どう生きるのか、という問いは、何才になってもなくならない。忙しい日々を過ごし、ふと別なことをやる時に、その問いがあたまをもたげる。
『原民喜』という作家について記されたこの本は、その「別なこと」だ。
原民喜は、静かな人だ。沈黙に耐えられる人だ。私は、そういう人は強い人だと思う。私は沈黙には耐えられない。他人と一緒に居る時に、黙って居つづけることはできない。話す、話す、・・・・・・
原と交遊があった遠藤周作は、沈黙に耐えられない人のようだ。だから、饒舌の中に孤を見てしまう。
原は、裕福な家庭に育ったが、しかし父をはじめ、死が身近にあった。死から遠ざかった時は、結婚したとき。心から信頼できる貞恵との生活は、原にとって少ない、他者との幸せな時空であった。
だが、結核が貞恵を奪う。そしてヒロシマで被ばく。多くの人の「死」にであう。その「死」を書きのこさなければらないと、「夏の花」などを書く。
貞恵がこの世を去ってから、原は、この世界で生きることに執着は持っていなかったと思う。だから自死?
しかし、彼は自死の直前に、「永遠のみどり」という詩を書いている。
永遠のみどり
ヒロシマのデルタに
若葉 うづまけ
死と焔の記憶に
よき祈りよ こもれ
とはのみどりを
永遠のみどりを
ヒロシマのデルタに
青葉 したたれ
この詩は、この世界に絶望を感じた人のものではない。未来を信じる詩である。
なぜ原民喜は自死したのか。自分がこの世ですべきことはすべてしてしまった、と思ったのではないか。後事は、他の人に託す。遠藤周作、祐子さんたち。
人間への信頼を持つが故の自死。そういう気がする。
この本。読みながら、原民喜という作家の人生を見つめながら、いろいろな想念が湧いてくる。
とてもよい本である。
実は私は、原民喜の作品をひとつも読んで来なかった。読まなければならない、ということだ。
『原民喜』という作家について記されたこの本は、その「別なこと」だ。
原民喜は、静かな人だ。沈黙に耐えられる人だ。私は、そういう人は強い人だと思う。私は沈黙には耐えられない。他人と一緒に居る時に、黙って居つづけることはできない。話す、話す、・・・・・・
原と交遊があった遠藤周作は、沈黙に耐えられない人のようだ。だから、饒舌の中に孤を見てしまう。
原は、裕福な家庭に育ったが、しかし父をはじめ、死が身近にあった。死から遠ざかった時は、結婚したとき。心から信頼できる貞恵との生活は、原にとって少ない、他者との幸せな時空であった。
だが、結核が貞恵を奪う。そしてヒロシマで被ばく。多くの人の「死」にであう。その「死」を書きのこさなければらないと、「夏の花」などを書く。
貞恵がこの世を去ってから、原は、この世界で生きることに執着は持っていなかったと思う。だから自死?
しかし、彼は自死の直前に、「永遠のみどり」という詩を書いている。
永遠のみどり
ヒロシマのデルタに
若葉 うづまけ
死と焔の記憶に
よき祈りよ こもれ
とはのみどりを
永遠のみどりを
ヒロシマのデルタに
青葉 したたれ
この詩は、この世界に絶望を感じた人のものではない。未来を信じる詩である。
なぜ原民喜は自死したのか。自分がこの世ですべきことはすべてしてしまった、と思ったのではないか。後事は、他の人に託す。遠藤周作、祐子さんたち。
人間への信頼を持つが故の自死。そういう気がする。
この本。読みながら、原民喜という作家の人生を見つめながら、いろいろな想念が湧いてくる。
とてもよい本である。
実は私は、原民喜の作品をひとつも読んで来なかった。読まなければならない、ということだ。