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衣類をお出しになる皆様から時々いただくご質問に、「古着のリサイクルは『破れや汚れのない、状態の良いもの』でということだが、ウエスや(綿に戻す)反毛であれば、少々汚れていたり、破れやボタンが取れていたりしていてもリサイクルできるのではないか?」というものがあります。ご家庭に眠っていた衣類を整理し、お出しになるにあたって、そのような疑問をお持ちになるのは至極もっともなことだと思います。確かに、ウエスや反毛であればボタンがついていなかったり多少の破れがあっても製造工程上は問題ありません。しかし、それでもなお「破れや汚れのない、状態の良いもの」とお願いしているのにはいくつか理由があります。
まず初めに、繊維に限らずリサイクル業が宿命として抱えている難点として「需要に応じて供給を決定できない」という問題があります。通常皆様が想像される仕入と販売の関係では、「販売数量に応じて仕入数量を調整する」ということが可能です。しかし、リサイクル業ではこの関係が成り立たず、需要と供給とが無関係に作用します。簡単にいいますと、廃棄される資源の量はリサイクル品の売れる量と関わりなく決まります。したがって、我々故繊維業者は古着・ウエス・反毛の需要に応じ、集まった衣料の選別方法を微妙に調整することで需給バランスをとらなくてはなりません。
第二に、特に繊維リサイクルの場合、ご家庭から排出される量に対してリサイクル後の商品需要が圧倒的に小さいということがあります。一般に両者の比率は10:1ないし10:2と言われています。したがって、「破れや汚れのない、状態の良い衣類」に限定したとしても古着・ウエス・反毛等の需要を十分に賄うだけの数量が発生するのです。
第三に、状態の良い衣類は古着としてリユースすることも、素材によってはウエスにすることも反毛にすることも可能です。つまりリサイクル需要に対して柔軟性があります。一方、状態の悪い衣類は良くてウエスか反毛にしかならず、特にひどい場合にはいずれにも使うことができません。すなわち、需要に対する柔軟性がありません。したがって技術的にはウエスや反毛にできるのだとしても需要が十分になければ、あるいはあまりに状態が悪ければ、せっかく皆様やわれわれがコストをかけて集め、仕分けした衣類がリサイクルできないということが起こりえます。その割合が高くなればなるほどリサイクル効率は低くなるということになります。
第四に、上記のような理由によりリサイクル不能の衣類が多くなった場合、リサイクル業者はそうした衣類の廃棄処理という全く非生産的な活動にコストを費やさなければならなくなります。採算が悪化すれば業者の数は減り、需要が仮にあってもそこにリサイクル商品の供給がなされなくなります。供給が不足すれば、何か他のもので代替しなければなりませんが、その場合不足を補うために本来不必要な資源やエネルギーを追加投入することになります。その結果、社会厚生としてはリサイクルの縮小と資源・エネルギー投入の増加という二重の無駄を生み出すことになるのです。
最も効率のよいリサイクルのあり方とは、発生してしまった排出物を極力リサイクルするというだけでなく、リサイクル商品で賄えるものは極力リサイクル商品を消費することにより資源やエネルギーの追加投入を抑えるという二つが両立することです。前者については皆様大変良くご理解されていらっしゃるのですが、意外と後者が盲点になっていることが多いようです。
確かに状態の悪い衣類ももったいない、使えるものならばできるだけ使って欲しい。お気持ちは大変良く分かりますし、我々も同感です。しかしながら、それがためにリサイクルの需給バランスを崩し、果てはリサイクル需要そのものを縮小させてしまっては元も子もありません。繊維リサイクルは俗に「悪貨は良貨を駆逐する」といわれるグレシャムの法則に陥ってしまいます。
ごみなど出ないのが一番良いのは言を俟たないのですが、出てしまうのであれば可能な限り再資源化して再活用しなければなりません。皆様の「もったいない」と思うお気持ちを無にしないためにはできる限りリサイクルが効率的に回るようにしなければなりませんし、そのために我々故繊維業者が存在する意義があるのだ考えています。以上のことから、なぜ技術的に活用可能であってもあえて「状態の良い衣類」を優先してお出しいただくようお願いしているのかご理解いただければと思います。
繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
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