A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

MASONNA/MO'SOME TONEBENDER/後藤まりこ/BO NINGEN@恵比寿リキッドルーム 2013.8.8(thu)

2013年08月10日 00時13分19秒 | 素晴らしき変態音楽


LIQUIDROOM 9th ANNIVERSARY presents “UNDER THE INFLUENCE”
「MASONNA×後藤まりこ×MO'SOME TONEBENDER」


クラブクアトロ25周年に対抗する訳ではなかろうが、リキッドルームが9周年イベントを実施中。元々は1994年歌舞伎町にオープン。当時のクラブクアトロの倍のキャパのスタンディング・ベニューとして、国内外の多くのアーティストに愛された。雑居ビルだったため、一般客はエレベーターの使用が許されず、狭い階段を7Fまで歩いてライヴ前に疲弊してしまう筋トレ・ベニューとしても有名だった。新宿リキッドルームは2004年に10年の歴史に幕を下ろし、恵比寿に移転し新装オープン。それから数えて9周年である。だからといって特別なことがあるわけではないが、ちょうどフジロックとサマーソニックの谷間なので、暇してる夏フェス出演者によるユニークな対バン企画も多い。この日はノイズ(MASONNA)×ロケンロー(MO'SOME)×ポップ(後藤)の三つ巴に加えサイケ(BO NINGEN)が緊急参戦するカオス・イベントとなった。ド平日のためか、夏フェス疲れのためか、画期的な組み合わせにしては動員は少々渋い。

BO NINGEN


フジロック+東阪名ツアー+ライジングサンと3週間に亘る「HEADLINE LIVES 2013」中のBO NINGEN。これまで観たUFO CLUBやClub AsiaやFEVERなどに比べて会場・ステージが広いので開放的で新鮮な気分。オープニングだからと言って、慣らし運転や手加減という言葉はBO NINGENの辞書にはない。一曲目の「Koroshitai Kimochi」からギアをトップに入れた一斉掃射。毎回恒例のタイトル未定の新曲を挟み、最後の「Daikaisei」は10分以上ワンコードで突き進む殺戮サイケバトル。エンディングでギターを振り回し、ベースを放り投げて舞い踊り、ドラムが崩れ落ちる叫喚カオスに度肝を抜かれる。まさにワールドクラスのステージで場内のテンションを一変させた。フジロックで観たかった!




後藤まりこ


街中に貼られたポスターで今や子供でも知ってる後藤まりこは、夏フェスやアイドルフェスに数多く出演し、現在最も注目されるシンガーのひとりである。最新シングル「sound of me」はキュートなスピードチューンでミドリ時代に回帰したかのよう。エフェクターを抱え激しくヘドバンし、オーディエンスを煽るエキセントリックなステージングは往時のまま。ネコのように気まぐれで予測不能のパフォーマンスと完成度の高いポップソングが強烈にシンクロする。かつての独りよがりともいえる感情の暴走ではなく、バンドや観客を包み込む大らかな愛情表現に、新世代ポップ・クイーンの貫録を感じる。




MO'SOME TONEBENDER


お祭り男・武井が鬼のお面で団扇を振りながら客席から登場し、ハードコアビートとアジテーションで煽る。クラブクアトロだと超満員で身動きが取れないが、この日は比較的空いてるのでステージ前のフロアのモッシュが凄まじい。昔に比べて大人になったか、と思っていた本来の攻撃本能が解放され、重戦車で邪魔者をすべて轢き殺しながらモーサム軍、暁の出撃!サイリウムダンス&デジビートがテンションをさらに高め、前しか見えないパッションの塊に、モッシュピットの回転数が10倍にスピードアップ。これほどキレまくったRockin' Luuulaは聴いたことがない。




MASONNA


トリはジャパノイズ四天王(死語)のひとり、マゾンナこと山崎マゾ。モーサム目当ての若いファンが帰ってしまわないかと危惧したが、殆どがロック・レジェンドを目撃しようと残っている。セッティング中にスクリーンの後ろからノイズが聴こえただけで歓声が上がる。幕が上がり、マイクスタンドとアンプだけのシンプルなステージに立つマゾンナ。Shout&Jump&Noise.3 minutes。あっという間に終了。広いステージで観るマゾは紛れもないネ申だった。オーディエンスは大喜びでロック史上最高に凝縮された3分間に満足した模様。




最初にBO NINGENが火を点けたロック導火線が発火し、アーティストとオーディエンス共にかつてないハイテンションで繰り広げた強烈な爆竹サマーナイトだった。真夏の東京で熱く燃えるのはアイドルだけではない。
[8/30追記]
Skream!ライヴレポートはコチラ

ロケンロー
真夏の夜を
ぶっとばせ

●BO NINGEN NEWS
2013.08.08 THU - 2013.08.14 WED
Kohhei(g)作品展
Simon Fowler × Kohhei Matsuda DUO EXHIBITION 「0/0」
KATA, Ebisu Liquid Room 2F




2013.08.13 TUE
BO NINGEN 単独公演
UNIT 9TH ANNIVERSARY
BO NINGEN HEADLINE LIVES 2013~SPECIAL!
代官山UNIT

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miwaクロ/SCANDAL/ねごと/小南泰葉/アーバンギャルド@国立代々木競技場第一体育館 2013.8.7(wed)

2013年08月09日 01時43分06秒 | ガールズ・アーティストの華麗な世界


a-nation island powerd by ウイダーinゼリー
GIRL'S FACTORY 13


miwaクロ(miwa / ももいろクローバーZ) / SCANDAL / ねごと / 小南泰葉 / アーバンギャルド



フジテレビが毎年ガールズ・アーティストを集めて開催しているイベント「GIRL'S FACTORY」が、初めて代々木競技場で開催。歌番組で結成されたももいろクローバーとmiwaの合体ユニット「miwaクロ」をメインに、ギャルバン女番長「SCANDAL」、新進気鋭の「ねごと」、女性SSW「小南泰葉」、そしてGIRL'S FACTORY初登場の我らが「アーバンギャルド」というナイスな組み合わせ。個人的には4月の「KAWAii!! MATSURi 」@東京体育館に続く大規模イベントなので朝からアガリっぱなし。

アーバンギャルド


流石テレビ局という感じのステージセットはKAWAii!! MATSURi以上の豪華絢爛さ。アリーナ席もスタンド席も色とりどりの法被やTシャツ姿のモノノフだらけ。トップでアーバンギャルド。見習いアーバンギャルソンの心得として、当然血の丸フラッグを持参したが、さすがに120%アウェー状態では取り出す勇気はない。殆どが初アーバンだと思われるモノノフの皆様は、最初からハイテンションでOi Oiコール&サイリウムで大盛り上がり。「病めるアイドル」のお約束のコールもできないが、それ以上のノリの良さで楽しさ120%。「都会のアリス」でセーラー服ダンサーを交えたパフォーマンスもかなりウケていた。コール&レスポンスや「ももいろクロニクル」はやらなかったが、前衛都市のヤヴァいオーラと、よこたんの女王様っぷりが存分に発揮された。



セックスなう (撮影:松永天馬)



小南泰葉


CDジャケットが「恋と革命とアーバンギャルド」に似ているので気になっていたフィメールシンガー初体験。一曲目が歌い上げるバラードだったので、ディーヴァ系か?、と思ったら2・3曲目はギターを弾いてノリのいいロック・ナンバー。ルックスはコケティッシュだが、曲調は椎名林檎を思わせる、ちょっと情念入りの正統派シンガーだった。






ねごと


2年前にPVを観てなんかいいなぁ~と思ったねごともライヴ初体験。リンゴ・デススターのライヴ会場で本人自らフライヤーを配っててビビったこともある。GIRL'S FACTORYは2度目だというが、とても初々しい立ち姿にうっとり。ベースの太い音にシューゲ好きの心意気が感じられた。この日がライヴDVDリリース発売日ということで、気合の入った演奏を展開した。




SCANDAL


KAWAii!! MATSURi Day 2で3年半ぶりに観て、成長著しく感慨を覚えたSCANDALの人気の高さに改めて驚く。モノノフに交じってスキャファンも多く、ジャンプして盛り上がる。普段のライヴでは有りえないサイリウムの乱舞に感激していた。マミタスの髪色がまた変わっていて、女性は変化しながら美しくなっていくものだなあ、と妙に納得してしまった。




●miwaクロ(miwaももいろクローバーZ


目玉ユニットの二組とも初体験。アイドルヲタ初心者としては、ももクロは絶対に避けては通れない道なのでいい機会だった。会場全体が揺れるほどの大フィーバー(死語)。今まで体験したアイドル現場は大きくてもZEPP TOKYOクラスなので、数万人のヲタの盛り上がりには眩暈がする。miwaは身長も雰囲気もアイドル並み。大森靖子とBiSの共演よりは違和感はない。miwaのネオアコ風ロリ声には一聴して即萌えモードに突入するのも無理はない。それにしてもももクロ5人の元気のよさと目標達成への執念には恐れ入る。スケールが大きくなった分、努力も気合いもデカくヴァージョンアップしたのだろう。







全員のセットリストはコチラ

女の子
男の子より
元気あり



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【BiS階段@渋谷WWW 2013.8.7 tue】TwitterのTLに上がっている写真がカオス過ぎると話題に

2013年08月08日 01時02分13秒 | ガールズ・アーティストの華麗な世界




BiS階段
出演者:BiS階段BiS非常階段
※当LIVEは入場時に誓約書への署名をお願いいたします。 誓約書への署名がない方の入場はお断りいたします。

全裸、内臓、血まみれ、釘バット、スク水LIVE、24時間インストア、LIVEギロチン席無料招待、家政婦オークション等、アイドルの価値観をブチ破る、既成の概念に囚われない無軌道な活動が話題のオルタナアイドル"BiS"と1979年に世界初のノイズバンドとして活動をスタートし、大音量+即興演奏という基本コンセプトのもと四半世紀以上に渡りノイズ演奏を続け、「キング・オブ・ノイズ」という異名で国内外に名を知られている"非常階段"。
日本の音楽シーンの中でも異彩を放つ両グループは、2012年11月四谷アウトブレイクで行われたイヴェント「自家発電 vol.00」で初遭遇し、"BiS階段"のコラボレーションLIVEが披露された。まさにカオスともいえるノイズとアイドルが融合する壮絶なLIVEは大きな話題となった。
そして、2013年夏この両アーティストがノイズアイドルバンド"BiS階段"を結成し、8月7日にアルバム"BiS階段"でavex traxよりメジャーデビューすることが決定!!
このリリースを記念してレコ発LIVE"BiS階段"の開催が決定!!!!
新たな歴史を刻むこと間違い無しのこのLIVEをお見逃し無く!!



































































BiS階段ロングインタビュー
●アイドル×ノイズの狂宴 BiS階段インタビュー@CINRA.net→コチラ
●BiS階段インタビュー「これは希望なんだ」@HEATHAZE→コチラ

BiS階段アルバムレビュー
●アイドルとノイズ・ミュージックの究極のポップ・アート@WHAT's IN? WEB→コチラ

BiS階段ライヴレポート
●【怪曲ニュース】BiS階段を観た!@MUSIC HEAPS→コチラ


バスクリンと
下着と生理用品と
肉片と人間が
飛んできた

決定!最大のカオスはコレ。


【トレード希望】BiS階段CDの封入トレカ、当方BiS階段バンド写真⇒JUNKOさん希望です。コメください。







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『JAZZ ART せんがわ2013』@調布市せんがわ劇場、Jenny's Kitchen 2013.7.20(sat)&21(sun)

2013年08月07日 01時13分15秒 | 素晴らしき変態音楽


JAZZ ART せんがわ2013
~ 野生に還る音 親密な関係 生きる芸術 ~


いい音が息づく
いい街が近づく
いい風を感じる

飼いならされた耳が大空にはばたく時 親密になることで知性が野性を連れて来る
よりローカルに よりワイルドに よりディープに
お祭りではなくてコミュニケーションの3日間 音楽は生命の力を育ててくれる

JAZZ ART せんがわ2013
日程:2013年7月19日(金)~7月21日(日)
会場:調布市せんがわ劇場ほか
総合プロデューサー:巻上公一 プロデューサー:坂本弘道 藤原清登

今年で6回目になる巻上公一プロデュースの音楽フェスティバル。"JAZZ"と銘打っているが、巻上の弁によれば「ひと言で判られないフェスティバルを目指している。簡単じゃない、音楽も楽しくない。よく音を楽しむのが音楽だと言われるが、冗談じゃない。"音楽"という言葉はあとから作られたのであって、音の方が先にあった。だからなるべくたいへんな音楽をやっている、というのがこのフェスティバルの目的。3人しか入れないJAZZ屏風だとか、小さいことを活かせるフェスティバルにしたいと思っています。」とのこと。ラインナップを見れば一目瞭然だが、いわゆる真っ当な「ジャズ」はひとつもない。かといってロックでもクラシックでも前衛音楽でもない。言葉やジャンルで言い表せないややこしい音楽と出会える世界的にもユニーク極まりないフェスである。

JAZZ ART せんがわ2013は7月19日(金)~7月21日(日)の三日間に亘って、調布市せんがわ劇場とJenny's Kitchenの二つの会場を中心にしたライヴ公演とワークショップ、街中での移動式極小ライヴスペース「CLUB JAZZ屏風」とオープンステージが開催され、参加アーティストは総勢64組に上る。本レポートでは筆者が体験した公演・イベントのみ記すこととする。
●はせんがわ劇場、○はJenny's Kitchenでの公演。


(写真の撮影・掲載については主催者の許可を得ています。以下同)

汗ばむような好天に恵まれ、仙川の街もリゾート気分に溢れている。こじんまりした私鉄沿線の駅だが、駅前の商店街はなかなか充実しており、フェスティバルとは関係ない買い物客もどことなく足取り軽く浮かれているように見える。駅前広場にJAZZ屏風が設置されており、親子連れが興味深そうに覗いている。歩いて3分のせんがわ劇場入口には開場を待つ熱心なファンが集まっている。

◆7月20日(土)
●Double Live Painting!! 黒田征太郎+荒井良二+坂本弘道(cello)


フェス二日目、せんがわ劇場の最初のアクトは、フェスティバルのプロデューサーのひとり、坂本弘道のチェロ演奏と、黒田征太郎と荒井良二によるライヴペイティングの共演。親子程に世代の離れた黒田と荒井だが、どちらも絵本作家として活躍しており、荒井は黒田に憧れていたというので、出会うべくして出会った共演と言えよう。飽き易い子供のお絵描き遊びのように、気紛れな感性の赴くままに、絵は次々塗り替えられ色と形が変化する。坂本のグラインダーやドリル、鉛筆や鉛筆削り、様々なオブジェを使った奏法も子供の遊びに通じる。童心に帰った絵と音楽のゲームと考えれば、無心で楽しめた。

○BRIGHT MOMENTS[高岡大祐(tuba)、有本羅人(tp)、橋本達哉(ds)]


もうひとつの会場Jenny's Kitchenはせんがわ劇場から徒歩7分。ロフト風のスタジオで、演奏者に応じて会場レイアウトが変更可能。メイン会場のせんがわ劇場に比べて、若手による実験的な試みも多く、かつてのピットイン・ニュージャズホールはこんな雰囲気だったのか?と想像が広がる。BRIGHT MOMENTは即興チューバの第一人者、というより唯一の、と形容しても嘘ではない高岡大祐を中心にした関西出身のチューバ/トランペット&バスクラリネット/ドラムのトリオ。編成もユニークだが、微弱音演奏に始まり、ドラムと管楽器が交互に強弱を入れ替える曲や、ソロ演奏に他のふたりが絡みつく曲など演奏自体独特。「このトリオは音量と音色のコントロールが最大のテーマ」と高岡が語る。譜面には音符ではなく、言葉で指示が書かれているだけ。「こんな楽譜で演奏しているのは自分たちだけだろう、と思っていたら、ジム・オルークも使っていた」と言っていたが、演奏コンセプトとしては世界随一であろう。関西以外で演奏することは滅多に無いトリオを観れたことは、大きな収穫だった。

●Superterz + Koho Mori-Newton & SIMON BERNS


スーパーテルツはスイス人のマルセル(g,ds)とラビ(electro,syn)のファイド兄弟によるエレクトロノイズグループ。ライヴの際にはゲストミュージシャンを迎える。この日はシモン・ベルツ(ds,創作楽器)と森ニュートン・幸峰(創作楽器)がゲスト。ステージと天井を繋いだスチール弦のオブジェ楽器を森が演奏し、ラビがステージ中央でラッパーのように踊りながら電子楽器を操作。ラビとシモンのツインドラムのビートが絡み合い、ノイジーだが人間味のある演奏。彼らの電子機材と創作楽器のセッティングに時間がかかり、30分程開演が遅れたため、Jenny's Kitchenの進行とズレが生じた。

○aqua jade
Haco (vocal, electronics) + 今西玲子 (箏, effects)



80年代アヴァンポップグループ、After Dinnerで活躍し、海外でも高く評価されたヴォイスパフォーマーのHacoと、箏とエレクトロニクスによる革新的演奏で多面的な活動を繰り広げる今西玲子のデュオ。幻想的なヴォーカリゼーションを和風のサウンドでバックアップするサウンドは、不思議な浮遊感があり、聴き手を癒す効果がある。

●藤原清登 + 灰野敬二


巻上が語る「楽しくない」「たいへんな」音楽にピッタリなのが「モダンベースの王者」と「魂を司る司祭」によるデュオ。初顔合わせのジャズとロックの求道家の共演は、溶け合ったりぶつかったりを繰り返しながらも、即興演奏本来の厳しさと美しさを体現する強力な結晶体になった。ヴォイスとパーカッション&ダンスによる灰野の演奏は、トレードマークの爆音ギターとは異なり音量は抑えめだが、屹立する強靭な魂の力の圧倒的な存在感を見せつけた。それに負けず柔軟なインプロヴィゼーションを貫いた藤原もまた即興の鬼である。

○Third Person Workshop [梅津和時(sax/cl)、サム・ベネット(perc)] withあなた!


70年代から現代に至るまで第一線で活躍を続けるマルチリード奏者、梅津和時と、アメリカから日本へ移住した打楽器奏者、サム・ベネットのふたりがゲスト演奏家を迎えて展開するユニット、サード・パーソン(第三の人物)が、一般から参加者を募って共演するワークショップ。素人プレイヤーに手ほどきするのか、と思ったら、いきなり本気モード、まったく手加減なしのセッションを展開。ふたりに感化されて参加者も気合いの入ったプレイを繰り広げる。オーディションをしたのかどうかは判らないが、どの参加者もかなりの演奏テクニックと舞台度胸があるのに感心した。下手に気を使い試運転するより、ぶっつけ本番の方が潜在的な能力が発揮されるのかもしれない。

●ヒカシュー with ローレン・ニュートン(Vo) 
[巻上公一(vo,theremin,cornet)、三田超人(g)、坂出雅海(b)、清水一登 (pf,Syn,B.Cl.)、佐藤正治(dr,perc)]



1978年デビュー当時は「テクノポップ」と呼ばれていたヒカシューは、ブーム終焉後も変態音楽の急先鋒として独自のスタンスを築き上げ、ジャンルを超越した音楽グループとして海外でも評価が高い。巻上の超絶歌唱やホーミー、テルミン、コルネットをはじめ、どのメンバーも一筋縄では行かない個性派揃い。ゲストにアメリカ出身で、自分の身体そのものを楽器として使うヴォイス・パフォーマー、ローレン・ニュートンを迎えた演奏は、今までの変態性に加え、さらにレベルの高い音楽革命運動へと突入したヒカシューの未来地図を描いていた。




◆7月21日(日)
●Third Person [梅津和時(sax,cl)、サム・ベネット(perc)] + 佐藤允彦(pf)


「第三の人物」が前日のJenny's Kitchenに続き、せんがわ劇場に出演。ゲストに日本フリージャズのオリジネーター、佐藤允彦を迎え、豊穣な演奏を繰り広げる。ストイックな佐藤のプレイに対して、声や身体全体を使って演奏するベネットと、遊び心たっぷりの梅津のスタイルが見事に調和して、即興初心者にも判り易いポップかつアヴァンギャルドな演奏を聴かせた。

○広瀬淳二ソロ


フリージャズ・サックス奏者としては日本を代表する存在の広瀬は、一方で音響彫刻家という顔もある。今回の珍しいソロ公演では、前半テナーサックスのノンブレス奏法による超絶演奏、後半は広瀬の自作楽器 SSI (self-made sound instrument) のノイズ演奏を披露。今回初披露のSSI-7,8は写真で判る通り、ベッドのスプリングや空缶、金属製のプレートを組み合わせたガラクタ楽器。それを佇んだまま空気噴射機で鳴らすので、楽器演奏と呼んでいいのか迷うところ。風の当たり具合、金属の共鳴の変化により音色・音量が変わる。マッドサイエンティストによる音響実験室と表現したい不思議な体験だった。

●Jazz Art Trio[藤原清登(b)、坂本弘道(cello)、巻上公一(vo)] + 山田せつ子(ダンス)


JAZZ ART せんがわのプロデューサー3人が勢揃い、フェスティバルの頂上決戦と言えるセッション。巻上の洒脱な面が支配するかと予想したら、見事に裏切るシリアスな三つ巴の真剣勝負。ダンサー山田せつ子が動きのあるパフォーマンスで花を添えたとはいえ、全編を通して極めてアーティスティックな探究心が流れていることに感銘を受ける。終演後の3人の笑顔にフェスティバルの成功とともに、最高のパートナーと演奏を通してコミュニケイトすることの歓びが溢れていた。

○KILLER-OMA(鈴木勲(b) × KILLER-BONG)


実験道場=Jenny's Kitchenの最後を締めるのは、今回の出演陣の中で最も謎に満ち、最も異色で、最も画期的なコラボレーション。ヒップホップDJ兼ラッパーのキラーボンは、Black Smokerという自主レーベルを主宰し、ディープなヒップホップ作品をリリースすると共に、ロックやポップやノイズと積極的にコラボレートし、ジャンルを超えた実験的作品もリリースしている。そのひとつが「JAZZ GOD FATHER」オマさんこと鈴木勲との共演作『KILLER-OMA』である。鈴木は60年に亘る演奏活動の中でウッドベース奏者として様々なジャズ革命に参加してきた。その意欲は80歳を迎えた現在でも衰えることはない。ヒップホップ手法のエッセンスを抽出した濃厚なキラーボンのエレクトロビートの中、歪んだ音でドライヴするベースプレイは、ジャズの教科書にはやってはいけない演奏例として挙げられているかも知れない。規則を破ってこそ真の革新が生まれる。掟破りのふたりの共演はこのフェスティバルのみならず、ジャズ全体の未来への希望の光と言えるのではなかろうか。

●John Zorn's COBRA ジム・オルーク部隊
[ジム・オルーク、波多野敦子、須藤俊明、山本達久、石橋英子、トンチ、ユザーン 、五木田智央、千葉広樹、巻上公一、坂口光央] ほか



ファスティバルの大団円は、ジョン・ゾーンが1984年に考案したゲーム理論に基づいた即興演奏スタイル、ジョン・ゾーンズ・コブラ。当時から日本の即興音楽家を魅了し、数々の日本人演奏家により実践されてきた。現在でも巻上公一を中心に継承されている。何度説明されてもゲームのルールは理解できないが、プロンプターのコミカルな動きと演奏者の反応が面白い。演奏内容を云々するより、ステージ上で繰り広げられる人間味に溢れたゲームの成り行きを観て楽しむのがベスト。贔屓の演奏者がいれば、その行動に注目するのも楽しい。一方でコブラを超える革新的即興演奏理論が生まれていないことも確か。コブラ誕生から30年経つので、そろそろ新たなる演奏スタイルの登場を期待したいところではある。



終演後の挨拶で巻上が「年々予算が厳しくなる中、来年も開催するためには多くの人の支持が必要。もっとたくさんの人に観て欲しい。」と語っていた。日本各地で予算不足のため文化事業が縮小傾向にあることは間違いない。調布市がどこまで支援してくれるかは判らないが、世界的にも唯一無二のこのフェスティバルの歴史を中断することがあってはならない。そのためには主催者やスタッフ、演奏家、調布市民だけではなく、日本全国の心ある音楽ファンの理解と支援が不可欠だろう。

せんがわの
希望の灯火
消すべからず

一個人として、フェスティバル継続のために何が出来るか、考えていきたいと強く思う。
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竹田賢一『地表に蠢く音楽ども』刊行記念トーク&ライヴ@渋谷Last Waltz 2013.8.4(sun)

2013年08月06日 00時15分54秒 | 書物について


竹田賢一『地表に蠢く音楽ども』刊行記念トーク&ライヴ

アンダーグラウンド音楽シーンに絶大な影響を与えてきた稀有なイデオローグ/オルガナイザー、竹田賢一待望の初評論集『地表に蠢く音楽ども』(月曜社)を記念したトーク&ライヴ!!!!!!!!

【出演】竹田賢一、平井玄、中原昌也、チヨズ

竹田賢一の名前を知ったのはいつだっただろうか。70年代末に吉祥寺のライヴハウスやレコード屋に出入りしていた頃に目にしたチラシかもしれないし、ピナコテカレコードからリリースされたLP『愛欲人民十時劇場』かもしれないし「Fool's Mate」や「Marquee Moon」といった雑誌や「Player」誌の連載「Pipco's」の記事中かもしれない。いずれにせよ、最初の認識では竹田は大正琴奏者だった。音程を無視した耳に突き刺さるハイピッチな音色は、白石民夫のサックスのフリークトーンや灰野敬二の轟音ギターと喘ぎ声や山崎春美の痙攣パフォーマンスと共に、当時の地下音楽の代名詞だった。1983年のA-MusikのデビューLPの解説書に竹田が書いたライナー/プロパガンダを読んで、彼が優れた著作家・思想家であることを知った。当時吉祥寺や高円寺界隈のライヴハウスやレコード店やカフェで配られたミニコミやフリーペーパーには、佐藤隆史、山崎春美、工藤冬里、科伏(T.坂口)、荒俣宏、霜田誠二、八木康夫、大里俊晴などと並んで竹田の名前があった。概ね虚偽妄言ばかりの文章の掃き溜めの中に、ただひとり竹田だけは(晦渋な漢字熟語を気にしなければ)極めて理路整然とした論考を綴っていた。ジャズやインプロやプログレに関する博学ぶりを惜しみなく開示しつつ、80年代の音楽状況論を現場から語る竹田は、濃い顎髭と鋭い眼光が相まって、マイナー音楽の守護神的な存在感があった。

竹田が1975年~1990年にかけて雑誌やレコード解説などに発表した60編余りの評論が『地表に蠢く音楽ども』として500ページの書籍にまとめられた。鞄に入れて通勤途中で読むには些か重過ぎる。取り上げられた音楽とレコードは昭和末期を彩る先鋭的な作品ばかりで、当時の自覚的な音楽リスナーにとっては、他の誰よりも音楽聴取の手引きになったと言われることも多い。まさに80年代地下音楽の旅先案内人だったことが判る。出版を記念したトークイベントが渋谷Last Waltzで開催された。前夜のライヴイベントに比べて驚く程の動員で満席。Last Waltzのオーナーも参ったという顔をしていた。

●チヨズ


トークが先と思っていたら、第五列のGESOこと藤本和男率いるチヨズの演奏から始まった。基本的には歌謡曲やテレビ主題歌を即興演奏でカバーするバンド。非在主義者の空想的連合体の第五列からの派生ユニットなので、似てるとか上手いという基準は無意味。ヘタウマとも破壊とも異なる、カバーでもオマージュでもない曰く言い難い演奏は、80年代の混沌を現代に継承している。後半ゲストに竹田を迎えて非力オーラ全開の演奏を聴かせた。



●トーク:平井玄+竹田賢一+中原昌也


思想系・音楽文化論系フリーターを自称する評論家、平井玄と90年代以降のサブカルを代表する音楽家・著作家、中原昌也とのトーク。7-80年代竹田と平井は共闘し、時代を先取りする文化論を展開した。その頃の想い出から、現代に至る竹田の歩みを語る。決して話術巧みではない竹田の一言一言考えながらの朴訥とした語り口は、大正琴という不器用な楽器同様の独特のテンポ感を持つ。中原の毎度の下げトークと相まって、放送事故ギリギリのスリリングな時間を産み出した。

●竹田賢一+中原昌也/竹田賢一SOLO


中原の演奏を聴けるとは予期していなかったので嬉しい驚き。2,3年前からライヴを辞めたい、と言っている中原は、毎年6月4日の誕生日には六本木スーデラで「お誕生会」を開催し、ミュージシャン仲間と共に演奏を繰り広げる。床屋で勝手に切られたという短髪姿は15歳若返ったかのよう。機材をかなり売り払ってしまい、福岡から帰ったばかりで寝不足だと言うが、久々に観る演奏は感慨深い。機材が減っても豊富なアイデアを音像化する才能は変わっていない。初共演のふたりのセッションは、ジャンクなエレクトロノイズの渦を切り裂く大正琴が見事な親和性を見せた。



20分の中原との共演に続き竹田のソロ。キーンという高音が耳に刺さる感覚は、1980年に初めて演奏を聴いた時そのままだった。当時学生運動的なイベントで大音量で演奏し、余りの騒音に警察沙汰になりかけたという逸話もある。



大著『地表に蠢く音楽ども』は是非とも購入し、ゆっくりと読み解いていただきたい。
密林での購入はコチラ

地表へと
蠢き出した
幼虫の危機

山崎春美の著作集『天國のをりものが』が8月末刊行予定。
コメント (2)
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山崎怠雅/てあしくちびる/川上龍一@渋谷Last Waltz 2013.8.3(sat)

2013年08月05日 00時06分15秒 | こんな音楽も聴くんです


TRAVEL MAP vol.11
~旅へ旅へ、ガタゴト旅へ。リズム、グルーヴ、スウィング。トラベルマップ!~


出演:山崎怠雅、てあしくちびる、川上龍一、赤い夕陽

最近渋谷Last Waltzの名前をよく聞く。別のイベントを調べるためにLast Waltzのサイトを見ていたら山崎怠雅の名前を発見。荻窪のSMイベント?でギタリストTAIGAの演奏は観たが、今回は弾き語りソロ。前日の高円寺の勅使河原×灰野ライヴでTAIGAに会ったことだし、ひとつ観てやろうと出掛けた。地図を見てもしやと思ったら、やはり元青い部屋のあった場所だった。シャンソン歌手戸川昌子がオーナーだったライヴハウス青い部屋は2010年秋、不慮の事件で閉店を余儀なくされた。鳥井駕句が中心になって救済イベントを行ない、戸川は別の場所で継続してライヴを開催しているようだが、六本木通り沿いの店は閉店。そのあと2011年春に開店したのがLast Waltz。オーナーは元々シンガーソングライターで、この日出演のTAIGAや川上と共演経験もあるとのこと。改装して間もないスッキリしたライヴホールである。この日のイベントTRAVEL MAPはオーナーがアーティストを厳選したLast Waltz独自企画。

てあしくちびる


最初の赤い夕陽には間に合わず、2番目のてあしくちびるの後半から参戦。TAIGAがおススメです、と言っていた栃木出身の河内伴理(vo.ag)とくちびるつっちー(vo.vln)の男女デュオ。チェロやヴァイオリンの時に優雅で時に乱暴なプレイとふたりの掛け合いコーラスが特徴。最初はアイリッシュトラッドやブリティッシュフォークに近いと思ったが、ラストナンバーで暴走ラップパフォーマンス。ユニークな歌詞を見事にハモッてラップするのが衝撃的。ただのフォーキーじゃないごった煮性が個性的でいい。頻繁に東京でライヴしているので要チェック。




山崎怠雅


ヴォーカリストTAIGA初体験。フレアパンツにソフト帽というサイケ・ファッションでどんな歌を唄うのか?鳥井駕句推薦なのでアシッドフォークっぽい儚いドリームフォークを想像していたら、予想外にしっかりしたメロディーとハイトーンの甘い歌声に驚く。フォークについてはほぼNO知識なので恥をさらす覚悟で喩えれば、さだまさしや長谷川きよしか?一曲毎にチューニングを変えるスタイルはヨーマ・コウコネンを思わせる。サイケ度満点のエレキギター・プレイに比べたらずいぶん正統派に思えるが卓越した歌とギターはとてもいい。90年代半ばから活動し、友川カズキが根城にしており、灰野敬二も出ていた渋谷APIAにも出演していたとのこと。好きなシンガーソングライターはドノヴァンとニック・ドレイクとバート・ヤンシュ、日本ではジャックス(早川義夫)と森田童子。さだまさしは好きじゃないけど物真似は上手いとのこと。




●川上龍一


陰陽蝕というバンドのリーダー、川上のソロセット。スタンディングで髪振り乱してのパンクフォーク。「兵隊さんがやってきた」「FREE」といったメッセージソングを激しく唄うので、社会派プロテストシンガーなのかと思ったら、普段は政治っぽい歌はやらないが、昨今の政治家を中心とする暴言や失策に抑えようのない憤りを覚えてやったとのこと。こんな歌を唄うのがシャレにならない世の中はおかしい!という語り。歌で世の中を変えられるわけはないが、歌だけがシンガーソングライターの武器であることは確か。その基本姿勢にブレがないから、川上の歌には真実味がある。




負けず嫌い
意地の張り合い
辞めなさい

大森靖子やマヒトゥ・ザ・ピーポーなど若手フォーキーの台頭著しいシーンに於いて、この日出演の実力派たちも正統に評価されることを望みたい。

コメント (2)
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勅使川原三郎×灰野敬二@高円寺HIGH 2013.8.2(fri)

2013年08月04日 00時38分09秒 | 灰野敬二さんのこと

(写真・動画の撮影・掲載に関しては主催者・出演者の許可を得ています。以下同)

勅使川原三郎×灰野敬二
特別ライブパフォーマンス「一音一音」


-Live-
勅使川原三郎 (dance)
灰野敬二 (music)

照明協力:清水裕樹 (ハロ)

勅使川原三郎が、今夏、ライブハウス 高円寺HIGHで、これまでの既成の音楽に囚われない独自なボ-カルスタイル、ギター奏法で観客を圧倒し、徹底してロックへの美学を貫く音楽家、灰野敬二さんと特別ライブ・パフォーマンスを行ないます。
一夜限りの限定で、ご入場頂ける人数にも限りがございます。このライブを目撃したい方は、是非、お早めに、チケットをお求め下さい!
勅使河原三郎 KARAS オフィシャルサイトより)



ダンスカンパニーKARASを主宰し、既存のダンスの枠組みではとらえられない新しい表現を追及する勅使河原三郎は、独特の創造感覚に満ちた舞台表現で、ダンス界のみならずあらゆるアートシーンに衝撃を与え、世界的に高く評価される、名実共に日本を代表する舞台芸術家である。世界中の主要フェスティバルや劇場の招聘で数多く海外公演を行うのは、音楽シーンに於ける灰野のスタンスに通じる。

灰野のダンス/舞踏の共演者としては田中泯とその門下の石原志保がよく知られる。他にも大野一雄など著名な舞踏家との共演は少なくない。激しいステージアクションは音楽の舞踏と評されたし、自らもパーカッション・ダンス・ソロで身体表現を追求してきた。今回の共演ライヴは、2010年11月に横浜で開催された大野一雄フェスティバルでの東野祥子との共演以来2年半ぶりのダンス・コラボ。

勅使河原と灰野はお互い名前は知っていたが、昨年11月12日青山マンダラでの灰野ソロ公演の企画者が縁結びするまで会ったことはなかったという。長年異なる分野で活躍してきたふたりの表現者はすぐに魂が通じ合い、初の共演へと自然に話が進んだことは想像に難くない。スタジオで一回リハーサルをしたが「一切台本なしの即興パフォーマンス」ということだけ決めたらしい。

2011年3月11日、高円寺HIGHで予定されていた灰野の新バンド静寂のライヴが震災で中止になった。その日を境に世界の全てが変わってしまった。音楽は勿論、芸術全体に大きな衝撃と変革をもたらした。灰野にとって因縁の会場でのパフォーマンスには特別な思いがあるのではなかろうか。会場の雰囲気がいつもの灰野のライヴと違うのに気がつく。黒装束長髪のロックファンは殆どおらず、サブカル系の若者とアート好きそうな年配客が多い。特に前列には女性の姿が目立つ。おそらく勅使河原&ダンス&舞台ファンが多かったのではなかろうか。知った顔がまったくいないので軽いアウェー感を覚えた。アンビエント音楽のSEが流れる場内で、隣の同世代らしき女性3人組が熱心に演劇や舞台の情報を交換している。



ほぼ定刻通りに灰野が登場。照明が暗転するといきなりドラムマシーンをボリューム最大で「バシッ!」と一発。衝撃で前の女性客が飛び上がる。断続的に打撃音が続き、一音一音に女性の頭がビクッと反応するのが面白い。気づくと勅使河原と佐東利穂子が下手から登場して台の上に彫像のように佇んでいる。ビシッバシッという音に反応して痙攣するように細かく震え始めるふたつの肉体。音と拮抗する波動が驚く程の存在感で迫ってくる。ゆっくりとふたりの動きが大きくなり、両手を広げて空中に軌跡を描き出す。重力を無化する一挙一動に目を見張っていると、ステージの上だけ空間が歪んでいくような錯覚に陥る。



灰野のヴォーカルは獣にような咆哮から、明瞭な言葉の歌に変わる。最近灰野の発する言葉が今まで以上に具体的な意味性を帯びているように感じる。それは子供でも理解できる平易な語彙と禅問答に陥らない明確な意思の存在ゆえであろう。3.11以降の灰野の活動には、深い慈しみと相互理解への希求が色濃く表出している。老成や軟化でなく、表現者として新たな地平に立ったことは間違いない。



ステージ上にはハイワットとマーシャルのスピーカーが6台積まれている。キャパ400人のクラブで爆音が1km先まで聴こえたという伝説を残した「I'll Be Your Mirror」フェスと同じセッティング。まさに容赦のない爆音シャワーが襲いかかる。特に2台のミニシンセサイザーによる暴力ノイズ攻撃は圧倒的。音圧で前列の女性の髪が逆立っている。すると、暗闇で聴覚が鋭くなるように、麻痺した耳の代わりに目から入る刺激が強烈に意識されてくる。勅使河原と佐東の存在が脳の中心に雷鳴のように突き刺さる。言葉で表現するのは困難だが敢て記せば、10年程前に流行った裸眼立体視でモワレ画像の中から文字が浮き出るのが見えた時の「ハッ!」という状態がずっと続くような感覚か?



轟音演奏が一転してフルートとパーカッションの静謐な演奏に変わるが、音としての存在感の大きさが爆音以上に強く感じられることに驚く。物理的な音量ではなく、音の求道者がよく言うように静寂にこそ本当の力が宿っているのである。圧巻は演奏に没頭する灰野の背後から、勅使河原が文字通り音もなく無表情に近づき、ふたりが最接近した瞬間だった。灰野が意識したかどうかは判らないが、接近するにつれて明らかに演奏のテンションが高まったのを肌で感じた。灰野の歌とギター、勅使河原の銅像のような表情とそれが薄明に浮き出る照明効果、強過ぎる空調のヒリヒリした寒気、女性客の香水、緊張感で苦くなった唾液。五感で感じる芸術表現に意識を集中した。





鋼のように強靭な微弱音のギターの爪弾きで100分に及ぶパフォーマンスは終了。終わって暫く無音の続く会場が、勅使河原が顔を上げた瞬間に賞賛と安堵の拍手に包まれる。全てを出し切ったとばかり握手するふたりの姿を観ながら、「一音一音」というタイトルが音だけでなく感覚すべてを指していたことに思いを馳せる。真に奇跡的な一夜だった。



全身全霊
かけた魂の
滲み合い



[8/8追記]
●詩人・文芸評論家、林浩平によるレポートはコチラ


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PASSPO☆新エアライン3部作完結記念!パスポートで巡る音楽紀行~PASSPORT RECORDS & PASSPO☆

2013年08月02日 01時33分27秒 | ガールズ・アーティストの華麗な世界



◆PASSPORT RECORDS


パスポート・レコードは1973年にアメリカのレコード輸入業者JEMレコードが、大手サイアー・レコードと提携して設立した独立レコード会社。JEMは主にイギリス/ヨーロッパ盤レコードをアメリカで販売していたが、パスポートは米国アーティストのレコード制作が主業務だった。第一弾アーティストが鍵盤奏者レリー・ファストのソロ・プロジェクト、シナジー。

●シナジー


「ロック・オーケストラの電気的再現(Electronic Realizations for Rock Orchestra)」と題された1975年のデビュー作。当時日本でも『十番街の殺人』という邦題で発売された。シンセサイザーを中心にピアノやストリングスを駆使した多重録音は、ヴァンゲリスやジャン=ミッシェル・ジャールに通じる近未来エレクトロサウンドとして話題になった。今の耳で聴くと古色蒼然としたスタイルだが、アナログ・シンセの音色が新鮮。ラリーはアメリカで人気のあったB級クラウトロックバンド、ネクターに参加、パスポートから数作リリースした。




●アンソニー・フィリップス


ジェネシスの初代ギタリスト、アンソニー・フィリップスの1stソロ『ガチョウと幽霊(The Geese & The Ghost)』(1977)。ジェネシス時代の盟友マイク・ラザフォードのプロデュースでフィル・コリンズもヴォーカルで参加。ジェネシスの牧歌的な面を担っていたアンソニーの幻想的なアコースティック・サウンドが如何にも英国的。2nd以降は別レーベルに移るが80年代にパスポート傘下のPVCからソロ・アルバムをリリースする。




リンク・レイやNYに移住したクリス・スペディングといったエモいギタリストを含めた米国アーティストのレコード制作に加え、パスポートはヨーロッパのレコードの米国&カナダでの販売権を獲得し、キャメル、ブランドX、ディープ・パープル、ジューダス・プリースト、ロビン・トロワーなどもリリースした。当時高価だったヨーロッパ盤を廉価でリリースしたため、マニアにとってはB級イメージが伴うが、アメリカでは珍しくプログレ/ジャズロック/メタル系に特化したユニークなレーベルであり、アメリカ大陸のプログレ・ファン層の開拓に果たした役割は見逃せない。そんなエモいレーベルだったが、1988年に親会社のJEMの業務縮小により幕を下ろす。  


PASSPO☆
BiSと並んでエモいアイドルNo.1、PASSPO☆が5月から3ヶ月連続でリリースした「新エアライン3部作」シリーズが遂に完結!アイドル界にガールズロック旋風を巻き起こす怒濤のフライトを体験せよ!

「STEP & GO/キャンディー・ルーム」







「Truly」




「妄想のハワイ」




Major Release SINGLES




★PASSPO☆×安野勇太(HAWAIIAN6)対談インタビュー「アイドルはカッコいい」はコチラ

パスポート
キレてはイケない
エモフライト

初フライト!インディーズ1stシングル「Let It Go!」




初々しい・・・♡ これはこれで萌えますな~
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ギターウルフ/下山(Gezan)/大森靖子/URBANフェチ/ゾンビちゃん@下北沢Garden 2013.7.30(tue)

2013年08月01日 00時58分17秒 | ロッケンロール万歳!

(写真の撮影・掲載については主催者・出演者の許可を得ています。以下同)

Beat Happening!@GARDEN
~SHIMOKITAZAWA R&R PANIC!GREATEST!~

Line-up:下山/ゾンビちゃん/URBANフェチ/ギターウルフ/大森靖子



それにしてもBeat Happening、略してビーハプはすげえイベントである。1500人規模のホール・ワンマンを売り切るトキメキスターから、ブレイク間近の注目株、そしてデビュー間もないフレッシュマン&ウーマンまで、人気・芸歴・ジャンル多種多様なアーティストを豪華というか無謀というか乱暴というか、予想外の組み合わせで小規模なライヴハウスにドロップ、それを最低二日に一度のペースで開催する。しかも高校生以下は割引有り。一体これで採算取れるのか、いやそれ以前に主催者の体力と精神力が保つのか心配になる。が、驚異的なペースは衰えるどころか8月には17連戦も控えており、絶好調の加速状態。この勢いで突き抜けてロック・シーンに喝を入れて欲しい。

主催者によれば、その日に起こる事はそこでしか見られない、がビーハプの大きなテーマだとという。他のイベントに比べて観客の年齢層は圧倒的に若く、目当の出演者以外の対バンもしっかり楽しもう、という姿勢があって頼もしい。ビーハプ精神がしっかり育っている証拠である。「SHIMOKITAZAWA R&R PANIC!GREATEST!」とサブタイトルされたこの夜は、個人的にも美味し過ぎる組み合わせ。おっさん向けサービスか?と思ったが、来場者は平均20歳前後で女子率高し。

●ゾンビちゃん


5月に開催された都市型フェス下北沢サウンドクルージングの企画で、でんぱ組最上もがと対談してたので名前と顔を覚えたゾンビちゃんはシンガーソングライター。不思議ちゃんな芸名の由来は知らないが、ホラーでもオカルトでもなく金髪がトレードマークの18歳のチャーミングな女の子。歌は初めて聴いたが、等身大の女子の気持ちを自然体で唄う姿はとても新鮮だった。観客のシンガロングに、はにかみながら「ああー!とっても嬉しい!」と見せる笑顔が眩しい。同世代の女性に支持されそうだ。




●URBANフェチ


以前ビーハプで観たことのあるトリオ、URBANフェチ。詳しいバイオは判らないが、以前は全員男性メンバーだったかもしれない。初めて観たとき、ベースとドラムの女性ふたりのキレキレのパフォーマンスが印象的だった。特にベースの梅子のスカート姿のハッチャケ演奏にはたまげる。チョッパーベースの凄まじさときたら!ドラムの短パンはニコニコ笑顔で全力連打。黒一点アーバン耕平のノセ方を心得た歌とギターも超楽しい。変態的なリズムチェンジをいとも簡単にキメてしまう実力派だが、それをまったく感じさせないところがさすが。




●大森靖子


7月12日新宿ロフトで初めてライヴ体験し、トラウマになるほどの衝撃を受けた大森靖子を再見。アイドルイベントからロックフェスまで引っ張りだこの彼女は先週末TOKYO IDOL FESTIVAL 2013に出演し、アイドル好き故アガリ過ぎた反動で、この日は凹状態。「私暗いですかね?」と落とすMC連発。その分演奏は前回よりも激しく情動的で、ステージ上でリストカット自殺を図るかも、と心配になるほどの迫真性。URBANフェチで飛び跳ねて踊っていた客も水を打ったように静かに耳を傾ける。アコギ一本でこれほど多彩な世界を見せてくれるシンガーソングライターもいない。終わらないうちから彼女の次のライヴスケジュールが気になっちゃう中毒性。SEIKOフェチになってしまいそう。終演後物販席で話したら、ケロっと普通の女の子に戻って(装って?)いたのにほの字。




●下山(Gezan)


マヒトゥ・ザ・ピーポーのソロアルバムがリリースされたのに、レコ発にも行けなかったので下山(Gezan)は久々。ギターウルフとの対バンにかなり気合いが入っていた様子。開口一番「これが2013年最新のメロコアなのでヨロシク。YO●OY●M● K●Nに言っといて」と悪態をついて放った新曲が今までの下山のイメージをぶち壊すメジャーコード進行のパンクナンバー。判り易いポップなメロディーを唄ってもマヒトらしい激烈テンダネスが放出されるのが素晴らしい。演奏のキレ味は相変わらず危険な刃物そのもの。マヒトはキレ過ぎでギターの弦を次々切ってしまう。下山流メロコア・ナンバーを3曲やって、世界で一番泣けるバラード「春の膝」。マヒトはギターを放り出してハンドマイクで絶唱。イーグルのギターも壊れ音が出なくなる。カルロスのベースとシャークのドラムのグルーヴィーな演奏にフロント3人のスクリームバトル。壮絶な尻切れエンディングが下山らしくて感動に震えた。




●ギターウルフ




まさかGARDENで観れるとは思わなかったギターウルフを目の前で堪能。やけに外国人が多いな、と思っていたら、ギターウルフ目当だった。1993年アメリカのGONER RECORDSからデビューを飾ってから20年。その間まったく変わらない歪んだロケンローを鳴ならし続けた彼らは、間違いなく世界で一番有名な日本のロケンローラーである。初期衝動の塊と言われることが多いが、20年以上もデビュー当時と同じわけがない。ギターウルフ流ロケンロー道をひたすら極めるという進化の途中にある。その旅路に立ち会える我々は奇跡的に幸運である。バイクの爆音のSEで登場したセイジの姿に観客が一気にヒートアップ。久々に見るグシュグシャのモッシュが楽しい。どの曲もロケンローの新世代スタンダードに違いない。何度観てもアガるロケンロー伝統芸の連発にひたすら酔う。鳴り止まない2度目のアンコールの拍手にセイジがひとり登場して「アンコールは無し。これから飲みに行かなきゃならないからね!」と言い放ったのにロケンローラーの本質をみた。




【Guitar Wolf Setlist】
01.ミサイルミー
02.オールナイトでぶっとばせ!!
03.カワサキ ZII750 ROCK'N'ROLL
04.ジェットラブ
05.ジェット・ビア
06.ワイルドゼロ
07.火星ツイスト
08.女マシンガン
09.ロックンロールエチケット

EC1.UFOロマンティクス
EC2.環七フィーバー

どの出演者もそれぞれエクストリームな求道者ばかりの濃過ぎる珠玉の一夜だった。これだからビーハプは素晴らしい。

フォーキーと
ロケンローが
出会う夜

下山(Gezan)おススメライヴ



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