンゲラ・メルケルの名を挙げ、激励メッセージを送ったという。また嘉田
自身は出馬せず、代表代行に就任する大阪市特別顧問の環境学者・飯田哲也氏も「白紙」とし
ている。擁立候補者も決まっておらず、12月4日の公示までに国会議員5人以上という政党要
件クリアも既成政党頼りだったが連携の輪は急速に拡大したという。文書での呼び掛けを受け
生活の小沢氏はすぐさま反応。「日本未来の党と合流し、一緒に選挙を戦うことを決めた」と
、解党→合流を決定した。生活は、前週の24日から選挙用ポスターの作製をいったんストッ
プさせ、剛腕でならした小沢氏が、“電撃合体”へ向けて水面下で調整。「みどりの風」も、
参院議員4人で党は存続させるが、前衆院議員3人で「一緒に戦う」と連携を決定していたと
いう(スポーツ報知、2012.11.27)。
産経ニュース 2012.11.27
「嘉田新党の「びわこ宣言」の賛同者に京セラ名誉会長の稲盛和夫氏ら5人」
シングルイシュー政党と揶揄されそうではあるが、原発政策の賛否を決する国民投票がないな
か、その意味は大変大きなものがある。どうも落ち着くところに落ち着いたような気がする。
【分裂肥大症の地球村】
そうかと思えば、米国メディアの27日付けの報道によれば、同国の宇宙ベンチャー、スペース
X社の創業者で最高経営責任者(CEO)であるイーロン・マスクがこのほど、英ロンドンの
王立天文学会でのスピーチで、火星に地球から8万人を移住させる計画を発表した。今後15~
20年で地球から火星に8万人を移住させ、火星で自給自足の生活を送り、子孫を残していくと
の内容で、人類にとっての「生命保険」となるとしていると発言したという。今ある足下の危
機に対処することなく火星移住なんて、極東に住むわたし(たち)日本人には考えられないこ
とだが、それも恣意的自由の拡大で、社会発展のバロメータというわけかと「サイコロをふり
続ける人類」の有り様の振れ幅を「量子粒」と「未来の党」と「火星移住計画」と重ね合わせ
てみたが、どうもう酒も飲まずに悪酔いしそうな気分に襲われた。これって、やはり疲れが取
れない所為かな?