(写真・動画の撮影・掲載については出演者の許可を得ています。以下同)
スローモーションのパントマイムを踊ろう
輝くギターから放たれる圧縮された命の炎
気泡が沸き上がる水の中、ワカメとしての聴取体験
HMV GET BACK SESSION independent 割礼「ゆれつづける」LIVE
割礼『ゆれつづける』(1990)
4th・アルバム。 メジャー進出後2nd。
ネオ・アコースティックなスタイルはゆったりとした高まることのない薄暗い耽美なサイケデリックな世界が広がる。 チリチリと小さくも激しい炎が燃える。
01. 緑色の炎
02. 散歩
03. 電話の悪魔
04. 海のあの娘
05. 快人20面相
06. 歪み
07. 素敵な季節
08. ゆれつづける
09. ごめんね女の子
21世紀に入ってからアイドルの眩しい光で救われるまでの11年間、私は地下音楽の居心地のよい暗黒の淵に身を浸してきた。それは灰野敬二の世界かもしれないが、存在感に圧倒され魂の震えを止められない灰野ワールドよりも、居心地のよさでは割礼のライヴこそ山椒魚の住処には相応しい。日常生活では経験し難い超低速の世界は、思考回路を麻痺させ限りなく眠りに近い酩酊ウイルスを延髄に注射する。昔大好きだった暗黒舞踏劇団に浣腸脳髄という演目があったが、再開発前の池袋東口の雑踏から徒歩10分の民家で経験したその完全な暗闇の記憶が、割礼のライヴを観ている間に脳内に鮮烈に甦る。30年前の記憶と共に目の前に展開されるスローモーション世界の住人の蠢きが、レンドルミンのように脳幹を優しく刺激し、清浄な催眠効果をもたらす。朦朧とした意識と同様に、身体は海藻の動きを真似てゆらゆらゆれつづけるばかり。人間存在の根源はワカメであった。赤ん坊のように無防備になってごらん、と二本のギターが囁きかける。その言葉に安心して主体性を放棄し、スピーカーから溢れ出す轟音の波に身を任せる。完全降伏の快楽(PLEASURE OF SWEET SURRENDER)。すべてを捨ててこの音に溺れよう。もう何をされてもいい。好きにしていいよ。殺されてもいい。もし殺るなら今この瞬間に背中をひと突きにして下さい。お願いです。
ENCORE
10. INスト
11. がけっぷちのモーテル
11. リボンの騎士
ディズニーランドのアトラクションでは体験できない2時間のユートピア・エクスペリエンス。耽美の絵本を読み終えたワカメ人間たちは背中を伸ばして闇の中を再び社会生活に戻っていくのであった。
スローモーション
ストップウォッチ
計測不可能
意識と無意識の狭間に棲息する山椒魚こそ我が理想なり。