都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「中里和人展 風景ノ境界 1983-2010」 市川市芳澤ガーデンギャラリー
市川市芳澤ガーデンギャラリー(千葉県市川市真間5-1-18)
「中里和人展 風景ノ境界 1983-2010」
8/28-10/11
何気ない日本の景色を独自の美意識で写し取ります。市川市芳澤ガーデンギャラリーで開催中の「中里和人展 風景ノ境界 1983-2010」へ行ってきました。
写真家、中里和人氏のプロフィールについては、同氏のWEBサイトをご参照下さい。
中里和人(なかざとかつひと)Profile
「ULTRA―中里和人写真集/中里和人/日本カメラ社」
さて芳澤ガーデンギャラリーの展示室はほぼ一室のみと、さほど広いわけではありませんが、今回は内部をパーティションで区切り、旧作から新作までの全9シーリズ、計100点ほどの写真作品をずらりと並べています。またその他、映像や小屋のインスタレーションの展示など、一つの回顧展として見ても十分として差し支えありません。実際に私自身も思いの外に長居して作品を楽しむことが出来ました。
出展のシリーズは以下の通りです。
湾岸原野(1983~1989)モノクロ
表層聖像(1992~1998)モノクロ
R(2000~2006)カラー
路地(1993~2004)カラー
小屋の肖像(1997~2000)カラー
4つの町(2000~2007)カラー *原色の町、白い町、褐色の町、黒い町の4シリーズ。
キリコの街(1995~2001)カラー
東京(2000~2006)カラー
ULTRA(2000~2008)カラー
「小屋の肖像」(2000)
東京湾岸の埋め立て地の他、ゴミも浮かぶ江戸川河口など、決して美しいとは言えない景色を果敢に捉えた「湾岸原野」や「表層聖像」のモノクロシリーズも不思議な魅力が感じられますが、私が断然に惹かれたのはカラー作品、近作の「ULTRA」と「路地」、そして「東京」などでした。
「ULTRA」(2008)
とりわけ一際大きな画面で見せる「URTRA」の闇の美しさと言ったら他にたとえようがありません。例えば青森の海岸線などの明かりの少ない地域が闇に沈む様子を見ていると、全てを消してゆく闇のどこか破壊的な力を感じてなりませんでした。作家自身はこれを「夜景」ではなく「闇景」と呼んでいますが、藍や黒に染まった海は、あたかも見る者を引きずりこむかのような表情をもって荒れ狂っています。その深淵さは恐ろしいまでのものでした。
「路地―Wandering Back Alleys/中里和人/清流出版」
向島や八広など下町を写した「東京」シリーズも、その古い町並みの景色を取り出したコンセプトにもよるのか、どこか懐かしい感覚を呼び起こすかもしれません。また沖縄や尾道などに取材した「路地」も、決して人が写し出されているわけではありませんが、何か郷愁を誘うような人情味溢れる街の景色が切り出されていました。無人の街から今にも人の呼び声が聞こえてくるような気さえします。
メイン展示室の奥、和室にある映像作品「Boso Time Tunnel」(2010)もお見逃しなきようご注意ください。なお作家本人がここ市川市の在住とのことで、近隣の風景を取り出した住民参加型のワークショップの成果なども披露されていました。
*
芳澤ガーデンギャラリーは、同市玄関口のJR市川駅の北側、約1.2キロほど離れた閑静な住宅地内に位置します。最寄にバス停はありません。駅からは約20分弱と歩けないわけではありませんが、駅近隣の駐輪場で貸し出している市のレンタサイクルを利用するのも手ではないでしょうか。(台数制限あり。無料。)
「街かど回遊レンタサイクル」について@市川市
*
ガーデンギャラリー付近は同市でも指折りの歴史・文教ゾーンです。周辺に史跡や記念館などもあるので、そちらを一緒に廻ってみるのも良いかもしれません。ガイド板などは界隈の随所に設置されていました。
市川・真間地区ホームページ@街かどミュージアムWEB
*
10月11日まで開催されています。
*写真は芳澤ガーデンギャラリー。ちょっとしたお庭も整備されています。
「中里和人展 風景ノ境界 1983-2010」
8/28-10/11
何気ない日本の景色を独自の美意識で写し取ります。市川市芳澤ガーデンギャラリーで開催中の「中里和人展 風景ノ境界 1983-2010」へ行ってきました。
写真家、中里和人氏のプロフィールについては、同氏のWEBサイトをご参照下さい。
中里和人(なかざとかつひと)Profile
「ULTRA―中里和人写真集/中里和人/日本カメラ社」
さて芳澤ガーデンギャラリーの展示室はほぼ一室のみと、さほど広いわけではありませんが、今回は内部をパーティションで区切り、旧作から新作までの全9シーリズ、計100点ほどの写真作品をずらりと並べています。またその他、映像や小屋のインスタレーションの展示など、一つの回顧展として見ても十分として差し支えありません。実際に私自身も思いの外に長居して作品を楽しむことが出来ました。
出展のシリーズは以下の通りです。
湾岸原野(1983~1989)モノクロ
表層聖像(1992~1998)モノクロ
R(2000~2006)カラー
路地(1993~2004)カラー
小屋の肖像(1997~2000)カラー
4つの町(2000~2007)カラー *原色の町、白い町、褐色の町、黒い町の4シリーズ。
キリコの街(1995~2001)カラー
東京(2000~2006)カラー
ULTRA(2000~2008)カラー
「小屋の肖像」(2000)
東京湾岸の埋め立て地の他、ゴミも浮かぶ江戸川河口など、決して美しいとは言えない景色を果敢に捉えた「湾岸原野」や「表層聖像」のモノクロシリーズも不思議な魅力が感じられますが、私が断然に惹かれたのはカラー作品、近作の「ULTRA」と「路地」、そして「東京」などでした。
「ULTRA」(2008)
とりわけ一際大きな画面で見せる「URTRA」の闇の美しさと言ったら他にたとえようがありません。例えば青森の海岸線などの明かりの少ない地域が闇に沈む様子を見ていると、全てを消してゆく闇のどこか破壊的な力を感じてなりませんでした。作家自身はこれを「夜景」ではなく「闇景」と呼んでいますが、藍や黒に染まった海は、あたかも見る者を引きずりこむかのような表情をもって荒れ狂っています。その深淵さは恐ろしいまでのものでした。
「路地―Wandering Back Alleys/中里和人/清流出版」
向島や八広など下町を写した「東京」シリーズも、その古い町並みの景色を取り出したコンセプトにもよるのか、どこか懐かしい感覚を呼び起こすかもしれません。また沖縄や尾道などに取材した「路地」も、決して人が写し出されているわけではありませんが、何か郷愁を誘うような人情味溢れる街の景色が切り出されていました。無人の街から今にも人の呼び声が聞こえてくるような気さえします。
メイン展示室の奥、和室にある映像作品「Boso Time Tunnel」(2010)もお見逃しなきようご注意ください。なお作家本人がここ市川市の在住とのことで、近隣の風景を取り出した住民参加型のワークショップの成果なども披露されていました。
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芳澤ガーデンギャラリーは、同市玄関口のJR市川駅の北側、約1.2キロほど離れた閑静な住宅地内に位置します。最寄にバス停はありません。駅からは約20分弱と歩けないわけではありませんが、駅近隣の駐輪場で貸し出している市のレンタサイクルを利用するのも手ではないでしょうか。(台数制限あり。無料。)
「街かど回遊レンタサイクル」について@市川市
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ガーデンギャラリー付近は同市でも指折りの歴史・文教ゾーンです。周辺に史跡や記念館などもあるので、そちらを一緒に廻ってみるのも良いかもしれません。ガイド板などは界隈の随所に設置されていました。
市川・真間地区ホームページ@街かどミュージアムWEB
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10月11日まで開催されています。
*写真は芳澤ガーデンギャラリー。ちょっとしたお庭も整備されています。
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