都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「小林古径展 後期」 東京国立近代美術館 7/10
東京国立近代美術館(千代田区北の丸公園)
「近代日本画の名匠 小林古径展」
6/7~7/18
先日、展示品の大多数が入れ替わった「小林古径展」へ改めて行ってきました。前期の展示では、花鳥画と人物画に特に魅力を感じましたが、今回は風景画の味わいにも惹かれるものがありました。
まずは、大胆に縦に長くとられた構図に、海の深い青みと社の赤みとが美しく映える「住吉詣図」(1913年)です。縦長の構図は画面に奥行きをもたらして、手前の海の「青」と奥の住吉の「赤」の対比をより深く印象付けます。また、手前の深みから波打ち際へ向かっての色の変化の様子や、眼を凝らして見ないと分からない程、薄く細い線で端正に描かれた波のうねりの描写も魅力的でした。社の落ち着いた佇まいや、可愛らしく飛ぶ白鳥の姿も、この作品の魅力をさらに増していたと思います。
霞の中から優しく浮び出す厳島神社の鳥居。「伊都岐島」では、その背景に控える山々の姿や、鳥居の後方に佇む社の連なりが、全て微睡んでいるかのように朧げに描かれていました。霧や水面の様子をこれほど柔らかに、そして穏やかに描いた作品はなかなかありません。古径の風景画の中でも「傑作」と言えるのではないでしょうか。
前回も惹かれた花鳥画の中で、今回最も印象に残ったのは「孔雀」(1934年)でした。鮮やかでありながら、決して深すぎることのない爽やかな緑色の羽を大きく広げた孔雀。近くから見ると、一つ一つの羽の様を描いた繊細な筆に魅了されますが、遠目から見つめてもまた、端正で凛と伸ばした幾重にも広がる羽の様子が力強く映えてきます。絶妙に変化する緑色のグラデーションもため息が出る程美しくて、ずっと前に立っていたい気持ちにさせられるような作品でした。
人物画では「髪」(1931年)がとても印象的です。乳房を露にした女性が、姿勢良く髪を梳いてもらっています。筆の迷いを感じない、ハッキリとした線で簡素に描かれた女性は、後ろへ長く垂らす豊かな髪の素晴らしい質感(湿り気を感じます。)と相まって、とても清楚な雰囲気を見せています。心が洗われるような透明感のある作品でした。
前期と後期それぞれ一回ずつ、合わせて二度、この展覧会へ足を運びましたが、今年見た日本画の中では、最も惹かれるものを感じました。古径の魅力を心から味わうことが出来た展覧会でした。
*前期展示の感想はこちら。
「近代日本画の名匠 小林古径展」
6/7~7/18
先日、展示品の大多数が入れ替わった「小林古径展」へ改めて行ってきました。前期の展示では、花鳥画と人物画に特に魅力を感じましたが、今回は風景画の味わいにも惹かれるものがありました。
まずは、大胆に縦に長くとられた構図に、海の深い青みと社の赤みとが美しく映える「住吉詣図」(1913年)です。縦長の構図は画面に奥行きをもたらして、手前の海の「青」と奥の住吉の「赤」の対比をより深く印象付けます。また、手前の深みから波打ち際へ向かっての色の変化の様子や、眼を凝らして見ないと分からない程、薄く細い線で端正に描かれた波のうねりの描写も魅力的でした。社の落ち着いた佇まいや、可愛らしく飛ぶ白鳥の姿も、この作品の魅力をさらに増していたと思います。
霞の中から優しく浮び出す厳島神社の鳥居。「伊都岐島」では、その背景に控える山々の姿や、鳥居の後方に佇む社の連なりが、全て微睡んでいるかのように朧げに描かれていました。霧や水面の様子をこれほど柔らかに、そして穏やかに描いた作品はなかなかありません。古径の風景画の中でも「傑作」と言えるのではないでしょうか。
前回も惹かれた花鳥画の中で、今回最も印象に残ったのは「孔雀」(1934年)でした。鮮やかでありながら、決して深すぎることのない爽やかな緑色の羽を大きく広げた孔雀。近くから見ると、一つ一つの羽の様を描いた繊細な筆に魅了されますが、遠目から見つめてもまた、端正で凛と伸ばした幾重にも広がる羽の様子が力強く映えてきます。絶妙に変化する緑色のグラデーションもため息が出る程美しくて、ずっと前に立っていたい気持ちにさせられるような作品でした。
人物画では「髪」(1931年)がとても印象的です。乳房を露にした女性が、姿勢良く髪を梳いてもらっています。筆の迷いを感じない、ハッキリとした線で簡素に描かれた女性は、後ろへ長く垂らす豊かな髪の素晴らしい質感(湿り気を感じます。)と相まって、とても清楚な雰囲気を見せています。心が洗われるような透明感のある作品でした。
前期と後期それぞれ一回ずつ、合わせて二度、この展覧会へ足を運びましたが、今年見た日本画の中では、最も惹かれるものを感じました。古径の魅力を心から味わうことが出来た展覧会でした。
*前期展示の感想はこちら。
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