<金曜は本の紹介>
「激安なのに丸儲けできる価格のカラクリ(坂口孝則)」の購入はコチラ
この本は、家電量販店やマクドナルド、ディズニーランドやスナックなどの具体例を示しながら、儲けのカラクリやポイント制度のカラクリ、価格設定のカラクリ等について書かれた本です。特に以下のことはなるほどなぁと思いました。
・価格差は、地理的なものだけでなく、時間的な差異にもある
・ディズニーランドの儲けは入場費では賄えず、商品と飲食をできるだけ消費してもらうこと
・販売価格から変動費を引いた限界利益が少しでもあれば利益を増やせる
・ポイント制度は無利子だからお店に有利(逆に客はポイントはすぐに使った方が有利)
・客がいないスナックが長続きできるのは固定費が少ないから
そして、この本で一番驚愕したのは、マルチ商法などの裏手口です。
おだてる、追い込む、帰らせない、騙す、洗脳すると人の財布を開かせることができるということを具体的に示していて、なるほどと思いました。
また自分の人生を振り返ってみて、それらに騙された人もいたなぁ、そしてそういうことだったのかと納得してしまいました。
この本の第5章を読むだけでも価値があると思います。自分の人生を失敗させないために読むことをとてもオススメします!
以下はこの本のポイントなどです。
・マクドナルドでは、1人のお客をさばくのに3分かかる、という計算だと思ってもいい。すると、100円バーガーを1個販売するのと、セットを販売するのとでは、1人のお客をさばくための女性のバイト費は、変化しない。すると、ドリンクとポテトに発生すると思われていたその40円は消え、トクだと思っていたはずのセットの価格は、むしろ店側に利益をもたらすのである。単品の原価だけを見ると、それぞれのコストが単純に足し算されるように思える。しかし、複数の商品を同時に販売できるとき、その人件費分を薄めることができる。これは、個別の原価だけを計算しても見えてこないことなのである。小売業の世界では、これを「粗利益ミックス」と呼ぶ。乱暴な説明をすれば、「損して得とれ」ということであり、単品の利益だけを見るのではなく、販売実態などを加味して全体的な利益を確保する指標である。ここで明らかになるのは、ファーストフード店の儲けのカラクリは、
1.価格の差別化による、売上の最大化
2.商品ミックス(セット販売)による利益の最大化
ということができる。「100円バーガー」という名称はインパクトがあり、広く消費者に知れわたることになる。しかし、その裏側にあるカラクリに気づく人はなかなかいない。ただ、1つ覚えておくべきは、「商売において、儲かるところは語られない」ということである。「100円バーガーでどうやって儲けているのか?」という問いは、正しく「100円バーガーという宣伝商品を活用してどうやって儲けているのか?」という問いに訂正されねばならないのだ。
・信じられないかもしれないが、食肉はマイナス25℃ほどえ、ちゃんとした冷凍を施していれば、1年は食用として耐えうる。その凍結方法にはいろいろなものがあり、液体圧力によるもの、トンネルフリーザー(ベルトコンベアに乗せて、冷凍化するもの)、CAS法(細胞を殺さず凍結さえる特殊技術)などさまざまだ。保管方法は注意する必要があり、温度条件が悪いと変色し「メト化(メトミオグロビン化)」という状態になる。早い話が変色して、見た目が悪化し、商品価値が落ちてしまう。そこで、冷凍肉は、冷凍から消費機嫌が迫ってくるに従って、どんどん安くなっていく。キロ当たり1000円だったものは、90%オフのキロ100円という価格が実現していく。冷凍肉を保有している卸にとっても、そのまま廃棄してしまうより販売してしまったほうがよいので、なんとか処理しようとする。「1トンほど肉があまっているんだけど、キロ200円でいいから買わない?」そんな電話が全国のブローカーから、食品のバイヤーや取引業者にかかってくる。もちろん、買うか買わないかは各人の自由だ。味の違いは、調理してしまえばさほどないから、安い肉を買いたい業者はそれを引き取る。よく「弁当屋を替えたら、おかずが一品増えました」などと言う人がいる。また、通常の原価計算ではありえない安い価格で弁当を販売している業者もいる。それは、「当たり前」ではない仕入れをしているためである。市場にあふれる価格差を利用し、他者が不要になった食品を買い集めて、お客に提供する。このモデルは、毎日規定品を作る必要がなく、その日に応じて食材を変更できる弁当屋だから実現できる。コンビニなど大手チェーンで、300円弁当が成立するのは、大量発注による材料費の削減と、大量生産による製造コストの切り詰め、そして人件費のミニマム化があった。しかし、小さな弁当屋でも300円弁当が成立することがある。それは、時間による価格差を利用することでコストを抑え、小が大に対等に勝負を挑むということを可能にしているのである。
・最近、世間で話題になった商品に10円コーヒーというものがある。このように市価と比して常識的に「ありえない」価格を設定する場合には、可能性が3つしかない。
1 売れ残り商品である、もしくは製造元が倒産した、などの理由により、廃棄するより1円であっても販売したほうがマシであるもの(バーゲンモデル)
2 フロンエンド商品(客寄せ商品)として活用され、その赤字を補てんしてあまりあるバックエンド商品(本命商品)に誘導するもの(フロント-バックエンドモデル)
3 それをお客に提供することによって、スポンサーからお金が支払われるもの(宣伝・広告モデル)
・ディズニーランドがお客からのチケット収入だけで、お客にはアトラクションだけを楽しんでもらう費用構造だったとしたらどうだろう。それでは今のようには儲からない。お客にチケットを買って入場してもらい、滞在時間のうちに、商品と飲食をできるだけ消費してもらうこと-。ここに儲けのカラクリが存在する。そして、それはもちろんディズニーというブランドへの崇拝と、他のテーマパークと比してその信仰心を圧倒的に集められるところに、その凄さがある。「揺りかごから墓場まで」という言葉があるように、ディズニーは「子どものころは親に同伴され愉しさを感じ」「青年期は恋人とデートで胸を躍らせ」「親になったときは子どもを連れてくる」という、人生のライフステージすべてに対応し、その接触時間の長さから商品・飲食を消費させるビジネスモデルなのである。
・価格から変動費を引いたものを「限界利益」と呼ぶ。見た目は固定費を回収できていない赤字であっても、変動費ギリギリまでは価格を下げることができ、利益に貢献する。旅行会社などはオフシーズン時に変動費ギリギリの価格設定をすることが多い。
・お金は利子というものを受けては、それを元手に加算することによって、さらに増えていく。お店のポイントは、お客にとっては自己増殖しないものである。ただ、お店側からしたら、ポイントとは、「お客から無利子で預かっている資金」と同じである、とも述べた。ということは、お店側は、その無利子で構わないはずのポイントを運用すれば、その差額は自社の利得となる。
・ポイント制度に対する消費者側の優れた態度は、「ポイントを貯めることを自己目的化せず、目の前の商品が本当に安いかを確認して買う」、「ポイントをバックする店ではなく、現金値引きの店で買う」、「ポイントを残さず、常に使い切る」
・既存の繁盛店があるところに新規店も集まり、それら店同士の勝敗は資本の量によって決まる。また、消費者としてはその競争状態を利用することになる。
・ダイエットが大変人気でしたから、海外から最新のダイエット本や教材を買ってきて、それを翻訳し、使用前・使用後の女性の写真をCGででっち上げ、過激にあおるセールス文章とともにインターネットにアップロードしておけば、何万円もするダイエット情報教材が飛ぶように売れていくのです。「努力しないで」「誰でも」「簡単に」やせる、ということが大事のようでした。また、ダイエット食品であれば、「人気につき、お一人様2個まで」という限定が効きます。考えれば、同じお客にまとめて売ったほうが良いわけですから、「人気につき」と限定はつながっていませんが、そのような詮索は無用です。そして、やせたあとに、どれだけ素晴らしい人生が待っているかを強調することが大切なようです。
・以下はある男の手記です。人間は、1人では何も決められず、選択を他人にゆだねたい。そういうことなのです。実は人間は選択することは大変苦手なものです。商品には、「売れ筋です」と、たいして売れてもいないのに張り紙をしておくことになっています。これは、人が他の客の判断を知り、それにゆだねたいからです。たまにwebの販売サイトに、購入者の声が長々と掲載されることがありますが、これも同じ効果を狙ったものです。
・人の財布を開かせるには、
①おだてる、追い込む、帰らせない
②騙す
③洗脳する
の3つのどれかを実行するだけでよかったのです。
・①から説明します。会社間の取引において、お客を取り囲むことによって、断ることのできない雰囲気を醸成する、というものがあります。お客からしたら、単純に見積もりを依頼しただけかもしれませんが、大勢で押しかけて「試作品を作ってしまいましょう」とか「ウチではプロジェクトチームを発足させました」とか「社運を賭けています」などとたたみかけ、お客がとても逃げることのできない状況を作ってしまうのです。強引な営業で名高い企業によっては、打ち合わせ前に必ず相手先の打ち合わせ出席人数を訊きだし、それ以上の人間を連れていくことが慣例となっていることろもあります。
・いつでしたか、自分が知人のスタッフたちと地方の公民館で「老人サービス」を行ったときのことです。地元の老人たちを入口付近のテーブルの前に集め、それをぐるっとスタッフが囲みました。自分が「今日はお越しいただき、ありがとうございます」と言いました。すると、老人たちを囲んだスタッフたちが「ありがとうございましたー」といっせいに繰り返すのです。老人たちは戸惑いながらも、小声で、「ありがとうございました」と言いました。自分は老人たちにチケットを渡し、ガラガラくじをまわし、その老人たちすべてに、「大当たりですー」と叫びながら、無償でプレゼントを渡しました。意味不明な記号を書いておいて、適当に「2等です」とか「特賞です」とかやるわけです。もちろん、スタッフたちは、そのプレゼントを渡すたびに「おめでとうございまーす」と笑顔で合唱することを忘れません。その後、自分は言いました。「では、これから違う会場に移動しましょう」。スタッフは、「はーい」と笑顔で繰り返しました。老人たちも、その掛け声につられて、首を縦に振りながら、公民館の奥に吸い込まれて行きました。そこでは、待ち構えていたスタッフが、空気清浄機と浄水器と、高価な着物を販売しだします。一部、帰ろうとする不遜な老人もいましたが、そこはスタッフが、「あれだけプレゼントを差し上げたのですから、お話くらい聞いてくださいよ」と言って止めています。そこは、公民館の中、閉じた空間なのです。これは、心理学の用語で「返報性のルール」と呼ぶとあとで知りましたが、一度何かをもらったあとでは、なかなかオファーを断ることができません。最後は、「サインでいいから」と言って、契約をまとめあげ、商品と請求書をその老人宅あてに送ってしまいます。多くの老人は、若いスタッフの勧誘を断る気力も持ち合わせておりませんから、その場から解放してくれるのなら、とついつい高額な契約書にサインしてしまうのです。人間には根気が必要ですが、なかなかご老体になってまで断る根気を持ち続けている人は少ないようでした。
・同じく自分は、知人たちと奥様方とこの遊戯を行ったことがあります。まず団地や集合住宅に出向き、「生活支援団体」とか名乗って、奥様方に日用雑貨類を非常に安く、あるいはタダで配ってしまうのです。そして、それを何回か続けたあとに、「今度、船上のディナーパーティーがありますので、お越しください」と誘います。なぜ、「生活支援団体」とディナーパーティーが関係あるのか、などと野暮な詮索は無用です。奥様方は退屈していらっしゃいますので、その無関係さには目をつぶっていただける、あるいはまったく気づきません。そして、安そうな一張羅に身を包んだ奥様方がお越しになりましたら、真っ暗な空間で幻想的な照明を照らします。その後、落ちぶれかけたギャラの安い歌手のショーを始めます。奥様方は、これが無料でよいのかと思いながらも、大変楽しんでくれます。その後、ほろ酔いの奥様方の前で、貴金属類の紹介を開始します。この値段で、このカラットのダイヤは買えないとか、お集まりの奥様方にはとても似合うだとか。そして、決めゼリフは、「家事や洗濯に育児に、みなさまお疲れでしょう。しかも、旦那は、ちっともその苦労をわかってくれない。だからこそ、そんな自分にご褒美をあげましょう」です。日本語としては、「だからこそ」以降がつながっていないのですが、そんな心配は要りません。あとは、スタッフが執拗に奥様方に勧め、船上ですから逃げることもできず、多くの奥様方は、数千円の原価の「宝石」を50万円ほどで契約してくれます。船上の貸切も、不景気のときであれば100名以上で、1人3000円程度です。芸能人のギャラ50万円を加算しても、100万円弱。これなら、お二人の奥様と契約を結ぶことができれば、元は取れるというわけです。たいていの奥様方は、帰宅したあとに「なぜこんなものを買ってしまったんだ」と後悔することになるわけですが、50万円、多くて100万円ですから夫に相談することもためらわれて、自分のヘソクリのなかからなんとか支払って、その買い物は表に出ないまま闇に消えるというわけです。
・次に自分が手を染めたのは、「②騙す」でした。マンションの一室を借り、ある男を占い師のような格好をさせて、待機させておいたのです。すると、そこに、奥様方がお二人いらっしゃいます。一方は紹介者。もう一方は悩みを抱えている奥様です。「ここの占いはよく当たる」と紹介者は言ってくださいました。そこで、その占い師は、相談者の状況を次々に当てていきます。息子が中学受験に失敗したこと。実は夫と不仲になっていること。姑との軋轢。両親の病気。そして、「あなたご自身にも、何か感じる・・・・・」。占い師はここで間を置きます。「もしかして、持病でも・・・・?」「ええ、実は・・・・」「糖尿病では?」「え、なぜ?その通りで・・・・」「うわああ、やっぱり。それは大変なことになる」相談者に糖尿の気があることを当てた占い師は、たいそう驚き、のこぞってみせます。首を横に振る占い師。あまりに当たってしまうため、相談者の奥様は「私はどうしたらよいのでしょう?」と必死の形相で尋ねます。奥様は泣き崩れる寸前です。すると、占い師は奥に行き、1つの壷を差し出します。「奇跡のつぼというものです。あなたからはマイナスのオーラが出ています。先祖の祟りのせいでしょう。ただ、これを身近に置いておけば・・・・・」「置いておけば・・・・・?」「救われます。あとは、先祖への祈りを繰り返すことと、信じることです」そうやって、何の苦労もなく、奥様には200万円ほどの壷をお買い上げいただいたのです。船上パーティーよりも、簡単で、かつ効率的でした。そして、その後、再びやってきた紹介者の奥様に、50万円をキックバックしておしまいです。キックバックを渡す理由は、その紹介者の奥様から情報を入手したためですから、「情報料」と言ってよいかもしれません。事前にご紹介いただく奥様の情報が詳しいほどこの壷商法はうまくいきます。
・自分は、「富が富を生む、奇跡の多層マーケティング」という小冊子を渡しました。洗剤やサプリメント、健康飲料水などを販売すると、その下の会員が販売するたびにその5%が上位者に入る仕組みです。自分は、商品の原価を3割ほどに設定しましたので、手数料を加算しても、十分に利益を確保できました。この商売の優れているところは、割引する主体が、自分たちではなくそれを買った会員ということです。そのバイブルにはまず「このビジネスの素晴らしさを伝えるために、最初は自己の裁量で割引して販売し、マージンが入金された銀行口座のコピーを見せてあげなさい」と書いておきまいsた。「それを見た子会員は、あなたの商品を買い始めます。だから、最初の出費は必須なのです。」この手の商品に対して、「バックマージン分が加算されていて高いはずなのに、なぜ売れるのか」という質問があります。しかし、それは、
・そもそも商品ではなく、その先にある「金銭的自由の夢」を販売している
・それを買った会員が、販売の初速を上げるために、割引して販売する
というのが「答え」なのです。
先輩会員から銀行口座に振り込まれた入金額を見せられて、下層会員は興奮のるつぼと化すことがあります。しかし、その振込み額の源泉のほとんとは、その親会員が自分の身を削っているものだということを知る人はなかなかいません。どの商売でも、支払われた額以上の利益を確保することができないのです。
・人は、根源的な誤解を持ちがちです。
◎根拠なく、「いつか自分に逆転劇が起こるはずだ」という誤解(「運命」についての誤解)
◎努力をしていないのに、「あの人にできるのだから、自分もできるはずだ」という誤解(「自己能力」についての誤解)
◎あまり知識がないのに、「誰もが知らない、絶対儲かるビジネスを見つけた」という誤解(「発見」についての誤解)
何もせず「運命」が好転するはずはなく、未熟な「能力」の人が勝ち続けることはできず、そう簡単にすごいビジネスチャンスを「発見」できるはずはありません。そのようなことを、彼ら/彼女らに啓示できただけでも、自分の価値はあったのだろう、と思います。
・宗教の世界でのターゲットは、かつて「貧・病・争」と言われていたのをご存知でしょうか。「貧しき者」「病んだ者」「争いに巻き込まれる者」には、それぞれ心に穴が開いておりますから、彼らを救済する名目が、時代のニーズにもぴったり合致していたのです。しかしこれらは、現代日本からは消え去ろうとしています。これは、日本の宗教ビジネスを考えるうえで、決定的な打撃だったのです。そこで、バブル期は、「銀・看・保」というフレーズが誕生しました。「銀行員」「看護婦」「保育士」の女性のことです。バブル華やかなりしころであっても、仕事で苦しんでいる子羊がおりましたから、代わりに彼女たちの心の隙間を埋めようとする勢力が興り、それなりに成功しました。現代では、「独・高・女」というフレーズに置き換わっています。「独身で」「高学歴な」「女性たち」というわけです。キャリア志向の高まった時代においても、やはり孤独ということに耐えられるほど人間は強くありません。ですから、彼女たちの将来に対する漠然とした不安を、取り除いてあげるのです。
・当初、自分は合宿セミナー参加に高額を要求することで、このビジネスモデルを成立させようとしました。しかし、セミナーを安価にし、参加者を増やし、参加者を洗脳することで将来にわたって金を支払い続けさせることができると理解したのです。洗脳は、宗教の基本となります。「はまり込みすぎたら、その女性の人生を破壊してしまうのでは」という疑問も私の頭によぎりました。しかし、常に人生のリターンとは、リスクと背中合わせにあるのです。自分の捏造した教義であっても、それに熱中することで、人生の幸福を得ることができれば、素晴らしいことではないですか。自分が、彼女たちを集めてやったことは、単純なことです。泊りがけで、「魂の洗浄」と称して、自分の書いた教義を、繰り返し繰り返し叫ばせるだけでした。「神は天より降りて、唯一の救世主に魂をお贈り下さる。魂の浄化は・・・・」などというフレーズをずっと復唱させるのです。人間とは、かくもたやすく洗脳されるものでしょうか。どうも、人間は同じことをずっと口に出し続けていれば、すぐに既存の概念が刷り変わるようです。暗く、人里はなれたところに集めますから、彼女たちは逃げることはできません。これも船上パーティーの応用です。彼女たちには、脳が疲れ果てて、ある種の幻覚状態になるまで、フレーズの復唱をしてもらいmさう。これは、脳科学の研究成果を応用したものです。人は狭い空間に閉じ込められ、数日も経つと幻覚を見るといいます。脳は退屈なことが許容できず、日常の普遍に対して、幻覚を見せてさえ対抗するというのです。自分は、彼女たちを発狂寸前まで追い込んでから解放し、そこで自分の教義を詰め込みました。同じことを繰り返し、ルーチンの中で退屈を極めた女性たちは、自分の教義を何の疑問もなく受けいれてくれました。最初は、占い師から誘われた軽いセミナーだったはずなのに、もう女性たちは自分が抜けることのできないあり地獄におちてしまったことに気づかないようなのです。こうやって洗脳した女性たちは、さまざまなものをもたらしてくれました。そのほとんどはお金であったわけですが、彼女たちは一度信じてしまったものに対してたゆまない努力を重ねて上納してくれたのです。ときに、家庭崩壊をもたらしたものの、それくらい熱心になってくれたほうが、帰依も深まり幸福感が得られるのでしょう。このビジネスの鉄則は、
①日常の悩みのカウンセリングをすることで、教主への依存を高めさせる。そして洗脳により教団に引き寄せる(洗脳)
②その後、「魂の段階が上がる」と言って、特別信者向けのグッズを販売する(物品販売)
③そして、全財産を寄付させることによって一文無しにし、その後、労働奴隷にする(人生の剥奪)
ことにあります。
・宗教では、
・あなたが教えを守ったから、今は無事でいられる
・あなたが教えを守っていなかったら、今より悲惨なことになっている
という2つを組み合わせて、祈りを止めたときに待ち構える惨状への恐怖心を煽ることが可能です。
・これまでのビジネスの変遷を追ってみますと、
◎モノを販売して粗利を稼いでいた時代(製造業の時代)
◎金を貸して利率で稼いでいた時代(金融業の時代)
◎情報を販売して稼いでいた時代(情報産業の時代)
とやってきて、ついに自分は、
◎幸福を販売して稼ぐ時代(宗教業の時代)
の幕開けに立ち会ったというわけです。
・以上がある男の手記だが、この手記を書き綴った異常な男を、私(坂口)は、直接には知らない。しかし、1つ確実にいえることは、「過激に儲けている商売の裏には、過激にお金を奪い取られている人たちがいる」ということだ。この世界では、利益率が何%で、その利益を上げる工夫はどのようなもので・・・という議論は、いっさい空しくなる。そもそも二束三文のものを高額で売り飛ばすことを目的としている邪心の前では、そのようなロジカルな計算は無と化す。ただ、クールに言ってしまえば、この資本主義社会においては、二束三文のものに1億円支払うのも自己責任だ。私はその商売のあり方に強く反対したいけれど、最終的にその落とし穴にはまらないような消費者側の防御も必要になるだろう。
<目次>
まえがき
奇妙なうわさ
あなたの給与は日本で何位だろうか
商品のカラクリを知ることが、賢い消費者を育成する
第1章 なぜマクドナルドのハンバーガーだけは100円なのに儲かるのか?
①「価格差」で利益を生み出す仕組み
高齢フリーターが金持ちになるまで
家電量販店に並ぶホームレスたち
世界で一番簡単な商売
家電量販店のとめどない薄利と哀しみ
②儲けのカラクリは「何も語られない」
マクドナルドの価格戦略
マクドナルドは100円バーガーの先で、何を狙っているのか
「名ばかり管理職」を生みだすコスト計算
時間という価格差を利用したマジシャンたち
第2章 ディズニーランドは、お客に夢と何を売っているのか?
①固定費型ビジネスの儲けのカラクリ
「彼」の耳が教えてくれるもの
ディズニーランドにはすべてがある
赤字と黒字のあいだ
固定費活用バンザイ
②「限界利益」で売上を伸ばす価格の決め方
値下げしちまえ、売れないくらいなら
「安くしますよ、1円でも」
IT企業の社長は自分の顔に何を託していたか
第3章 なぜJALや家電量販店はポイントを乱発するのか?
①なかったはずの利益を生み出す仕組み
サンクコストとしての仕入れ費
別れと未練とサンクコストと
サンクコストとしての変動費を利用せよ!
②ポイント制度では誰がトクしているのか
ポイント制度は消費者に何をもたらすか
ポイントに使われることなく、ポイントを使いこなす
③ポイント制度の裏にある儲けのカラクリ
ポイントは店側の機会利得でしかない
ポイント制度と割引限界の狭間で
第4章 すべての価格には、企業の見えざる意図が隠れている
①あの商品の利益率はいくらか?
私を困らせた質問
身近な商品、競争の激しい商品-それぞれの利益率
高級商品の利益はいくら?
利益をめぐる冒険
②出店戦略-勝利の方程式
店を構えるとしたら、繁盛店の近くか、遠くか?
個人企業VS.巨大企業の勝敗確率
「勝者がすべてを得る」という現実
ビンボー人のための生存戦略
③価格設定のカラクリ
ビールとミネラルウォーターとガソリンの非常識な関係
人の弱点をついた「使い放題サービス」
第5章 バラしてはいけない商売の裏手口
商売人間失格-ある男の手記
第二の手記-「騙す」
第三の手記-「洗脳」
第6章 お客の来ないスナックがつぶれない理由
①費用構造の違いから生まれる逆転現象
2つの空が私の記憶にこびりつく
「あちら側の世界」ふたたび
弱きものの勝利宣言
奇跡のキャバクラ嬢は何をもたらすか
②「非原価主義」の観点から家計を見直す
年収弱者の取るべき道
経済弱者のための節約・コスト削減術
ケチと浪費家のその先を目指して
あとがき
面白かった本まとめ(2009年下半期)
<今日の独り言>
最近「柳広司」の本にハマっています。ジョーカーゲームやダブルジョーカーはスパイを題材にした内容で、真実味があって面白かったです。続編をぜひ読んでみたいものです。オススメです!
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おだてる、追い込む、帰らせない、騙す、洗脳すると人の財布を開かせることができるということを具体的に示していて、なるほどと思いました。
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この本の第5章を読むだけでも価値があると思います。自分の人生を失敗させないために読むことをとてもオススメします!
以下はこの本のポイントなどです。
・マクドナルドでは、1人のお客をさばくのに3分かかる、という計算だと思ってもいい。すると、100円バーガーを1個販売するのと、セットを販売するのとでは、1人のお客をさばくための女性のバイト費は、変化しない。すると、ドリンクとポテトに発生すると思われていたその40円は消え、トクだと思っていたはずのセットの価格は、むしろ店側に利益をもたらすのである。単品の原価だけを見ると、それぞれのコストが単純に足し算されるように思える。しかし、複数の商品を同時に販売できるとき、その人件費分を薄めることができる。これは、個別の原価だけを計算しても見えてこないことなのである。小売業の世界では、これを「粗利益ミックス」と呼ぶ。乱暴な説明をすれば、「損して得とれ」ということであり、単品の利益だけを見るのではなく、販売実態などを加味して全体的な利益を確保する指標である。ここで明らかになるのは、ファーストフード店の儲けのカラクリは、
1.価格の差別化による、売上の最大化
2.商品ミックス(セット販売)による利益の最大化
ということができる。「100円バーガー」という名称はインパクトがあり、広く消費者に知れわたることになる。しかし、その裏側にあるカラクリに気づく人はなかなかいない。ただ、1つ覚えておくべきは、「商売において、儲かるところは語られない」ということである。「100円バーガーでどうやって儲けているのか?」という問いは、正しく「100円バーガーという宣伝商品を活用してどうやって儲けているのか?」という問いに訂正されねばならないのだ。
・信じられないかもしれないが、食肉はマイナス25℃ほどえ、ちゃんとした冷凍を施していれば、1年は食用として耐えうる。その凍結方法にはいろいろなものがあり、液体圧力によるもの、トンネルフリーザー(ベルトコンベアに乗せて、冷凍化するもの)、CAS法(細胞を殺さず凍結さえる特殊技術)などさまざまだ。保管方法は注意する必要があり、温度条件が悪いと変色し「メト化(メトミオグロビン化)」という状態になる。早い話が変色して、見た目が悪化し、商品価値が落ちてしまう。そこで、冷凍肉は、冷凍から消費機嫌が迫ってくるに従って、どんどん安くなっていく。キロ当たり1000円だったものは、90%オフのキロ100円という価格が実現していく。冷凍肉を保有している卸にとっても、そのまま廃棄してしまうより販売してしまったほうがよいので、なんとか処理しようとする。「1トンほど肉があまっているんだけど、キロ200円でいいから買わない?」そんな電話が全国のブローカーから、食品のバイヤーや取引業者にかかってくる。もちろん、買うか買わないかは各人の自由だ。味の違いは、調理してしまえばさほどないから、安い肉を買いたい業者はそれを引き取る。よく「弁当屋を替えたら、おかずが一品増えました」などと言う人がいる。また、通常の原価計算ではありえない安い価格で弁当を販売している業者もいる。それは、「当たり前」ではない仕入れをしているためである。市場にあふれる価格差を利用し、他者が不要になった食品を買い集めて、お客に提供する。このモデルは、毎日規定品を作る必要がなく、その日に応じて食材を変更できる弁当屋だから実現できる。コンビニなど大手チェーンで、300円弁当が成立するのは、大量発注による材料費の削減と、大量生産による製造コストの切り詰め、そして人件費のミニマム化があった。しかし、小さな弁当屋でも300円弁当が成立することがある。それは、時間による価格差を利用することでコストを抑え、小が大に対等に勝負を挑むということを可能にしているのである。
・最近、世間で話題になった商品に10円コーヒーというものがある。このように市価と比して常識的に「ありえない」価格を設定する場合には、可能性が3つしかない。
1 売れ残り商品である、もしくは製造元が倒産した、などの理由により、廃棄するより1円であっても販売したほうがマシであるもの(バーゲンモデル)
2 フロンエンド商品(客寄せ商品)として活用され、その赤字を補てんしてあまりあるバックエンド商品(本命商品)に誘導するもの(フロント-バックエンドモデル)
3 それをお客に提供することによって、スポンサーからお金が支払われるもの(宣伝・広告モデル)
・ディズニーランドがお客からのチケット収入だけで、お客にはアトラクションだけを楽しんでもらう費用構造だったとしたらどうだろう。それでは今のようには儲からない。お客にチケットを買って入場してもらい、滞在時間のうちに、商品と飲食をできるだけ消費してもらうこと-。ここに儲けのカラクリが存在する。そして、それはもちろんディズニーというブランドへの崇拝と、他のテーマパークと比してその信仰心を圧倒的に集められるところに、その凄さがある。「揺りかごから墓場まで」という言葉があるように、ディズニーは「子どものころは親に同伴され愉しさを感じ」「青年期は恋人とデートで胸を躍らせ」「親になったときは子どもを連れてくる」という、人生のライフステージすべてに対応し、その接触時間の長さから商品・飲食を消費させるビジネスモデルなのである。
・価格から変動費を引いたものを「限界利益」と呼ぶ。見た目は固定費を回収できていない赤字であっても、変動費ギリギリまでは価格を下げることができ、利益に貢献する。旅行会社などはオフシーズン時に変動費ギリギリの価格設定をすることが多い。
・お金は利子というものを受けては、それを元手に加算することによって、さらに増えていく。お店のポイントは、お客にとっては自己増殖しないものである。ただ、お店側からしたら、ポイントとは、「お客から無利子で預かっている資金」と同じである、とも述べた。ということは、お店側は、その無利子で構わないはずのポイントを運用すれば、その差額は自社の利得となる。
・ポイント制度に対する消費者側の優れた態度は、「ポイントを貯めることを自己目的化せず、目の前の商品が本当に安いかを確認して買う」、「ポイントをバックする店ではなく、現金値引きの店で買う」、「ポイントを残さず、常に使い切る」
・既存の繁盛店があるところに新規店も集まり、それら店同士の勝敗は資本の量によって決まる。また、消費者としてはその競争状態を利用することになる。
・ダイエットが大変人気でしたから、海外から最新のダイエット本や教材を買ってきて、それを翻訳し、使用前・使用後の女性の写真をCGででっち上げ、過激にあおるセールス文章とともにインターネットにアップロードしておけば、何万円もするダイエット情報教材が飛ぶように売れていくのです。「努力しないで」「誰でも」「簡単に」やせる、ということが大事のようでした。また、ダイエット食品であれば、「人気につき、お一人様2個まで」という限定が効きます。考えれば、同じお客にまとめて売ったほうが良いわけですから、「人気につき」と限定はつながっていませんが、そのような詮索は無用です。そして、やせたあとに、どれだけ素晴らしい人生が待っているかを強調することが大切なようです。
・以下はある男の手記です。人間は、1人では何も決められず、選択を他人にゆだねたい。そういうことなのです。実は人間は選択することは大変苦手なものです。商品には、「売れ筋です」と、たいして売れてもいないのに張り紙をしておくことになっています。これは、人が他の客の判断を知り、それにゆだねたいからです。たまにwebの販売サイトに、購入者の声が長々と掲載されることがありますが、これも同じ効果を狙ったものです。
・人の財布を開かせるには、
①おだてる、追い込む、帰らせない
②騙す
③洗脳する
の3つのどれかを実行するだけでよかったのです。
・①から説明します。会社間の取引において、お客を取り囲むことによって、断ることのできない雰囲気を醸成する、というものがあります。お客からしたら、単純に見積もりを依頼しただけかもしれませんが、大勢で押しかけて「試作品を作ってしまいましょう」とか「ウチではプロジェクトチームを発足させました」とか「社運を賭けています」などとたたみかけ、お客がとても逃げることのできない状況を作ってしまうのです。強引な営業で名高い企業によっては、打ち合わせ前に必ず相手先の打ち合わせ出席人数を訊きだし、それ以上の人間を連れていくことが慣例となっていることろもあります。
・いつでしたか、自分が知人のスタッフたちと地方の公民館で「老人サービス」を行ったときのことです。地元の老人たちを入口付近のテーブルの前に集め、それをぐるっとスタッフが囲みました。自分が「今日はお越しいただき、ありがとうございます」と言いました。すると、老人たちを囲んだスタッフたちが「ありがとうございましたー」といっせいに繰り返すのです。老人たちは戸惑いながらも、小声で、「ありがとうございました」と言いました。自分は老人たちにチケットを渡し、ガラガラくじをまわし、その老人たちすべてに、「大当たりですー」と叫びながら、無償でプレゼントを渡しました。意味不明な記号を書いておいて、適当に「2等です」とか「特賞です」とかやるわけです。もちろん、スタッフたちは、そのプレゼントを渡すたびに「おめでとうございまーす」と笑顔で合唱することを忘れません。その後、自分は言いました。「では、これから違う会場に移動しましょう」。スタッフは、「はーい」と笑顔で繰り返しました。老人たちも、その掛け声につられて、首を縦に振りながら、公民館の奥に吸い込まれて行きました。そこでは、待ち構えていたスタッフが、空気清浄機と浄水器と、高価な着物を販売しだします。一部、帰ろうとする不遜な老人もいましたが、そこはスタッフが、「あれだけプレゼントを差し上げたのですから、お話くらい聞いてくださいよ」と言って止めています。そこは、公民館の中、閉じた空間なのです。これは、心理学の用語で「返報性のルール」と呼ぶとあとで知りましたが、一度何かをもらったあとでは、なかなかオファーを断ることができません。最後は、「サインでいいから」と言って、契約をまとめあげ、商品と請求書をその老人宅あてに送ってしまいます。多くの老人は、若いスタッフの勧誘を断る気力も持ち合わせておりませんから、その場から解放してくれるのなら、とついつい高額な契約書にサインしてしまうのです。人間には根気が必要ですが、なかなかご老体になってまで断る根気を持ち続けている人は少ないようでした。
・同じく自分は、知人たちと奥様方とこの遊戯を行ったことがあります。まず団地や集合住宅に出向き、「生活支援団体」とか名乗って、奥様方に日用雑貨類を非常に安く、あるいはタダで配ってしまうのです。そして、それを何回か続けたあとに、「今度、船上のディナーパーティーがありますので、お越しください」と誘います。なぜ、「生活支援団体」とディナーパーティーが関係あるのか、などと野暮な詮索は無用です。奥様方は退屈していらっしゃいますので、その無関係さには目をつぶっていただける、あるいはまったく気づきません。そして、安そうな一張羅に身を包んだ奥様方がお越しになりましたら、真っ暗な空間で幻想的な照明を照らします。その後、落ちぶれかけたギャラの安い歌手のショーを始めます。奥様方は、これが無料でよいのかと思いながらも、大変楽しんでくれます。その後、ほろ酔いの奥様方の前で、貴金属類の紹介を開始します。この値段で、このカラットのダイヤは買えないとか、お集まりの奥様方にはとても似合うだとか。そして、決めゼリフは、「家事や洗濯に育児に、みなさまお疲れでしょう。しかも、旦那は、ちっともその苦労をわかってくれない。だからこそ、そんな自分にご褒美をあげましょう」です。日本語としては、「だからこそ」以降がつながっていないのですが、そんな心配は要りません。あとは、スタッフが執拗に奥様方に勧め、船上ですから逃げることもできず、多くの奥様方は、数千円の原価の「宝石」を50万円ほどで契約してくれます。船上の貸切も、不景気のときであれば100名以上で、1人3000円程度です。芸能人のギャラ50万円を加算しても、100万円弱。これなら、お二人の奥様と契約を結ぶことができれば、元は取れるというわけです。たいていの奥様方は、帰宅したあとに「なぜこんなものを買ってしまったんだ」と後悔することになるわけですが、50万円、多くて100万円ですから夫に相談することもためらわれて、自分のヘソクリのなかからなんとか支払って、その買い物は表に出ないまま闇に消えるというわけです。
・次に自分が手を染めたのは、「②騙す」でした。マンションの一室を借り、ある男を占い師のような格好をさせて、待機させておいたのです。すると、そこに、奥様方がお二人いらっしゃいます。一方は紹介者。もう一方は悩みを抱えている奥様です。「ここの占いはよく当たる」と紹介者は言ってくださいました。そこで、その占い師は、相談者の状況を次々に当てていきます。息子が中学受験に失敗したこと。実は夫と不仲になっていること。姑との軋轢。両親の病気。そして、「あなたご自身にも、何か感じる・・・・・」。占い師はここで間を置きます。「もしかして、持病でも・・・・?」「ええ、実は・・・・」「糖尿病では?」「え、なぜ?その通りで・・・・」「うわああ、やっぱり。それは大変なことになる」相談者に糖尿の気があることを当てた占い師は、たいそう驚き、のこぞってみせます。首を横に振る占い師。あまりに当たってしまうため、相談者の奥様は「私はどうしたらよいのでしょう?」と必死の形相で尋ねます。奥様は泣き崩れる寸前です。すると、占い師は奥に行き、1つの壷を差し出します。「奇跡のつぼというものです。あなたからはマイナスのオーラが出ています。先祖の祟りのせいでしょう。ただ、これを身近に置いておけば・・・・・」「置いておけば・・・・・?」「救われます。あとは、先祖への祈りを繰り返すことと、信じることです」そうやって、何の苦労もなく、奥様には200万円ほどの壷をお買い上げいただいたのです。船上パーティーよりも、簡単で、かつ効率的でした。そして、その後、再びやってきた紹介者の奥様に、50万円をキックバックしておしまいです。キックバックを渡す理由は、その紹介者の奥様から情報を入手したためですから、「情報料」と言ってよいかもしれません。事前にご紹介いただく奥様の情報が詳しいほどこの壷商法はうまくいきます。
・自分は、「富が富を生む、奇跡の多層マーケティング」という小冊子を渡しました。洗剤やサプリメント、健康飲料水などを販売すると、その下の会員が販売するたびにその5%が上位者に入る仕組みです。自分は、商品の原価を3割ほどに設定しましたので、手数料を加算しても、十分に利益を確保できました。この商売の優れているところは、割引する主体が、自分たちではなくそれを買った会員ということです。そのバイブルにはまず「このビジネスの素晴らしさを伝えるために、最初は自己の裁量で割引して販売し、マージンが入金された銀行口座のコピーを見せてあげなさい」と書いておきまいsた。「それを見た子会員は、あなたの商品を買い始めます。だから、最初の出費は必須なのです。」この手の商品に対して、「バックマージン分が加算されていて高いはずなのに、なぜ売れるのか」という質問があります。しかし、それは、
・そもそも商品ではなく、その先にある「金銭的自由の夢」を販売している
・それを買った会員が、販売の初速を上げるために、割引して販売する
というのが「答え」なのです。
先輩会員から銀行口座に振り込まれた入金額を見せられて、下層会員は興奮のるつぼと化すことがあります。しかし、その振込み額の源泉のほとんとは、その親会員が自分の身を削っているものだということを知る人はなかなかいません。どの商売でも、支払われた額以上の利益を確保することができないのです。
・人は、根源的な誤解を持ちがちです。
◎根拠なく、「いつか自分に逆転劇が起こるはずだ」という誤解(「運命」についての誤解)
◎努力をしていないのに、「あの人にできるのだから、自分もできるはずだ」という誤解(「自己能力」についての誤解)
◎あまり知識がないのに、「誰もが知らない、絶対儲かるビジネスを見つけた」という誤解(「発見」についての誤解)
何もせず「運命」が好転するはずはなく、未熟な「能力」の人が勝ち続けることはできず、そう簡単にすごいビジネスチャンスを「発見」できるはずはありません。そのようなことを、彼ら/彼女らに啓示できただけでも、自分の価値はあったのだろう、と思います。
・宗教の世界でのターゲットは、かつて「貧・病・争」と言われていたのをご存知でしょうか。「貧しき者」「病んだ者」「争いに巻き込まれる者」には、それぞれ心に穴が開いておりますから、彼らを救済する名目が、時代のニーズにもぴったり合致していたのです。しかしこれらは、現代日本からは消え去ろうとしています。これは、日本の宗教ビジネスを考えるうえで、決定的な打撃だったのです。そこで、バブル期は、「銀・看・保」というフレーズが誕生しました。「銀行員」「看護婦」「保育士」の女性のことです。バブル華やかなりしころであっても、仕事で苦しんでいる子羊がおりましたから、代わりに彼女たちの心の隙間を埋めようとする勢力が興り、それなりに成功しました。現代では、「独・高・女」というフレーズに置き換わっています。「独身で」「高学歴な」「女性たち」というわけです。キャリア志向の高まった時代においても、やはり孤独ということに耐えられるほど人間は強くありません。ですから、彼女たちの将来に対する漠然とした不安を、取り除いてあげるのです。
・当初、自分は合宿セミナー参加に高額を要求することで、このビジネスモデルを成立させようとしました。しかし、セミナーを安価にし、参加者を増やし、参加者を洗脳することで将来にわたって金を支払い続けさせることができると理解したのです。洗脳は、宗教の基本となります。「はまり込みすぎたら、その女性の人生を破壊してしまうのでは」という疑問も私の頭によぎりました。しかし、常に人生のリターンとは、リスクと背中合わせにあるのです。自分の捏造した教義であっても、それに熱中することで、人生の幸福を得ることができれば、素晴らしいことではないですか。自分が、彼女たちを集めてやったことは、単純なことです。泊りがけで、「魂の洗浄」と称して、自分の書いた教義を、繰り返し繰り返し叫ばせるだけでした。「神は天より降りて、唯一の救世主に魂をお贈り下さる。魂の浄化は・・・・」などというフレーズをずっと復唱させるのです。人間とは、かくもたやすく洗脳されるものでしょうか。どうも、人間は同じことをずっと口に出し続けていれば、すぐに既存の概念が刷り変わるようです。暗く、人里はなれたところに集めますから、彼女たちは逃げることはできません。これも船上パーティーの応用です。彼女たちには、脳が疲れ果てて、ある種の幻覚状態になるまで、フレーズの復唱をしてもらいmさう。これは、脳科学の研究成果を応用したものです。人は狭い空間に閉じ込められ、数日も経つと幻覚を見るといいます。脳は退屈なことが許容できず、日常の普遍に対して、幻覚を見せてさえ対抗するというのです。自分は、彼女たちを発狂寸前まで追い込んでから解放し、そこで自分の教義を詰め込みました。同じことを繰り返し、ルーチンの中で退屈を極めた女性たちは、自分の教義を何の疑問もなく受けいれてくれました。最初は、占い師から誘われた軽いセミナーだったはずなのに、もう女性たちは自分が抜けることのできないあり地獄におちてしまったことに気づかないようなのです。こうやって洗脳した女性たちは、さまざまなものをもたらしてくれました。そのほとんどはお金であったわけですが、彼女たちは一度信じてしまったものに対してたゆまない努力を重ねて上納してくれたのです。ときに、家庭崩壊をもたらしたものの、それくらい熱心になってくれたほうが、帰依も深まり幸福感が得られるのでしょう。このビジネスの鉄則は、
①日常の悩みのカウンセリングをすることで、教主への依存を高めさせる。そして洗脳により教団に引き寄せる(洗脳)
②その後、「魂の段階が上がる」と言って、特別信者向けのグッズを販売する(物品販売)
③そして、全財産を寄付させることによって一文無しにし、その後、労働奴隷にする(人生の剥奪)
ことにあります。
・宗教では、
・あなたが教えを守ったから、今は無事でいられる
・あなたが教えを守っていなかったら、今より悲惨なことになっている
という2つを組み合わせて、祈りを止めたときに待ち構える惨状への恐怖心を煽ることが可能です。
・これまでのビジネスの変遷を追ってみますと、
◎モノを販売して粗利を稼いでいた時代(製造業の時代)
◎金を貸して利率で稼いでいた時代(金融業の時代)
◎情報を販売して稼いでいた時代(情報産業の時代)
とやってきて、ついに自分は、
◎幸福を販売して稼ぐ時代(宗教業の時代)
の幕開けに立ち会ったというわけです。
・以上がある男の手記だが、この手記を書き綴った異常な男を、私(坂口)は、直接には知らない。しかし、1つ確実にいえることは、「過激に儲けている商売の裏には、過激にお金を奪い取られている人たちがいる」ということだ。この世界では、利益率が何%で、その利益を上げる工夫はどのようなもので・・・という議論は、いっさい空しくなる。そもそも二束三文のものを高額で売り飛ばすことを目的としている邪心の前では、そのようなロジカルな計算は無と化す。ただ、クールに言ってしまえば、この資本主義社会においては、二束三文のものに1億円支払うのも自己責任だ。私はその商売のあり方に強く反対したいけれど、最終的にその落とし穴にはまらないような消費者側の防御も必要になるだろう。
<目次>
まえがき
奇妙なうわさ
あなたの給与は日本で何位だろうか
商品のカラクリを知ることが、賢い消費者を育成する
第1章 なぜマクドナルドのハンバーガーだけは100円なのに儲かるのか?
①「価格差」で利益を生み出す仕組み
高齢フリーターが金持ちになるまで
家電量販店に並ぶホームレスたち
世界で一番簡単な商売
家電量販店のとめどない薄利と哀しみ
②儲けのカラクリは「何も語られない」
マクドナルドの価格戦略
マクドナルドは100円バーガーの先で、何を狙っているのか
「名ばかり管理職」を生みだすコスト計算
時間という価格差を利用したマジシャンたち
第2章 ディズニーランドは、お客に夢と何を売っているのか?
①固定費型ビジネスの儲けのカラクリ
「彼」の耳が教えてくれるもの
ディズニーランドにはすべてがある
赤字と黒字のあいだ
固定費活用バンザイ
②「限界利益」で売上を伸ばす価格の決め方
値下げしちまえ、売れないくらいなら
「安くしますよ、1円でも」
IT企業の社長は自分の顔に何を託していたか
第3章 なぜJALや家電量販店はポイントを乱発するのか?
①なかったはずの利益を生み出す仕組み
サンクコストとしての仕入れ費
別れと未練とサンクコストと
サンクコストとしての変動費を利用せよ!
②ポイント制度では誰がトクしているのか
ポイント制度は消費者に何をもたらすか
ポイントに使われることなく、ポイントを使いこなす
③ポイント制度の裏にある儲けのカラクリ
ポイントは店側の機会利得でしかない
ポイント制度と割引限界の狭間で
第4章 すべての価格には、企業の見えざる意図が隠れている
①あの商品の利益率はいくらか?
私を困らせた質問
身近な商品、競争の激しい商品-それぞれの利益率
高級商品の利益はいくら?
利益をめぐる冒険
②出店戦略-勝利の方程式
店を構えるとしたら、繁盛店の近くか、遠くか?
個人企業VS.巨大企業の勝敗確率
「勝者がすべてを得る」という現実
ビンボー人のための生存戦略
③価格設定のカラクリ
ビールとミネラルウォーターとガソリンの非常識な関係
人の弱点をついた「使い放題サービス」
第5章 バラしてはいけない商売の裏手口
商売人間失格-ある男の手記
第二の手記-「騙す」
第三の手記-「洗脳」
第6章 お客の来ないスナックがつぶれない理由
①費用構造の違いから生まれる逆転現象
2つの空が私の記憶にこびりつく
「あちら側の世界」ふたたび
弱きものの勝利宣言
奇跡のキャバクラ嬢は何をもたらすか
②「非原価主義」の観点から家計を見直す
年収弱者の取るべき道
経済弱者のための節約・コスト削減術
ケチと浪費家のその先を目指して
あとがき
面白かった本まとめ(2009年下半期)
<今日の独り言>
最近「柳広司」の本にハマっています。ジョーカーゲームやダブルジョーカーはスパイを題材にした内容で、真実味があって面白かったです。続編をぜひ読んでみたいものです。オススメです!
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