ヤナーチェクの恋の行方 弦楽四重奏曲第二番「ないしょの手紙」を聴く

フェルメール弦楽四重奏団演奏会 NHK-FMベストオブクラシック(7/6 19:20~)

曲 ヤナーチェク/弦楽四重奏曲第2番「ないしょの手紙」
  ベートーヴェン/弦楽四重奏曲作品59「ラズモフスキー第1番」
  シューベルト/弦楽四重奏曲作品168から「第1、第2、第4楽章」

演奏 フェルメール弦楽四重奏団

最近、じっくりとクラシック音楽を聴くことが少ないのですが、今日は久しぶりに「ベストオブクラシック」に耳を傾けてみることにしました。録音は、今年四月、フェルメール四重奏団が紀尾井ホールで行った演奏会の模様で、ヤナーチェクなどの比較的有名な弦楽四重奏曲が三曲ほど演奏されていました。(シューベルトは時間の都合で第三楽章がカット。)

フェルメール弦楽四重奏団は、1969年のマールボロ音楽祭にて結成されたカルテットです。第一ヴァイオリンのシュミュエル・アシュケナージ以外のメンバーは、全て入れ替わって構成されています。(第二ヴァイオリンのタッケは、アンサンブル・モデルンから、またチェロのジョンソンはピッツバーグ響から加わったそうです。)私自身、このカルテットを聴くのは、CDを含めても初めてですが、チェロの硬めで力強い響きの上に、細めの線で美しく歌う二つのヴァイオリンがのせられて、温かみや響きの厚みを感じさせる音楽を聴かせてくれました。

最も興味深い演奏だったのは、一曲目のヤナーチェクの「ないしょの手紙」です。この曲は、ヤナーチェクの運命の女性とも言える、いわゆる「人妻」のカミラへ綴った手紙(十年間送り続けたそうですが。)に由来して作曲されたそうで、音楽もその彼の「恋心」を明け透けに見せるような表現が散見されます。メロドラマ風の甘いリズムから始まり、時には激しい求愛が、そしてまたある時には二人の愛が達成されることへの期待感を思わせるメロディーが折り重なって進みます。二人の愛の囁きのようなピアニッシモの美しい表現が聴こえてきたかと思いきや、突如破滅的な、想いを掻き乱されるような炸裂の響きが交錯し、ヤナーチェクの許されない恋が、これでもかと言う程哀愁を漂わせながら流れていきました。

フェルメールカルテットは、機敏で繊細な表情の味付けよりも、全体の響きの温かみの方により魅力を感じます。滑らかで艶やかとまではいきませんが、どのパートも比較的明晰な音で、音楽の構造をハッキリと示してくれたのは好印象でした。他の二曲では、「ラズモフスキー第一番」に軍配が上がると思います。シューベルトはもう一踏み込み欲しいように思いました。
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