新宿裏窓主催の「荒地」とタイトルされたライヴ。「荒地」といえばイギリスの詩人T.S.エリオットの詩を思い出すが、日本で戦後すぐに発行された詩の同人誌のタイトルにも因む。工藤冬里さんが命名したとのことで、物販ではCD,CDR,カセット,陶器と一緒に発行されたばかりの「棺」と題された工藤さんの詩集も販売されていた。
草食系のおとなしそうな男性客中心に観客は50人くらいか。ちょっと寂しいが思い思いに演奏を楽しんでいた様子。
開演時間になるとステージにバラバラとメンバーが登場する。Tp,T.Sax,B,G,ピアニカ,Ds(久下惠生氏),Vln,アコーディオン,Perc(高橋朝氏),バスーン,A.Sax(中尾勘二氏)の11人編成+工藤冬里さん(Vo,G)。スペシャル・ゲストとして吉祥寺マイナー時代の盟友ゴイヅカリョウ氏が一瞬だけ登場した。
まず冬里さんが一人一人の楽器のフレーズを確認して、せーので曲が始まる。冬里さんは余りギターを弾かず詩の朗読調の語りを聴かせる。久下さんの緩急のメリハリを心得たドラムがずば抜けて凄い。高橋氏は後ろでキャベツにドラム・スティックを突き刺すパフォーマンス(?)を黙々と行っている。いつものように相当ユルい雰囲気のまま演奏が進んで行く。途中で冬里さんが演奏者/観客へ「もう飽きた?」と尋ねる一幕も。それでも70分強のステージをやり通したメンバーに拍手を送りたい。
かつては「うたもの」の代表格として脚光を浴びたマヘルだが、ここ数年の冬里さんの興味は「うた=メロディ」よりも「詩=ことばそのもの」へと向かっているようだ。夥しい「ことば」の連射。演奏は脱力系だが詩の内容は社会性/批評性に溢れた硬派なものである。マヘルの新たなる幕が開いた。
詩と批評
世界を動かす
言葉の力
マヘルのライヴを観るといつも落ち着かないような宙ぶらりんな気分になる。それは冬里さんの意図するものなのだろうか。