<金曜は本の紹介>
「激安のからくり(金子哲雄)」の購入はコチラ
この本は、題名の通り、激安のからくりについて解明している本です。
特に第1章では、ジーンズや百円バーガー、スーツ、パソコン、魚、服等の激安のからくり等について解明しています。
第2章では、激安の人物史ということで、ダイエーの中内功氏、イトーヨーカドーの鈴木敏文氏、ユニクロの柳井正氏、ドン・キホーテの安田隆夫氏について詳しく説明しています。
そして、第3章では激安のこれからということで、プライベートブランド(PB)や激安の裏側にあるものについて説明しています。
この本は、とてもわかりやすく激安のからくりについて説明してあり、勉強になります。
とてもオススメです!
なお、この本のポイントなどは以下の通りです。
・A社の880円ジーンズを例に挙げますと、37%前後の利益を出していると言われています(多少推定も含めています)。880円の37%なので、326円くらいが儲けになっているのです。残りの554円が原価となります。その554円のうち、半分が生地代というのです。残り277円が縫製や物流などで発生するコストと考えられます。これには人件費も含まれます。わずか277円。どうしてこれほど安くできるのでしょうか。たとえば物流コストですが、やはり問屋を通さないことがコストダウンに大きな効果をあげています。自社の倉庫に保管して自社の店舗に納品するということによって、積み降ろしの回数が最小限で済むことになるわkです。そのためにはスケールメリットが必要で、イオンやダイエーといった大手GMSだからできるという面は否定できません。また、「コンテナでは無駄な空気を運ばない」という考えがあります。たとえばユニクロ、GAPに代表される製造小売型のアパレル小売り業では、コンテナのサイズに合わせて納品用の箱を作り、流通させることで、物流コストを極限までカットし、大きなコストダウンに繋げているといいます。
・さて、「A社では、自社で生地や糸を作っている」と述べましたが、ジーンズの縫製も含めて、A社は自社で工場自体を持っているわけではありません。ではどうしているのかというと、アジア各地にあるいろいろな工場での、得意分野のリストを持っているのです。そして、「今からジーンズを50万本作るので、空いているラインはないか」というとき、リストを使って効率的な態勢で生産を行わせます。つまりは、把握しているなかでの、空いている工場、空いている部品、空いている人材を使って、一気に作っているのです。これでコストダウンが図られます。このやり方は、グローバルサプライチェーンマネジメントのひとつと呼ばれています。とはいえ、製造と販売に関する責任の所在についてはA社が自らしっかり負う、というのが基本です。
・ちなみに、従来の中国生産ですと、小売業との間に商社が入り、商社から中国の製造拠点に発注するというのが一般的でした。しかし、昨今のデフレ基調のなかでは、商社を介することなく、小売業から中国の製造拠点に直接発注することで、コストダウンを図ることも顕著になってきました。ジーンズの生産本数が100万から倍の200万になった場合、規模の経済効果により、さらにコストは下がります。
・以前はアジアの100万人都市には必ず日本人が駐在して、その土地にある工場のリサーチをしていました。しかし、今では、5万人都市にさえも、工場や原材料の在庫状況をリサーチする日本人がいると言われています。
・B社の場合、世界中の生地、糸、染料の産地において過剰在庫のものを探し、在庫処理価格で調達します。さらに製造ラインが空いている縫製工場を探し、通常の工賃よりも安い値段で生産を委託し、900円台を実現しました。原材料の産地における在庫状況や、工場の製造ラインの稼動状況は、商社などを通じて世界中から、リアルタイムでB社に知らされ、必要があれば生産計画を更新します。つまり世界中の流通過程にある余り物を集め、空いている工場のラインを活用することで900円台を実現しているのです。このような低価格化を「寄せ集め型低価格戦略」と筆者は名付けました。
・世界中の流通過程において、原材料の在庫が過剰気味の場合は、おそらくはB社のとる「寄せ集め型低価格戦略」のほうが、A社のとる「垂直統合型低価格戦略」よりも低価格を実現できるでしょう。しかし、世界中のどこかで景気が好転し、原材料の余剰在庫が少なくなり、供給不足に陥ると、寄せ集め型低価格戦略は成り立たなくなり、垂直統合型低価格戦略のほうが、より安く消費者に商品を提供できると思われます。ですから、永続的に安く作りたいのであれば、垂直統合型低価格戦略を選択するほうが賢明です。スポット的に安い商品を提供するのであれば、寄せ集め型低価格戦略を選択すればよいのです。
・穀物メジャーでは宇宙から人工衛星で地球をモニターし、「あそこは小麦が豊作だ」「あそこに牛が遊んでいる」など、相場が下がるタイミングで原材料を調達し、世界的な外食チェーン等に原材料を供給しているのです。
・最近、「百円ショップの賢い利用の仕方」ということを、よく聞かれます。筆者はこのように答えています。「まずスーパーへ行き、100円以下で買えるものを買います。そのあと百円ショップへ行き、スーパーでは100円以下で買えなかったものだけを、そこで買いなさい」最近のスーパーでは、ジュースで29円というものがあります。カレーのルーは88円で売っています。スーパーでも100円以下で買えるものは増えてきたのです。
・日本の紳士服量販店から受託しスーツを縫製する中国の工場では、年間100万着以上生産しています。その工場で働く作業員は日本の消費者の細かな嗜好、たとえばボタンをはめる際のかたさの具合といった主観的な感覚さえも、累積生産量の多さから理解していると言われています。ゆえに日本人の体型や、日本の消費者が「よい」とする着心地にマッチしたスーツ作りにも、長けているのです。
・中国はテレビの標準化を極端に推し進めています。液晶パネルも、映像回路も標準化してしまい、メーカーだけをバラバラにしたのです。その結果、パソコンと同じように、低価格化が勢いよく進みました。42インチで、日本円で1万円前後という安いテレビが登場したのは、こうした事情からです。日本製では同等クラスのテレビが安くても7~8万円ですから、いかに「激安」であるかがわかるでしょう(価格は2010年4月現在)。
・漁師に関してのお話をしたいと思うのですが、水産庁の関係団体の資料によると店頭価格の4分の1が漁師の手取りとなっています(2008年夏、全国漁業協同組合連合会、燃油価格高騰緊急対策本部のリーフレットから)。残りの4分の3は仲買などの流通コストなのです。なぜ、漁師は4分の1しか取れないのでしょうか。実は店頭に並んでいる魚の種類は平日で35種類、休日で50種類と言われています。実際に漁港で水揚げされる魚の種類は約200種類と言われ、その多くが商品化できないでいるのです。
・誰が価格決定権を握っているかというと、仲買人なのです。仲買人というのは、漁師から魚を買ってスーパーなどが欲しがっている魚と捕れた魚を調整する役目があります。そこでイオンがうまい工夫をしました。仲買人が休みの時があります。それはお盆やお正月など。そのときに限って、直接漁師から仕入れるようにしたのです。仲買人が休みの時だけに行います。この時に、販売価格の半分を手取りにし、残りを漁師の手取りとしました。半分をイオンの儲けにしているのです。これによって漁師の手取りは倍になります。漁師から直接買うことで、安く仕入れることができるばかりか、「漁師を守る」ということにもなります。一石二鳥なのです。イオンは、水揚げされた魚をすべて、漁師から買い取るわけです。そこで、いろいろな魚を店頭で販売しないといけません。これに対応するために、イオンでは新しい魚の食べ方の提案を売り場で行っています。これはクッキングサポートといい、専門のスタッフや栄養士が、売場で魚の美味しい食べ方を提案しているわけです。その結果、今まで店頭に並ばずして捨てられていた魚を消費することにより、漁師の手取りも増え、魚の相場も下げることができるのです。なにより、魚の消費が増えれば、水産業界を守ることにも繋がっていきます。
・日本から出港した船には4~5人の船員しかおらず、フィリピンのマニラ近海でフィリピン人船員を乗せてからようやく態勢を整えて、漁場へと向かうのです。つまり、船員を作業させる拘束時間自体を減らして、人件費の軽減に充てているのです。なお、日本人は人件費が高いので日本人船長は飛行機でケープタウンまで行き、現地で船に乗ってもらい、日本へ帰るときも飛行機で帰ってもらう、という形をとっている例さえあります。これにより、日本人船長であっても、船で移動する期間の人件費を削減せいているのです。「現地集合、現地解散」という漁師が増えてきているのです。多くの船員が長い期間船に乗って漁獲を行うという、昔の遠洋漁業など、現在ではほとんどなくなりました。それをやってしまうと人件費がかかってしょうがないからです。
・一般にPBは広告宣伝や返品にかかわる物流コスト等を削減した結果、NBと比べて、3割から4割、安くなっています。PBは基本的に全量、小売業側の買い取りであり、返品することはありません。作り手からすると、作った分、すべて売れるわけですから安心して生産できるわけです。
・ある大手流通業ではPBの売上高は全体の売上げの約3割に達しているそうです。PBの平均的な利益率は約37%。一般にNBの利益率は約30%ですから、売り手にとっては利益率が高く、消費者にとってはNBよりも安く手に入るわけですから、まだまだPBの普及は広がると予想されます。とはいえ、日本でのPBの普及はヨーロッパに比べるとやや遅れています。
・もちろん、筆者は、「激安」や「安売り」を片方では応援しています。消費者主催を打ち立てた戦後流通史の健全な流れがそこにはあるからです。しかし一方で、そろそろ「激安栄えて、国滅ぶ」を本気で心配しないといけない時代にさしかかっているとも思っています。答えはまだありません。なにより、日本の消費者が賢くなることです。本質的な解決に向かう道はそれしかないようです。
<目次>
はじめに
第1章 「激安」の現場
激安ジーンズのからくり
加熱する商戦/最もかかったコストは?/50%が最大許容コスト?/生地づくりも自社で/流通在庫も極力カット/空きラインの把握/中国を歩き回る日本人/寄せ集め型低価格戦略とは?/生き残るのはどこだ
百円バーガーのからくり
「激安」のロングセラー/宇宙モニター方式/逆算してモノを作る
低価格スーツのからくり
人件費と品質確保/着心地の違い/百貨店でも扱われだした
2万9800円パソコンのからくり
新興国の攻勢/その時の相場で一番安いものを/ユニット化と標準化/デザインで勝負/注文を受けてから生産するメーカー/加速するBTO方式/もうハードは作らない/サブプライム・ローン問題とパソコン相場
取り残される日本
いきなりの「激安」/品質へのこだわりは、消費者の理解を得られるのか?/日本はすでにマイナー/同質化競争が行き着く果て
自動車からペットボトル飲料まで
価格は2分の1/OEM化/開発費はパッケージに/「見た目」の時代
魚の値段のからくり
手取りは4分の1/直接の買い取り/日本人は管理者だけ/現地集合、現地解散
プライベートブランドのお話
それでもQ社を買うわけは?/ブランドスイッチ/8割が「値段が上がるのはいやだ」/価格維持のための知恵/ヨーロッパでは「店」、日本では「メーカー」
おしゃれな服も安売りで買う時代
世界中から安売り店が上陸/ワンシーズン持てばいい?/オーバークオリティー/なによりもデザイン!
百貨店が凋落した理由
距離のあるコミュニケーション/もう商品説明を受けたくない/「おめかししていくところ」だった/アウトレットモール
コラム 大手チェーンを凌駕する「パパママ・ストア」
百円ショップの賢い利用の仕方
行列の効用
外食でなく「中食」
ブランドを売る
流通業と屏風
直営農場
第2章 「激安」の人物史
フロントランナー▼中内 功
庶民の結核死への憤り/消費者主権/忘れられた「消費者」/「より品をどんどん安く」/安売り時代への幕開け/スーパーマーケットの誕生/中内の決断/売上高トップに/「商売のプロ」がむしろ消えていった/返品無用
コラム 売場面積と製造個数の不均衡
ダイエーVS松下電器
欧米型リーダー▼鈴木敏文
狩猟民族タイプ/安売りの安定期/緻密すぎて・・・・・/「顧客満足」に対する考え方の違い/理か情か/再販制度の廃止/北関東三羽ガラス/総合スーパーマーケットの衰退/外国ブランドショップの登場/「パルコ型」と「渋谷文化」/ライフスタイルの提案/「安売り」から「激安」へ
コラム 合理的にやりすぎると・・・・・
見栄を求めると
高かった牛肉
ファッション・インキュベーター機能
地方からの発信▼柳井 正
「作って売る」時代/東京進出を急がず/「別注」にチャレンジする/「失敗」からのはじまり/公共工事のおかげ?/「中国製」の成熟過程
コラム 東京に進出せず、を貫く高利益率会社
製造小売業
カリスマ頼みが宿命
ドン・キホーテ 絶対的な安さへ▼安田隆夫
「とにかく安く」というニーズ/泥棒市場/ジャングル陳列/「安さを際だたせる」工夫/「場所」の付加価値/どんなに月収があっても
コラム カーギル社
スケールデメリット
研生分離
第3章 「激安」のこれから
ナショナルブランドからプライベートブランドへ
ナショナルブランドの商法/プライベートブランドの仕組み/実は同じ工場で・・・・・/買い比べ、という知恵
「プランド」という付加価値
高くてもいい/引く手あまたの部屋/「レジェンド」に目を向ける
激安の裏側にあるもの
透明化はなされているのか/「取引先いじめ」の実態/フェアトレード/消費者の目
激安はいつまで続くのか
グローバリゼーション/「国産」がなくなった時代/あれも、これも/消費者は変化する
消費者が賢くなるために
単純比較から一歩踏みだす/「安さ」と向き合う
コラム 安売り店の見分け方
バッタ屋
家電戦争
やはり名声が欲しい?
ニューウェーヴ激安店
あとがきに代えて-「激安」は真に消費者のためになっているのか
参考図書一覧
面白かった本まとめ(2010年上半期)
<今日の独り言>
小学生になると、市や公民館等が主宰する無料イベントに結構参加できるようになるんですね。いろいろ挑戦してみたいと思います・・・。

この本は、題名の通り、激安のからくりについて解明している本です。
特に第1章では、ジーンズや百円バーガー、スーツ、パソコン、魚、服等の激安のからくり等について解明しています。
第2章では、激安の人物史ということで、ダイエーの中内功氏、イトーヨーカドーの鈴木敏文氏、ユニクロの柳井正氏、ドン・キホーテの安田隆夫氏について詳しく説明しています。
そして、第3章では激安のこれからということで、プライベートブランド(PB)や激安の裏側にあるものについて説明しています。
この本は、とてもわかりやすく激安のからくりについて説明してあり、勉強になります。
とてもオススメです!
なお、この本のポイントなどは以下の通りです。
・A社の880円ジーンズを例に挙げますと、37%前後の利益を出していると言われています(多少推定も含めています)。880円の37%なので、326円くらいが儲けになっているのです。残りの554円が原価となります。その554円のうち、半分が生地代というのです。残り277円が縫製や物流などで発生するコストと考えられます。これには人件費も含まれます。わずか277円。どうしてこれほど安くできるのでしょうか。たとえば物流コストですが、やはり問屋を通さないことがコストダウンに大きな効果をあげています。自社の倉庫に保管して自社の店舗に納品するということによって、積み降ろしの回数が最小限で済むことになるわkです。そのためにはスケールメリットが必要で、イオンやダイエーといった大手GMSだからできるという面は否定できません。また、「コンテナでは無駄な空気を運ばない」という考えがあります。たとえばユニクロ、GAPに代表される製造小売型のアパレル小売り業では、コンテナのサイズに合わせて納品用の箱を作り、流通させることで、物流コストを極限までカットし、大きなコストダウンに繋げているといいます。
・さて、「A社では、自社で生地や糸を作っている」と述べましたが、ジーンズの縫製も含めて、A社は自社で工場自体を持っているわけではありません。ではどうしているのかというと、アジア各地にあるいろいろな工場での、得意分野のリストを持っているのです。そして、「今からジーンズを50万本作るので、空いているラインはないか」というとき、リストを使って効率的な態勢で生産を行わせます。つまりは、把握しているなかでの、空いている工場、空いている部品、空いている人材を使って、一気に作っているのです。これでコストダウンが図られます。このやり方は、グローバルサプライチェーンマネジメントのひとつと呼ばれています。とはいえ、製造と販売に関する責任の所在についてはA社が自らしっかり負う、というのが基本です。
・ちなみに、従来の中国生産ですと、小売業との間に商社が入り、商社から中国の製造拠点に発注するというのが一般的でした。しかし、昨今のデフレ基調のなかでは、商社を介することなく、小売業から中国の製造拠点に直接発注することで、コストダウンを図ることも顕著になってきました。ジーンズの生産本数が100万から倍の200万になった場合、規模の経済効果により、さらにコストは下がります。
・以前はアジアの100万人都市には必ず日本人が駐在して、その土地にある工場のリサーチをしていました。しかし、今では、5万人都市にさえも、工場や原材料の在庫状況をリサーチする日本人がいると言われています。
・B社の場合、世界中の生地、糸、染料の産地において過剰在庫のものを探し、在庫処理価格で調達します。さらに製造ラインが空いている縫製工場を探し、通常の工賃よりも安い値段で生産を委託し、900円台を実現しました。原材料の産地における在庫状況や、工場の製造ラインの稼動状況は、商社などを通じて世界中から、リアルタイムでB社に知らされ、必要があれば生産計画を更新します。つまり世界中の流通過程にある余り物を集め、空いている工場のラインを活用することで900円台を実現しているのです。このような低価格化を「寄せ集め型低価格戦略」と筆者は名付けました。
・世界中の流通過程において、原材料の在庫が過剰気味の場合は、おそらくはB社のとる「寄せ集め型低価格戦略」のほうが、A社のとる「垂直統合型低価格戦略」よりも低価格を実現できるでしょう。しかし、世界中のどこかで景気が好転し、原材料の余剰在庫が少なくなり、供給不足に陥ると、寄せ集め型低価格戦略は成り立たなくなり、垂直統合型低価格戦略のほうが、より安く消費者に商品を提供できると思われます。ですから、永続的に安く作りたいのであれば、垂直統合型低価格戦略を選択するほうが賢明です。スポット的に安い商品を提供するのであれば、寄せ集め型低価格戦略を選択すればよいのです。
・穀物メジャーでは宇宙から人工衛星で地球をモニターし、「あそこは小麦が豊作だ」「あそこに牛が遊んでいる」など、相場が下がるタイミングで原材料を調達し、世界的な外食チェーン等に原材料を供給しているのです。
・最近、「百円ショップの賢い利用の仕方」ということを、よく聞かれます。筆者はこのように答えています。「まずスーパーへ行き、100円以下で買えるものを買います。そのあと百円ショップへ行き、スーパーでは100円以下で買えなかったものだけを、そこで買いなさい」最近のスーパーでは、ジュースで29円というものがあります。カレーのルーは88円で売っています。スーパーでも100円以下で買えるものは増えてきたのです。
・日本の紳士服量販店から受託しスーツを縫製する中国の工場では、年間100万着以上生産しています。その工場で働く作業員は日本の消費者の細かな嗜好、たとえばボタンをはめる際のかたさの具合といった主観的な感覚さえも、累積生産量の多さから理解していると言われています。ゆえに日本人の体型や、日本の消費者が「よい」とする着心地にマッチしたスーツ作りにも、長けているのです。
・中国はテレビの標準化を極端に推し進めています。液晶パネルも、映像回路も標準化してしまい、メーカーだけをバラバラにしたのです。その結果、パソコンと同じように、低価格化が勢いよく進みました。42インチで、日本円で1万円前後という安いテレビが登場したのは、こうした事情からです。日本製では同等クラスのテレビが安くても7~8万円ですから、いかに「激安」であるかがわかるでしょう(価格は2010年4月現在)。
・漁師に関してのお話をしたいと思うのですが、水産庁の関係団体の資料によると店頭価格の4分の1が漁師の手取りとなっています(2008年夏、全国漁業協同組合連合会、燃油価格高騰緊急対策本部のリーフレットから)。残りの4分の3は仲買などの流通コストなのです。なぜ、漁師は4分の1しか取れないのでしょうか。実は店頭に並んでいる魚の種類は平日で35種類、休日で50種類と言われています。実際に漁港で水揚げされる魚の種類は約200種類と言われ、その多くが商品化できないでいるのです。
・誰が価格決定権を握っているかというと、仲買人なのです。仲買人というのは、漁師から魚を買ってスーパーなどが欲しがっている魚と捕れた魚を調整する役目があります。そこでイオンがうまい工夫をしました。仲買人が休みの時があります。それはお盆やお正月など。そのときに限って、直接漁師から仕入れるようにしたのです。仲買人が休みの時だけに行います。この時に、販売価格の半分を手取りにし、残りを漁師の手取りとしました。半分をイオンの儲けにしているのです。これによって漁師の手取りは倍になります。漁師から直接買うことで、安く仕入れることができるばかりか、「漁師を守る」ということにもなります。一石二鳥なのです。イオンは、水揚げされた魚をすべて、漁師から買い取るわけです。そこで、いろいろな魚を店頭で販売しないといけません。これに対応するために、イオンでは新しい魚の食べ方の提案を売り場で行っています。これはクッキングサポートといい、専門のスタッフや栄養士が、売場で魚の美味しい食べ方を提案しているわけです。その結果、今まで店頭に並ばずして捨てられていた魚を消費することにより、漁師の手取りも増え、魚の相場も下げることができるのです。なにより、魚の消費が増えれば、水産業界を守ることにも繋がっていきます。
・日本から出港した船には4~5人の船員しかおらず、フィリピンのマニラ近海でフィリピン人船員を乗せてからようやく態勢を整えて、漁場へと向かうのです。つまり、船員を作業させる拘束時間自体を減らして、人件費の軽減に充てているのです。なお、日本人は人件費が高いので日本人船長は飛行機でケープタウンまで行き、現地で船に乗ってもらい、日本へ帰るときも飛行機で帰ってもらう、という形をとっている例さえあります。これにより、日本人船長であっても、船で移動する期間の人件費を削減せいているのです。「現地集合、現地解散」という漁師が増えてきているのです。多くの船員が長い期間船に乗って漁獲を行うという、昔の遠洋漁業など、現在ではほとんどなくなりました。それをやってしまうと人件費がかかってしょうがないからです。
・一般にPBは広告宣伝や返品にかかわる物流コスト等を削減した結果、NBと比べて、3割から4割、安くなっています。PBは基本的に全量、小売業側の買い取りであり、返品することはありません。作り手からすると、作った分、すべて売れるわけですから安心して生産できるわけです。
・ある大手流通業ではPBの売上高は全体の売上げの約3割に達しているそうです。PBの平均的な利益率は約37%。一般にNBの利益率は約30%ですから、売り手にとっては利益率が高く、消費者にとってはNBよりも安く手に入るわけですから、まだまだPBの普及は広がると予想されます。とはいえ、日本でのPBの普及はヨーロッパに比べるとやや遅れています。
・もちろん、筆者は、「激安」や「安売り」を片方では応援しています。消費者主催を打ち立てた戦後流通史の健全な流れがそこにはあるからです。しかし一方で、そろそろ「激安栄えて、国滅ぶ」を本気で心配しないといけない時代にさしかかっているとも思っています。答えはまだありません。なにより、日本の消費者が賢くなることです。本質的な解決に向かう道はそれしかないようです。
<目次>
はじめに
第1章 「激安」の現場
激安ジーンズのからくり
加熱する商戦/最もかかったコストは?/50%が最大許容コスト?/生地づくりも自社で/流通在庫も極力カット/空きラインの把握/中国を歩き回る日本人/寄せ集め型低価格戦略とは?/生き残るのはどこだ
百円バーガーのからくり
「激安」のロングセラー/宇宙モニター方式/逆算してモノを作る
低価格スーツのからくり
人件費と品質確保/着心地の違い/百貨店でも扱われだした
2万9800円パソコンのからくり
新興国の攻勢/その時の相場で一番安いものを/ユニット化と標準化/デザインで勝負/注文を受けてから生産するメーカー/加速するBTO方式/もうハードは作らない/サブプライム・ローン問題とパソコン相場
取り残される日本
いきなりの「激安」/品質へのこだわりは、消費者の理解を得られるのか?/日本はすでにマイナー/同質化競争が行き着く果て
自動車からペットボトル飲料まで
価格は2分の1/OEM化/開発費はパッケージに/「見た目」の時代
魚の値段のからくり
手取りは4分の1/直接の買い取り/日本人は管理者だけ/現地集合、現地解散
プライベートブランドのお話
それでもQ社を買うわけは?/ブランドスイッチ/8割が「値段が上がるのはいやだ」/価格維持のための知恵/ヨーロッパでは「店」、日本では「メーカー」
おしゃれな服も安売りで買う時代
世界中から安売り店が上陸/ワンシーズン持てばいい?/オーバークオリティー/なによりもデザイン!
百貨店が凋落した理由
距離のあるコミュニケーション/もう商品説明を受けたくない/「おめかししていくところ」だった/アウトレットモール
コラム 大手チェーンを凌駕する「パパママ・ストア」
百円ショップの賢い利用の仕方
行列の効用
外食でなく「中食」
ブランドを売る
流通業と屏風
直営農場
第2章 「激安」の人物史
フロントランナー▼中内 功
庶民の結核死への憤り/消費者主権/忘れられた「消費者」/「より品をどんどん安く」/安売り時代への幕開け/スーパーマーケットの誕生/中内の決断/売上高トップに/「商売のプロ」がむしろ消えていった/返品無用
コラム 売場面積と製造個数の不均衡
ダイエーVS松下電器
欧米型リーダー▼鈴木敏文
狩猟民族タイプ/安売りの安定期/緻密すぎて・・・・・/「顧客満足」に対する考え方の違い/理か情か/再販制度の廃止/北関東三羽ガラス/総合スーパーマーケットの衰退/外国ブランドショップの登場/「パルコ型」と「渋谷文化」/ライフスタイルの提案/「安売り」から「激安」へ
コラム 合理的にやりすぎると・・・・・
見栄を求めると
高かった牛肉
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地方からの発信▼柳井 正
「作って売る」時代/東京進出を急がず/「別注」にチャレンジする/「失敗」からのはじまり/公共工事のおかげ?/「中国製」の成熟過程
コラム 東京に進出せず、を貫く高利益率会社
製造小売業
カリスマ頼みが宿命
ドン・キホーテ 絶対的な安さへ▼安田隆夫
「とにかく安く」というニーズ/泥棒市場/ジャングル陳列/「安さを際だたせる」工夫/「場所」の付加価値/どんなに月収があっても
コラム カーギル社
スケールデメリット
研生分離
第3章 「激安」のこれから
ナショナルブランドからプライベートブランドへ
ナショナルブランドの商法/プライベートブランドの仕組み/実は同じ工場で・・・・・/買い比べ、という知恵
「プランド」という付加価値
高くてもいい/引く手あまたの部屋/「レジェンド」に目を向ける
激安の裏側にあるもの
透明化はなされているのか/「取引先いじめ」の実態/フェアトレード/消費者の目
激安はいつまで続くのか
グローバリゼーション/「国産」がなくなった時代/あれも、これも/消費者は変化する
消費者が賢くなるために
単純比較から一歩踏みだす/「安さ」と向き合う
コラム 安売り店の見分け方
バッタ屋
家電戦争
やはり名声が欲しい?
ニューウェーヴ激安店
あとがきに代えて-「激安」は真に消費者のためになっているのか
参考図書一覧
面白かった本まとめ(2010年上半期)
<今日の独り言>
小学生になると、市や公民館等が主宰する無料イベントに結構参加できるようになるんですね。いろいろ挑戦してみたいと思います・・・。