「桑久保徹 海の話し 画家の話し」 TWS渋谷

トーキョーワンダーサイト渋谷渋谷区神南1-19-8
「桑久保徹 海の話し 画家の話し」
8/7-9/26



トーキョーワンダーサイト渋谷で開催中の桑久保徹個展「海の話し 画家の話し」へ行ってきました。

作家プロフィールについては小山登美夫ギャラリーのWEBサイトをご覧下さい。 作品画像も多数掲載されています。

桑久保徹 バイオグラフィー@小山登美夫ギャラリー

国立新美術館での「アーティスト・ファイル」展の記憶が新しい方も多いのではないでしょうか。一見、抽象を思わせるような激しいタッチによる風景画風のペインティングは、あの広いホワイトキューブでもかなり人目を引いていました。


「カーネーション」(2004) 油彩、キャンバス

さて今回の展示で興味深いのは、最新作だけでなく、初期の旧作を交えた回顧展形式で画業を追うことが出来ることです。私自身、彼の絵画をはじめて意識したのは、2008年に開催された小山登美夫ギャラリーでの個展でしたが、ワンダーウォールに入選にした2002年前後の、例えば砂浜に穴の空いた風景画などを見ると、今の作風とはかなり異なっていることが良く分かります。海岸の砂浜の地中から突如、赤い花が手によって掲げられた「カーネーション」(2004)からは、何か物語のワンシーンを見ているような印象を与えられました。


「自由の女神に似た女」(2009) 油彩、キャンバス

私が一番引かれたのはSPACE A、つまりはギャラリーのメインフロアに並んだポートレート風の作品です。大胆な蛍光色を用いながらも、時に相反するような暗い色彩によって浮かび上がる人間の姿は、訴えかけるような眼差しで前を見つめています。桑久保というと、それこそ下に挙げた「農民の婚宴」(2009)のように中心のない、鳥瞰的な視点で捉えられた広い空間の中へモチーフを無数に詰め込むイメージがあっただけに、これらの肖像画はかなり意外でした。


「農民の婚宴」(2009) 油彩、キャンバス

ちなみにその無数のモチーフに目を凝らすと、それらの一部が古典絵画から取り入れられていることがお分かりいただけるかもしれません。桑久保は自身が提供した広大な空間の中へ、そうした古典のモチーフを文脈から切り離して並列的に配置しています。一見、同じ水平線を臨む海岸線にあるようでも、各々の空間と時間は言わば切り刻まれていました。

9月26日まで開催されています。
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