「ジャン・コクトー展」 三越日本橋本店ギャラリー 7/31

三越日本橋本店新館7階ギャラリー(中央区日本橋室町)
「ジャン・コクトー展」
7/20~7/31(会期終了)

私的なコレクションとしては、世界で最も多くコクトーの作品を所有しているというサヴァリン・ワンダーマン・コレクションによって構成された、コクトーの回顧展を見てきました。私にとってコクトーとは、かなり前に読んだ「恐るべき子供たち」(あまり印象に残らなかったのですが…。)程度しか頭に浮びませんが、今回の企画を見ることで、美術や映画に芝居など、各方面に成果を残したコクトーの多彩な才能に触れることが出来ました。とても充実した展覧会でした。

コクトーは実に様々な芸術の潮流へ足を踏み入れています。展示の殆どはコクトー自身による油彩や水彩、それにパステル画などですが、その他にも親交のあった芸術家との写真や、手がけた舞台のポスターなど、枠にはまらない活動が見て取れる内容となっていました。ピカソの影響を受けたというキュピズム風の作品や、象徴派を思わせるような幻想的な作品、そして自画像を含む独特の人物画は、どれも彼の豊かな才能を見せつけます。その中で最も印象に残ったのは、タペストリーの大作である「ユディトとホロフェルネス」(1951年)です。キュピズム風の構成と、コクトーのユニークな人物描写が、大きな画面に所狭しと描かれ、壮大な物語を作り上げています。目の裏に焼き付くような生々しさも心に残ります。魅力的です。

最後まで一つ気になったのは、初期の自画像に見られたコクトー自身の不安気な眼差しでした。彼が後に手がけた人物画では、自信に満ち溢れた大きな瞳と、強い意思を感じさせるキリリと引き締まった口元が印象的ですが、もしかしたらそれはコクトーの芸術家としての自信の表れによるものなのかもしれません。繊細な感性を持った青年が、大きく花開いた時の輝かしさを見るようにも思いました。
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