「ヴィクトリア アンド アルバート美術館 浮世絵名品展(後期展示)」 太田記念美術館

太田記念美術館渋谷区神宮前1-10-10
「ヴィクトリア アンド アルバート美術館 所蔵初公開浮世絵名品展(後期展示)」
6/1-26(会期終了)

会期末の駆け込みで見てきました。「ヴィクトリア アンド アルバート美術館(V&A美術館) 所蔵初公開浮世絵名品展」です。V&A美術館(イギリス・ロンドン)の約2万5000点にも及ぶ浮世絵コレクションから選ばれた170点の作品が、前後期に分けて紹介されていました。

一番の収穫は、やはり江戸琳派の団扇絵を見られたことにあると思います。もちろん目当ては、団扇の中をたくさんの蚊がうようよと飛び交っている、酒井抱一の「蚊」(1809-28)でした。夏に最も嫌われる虫、蚊を、夏に欠かせないアイテムとも言える団扇の図柄にしてしまったことからしてかなり奇抜ですが、下部に大きな余白をとり、血を吸ったのか、若干の朱も交えて描かれた蚊の描写自体はなかなか優れています。このように蚊を情緒的に見るのは、絵師と言うよりも俳人ならではの視点かもしれません。静かに耳を傾けると、今にもぶーんという蚊の羽音が聞こえてきそうです。例えば蚊遣り火も趣き深く描いてしまう(「賤が屋の夕顔図」。畠山の琳派展に出ていました。)抱一らしい作品です。ちなみにこの蚊は約20匹程度いるのだそうです。取り囲まれたらひとたまりもありません。



その他の団扇図では、鈴木其一の「団扇売り」(1832)も面白い作品です。こちらは、其一の持ち味を生かしたようなデザインの妙を感じました。色とりどりの団扇とそれをぶら下げて歩く男たちが、何やら図形的にも配されています。また、渡辺華山の「ほおずき」も可愛らしい作品です。ほおずきがまるで小さな人形のように見えます。ひょこひょこ動き出しそうです。



一般的な浮世絵では、まわり灯籠を覗き込む女性の描かれた歌麿の「美人五節の遊」、または、遊女が忙しなく書をたしなむ様をエキゾチックに表現した菊川英山の「風流琴碁書画 画 岡本屋内重岡」、さらには眩い光を帯状にのばして、まるで劇画のような朝焼を見せた歌川国貞の「二見浦曙の図」、そして口にペンをくわえた女性が何とも耽美的な暁斎の「写生する美人」などが印象に残りました。

隠れ家的な雰囲気も持つ太田記念美術館は嫌いではありませんが、出来ればもっと大きな『箱』で見たかったと思います。少し混雑してくると身動きすらとれなくなるのは御免です。(6/23)
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