束芋 「ててて」  ギャラリー小柳

ギャラリー小柳中央区銀座1-7-5 小柳ビル8階)
束芋「ててて」
8/5-9/11



ギャラリー小柳で開催中の束芋「ててて」へ行ってきました。

束芋というと先だっての横浜美術館の大個展の印象も強いところですが、今回はその際にも出品のあった「惡人」の特装本の他、平面の新作「show through1」や映像作品の「ててて」などが紹介されています。それにしても強烈なのは身体性、とりわけ「指」などの表現への執拗なまでの追求でした。映像の「ててて」では、うごめいてもがき、さらには全てを掻きむしって血管のように連なる手や指がひたすらに映されていますが、その異様でかつグロテスクな様子に、まさに束芋ならではの生々しい身体への関心を伺い知ることが出来るのではないでしょうか。指から指が生成し、それ自体が命を持つかのような姿を見ていると、いつしか自分の指もあのように動き出すのではないかというような恐怖感さえ覚えました。

しかしながら私としてはより魅力的に思えたのは和紙を用いたという2、3点の平面作品です。何層にも積まれた和紙の厚み、そしてその一部が爛れるようにして抜け落ちている質感は、それこそ傷を負って膿を出した皮膚の表面に思えてなりません。見ているだけで背筋がゾクゾクと冷たくなりました。

実際のところ浜美の個展は、そのテーマ設定と大掛かりな装置に馴染めず、殆ど良い印象を持ちませんでしたが、今回の愚直なまでの身体への関心と、それに由来する生理的不快感はむしろ束芋ならではの魅力だと改めて感心させられました。

「惡人/束芋/朝日新聞出版」

9月11日まで開催されています。
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