昨日午前中に届き、昨夜読了。これはNHKスペシャルなどで放映されたものを書籍にしたのであるが、私は映像を見ていない。
私も、静岡県で編成された軍隊の戦闘の調査に中国はその他へ行ったりしているが、NHKの方々は当然出張で調査をしているのだろうから、うらやましい限りである。歴史の調査の出来不出来は、時間とカネをどれだけかけたかによる。私も民放と共に、二度中国へ調査に行ったことがあるが、乏しい予算で、よい映像が撮れるかどうかは、運による。長期の調査は無理だからだ。
さて、本書は、たいへん迫力がある。歴史の調査は、執念深く探索していくと、素晴らしい資料や人物に会うことができる。取材班は、熱心に調査を行い、実際にインパールに参加した元兵士を訪ね、実際の声を聞くことができた。すでに元兵士は、90歳を越えている。まさに最後の機会である。
なかでも、浜松市出身の齊藤博圀氏を捜し当て、氏の当時の日誌や回想録に接したことが、インパール作戦の無謀さを一次史料で明確にすることができたといえよう。氏の日誌その他は、復刻する価値があると思う。
インパール作戦は、登場を中心とした陸軍中央と牟田口廉也の無謀な作戦により実行され、日本軍兵士に多大な犠牲を強いたものであることは、たとえば岩波新書の『インパール作戦従軍記』(丸山静雄?)などを読めば即判明することである。しかし、こうした無謀な作戦を展開し、日本軍兵士を塗炭の苦しみに追いやったにもかかわらず、軍幹部は一切責任をとっていない。まさに兵士たちは無駄死にをしいられたと言えよう。
作戦がどのようにつくられ、どのように実行されたかの記述もあるが、現地に取材に行きそこで話を聞いた現地の人々の証言はなかなか重いものであった。また取材先で、日本の演歌を鳴らしたところ、急に無数の蛾が集まり来たことの描写は、インパールで非業の死を遂げた兵士と二重写しになり、そのむごい事実をさらに印象深くさせていた。
戦争とはいかなるものか、それを知らない、学ばない人々が、政治家になったりしている。戦争とは、こういうものだということを知るためにも、読むべき本であると思う。