都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「山種コレクション名品選 前期展示」 山種美術館
山種美術館(千代田区三番町2 三番町KSビル1階)
「山種コレクション名品選 前期展示」
4/21-6/3

山種美術館御自慢の日本画コレクションから、選りすぐりの名品ばかりが揃いました。「山種美術館コレクション名品選」です。会期は前後期の二部に分かれていますが、一度の展示替えで全作品が入れ替わります。(出品リスト)事実上、異なる二つの展覧会と見て良いでしょう。

山種美術館と言えば御舟の優品をいくつも所蔵することで有名ですが、この名品展だけでも計10点の出品が予定されています。そのうち前期(計5点。)では、まず「名樹散椿」(1929)を挙げないわけには参りません。大きくせり上がる丘より伸びるのは、抽象の味わいすら感じさせるしなやかな椿の大木です。葉はざわつくように群れ、そこに紅白に色付く写実的な花がいくつも付いています。ちなみにこの椿は、京都のお寺にある樹齢400年を数えた古木なのだそうです。(ただしそれでいながら、この木にはまるで老いを感じません。)何やらルソーの絵画も連想してしまうような、細部の緻密さと全体の構図の大胆さを持ち合わせた名品です。


「牡丹花(黒牡丹)」(1934)に見る『品の良さ』も、御舟の魅力の一つではないでしょうか。まるで黒い綿が包みこんだような黒牡丹が一輪、瑞々しく咲き誇る様子が捉えられています。また牡丹と言えば、「写生画巻」の「牡丹」(1926)も必見の作品です。こちらは展示環境が良くなく、蛍光灯による自分の影が作品へ写り込んでしまうのが残念でしたが、確かなデッサン力に基づく牡丹をいくつも楽しむことが出来ました。控えめな薄いピンク色もまた美しいものです。
名品展と言うことで、さすがにこれまでにも拝見したことのある作品がいくつも出ていましたが、その中からは抱一の「秋草鶉図」(江戸後期)と松園の「新蛍」(1929)、それに松篁の「白孔雀」(1973)や土牛の「醍醐」(1972)などを挙げたいと思います。これらは以前にも拙ブログにて感想を書いた記憶があるので繰り返しませんが、どれもこの美術館で出会うことに喜びすら感じるような優れた作品です。抱一の草花のリズムに秋風を感じ、また松園の描く淑やかな女性に惚れ、(いわゆる近代日本画の美人画では松園が一番好きなのかもしれません。)さらには白い顔料がさながら宝石を砕いたように舞う「白孔雀」や、眩しいほど桜の煌めく「醍醐」に心から魅入りました。

京都で回顧展を楽しんだ平八郎も一点出ています。また、久々に豪華な図録まで用意されていました。入館料が値上がりしたのは残念でしたが、この企画に対する美術館の意気込みも伝わってきます。
前期展示は明日まで、後期は今月6日より7月16日までの開催です。もちろんそちらも見に行きたいと思います。(5/27)
*関連エントリ
山種美術館で楽しむ「秋草鶉図」
「山種コレクション名品選 後期展示」 山種美術館
「山種コレクション名品選 前期展示」
4/21-6/3

山種美術館御自慢の日本画コレクションから、選りすぐりの名品ばかりが揃いました。「山種美術館コレクション名品選」です。会期は前後期の二部に分かれていますが、一度の展示替えで全作品が入れ替わります。(出品リスト)事実上、異なる二つの展覧会と見て良いでしょう。

山種美術館と言えば御舟の優品をいくつも所蔵することで有名ですが、この名品展だけでも計10点の出品が予定されています。そのうち前期(計5点。)では、まず「名樹散椿」(1929)を挙げないわけには参りません。大きくせり上がる丘より伸びるのは、抽象の味わいすら感じさせるしなやかな椿の大木です。葉はざわつくように群れ、そこに紅白に色付く写実的な花がいくつも付いています。ちなみにこの椿は、京都のお寺にある樹齢400年を数えた古木なのだそうです。(ただしそれでいながら、この木にはまるで老いを感じません。)何やらルソーの絵画も連想してしまうような、細部の緻密さと全体の構図の大胆さを持ち合わせた名品です。


「牡丹花(黒牡丹)」(1934)に見る『品の良さ』も、御舟の魅力の一つではないでしょうか。まるで黒い綿が包みこんだような黒牡丹が一輪、瑞々しく咲き誇る様子が捉えられています。また牡丹と言えば、「写生画巻」の「牡丹」(1926)も必見の作品です。こちらは展示環境が良くなく、蛍光灯による自分の影が作品へ写り込んでしまうのが残念でしたが、確かなデッサン力に基づく牡丹をいくつも楽しむことが出来ました。控えめな薄いピンク色もまた美しいものです。
名品展と言うことで、さすがにこれまでにも拝見したことのある作品がいくつも出ていましたが、その中からは抱一の「秋草鶉図」(江戸後期)と松園の「新蛍」(1929)、それに松篁の「白孔雀」(1973)や土牛の「醍醐」(1972)などを挙げたいと思います。これらは以前にも拙ブログにて感想を書いた記憶があるので繰り返しませんが、どれもこの美術館で出会うことに喜びすら感じるような優れた作品です。抱一の草花のリズムに秋風を感じ、また松園の描く淑やかな女性に惚れ、(いわゆる近代日本画の美人画では松園が一番好きなのかもしれません。)さらには白い顔料がさながら宝石を砕いたように舞う「白孔雀」や、眩しいほど桜の煌めく「醍醐」に心から魅入りました。

京都で回顧展を楽しんだ平八郎も一点出ています。また、久々に豪華な図録まで用意されていました。入館料が値上がりしたのは残念でしたが、この企画に対する美術館の意気込みも伝わってきます。
前期展示は明日まで、後期は今月6日より7月16日までの開催です。もちろんそちらも見に行きたいと思います。(5/27)
*関連エントリ
山種美術館で楽しむ「秋草鶉図」
「山種コレクション名品選 後期展示」 山種美術館
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