(写真の撮影・掲載については主催者・出演者の許可を得ています。以下同)
Beat Happening!@GARDEN
~SHIMOKITAZAWA R&R PANIC!GREATEST!~
Line-up:下山/ゾンビちゃん/URBANフェチ/ギターウルフ/大森靖子
それにしてもBeat Happening、略してビーハプはすげえイベントである。1500人規模のホール・ワンマンを売り切るトキメキスターから、ブレイク間近の注目株、そしてデビュー間もないフレッシュマン&ウーマンまで、人気・芸歴・ジャンル多種多様なアーティストを豪華というか無謀というか乱暴というか、予想外の組み合わせで小規模なライヴハウスにドロップ、それを最低二日に一度のペースで開催する。しかも高校生以下は割引有り。一体これで採算取れるのか、いやそれ以前に主催者の体力と精神力が保つのか心配になる。が、驚異的なペースは衰えるどころか8月には17連戦も控えており、絶好調の加速状態。この勢いで突き抜けてロック・シーンに喝を入れて欲しい。
主催者によれば、その日に起こる事はそこでしか見られない、がビーハプの大きなテーマだとという。他のイベントに比べて観客の年齢層は圧倒的に若く、目当の出演者以外の対バンもしっかり楽しもう、という姿勢があって頼もしい。ビーハプ精神がしっかり育っている証拠である。「SHIMOKITAZAWA R&R PANIC!GREATEST!」とサブタイトルされたこの夜は、個人的にも美味し過ぎる組み合わせ。おっさん向けサービスか?と思ったが、来場者は平均20歳前後で女子率高し。
●ゾンビちゃん
5月に開催された都市型フェス下北沢サウンドクルージングの企画で、でんぱ組最上もがと対談してたので名前と顔を覚えたゾンビちゃんはシンガーソングライター。不思議ちゃんな芸名の由来は知らないが、ホラーでもオカルトでもなく金髪がトレードマークの18歳のチャーミングな女の子。歌は初めて聴いたが、等身大の女子の気持ちを自然体で唄う姿はとても新鮮だった。観客のシンガロングに、はにかみながら「ああー!とっても嬉しい!」と見せる笑顔が眩しい。同世代の女性に支持されそうだ。
●URBANフェチ
以前ビーハプで観たことのあるトリオ、URBANフェチ。詳しいバイオは判らないが、以前は全員男性メンバーだったかもしれない。初めて観たとき、ベースとドラムの女性ふたりのキレキレのパフォーマンスが印象的だった。特にベースの梅子のスカート姿のハッチャケ演奏にはたまげる。チョッパーベースの凄まじさときたら!ドラムの短パンはニコニコ笑顔で全力連打。黒一点アーバン耕平のノセ方を心得た歌とギターも超楽しい。変態的なリズムチェンジをいとも簡単にキメてしまう実力派だが、それをまったく感じさせないところがさすが。
●大森靖子
7月12日新宿ロフトで初めてライヴ体験し、トラウマになるほどの衝撃を受けた大森靖子を再見。アイドルイベントからロックフェスまで引っ張りだこの彼女は先週末TOKYO IDOL FESTIVAL 2013に出演し、アイドル好き故アガリ過ぎた反動で、この日は凹状態。「私暗いですかね?」と落とすMC連発。その分演奏は前回よりも激しく情動的で、ステージ上でリストカット自殺を図るかも、と心配になるほどの迫真性。URBANフェチで飛び跳ねて踊っていた客も水を打ったように静かに耳を傾ける。アコギ一本でこれほど多彩な世界を見せてくれるシンガーソングライターもいない。終わらないうちから彼女の次のライヴスケジュールが気になっちゃう中毒性。SEIKOフェチになってしまいそう。終演後物販席で話したら、ケロっと普通の女の子に戻って(装って?)いたのにほの字。
●下山(Gezan)
マヒトゥ・ザ・ピーポーのソロアルバムがリリースされたのに、レコ発にも行けなかったので下山(Gezan)は久々。ギターウルフとの対バンにかなり気合いが入っていた様子。開口一番「これが2013年最新のメロコアなのでヨロシク。YO●OY●M● K●Nに言っといて」と悪態をついて放った新曲が今までの下山のイメージをぶち壊すメジャーコード進行のパンクナンバー。判り易いポップなメロディーを唄ってもマヒトらしい激烈テンダネスが放出されるのが素晴らしい。演奏のキレ味は相変わらず危険な刃物そのもの。マヒトはキレ過ぎでギターの弦を次々切ってしまう。下山流メロコア・ナンバーを3曲やって、世界で一番泣けるバラード「春の膝」。マヒトはギターを放り出してハンドマイクで絶唱。イーグルのギターも壊れ音が出なくなる。カルロスのベースとシャークのドラムのグルーヴィーな演奏にフロント3人のスクリームバトル。壮絶な尻切れエンディングが下山らしくて感動に震えた。
●ギターウルフ
まさかGARDENで観れるとは思わなかったギターウルフを目の前で堪能。やけに外国人が多いな、と思っていたら、ギターウルフ目当だった。1993年アメリカのGONER RECORDSからデビューを飾ってから20年。その間まったく変わらない歪んだロケンローを鳴ならし続けた彼らは、間違いなく世界で一番有名な日本のロケンローラーである。初期衝動の塊と言われることが多いが、20年以上もデビュー当時と同じわけがない。ギターウルフ流ロケンロー道をひたすら極めるという進化の途中にある。その旅路に立ち会える我々は奇跡的に幸運である。バイクの爆音のSEで登場したセイジの姿に観客が一気にヒートアップ。久々に見るグシュグシャのモッシュが楽しい。どの曲もロケンローの新世代スタンダードに違いない。何度観てもアガるロケンロー伝統芸の連発にひたすら酔う。鳴り止まない2度目のアンコールの拍手にセイジがひとり登場して「アンコールは無し。これから飲みに行かなきゃならないからね!」と言い放ったのにロケンローラーの本質をみた。
【Guitar Wolf Setlist】
01.ミサイルミー
02.オールナイトでぶっとばせ!!
03.カワサキ ZII750 ROCK'N'ROLL
04.ジェットラブ
05.ジェット・ビア
06.ワイルドゼロ
07.火星ツイスト
08.女マシンガン
09.ロックンロールエチケット
EC1.UFOロマンティクス
EC2.環七フィーバー
どの出演者もそれぞれエクストリームな求道者ばかりの濃過ぎる珠玉の一夜だった。これだからビーハプは素晴らしい。
フォーキーと
ロケンローが
出会う夜
下山(Gezan)おススメライヴ